公開日:2020.02.13

モデレーター

  • 定性調査

モデレーターとは直訳して「仲裁者」「司会者」といった意味があり、「インタビュアー」や「ファシリテーター」という言葉で呼ばれることもあります。
一般的な意味としては会議や討議の進行役といったイメージが先行する言葉ですが、
定性調査分野における意味としては単純に議論を進行させるだけではなく、対象となりうる相手に、「インタビューを行う中で調査をすること」が最大の役目でありミッションとなります。
話の進行を促すだけではなく、参加者の発言一つ一つをその場で拾い上げ、定性的観点で分析していく必要があります。
そのため司会者のスキルに長けている人というよりも、マーケティング知識・リサーチ知識を保有し、消費者行動に関する基本的な知識の豊富な人物に適正があるといえます。

 
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定性調査におけるモデレーターの業務としては、一般的に下記が挙げられます。

 
【インタビューフロー(ガイド)の作成】
インタビューフロー(ガイド)とは、インタビュー当日を円滑に進められるよう、モデレーターがガイド(メモ)として利用する資料となります。今回の調査で明らかにすべき調査課題や目的を調査主催元と相互で確認し、事前ヒアリングを経て作成します。インタビューフロー(ガイド)は一言一句事細かに書く必要はありませんが、そのフェーズにおいて検証する項目を明記し、フレームが明確であることが大切です。

【モデレーション】
前述したインタビューフロー(ガイド)を基に、対象者へ向けインタビューを進行します。調査課題や調査手法毎にポイントを抑え、有益な情報を得られるよう現場を取り仕切ることが大切です。グループインタビュー(座談会)を例に取ってみます。
グループインタビューは対象者全員が相互に刺激し合い、いかにグループダイナミクス(各集団における特性)を構成できるかという点が重要です。そのためモデレーターはグループを構成する対象者の会話を活発化させ、対象者のインサイト(顕在化していない対象者心理・ウォンツ)を引き出せるようインタビューを進行させます。
グループインタビューのモデレーションを行うコツとして、グループの梶を取り、対象者達の会話の流れを上手くコントロールできることが大事です。テーマから脱線する対象者や話し過ぎる対象者、はたまたシャイで話せない対象者などへ調査課題に沿ったアプローチを行い、集団全体を俯瞰する視点を持って議論の輪を調和させる必要があります。
また一人が重要なメッセージを発信した時に気付き、うまく拾い上げラダリング(「なぜ」「何で重要、何で大切」「どうして」などを繰り返えすインタビューテクニック)ができることも重要です。

【デブリーフィング(ラップアップ)】
消費者の思考や発言は『ナマモノ』であり、新鮮な内に調査主催元へ届ける必要があります。
記憶の新しいインタビュー終了後直ぐにモデレーターとインタビュー観覧者において相互に意見を交換することによって、グループダイナミクスや各対象者についての認識を合わせ、有益な示唆を得ることができます。
せっかくインタビューを行うのですから、デブリーフィング(ラップアップ)をしっかり行うことが大切です。
デブリーフィングはモデレーターの素養が問われます。つぶさにインタビューをしながら、並行して分析し、速報としてアウトプットできなくてはならないからです。
そのためリサーチャーやマーケターとしての見分が広いモデレーターであればあるほど、アウトプットする分析結果のクオリティも上がります。
「記録」は発言録や録音・録画データで十分に網羅ができます。対象者の発言内容をそのまま伝えるだけではなく、調査課題解決に向けたサマリーを伝えることに意味があります。
デブリーフィングは【インタビュー所感の気付きの共有→調査課題に向けた検証結果のまとめ】が主な流れとなります。まとめ方としては、模造紙やホワイトボード、付箋紙などを用いてそれぞれの気付きや意識・考えを種別や深度、重要性などの軸に置いてグルーピング(分類)していく方法などが望ましいです。のちにカスタマージャーニーを作るときなどにも有用です。

【レポート(報告書)】
事前に調査主催元の希望フレームワークをヒアリングした上でレポートを作成します。主にフォーカスすべき点はどこか、対象者毎の個票は必要かどうか配慮をした上で、作成する必要があります。その中でも「調査目的を結論付けたレポートになっているか」といった視点で作成することは最も重要です。インタビューを行う過程において様々な仮説の付随が生じます。それぞれの仮説を検証していくことは大事ではありますが、「今回の調査は何のために行っているのか」という本来の調査目的に対し、ぶれずに調査結果と考察をアウトプットすることが、モデレーターの作成するレポートとしてはふさわしいでしょう。ネクストステップに向けた考えも掲載されていると尚良いレポートといえます。

調査のテーマや手法に応じ適正は様々ではありますが、基本的にあると望ましいスキルを記載します。

<コミュニケーションスキル>
人は第一印象で「好き・嫌い」の判別をしてしまいがちです。モデレーターも人の子ですから好ましい対象者とイヤな対象者という好悪の感情が出てくるのは当然です。
しかしモデレーターは常に中立的な立場を保ち、あくまで調査の視点であらゆる対象者から情報を引き出すという、感情コントロールと対象者への興味・関心の公平化というスキルが要求されます。
実際に、心理学専攻の経歴を持ったモデレーターは業界に点在し、一線で活躍しています。

<スクラップ・アンド・ビルドの姿勢>
仮説を持たずにモデレーションを行うことは有効ではありません。
モデレーターはたくさんの仮説を持ってモデレーションに臨み、対象者の反応で仮説を検証し、棄却すべきはその場で捨てて新たな予見を構築するという「スクラップ・アンド・ビルド」をこなしていきます。
最初の仮説に固執せず、新たな仮説を作れる創造性も要求されます。

<分析スキル>
モデレーターの分析スキルは、データの解析とは違います。例えばグループインタビューに集計表はありません。
6人に質問をし、5人がAと評価しても、残り1人のBに「追求する価値があり、今回の調査課題に刺さっている」と感じれば、5人を置いて1人の評価のポテンシャルを追究しその場で検証する姿勢が大切です。
対象者の発言の背景を想定し、発言の意味を再構築しながらマーケティングのストーリーを作り上げられる分析力は非常に重要でしょう。

 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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