アンケートの調査票の作り方

初めてアンケート調査をする方は、調査票(質問紙)の設問文と選択肢をどのように作っていくべきか悩まれると思います。 インターネットアンケートでも紙アンケートでも全てのアンケート調査には調査票が必要不可欠であり、また、調査票の精度により結果データが大きく左右されます。 これが、「アンケート調査は調査票が全てだ」といわれる所以です。

調査票を作り慣れている人でも、その業界や商品など調査対象物に精通しているからこそ気づかなかったり、調査票を何度も読み返していると、不自然さにも慣れてしまい、以下の点が疎かになっている場合もあります。ここでは、アンケートの調査票の作り方と押さえるべきポイントをご紹介します。

設問数について

せっかくアンケート調査を実施するのであれば、「ついでにこれも聞いておこう、念のためにあれも聞いておこう」と考えてしまいがちですが、むやみに設問数を増やしてしまうのは問題です。

一般的に、20問前後で回答者のモチベーションが低下し始めるといわれており、回答に対する信憑性の担保が難しくなってきます。 誤回答が増えたり、設問文や選択肢をよく読まずにいい加減に回答し始める黄信号ラインだといえます。 そのため、データの品質を保つためには、20~25問程度のボリュームで実施するのが理想的です。 30問を超える設問数の場合は、回答に対するモチベーションを維持してもらうために、回答者への追加謝礼を用意することを推奨します。

学術調査では、リッカート尺度(4件法や5件法)を用いた100~200問のボリュームのアンケート調査を設計することがよくありますが、リッカート尺度での設問の場合は70問程度に抑えるのが理想的です。

回答者の途中離脱やデータの信憑性を担保するために、10分以内に回答しきれるボリュームで設計しましょう。
(参考:インターネット調査品質ガイドライン(2017年11月))

設問文について

誘導的な質問にしない

誘導的な聞き方とは、例えば、「賛成ですか。→ はい/いいえ」と聞くのは誘導的と言えます。この場合、「どう思いますか。→ 賛成/どちらともいえない/反対」という聞き方をします。「~した経験はありますか。」なども誘導にあたります。

主語を必ず入れる

設問文には主語を必ず入れましょう。

「どれくらいの頻度でお醤油を利用していますか」 この聞き方では、あなたのご家族のことなのか、あなた自身のことなのかわかりません。この場合、「あなたはどれくらいの頻度でお醤油を利用していますか」あるいは、「あなたの家族はどれくらいの頻度でお醤油を利用していますか」という聞き方をします。

設問文に「?」は使用しない

文末に「?」をつけるのは正しい文法ではありませんので、避けた方が良いでしょう。

結びを統一する

例えば、結びが「お答えください」となっていたり、「お知らせください」となっていたりすると、「何か違いがあるのか?」と勘ぐってしまい、回答に影響しかねません。回答者に余計な勘ぐりをさせないためにも、結びは統一しましょう。

専門用語を使用しない

例えば、「RTD」「CV」「SM」など。お客様が専門用語だと思われなくても、一般の方にはわかりにくい場合があります。マニア、専門家が対象な場合は使用したほうがよい場合もあります。

略語を使用しない

「スマホ」、「コンビニ」など普段略語を使用している場合でも、アンケートでは必ず正式名称「スマートフォン」、「コンビニエンスストア」に直します。

人によって違う解釈にならないような設問文を作る ※選択肢も同様

「現在」「ふだん」「最近」などの単語は、人により捉え方が異るため、時期や期間などを統一して聞かなくてはならない場合は使用を避けます。この場合、「最近1週間以内」など、誰が読んでも同じ解釈となるような言葉を選びます。

差別用語を使用しない

老人・盲(めくら)など差別的用語を使用しないよう注意しましょう。

過度な敬語・謙譲語を使用しない

例えば、「あなたの年収をお答えいただけますと幸いです」という言い方は不自然です。「あなたの年収をお知らせください」という言い方にします。

1つの設問に2つの内容を入れない

「AやBはしますか。」という聞き方はダブルバーレル質問といって、一つの質問文で二つもしくはそれ以上のことを同時に聞いている質問のことを指し、焦点が定まらないNG質問だといわれています。

選択肢について

格付け法(レイティング・スケール)は5段階までを推奨します

場合によっては7段階を使用しますが、それ以上(9~)は回答区分があいまいになるため避けた方が良いです。

人によって違う解釈にならないような選択肢を作る ※設問文も同様

「現在」「ふだん」「最近」などの単語は、人により捉え方が異るため、時期や期間などを統一して聞かなくてはならない場合は使用を避けます。この場合、「最近1週間以内」など、誰が読んでも同じ解釈となるような言葉を選びます。

選択肢を提示する順序による偏りが生じる恐れがある場合は、選択肢にローテーションを掛けて提示する

オーダーバイアスを避けるためです。
順序バイアス・・・リストの最初のほうが選ばれやすい傾向があります。
位置バイアス・・・数字(量・価格)の場合、中央が多くなる傾向があります。
※インターネットアンケートの場合、システム機能でローテーションやランダマイズの設定が可能です。

