2024.07.16
シンガポールで意外な日本製品がヒット!? ~ジョブ理論で見えてくる消費者の行動心理~
東南アジアの中心都市として発展を続けるシンガポール。多民族国家であるシンガポールは、文化的な多様性だけでなく、経済的な豊かさも実現しており、一人当たりのGDPは……
公開日:2024.11.05
シニア市場は、内閣府が公表している『高齢化の現状と将来像』によると、日本の65歳以上の人口は、昭和25年時では総人口の5%の割合でしたが、令和4年10月1日では29%へ増えています。また、2030年には30%を超え、2070年には38.7%になるのではないかという、高齢化の推移を予想しています。この「少子高齢化が進む」という予測から、消費購買者として注目度が高まっており、その『シニア』に対する理解が重要になってきます。
もし、『シニア』に対する理解、つまり認識が誤っている場合、ニーズを取り違え、うまく商品やサービスが売れない可能性があります。また、『シニア』を理解する上で、そもそも『シニア』という言葉に対して、一律な定義が難しく、多様な側面があります。
そこで本記事では、『シニア』の理解を進めるため、調査データからみたシニアの特性や調査の注意点について紹介していきます。この記事が読者の皆さまにとって、シニア層への理解を深める一助となることを願っています。
※弊社として「こう定義づけています」ということではございませんので、予めご了承ください。
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そもそも「シニア」とは何を指すのでしょうか。
一般的には、WHO(世界保健機関)の定義に基づき65歳以上の人々をシニアとしておりますが、これは一つの基準に過ぎません。特に、シニアという概念は年齢だけでは語り尽くせない多様な特性を含んでいます。例えば、65歳であっても現役で働いていたり、趣味や活動に積極的な人も多くいたりと、必ずしも「高齢者」というイメージと一致するわけではありません。
また、シニアという呼び方自体に対して抵抗感を持つ人もいます。高齢者であるというラベルを受け入れたくない方がいらっしゃることや、彼らの感覚に寄り添った理解が重要です。このように、シニア層の捉え方は、視点によって大きく異なるため、一般的な定義に囚われない柔軟なアプローチが求められると考えます。
参考サイト:高齢者 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
シニアという言葉の捉え方は、見る人の立場や状況によって多様です。そのため、「誰からみるか?」「どこからみるか?」という視点が重要です。まずは、「誰から見るか」という視点から考えてみましょう。
シニアという言葉に対する捉え方は、見る人の年齢によっても異なります。
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例えば上図の調査では、年齢別にシニアを判断する年齢について折れ線グラフで表現したものとなり、これを見ると、20代では62.7歳、60-64歳では65.2歳、65-69歳では68.0歳と、やや開きがそれぞれあり、認識に違いがあるのがわかります。このように、視点の違いが「シニア」の定義を曖昧にしています。
また、シニアの定義は「どこからみるか」でも大きく変わります。
目的や機関 | 高齢者としての年齢 |
---|---|
世界保健機関(WHO) | 65歳以上 |
改正道路交通法 | 70歳以上 |
高齢者を医療の確保に関する法律 | 65歳以上を高齢者とした上で、65-74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と分けて定義しています。 |
参考サイト:高齢者 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
例えば上表は、「高齢者」としての年齢の定義となり、世界保健機関(WHO)では、65歳以上としておりますが、改正道路交通法では70歳以上としており、高齢者運転標識の表示を課しています。このように、機関や目的などによって基準が異なります。こうした違いが、シニアの定義をさらに複雑にしています。
シニアと呼ばれることへのイメージも重要な視点です。
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表 ポジティブだと感じる言葉(年齢別)
シニア シルバー 高齢者 老人 年寄り じいさん
