新人研修を企画するときにおさえておきたい点~元外資系人事マネージャーが語る

最近では通年採用や、海外留学からの帰国時期にあわせて秋入社のケースも増えており、年間を通じて新卒社員が入ってくる企業もあるかと思います。 そのような環境であったとしても、新卒採用を行っている企業においては、新入社員が一度に多く入社するための受け入れ準備・実施などがあるので、依然として3月~4月は人事部門にとっては忙しい時期といえます。 入社にあわせて新卒社員向けに「新人研修」を実施している企業も多いでしょう。今回は、そういった新人研修の企画に際しておさえておきたい点について述べたいと思います。

なぜ新人研修を行うのか

「行うのが当然」「毎年継続しているから」というのは、新人研修を行う理由としては成り立っていません。自社でそれなりの費用をかけて新人研修を行うのは、なぜなのかを考えたことはありますか? 考えた結果、それに対する明確かつ合理的な理由が無い、あるいは、それによってネガティブな影響が予想されるならば、そもそもの在り方を見直したほうがよいでしょう。 新人研修を行う目的は企業によって異なりますが、例えば以下のようなことがあげられます。

新人研修を行う目的の例

  • 自己責任が求められる社会人としてマインドを切り替える
  • 企業や事業内容に対する理解を深める
  • 部門をこえた横のつながり(ネットワーク)を構築する
  • ビジネスマナーなど社会人の基礎力を身につける

どうやって行うのかよりも最初に考えること

「オンラインで実施/集合研修で実施」 「テレワークあるいはリモートワークだけで完結」 「社内講師/社外講師」 「合宿/通い」 「実施期間」 といった、「どのように・どのくらい」実施するのかというテクニカルな点にこだわる、あるいは、「2泊3日の合宿で行う」ことを前提にどんな研修を行うのかを検討するといったケースも散見されます。これは本末転倒です。 新人研修を受講した社員が「どうなってほしいのか」ということを定めたうえ、それを具現化するために必要な研修プログラム(例:ビジネスマナー研修、IT基礎スキル研修、ロジカルシンキングなど)を設計することが先決です。 その結果、「社内にて対応できる方がいない専門的なスキル」であれば、社外講師に依頼することになり、「知識を習得することがメイン」であればオンライン(動画配信など)研修で実施した方がよいといったように、一定の方向性が明確になります。

フォロー研修の有無とタイミング

入社した年だけではなく、3年目~5年目くらいまでは毎年数日程度、「フォローアップ研修」として実施する企業もあります。これに関しても、実施目的は企業によって異なりますが、新卒社員の早期離職防止や、今後に向けたスキルアップのために自己キャリアを見直す機会の提示といったことを念頭に置いているようです。 所属している部門によって求められるスキルが異なるので、スキルアップよりも「自己の振り返り」に重点をおいている企業もあります。

成功させるポイント

新人研修を成功させる(実施したことによって目的を達成する)ために欠かせないポイントがあるので、それについてもふれたいと思います。

①配属部門との適切なコミュニケーション

新人研修実施後に配属された部門において、新入社員が研修で学んだ知識や習得したスキルを配属部門の業務にて活かしているのかどうか、あるいは、何らかの課題があるのかといったことを掌握するためには、配属部門が新人研修の内容を把握していることが前提となります。 そのため、課題や研修計画だけではなく、新人研修などのプログラムに対する新入社員からのフィードバックや、人事担当者の所見などを共有することが欠かせません。 これと併せて、Pulsign(パルサイン)のようなパルスサーベイの結果などを、人事部門と配属部門で共有することも有益でしょう。こういったことを継続して行うことで、新入社員がその企業にて活躍できる戦力になっていき、それを具現化するための施策としての新人研修となります。

②定期的な見直し

新人研修に対する現場部門のニーズだけではなく、世代における物の考え方や仕事・企業に求めるものは変わってきます。 そのため、新人研修のスケジュール・研修内容を毎年そのまま使い回すのではなく、定期的に見直しを行う必要があります。これも「変え続けることが是」ではなく、そもそもの目的に即した内容なのかという視点で見直し、良い点は残して、改善点はブラッシュアップさせていくことになります。 そのためにも、受講者(新入社員)だけではなく、配属部門の社員(先輩や上司など)からのフィードバックは重要です。

最後に

企業によっては、目的とそれに対する適切な研修内容を検討せずに、形式的な新人研修になっていると感じることがあります。 その結果として、時間とお金だけを費やすことになり、企業として新入社員に伝えたいことが伝わっていない、あるいは、現場部門で業務遂行に何も役に立たないということになります。 研修期間を経て「新入社員がどうなってほしいのか」といった目的から逆算して、そのためにどんな研修(+OJT)を実施すればよいのかを考えることが大事です。

 

 

執筆者

アルドーニ株式会社

代表取締役 永見 昌彦

外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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