福利厚生の種類・メリット~元外資系人事マネージャーが語る

福利厚生の種類・メリット

就職・転職先を検討する時に、業務内容や報酬(給与・賞与など)といった労働条件だけではなく、社員とその家族の生活を支えるための施策として企業が行う福利厚生の内容や充実度も考慮に入れる傾向は定着しつつあるといえます。 さらに、福利厚生は、在籍社員の企業に対する満足度に影響を及ぼす重要な要素でもあります。今回は福利厚生にはどんなものがあるのか、そのメリットや運用方法について考えてみましょう。

福利厚生は大きく2つに大別される

福利厚生は大きくわけて2種類あります。 実施することを法律によって定められた社会保険や休業補償などの「法定福利」と、企業が独自の裁量にて実施する「法定外福利」です。法定外福利とは、通勤手当などの諸手当、傷病やボランティアなどの特別休暇、社宅や社員食堂などの施設といったものが例としてあげられます。 ここでは「法定外福利」について掘り下げていきたいと思います。

福利厚生の3つのメリット

福利厚生を充実させることによって、どのようなメリットがあげられるでしょうか?3つあげたいと思います。

①採用における企業のイメージアップ

企業を選ぶ際の基準として、福利厚生の内容や充実度を重要なポイントとしている就職希望者は多いと思います。その企業の特徴を表したユニークな福利厚生は話題として取り上げられるだけではなく、他社との差別化をはかることができます。 また、福利厚生が整備されていることによって、「社員を大切している」ことをアピールできることにもつながるので、企業のブランド力向上にも貢献するでしょう。

②従業員満足度・生産性の向上

様々な福利厚生を整えるだけではなくその利用促進も図ることで、自分が勤務している企業に対する満足度やエンゲージメントが高まり、結果として社員の定着率向上にもつながるでしょう。満足度の高い環境で安心して仕事に取り組めば生産性の向上が期待できます。 さらに、健康維持・増強を支援する福利厚生が導入されていることで、個人の能力を最大限に発揮できる人が集まる組織づくりも可能となります。

 

 

③会計上の節税効果

福利厚生の費用は、企業が社員の仕事と生活の両立支援への取り組みにかかる経費として計上することができます。福利厚生費が経費として計上できれば、法人税の算出根拠となる利益額をおさえられます。そのため、結果として節税にもつながります。 ただし、こういった福利厚生は、「全社員(役員も含む)が利用することができ、かつ、社会通念上一般的な利用料金の範囲内である」必要があります。(制度上、全員が利用可能であれば、結果として特定の社員しか利用していなかったとしても問題はありません。)

導入する際の2つの方法

福利制度の導入方法としては、個々に必要かつ独自の制度を導入する方法と福利厚生のアウトソーシングサービスを使用する方法の2つがあります。

①会社独自の制度導入

独自で展開する福利厚生には、例えば、以下のようなものがあげられます。

  • 会社の近隣に住む場合の家賃補助
  • 社内で提供される飲み物やランチ
  • シャッフルランチ(異なるチームメンバーとのランチ代を会社から補助)
  • 誕生日休暇(通常の有給休暇とは別に付与)
  • オンラインサンクスカード(peer bonus)※Smileボーナスなど
  • 自己啓発支援
  • 業務に関係がある書籍購入代補助
  • 財産形成支援

企業ごとの特徴や意図をふまえて、趣向をこらした内容が多いです。社員を大切に扱おうとする企業の姿勢や想いを示すのに、一定の効果が期待できます。最近ではテレワークを導入している企業を中心に、必要な機材購入補助などを新たに取り入れている企業も増えています。

②アウトソーシングサービスの導入

一方、福利厚生アウトソーシングを利用している企業もあります。社員1名あたりの単価が決まっており、社員数に応じた費用を企業が負担することによって、自己啓発のためのスクール費用の割引、ホテルや旅行ツアー代金の割引、ベビーシッターをはじめとした育児支援の提供など、さまざまなサービスを社員が自由に選択して享受することができます。会社独自の制度と併用しているケースもあります。 社員にとっては「自分が必要とするサービスを多くの選択肢から選ぶことができる」、会社にとっては「多くのサービスを自前で準備せずに、社員に福利厚生が提供できる」という利点があります。また、福利厚生アウトソーシング会社に支払う費用はメリットの一つとして紹介した福利厚生費の費用として計上できるだけではなく、社員数に応じて費用が決定するため、概算費用が予測しやすいという経理上の優位性も存在します。

最後に

福利厚生は「導入したら終わり」ではありません。「使用状況に関係なく何年も惰性で制度が存続している」という状況を避けるために、定期的に利用状況などをモニタリングすることで、社員の利用頻度や件数などを掌握しておく必要があります。独自に制度を導入している場合は、利用頻度が少ないにもかかわらず運用コストが高い制度については見直す必要も出てくるでしょう。思い切って「止める」というのも立派な制度運用の一つです。導入した制度を廃止するのは難しいかもしれません。そのような場合、制度導入のアナウンス時に「この制度はXX年後に、継続の要否も含め見直します」といった一文をいれておくと、その制度を廃止することに対する「壁」が低くなるので、参考にしてもらえればと思います。

執筆者

アルドーニ株式会社

代表取締役 永見 昌彦

外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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