SA(シングルアンサー)の場合、選択肢の内容がお互いに排反で、重複しない

SAの場合、同時に2つに該当することがないように選択肢を作ります。

【悪い例】

Q.あなたは●●を最近いつ購入しましたか。購入時期をお知らせください。

1.1ヶ月以内
2.2ヶ月以内
3.3ヶ月以内
4.3ヶ月以上購入していない

上記の選択肢では「1.1ヶ月以内」は「2.2ヶ月以内」の中に含まれますので、どちらにも該当するケースがありえますので、互いに排反となっていません。

この場合は、以下のように選択肢を作ります。

1.1ヶ月未満
2.1ヶ月以上2ヶ月未満
3.2ヶ月以上3ヶ月未満
4.3ヶ月以上購入していない

なるべく多くの対象者にぴったりした回答が選べるように選択肢を作る

なるべく多くの対象者にぴったりした回答が選べるように選択肢を作り、また「その他」に落ちる回答が少なくなるように作ります。

個人情報にふれる質問の選択肢は範囲で示す等、最小限に抑える

生年月日より年齢、年収は範囲で示す など
※具体的に聞きすぎると回答離脱を招きます。

選択肢は長文にしない

選択肢はできるだけ短く明確にします。
長文になると、読むのが面倒になる、長文の選択肢が目につきやすく、それに回答が集中する、などのリスクがあります。 例えば、「1.スーパーまで食材を買いに行くことを考えると、料理を作ることをあきらめてしまう」という選択肢は長過ぎます。長くても20文字くらいに収めましょう。30文字以上になると長く感じます。

対象の製品だけでなく、ダミーの選択肢を入れる

なりすましを排除する目的で、ダミー選択肢を入れることもあります。 特に、競合製品やシェアの高い製品などがあればダミーとして必ず入れます。

数値化できるものはできるだけ、数値化する

例えば、「よくある」「たまにある」などは、人の主観によって捉え方が異なるため、「毎日」「週に3~4回」「月に1回」など、できるだけ明確にします。

選択肢は自分の主観で作成せず、いろんな人を想定して幅広く選択肢をつくる

【例】

Q.あなたの趣味をお答えください。

1.音楽
2.囲碁・将棋
3.ドライブ
4.プラモデル
5.麻雀・パチンコ
6.釣り
7.ゴルフ
8.スノーボード・スキー

上記の選択肢は男性的な項目のみとなっています。女性にも聴取する場合は、女性的なものも含む必要があります。

選択肢は、ついつい自分の経験を中心に記載しがちですが、代表的な選択肢は網羅することが必要です。

頻度の選択肢の場合は高いもの ⇒ 低いものの順

頻度に関する設問の場合、通常、選択肢は頻度の高いもの → 低いもの、という順序で並べます。

【例】

1.毎日
2.週に5~6回
3.週に3~4回
4.週に1~2回
5.週に1回未満

金額の選択肢は小さいもの ⇒ 大きいものの順

金額に関する設問の場合、通常、選択肢は金額の低いもの → 高いもの、という順序で並べます。

【例】

1.200万円未満
2.200万円~500万円未満
3.500万円~800万円未満
4.800万円以上

設問の順番について

論理的な順序で

再生(純粋想起)→再認(選択式)
認知→利用→評価→今後の利用意向
所有有無→台数→最新購入年 など

時間の流れを踏まえて

過去の状態を聞く→現在の状態を聞く→将来の状態を聞く(またはその逆)

簡単に答えやすい質問を先に

事実を聞く→意識を聞く
※身近なことから先に聞くようにする。

総合評価と個別評価はケースバイケース

評価が好き嫌いなど感性に関わる設問の場合は、総合評価を先に聞く。
良い悪いなど客観的評価を求める場合は、個別評価を先に聞く。

重要な質問はできるだけ前に

回答を求める対象者になるかどうかを確認する質問を先に聞く。
質問数が多いときは優先度が高いものを先に聞く。

対象者の特性は後に

年齢、性別、などを先に聞き、年収、学歴、地位などは後にする。

純粋想起FAが先

一連の設問の中に、純粋想起(非助成・無暗示)設問、助成想起設問がある場合は、純粋想起を聞いてから、その後、助成想起を聞くのが大原則です。また、純粋想起設問がある場合は、それまでの設問で意図せずに助成されていないか、要注意です。

実態質問は、最近のことから聞くのが原則

一連の設問の中に、「現時点の事実(実態)」を聞く設問と、「ふだん・いつも(常態)」を聞く設問がある場合は、実態を聞いてから、常態を聞きます。

【例】

  現在使用しているもの 3ヵ月以内に使用したことがあるもの 今までに使用したことがあるもの
1 商品A 商品A 商品A
2 商品B 商品B 商品B
3 商品C 商品C 商品C
4 商品D 商品D 商品D
5 商品E 商品E 商品E

ただし、絞り込む場合には逆の順序となる

【例】

  今までに使用したことがあるもの 3ヵ月以内に使用したことがあるもの 現在使用しているもの
1 商品A 商品A 商品A
2 商品B 商品B 商品B
3 商品C 商品C 商品C
4 商品D 商品D 商品D
5 商品E 商品E 商品E

大きなカテゴリ ⇒ 細かいカテゴリの順番

大きなカテゴリーから絞り込んでいく設問では、大きなカテゴリー → 細かいカテゴリーの順序で並べます。

【例】

Q1-1.普段お飲みの飲料を全てお知らせください。
↓ (炭酸飲料が選ばれた場合)
Q1-2.炭酸飲料の中で・・・
↓ (500mlペットボトルの炭酸飲料が選ばれた場合)
Q1-3.500mlペットボトルの炭酸飲料の中で・・・

上記の内容を資料としてダウンロードしていただけます(PDF)。
アンケート調査がはじめての方にもわかりやすい内容となっておりますので、ぜひお手元に置いてご活用ください。

アンケート調査を成功させるコツ アンケート調査を成功させるコツ