公開日:2022.07.22

ブランディングのための分析と戦略立案

  • マーケティングリサーチ用語解説集

現代は生産技術の向上により、世の中に必要な機能が満たされた商品が数多く存在しています。今や機能的価値だけでは競合との差別化が難しくなり、このままの状態では先の見えない価格競争に巻き込まれてしまいます。
その一方で、消費者は商品やサービスに「ブランド」という新しい付加価値を求めており、ブランディングの重要性は高まる一方です。
しかし、新たに商品やサービスをブランディングしようと考えても、どのようなステップで進めていけば良いか分からないというケースが多いのではないでしょうか。
この記事では、ブランディングを始める際のステップを、「ブランディング分析」と「ブランド戦略立案」に重点を置いて解説します。

 

ブランディングとは

ブランディングとは、自社の商品やサービスが「そのブランドならではのもの」として認識させるための取り組みです。
自社の商品やサービスがユーザーを機能や価格面で満足させるのではなく、ブランドがユーザーの生き方や価値観を表す存在へと高めていく活動。それこそがブランディングの目指すべき方向性となります。

 

ブランディング分析の重要性

ブランディングを始める際に最も重要なポイントは、自社の商品やサービスが市場においてどのようなポジションにあるかを知ること。
ブランドの方向性を決めるのは企業の役割ですが、最終的にその価値を決定するのはユーザーです。現状でユーザーからどのような評価を受けているのかをしっかりと把握しないと、ブランディングは企業の独りよがりとなってしまいます。
また、今後のブランディング展開において、競合商品とどのようなイメージで差別化=ポジショニングするかも考えなければなりません。そのためには、自社商品と競合との関係性をデータとして把握し、関係者が情報共有する必要があります。

ブランディングにおいて、分析作業が省略されて行われるケースが時折あります。経営者などのリーダーがトップダウンで強い方針を打ち出し、それがユーザーに支持されて成功することがあるのも事実です。
しかし、このトップダウン型ブランディングには、以下のような問題点があります。

・基本的には個人の直感であり、その要点をリーダーしか理解できない
・基礎となる情報が共有できないため、解釈が個人によって大きく異なる
・リーダーの想いが強くなりがちで、ユーザーマインドが見えなくなりやすい
・リーダーの直感がユーザーや市場とズレてしまうと、修正することが困難

 
このような問題点から、トップダウン型ブランディングの成功は比較的短期間となることが多く、長期スパンでのブランド育成にはあまり向いていません。
ブランドはユーザーから長期間にわたって支持されるときに、本当の意味で価値を発揮します。そのためにもブランディングにおいては、より詳細に情報把握し、数値データとして継続的に分析することが大切です。

 

ブランディング分析のフレームワーク

マーケティングではユーザーや市場の情報を分析する、数々のフレームワークがあります。
フレームワークとは、マーケティング活動における戦略立案や問題解決に役立つ分析や思考の枠組み。ブランディング分析に関して分かりやすく言うと、これまでに確立された分析手法を意味します。
ブランディング分析のフレームワークを用いれば、自社の商品やサービスを取り巻く市場の様々な情報が入手できます。
その中でも、ブランディング分析に用いられる代表的なフレームワークを3つ紹介します。
 

①PEST分析

商品やサービスを取り巻く市場は、外部環境から大きな影響を受けます。
例えば、ファミレスの営業時間について考えてみましょう。バブル景気の頃には、若者を中心にライフスタイルの夜型化が進みました。これに合わせて、深夜での食事や集いの場所を求めるニーズが高まるという外部環境変化が起き、多くのファミレスは24時間営業とすることで、売上や利益のアップを図りました。
しかし、近年は若者人口の減少やライフスタイルの朝型化などにより、24時間営業の店舗はその数を大きく減らしています。

このように大きな外部環境の変化は、商品やサービスのあり方にとても大きな影響を及ぼします。基本的に外部環境を一企業が思い通りに変化させることは、ほぼ不可能です。だからこそ、ブランディングする際は、外部環境がどのように変化していくかを把握し、その変化に適した戦略を立案しなければなりません。

その外部環境の影響を把握・予測するために効果的なフレームワークが「PEST分析」です。
PEST分析では、外部環境を「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」という4つの要素に分類します。

政治(Politics)・・・法規制、政策、税制、外交向など
経済(Economic)・・・景気、インフレ・デフレ、為替、金利など
社会(Social)・・・・人口動態、社会意識、教育、環境変化など
技術(Technological)・・・技術革新、特許、投資動向など

 
これらの4つの要素を「事実or解釈」「機会or脅威」「短期or長期」の観点から、情報を分析する手法です。
PEST分析は、長期的視点で外部環境がどのように変化していくかを把握するのに適しています。その変化の中からユーザーが求める付加価値を読み取り、ブランディングの大きな方向性を決めるために欠かせないフレームワークと言えるでしょう。
 

②3C分析

3C分析とは、経営環境を「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つのCに分けて分析する方法です。3C分析では、「市場・顧客」「競合」を外部環境、「自社」を内部環境として分析します。
ブランディングする際、重要ポイントの一つに「ポジショニング」があります。ポジショニングとは、競合他社と差別化し、どのユーザーに支持されるブランドを構築するかを決めること。効果的なポジショニングには、「自社」の強みと「市場・顧客」「競合」との関係性を正しく把握しなければなりません。
そこで3Cの情報を詳しく把握・分析し、KSF(Key Success Factor:重要成功要因)へとつなげていきます。
 

