社内コミュニケーションが活性化することによるメリットとその施策~元外資系人事マネージャーが語る

企業がビジネス上の成功を得るためにはサービスや製品がマーケットの需要に応じたものであるだけではなく、そのビジネスを実行する社員間のコミュニケーションが良好であることも欠かせない要素です。終身雇用制度が主流だった頃は、同じ企業文化で育ったフルタイムの正社員同士による意思疎通が中心だったので、日本ではそれほど注目されることはなかったかもしれません。 しかし、近年においては人材の流動も増えています。転職などによって同一人物が何度か会社を変えて働く、同時に複数企業にて働く、正社員だけではなく派遣社員や業務委託など様々な雇用形態のメンバーで構成された環境にて働くといったことが当たり前になりつつあります。 そのため、意思疎通を図ることや双方の考え方の共有を行うこと、すなわちコミュニケーションを積極的にとることが求められています。これは同僚間といったヨコのつながりだけではなく、上司・部下の間や、部門間といった社内コミュニケーションの活性化が重要であることを意味しています。

社内コミュニケーションの活性化によって得られる3つのメリット

社内コミュニケーションが活性化されることによって、企業が得られるメリットにはどのようなものがあるでしょうか?メリットを3つあげたいと思います。

①生産性の向上

最初にあげられるのが、生産性の向上です。社内コミュニケーションが活性化することによって、同僚間だけではなく上司部下の間、あるいは部門間でもお互いの意見や考えを出し合い、役割の分担や効率化が促進されます。安心して業務に取り組むことができる=心理的安全性が高い環境だからです。また、何らかの問題が発生したとしても、お互いに協力して対応することができます。

②社員定着率の向上・退職率の減少

一定のスキルがあり、活躍が期待できそうな社員を採用するのは、決して容易なことではありません。その一方、社員が退職する理由の中で多くあげられるのが、「社内の人間関係における悩み・不満」です。しかし、社内コミュニケーションが活発であれば、社員間(特に上司と部下との間)の意見の食い違いは起こりにくくなるし、仮にそのようなことが起こったとしても意見交換が行いやすいので、大事になる前に解決できる可能性が高いです。自分の意見が主張でき、それが適切な形で受け入れられることを経験すれば、社員の企業に対する満足度と定着率は向上します。つまり、退職率の減少が期待できます。

③企業信頼度・企業ブランドの向上

社内コミュニケーションが活性化することによって、顧客やユーザーへの対応においても「企業としての一貫性」が出てくるので、顧客やユーザーといった対外的な関係者からの信頼にもつながります。また、所属企業へのロイヤリティーが高まるため、意図的な情報漏洩などコンプライアンス違反が発生しにくくなるでしょう。このような企業がメディアなどに取り上げられる、または、社員自らがSNSなどで発信することで、企業のブランド価値の向上にもつながります。

社内コミュニケーション施策案

社内コミュニケーションを活性化させるのに有効な施策にどのようなものがあるのか、具体的な例を4つご紹介します。

①ファミリーデー

職場に家族(配偶者・子供・両親・パートナーなど)を招待して、職場見学やイベントなどを開催するものです。業務上は接することが少ない社員同士や、社員と経営層に、新たなコミュニケーションが生まれるきっかけとなるかもしれません。また、すでにお互いを知っていたとしても、双方の家族を知ることによって、さらに深い付き合いが生まれることも期待できます。

②オンラインサンクスカード

業務上のちょっとしたサポートなどに対して、スマートフォンやインターネットにて、社員同士で感謝の気持ち贈り合うことをサポートするツールのことです。画面上で「いいね!」といったボタンを押して数値として現れるもの、あるいは、Smileボーナスのように社内だけで流通するポイント制度を導入し、貯まったポイントで景品や報酬の一部にするものがあります。

③社内サークル

社員有志がフットサルや釣りなどのサークル活動を行うだけではなく、そういった活動に対して会社が何らかの費用サポートをする、あるいは会社として公認するといったことです。部門内外のつながりを強めるという社内における影響は言うまでもなく、採用情報や自社Webサイト・SNSに掲載することによって、企業としてのイメージや働きやすさをアピールするために社外へのアピールにもつながります。

④フリーアドレス

社員それぞれが個別の専用デスクを持たず、オフィス内に設置されている自分の好きな席で働くワークスタイルのことです。隣に座っている人が他部門の人であることが多い職場環境となるため、組織の壁がなくなり多様なつながりが生まれる可能性があります。その一方、誰がどこにいるのかがわかりにくくなることも考慮したほうがよいでしょう。(そういった状況を解決するために、せきなびなどのツールを導入することも検討する余地はあると思います。)

 

 

最後に

業種・オフィスの形態・社員人数などによって、社内コミュニケーションの活性化のためにできることは異なるでしょう。何のために導入するのか・実施するのかといった目的と想定期待結果を明確にすることが肝要です。また、1回実施すれば即効性があるということは無く、継続的な実施・運用とその効果測定に基づく改善(場合によっては廃止)が求められることに留意すべきでしょう。


執筆者

アルドーニ株式会社

代表取締役 永見 昌彦

外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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