ばあさんどれとも言えない 20歳代 37% 18% 3% 3% 0% 21% 18% 30歳代 68% 10% 0% 0% 2% 13% 7% 40歳代 63% 9% 1% 0% 0% 7% 19% 50歳代 72% 6% 2% 0% 1% 5% 14% 60歳代 69% 5% 4% 2% 1% 1% 18% 70歳代 65% 10% 9% 1% 3% 1% 11% 80歳代 45% 11% 20% 3% 3% 3% 15%
上表は、「ポジティブだと感じる言葉」について、年代別でまとめた表となり、「シニア」という言葉に対して、60歳代から減少しており、80歳代では45%と、半分を切っております。また、「高齢者」という言葉に対しては、異なった傾向になっており、全体的に割合は少ないですが、40歳代から割合が増え、80歳代では20%となっております。
ここで一つ視点を変えて、『若者』の定義についても考えてみましょう。
まずは、以下結果をご覧ください。
順位 | 年齢 | 回答数(回答率) |
---|---|---|
第1位 | 25歳まで | 87人(21.6%) |
第2位 | 20歳まで | 58人(14.4%) |
第3位 | 22歳まで | 43人(10.7%) |
第4位 | 24歳まで | 37人(9.2%) |
第5位 | 29歳まで | 34人(8.5%) |
参考元:「若者」って何歳までを指す言葉? 大学生の回答で1番多かったのは「◯◯歳」, マイナビ
上表から、『若者』の定義が曖昧なことがわかるかと思います。「第1位の25歳まで」と「第2位の20歳まで」の割合を足しても、36%と過半数は超えませんし、「第3位の22歳まで」を含めても46.7%と、やはり超えません。そのため、「誰に聞くか」によって捉え方が変わり、『シニア』にも共通することでもありますが、どの視点で見たかによって定義が異なります。
例えば、若者の中でも大学生にフォーカスした際、年齢は”若い”といっても過言ではないと思いますが、”生活”という部分では、以下のように「お出かけタイプ」を6つの異なるタイプに分けることもできます。
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<6つのお出かけタイプ>
① みんなでワイワイお出かけさん 場所よりも人連れだし超お出かけ派(13%)
② 楽しい事なら即お出かけさん 広く浅くのお出かけ超前向き派(10%)
③ 自分磨きでお出かけさん 自己研鑽型のお出かけ前向き派(10%)
④ 趣味のことならお出かけさん 趣味一直線の特化型お出かけ派(15%)
⑤ 用事があればお出かけさん 効率重視のお出かけ消極派(15%)
⑥ ゴロゴロ家好きさん 家滞在志向のお出かけ後ろ向き派(10%)
※その他、何をするにも興味がない「脱力志向」のタイプ(全体の27%)は、何事にも無関心で特徴的な行動がないため分析対象外としております。
引用元:タイプ別 若者のお出かけマインドとは?,小田急エージェンシー
こうした多様性を考慮すると、『若者』も『シニア』も単純に一括りに定義するのは難しいと言えるでしょう。
シニア世代に対する固定観念として、「シニアはインターネットを使わない」といった認識があると思います。しかし、実際調査をしてみると、コロナをきっかけにシニア世代のPCやスマホの利用が進んでいます。そのため、固定観念を見直す必要があると考えており、ここでは、それぞれの調査結果をもとに、どんな情報を得られたかについて、解説をしていきます。
当社で行った「今年(2020年)に入ってからの利用頻度」に関する調査の結果が下図となります。
この結果から、関東地方の女性で「利用頻度が増えた(計)」と答えた人が約35%でした。さらに、関西地方の女性においては、スマートフォンの利用頻度が特に増加しており、約40%でした。このように、これまでネット利用に消極的であったシニア世代も、積極的にデジタル機器を利用するような傾向が見られます。
※利用頻度が増えた(計)は、「とても増えた」と「やや増えた」の合計
また、「新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令後に増えた行動」に関する調査の結果が下図となります。
この結果から、男女間での差が顕著に見られる点と女性がキャッシュレス決済やネットでの買い物、宅配などを積極的に利用している点がわかります。
また、「新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令後に増えた「オンラインサービス」」に関する調査の結果が下図となります。
この結果から、特に70代以上の女性において、インターネットを利用することへの積極性が増しております。そのため、コロナ禍により、対面でのコミュニケーションや外出が制限されたことで、シニア世代もネットの必要に迫られ、オンラインを活用するようになったという背景が考えられます。その結果、ネットを使うことがシニア世代の新しい生活スタイルの一部として定着しつつあるのでしょう。