③SWOT分析

SWOT(スウォット)分析とは、自社の商品やサービスが、どのような市場環境に置かれているかを分析するフレームワークです。市場環境を自分たちでは変えられない「外部環境」、自分たちで変えられる「内部環境」に分けて、それぞれのプラスおよびマイナス要因を分析します。

□外部環境
 機会(Opportunity)・・・チャンスとなる要因
 脅威(Threat)・・・ピンチとなる要因

□内部環境
 強み(Strength)・・・独自の付加価値、競合に勝るポイント
 弱み(Weakness)・・・競合に劣っているポイント

 
これらの4要素を組み合わせて、以下の4パターンについて戦略の方向性を決めていきます。

・強み×機会(積極化戦略)
自社の「強み」を活かして、「機会」に対する施策を考えます。
分かりやすく言うと、「有望なビジネスチャンスに対して、いかに自社の強みを活かしていくか」。ブランディングにおいて、最も重要な戦略となります。

・強み×脅威(差別化戦略)
市場環境の悪化に対して、「強み」を活かしていかに生き残りを図る施策を考えます。競合に対して、強い優位性を持っている時に効果的な戦略です。

・弱み×機会(改善戦略)
市場におけるビジネスチャンスを活かすために、どうやって自社の弱みを補強する戦略です。短期間での実現は非常に難しく、長期的に取り組む必要性が生まれます。

・弱み×脅威(防衛・撤退)
自社に対する影響の最小化を図る、守りの戦略となります。どちらかというとネガティブな判断に利用されます。

 

ブランド戦略の立案

ブランディング分析のフレームワークによって、市場環境の情報把握・分析ができたら、次はブランド戦略を立案します。この戦略立案は、ブランディングの「設計図作り」にあたります。
ここで適切な設計図がつくれればブランディングがスムーズに進みますが、不適切な設計図となれば効果的なブランド展開は期待できなくなります。ある意味、ブランド戦略立案はブランディングの最重要課題です。だからこそ、戦略立案するための情報把握や分析は、できるだけ正確かつ詳細に行う必要があります。

ブランド戦略立案の大きなステップは、「ポジショニング」「ターゲティング」「コンセプトの設定」となります。この3点がブランド戦略の設計図となり、これをベースとしてブランディングの具体策作りへと入ります。
 

①ポジショニング

外部環境と内部環境をしっかりと検討した上で、市場における自社ブランドのポジションを設定します。
ブランドは市場ポジションにおいてNo.1のイメージを持たなければ、ユーザーから選ばれません。競合関係、ユーザーニーズ、自社の強みを検討し、長期的に自社ブランドがNo.1となれる市場ポジションを明確にしていきます。
ポジショニングには、主にPEST分析や3C分析を検討材料とするのが適しています。
 

②ターゲティング

ポジショニングを設定後、その市場におけるターゲティングを行います。ここでは、ターゲットの「量と質」について検討することが大切です。

まずは、ターゲットの量=市場規模
どれだけ自社の優位性を活かせるとしても、そこにはビジネスとして成立する市場規模が必要です。ただし、ここでの市場規模は、必ずしも現在のものではありません。今は市場規模が小さくても外部環境などによって将来的に成長が見込めるのであれば、ブランド展開する価値は充分にあります。むしろ、競合商品が少ないため、No.1イメージを獲得できる可能性は高まるかもしれません。
次に考慮するのが、ターゲットの質=ニーズの把握
現代はライフスタイルや価値観の多様化により、ユーザーニーズの細分化が進んでいます。このニーズをより早く、正しく、具体的に設定できるほど、ブランディングを他社より優位に進められます。

これらターゲットの「量と質」両面を検討し、自社ブランドが優位性を発揮できるかを検討しましょう。もし、どちらか一方でも大きな問題点があるようでしたら、現状のポジショニングは適切ではないかもしれません。再度、ポジショニングに立ち戻ってみましょう。
ターゲティングには、主に3C分析やSWOT分析を検討材料とするのが適しています。
 

③コンセプト

ターゲティングできたら、次はターゲットに訴求するブランドのコンセプトを設定します。
自社ブランドは、ターゲットユーザーにどのような価値観やイメージを提供していくのか?そして、その価値観やイメージは、ユーザーの生き方にプラスの影響を与えられるのか?これらの点を考慮して、より具体的なコンセプトをつくっていきましょう。
コンセプトづくりには、主にSWOT分析を検討材料とするのが適しています。

 

まとめ

ここまで、ブランディングにおける分析と戦略立案について解説しました。
ブランディングにおいて戦略立案は「設計図作り」。そして、思うような成果が得られないブランディングの多くは、この「設計図作り」でつまづいています。
ブランディングは長期戦。だからこそ設計図の完成度が高くないと、スタートは良くても時間とともに綻びが必ず出てきます。だからこそ、設計段階においてより質の高い情報を把握し、的確な分析結果を準備することは大切です。
ブランディングを成功させたいとお考えであれば、ぜひマーケティング手法を用いた分析と戦略立案を検討してみましょう。
 

執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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