SNSの利用状況についても、見ていきましょう。
この結果から、SNSの利用状況として、シニアの境は60代にあることが分かります。また、「SNSの利用目的」に関する調査結果が下図となります。
この結果からは、Twitter(現:X)とInstagramは、シニアの境として60代であることがわかり、Facebookではあまりそういった差は見られませんでした。これは、Facebookの利用目的のメインとして「友人・知人の状況を知るため」に使われていることが一つ要因としてあるかもしれません。また、YouTubeの利用目的については、シニア層が「SNS」としてではなく、主に情報収集や趣味としての動画視聴ツールとして捉えている傾向があることがわかります。
YouTubeを活用して、趣味や関心のある分野の情報を得たり、リラックスのために動画を楽しんだりする使い方が一般的のようです。そのため、シニアの場合、YouTubeはSNSという捉え方はしない方が良いと考えられます。
これらの調査結果から、シニア世代にとってもインターネットやSNSの利用は当たり前のものになりつつあります。特に女性の方がITへの抵抗感が少なくなったように見受けられ、キャッシュレス決済やオンラインショッピングの利用も積極的であるという特徴が見られました。
このような変化は、従来の「シニア=ネットを使わない」という固定観念を見直すべきであることを示唆していると考えます。また、インターネットを利用するシニアが増加することで、これまでと異なる新しいニーズが生まれてきていると考えており、シニア向けのサービスや商品開発においても、『シニアのITリテラシーの向上』を考慮した設計が必要となってくるでしょう。
このような観点から、シニア層をターゲットとするマーケティングやサービス提供においては、デジタル技術を活用したアプローチがますます重要になると考えられます。
シニアのライフスタイルにおいても健康や流行、ITリテラシーに関する男女差が顕著に見られます。
まず、健康についてです。「健康について意識していること」に関する調査結果が下図となります。
この結果から、女性は60代を境に健康意識が高まる傾向があり、男性と比べてより顕著にその傾向が見られます。男性よりも女性の方がもともと健康に対する意識が高いことが影響していると考えられます。続いて、「健康について行動していること」に関する調査結果が下図となります。
この結果から、行動に関しても男女で違いがあり、男性は70代で行動パターンが変化し、70代になると健康維持への取り組みが増加する傾向が見られます。一方、女性は60代を境に急激に健康に対する行動が増加し、食生活の改善や運動習慣の導入など、積極的に取り組む姿勢が見られます。このような男女間の健康に対する意識と行動の違いは、押さえておくべきポイントになります。
次に、流行についてです。「流行についてあてはまるもの」に関する調査結果が下図となります。
この結果から、男女間でやや傾向に違いが見られました。50代を境に広告に対する影響度が低くなる一方で、気になっていることは自分で調べる習慣を持つようになる傾向が見られました。この傾向は、特に女性の方で顕著に見られました。そのため、シニアに向けた広告や宣伝において、男女の差も考慮して企画を作成する必要があると言えそうです。
続いて、スマホのリテラシーについて見ていきましょう。「スマホでできること」に関する調査結果が下図となります。
この結果から、「スマホのリテラシー」においても男女で違いがあることが分かります。男性は60代、女性は50代を境に「スマホのリテラシー」に差が生じ、スマホの使いこなし度が低下する傾向にあります。憶測として、要因はさまざま考えられますが、例えば、仕事をしている男性と専業主婦という分類で考えると、『仕事で使用する範囲』と『家庭のみで使用する範囲』で異なる可能性があり、そういった要因が影響しているかもしれません。
これらの結果から、「ネットリテラシーが低い、情報感度が低い、健康意識が高い」というのを当たり前として、一括りに「シニア」と定義することは適切ではなく、シニア世代の多様性を考慮する必要があることが示唆されます。
シニアの定義は、視点によって大きく変わることがあります。まず、コロナ禍を経てシニア世代のネット利用が増加し、情報の取り方が変化しました。以前はネットに対して抵抗感があったシニア世代も、今では積極的に情報をオンラインで得るようになりつつあります。特に女性は男性よりもITに対して積極的であり、キャッシュレス決済やオンラインショッピングなどを活用する姿勢が強まっています。
さらに、健康に対する意識や行動、スマホのリテラシーに関しても男女で明確な年齢差があります。女性は60代を境により健康意識が高まり、行動に移すことが多く見られる一方で、男性は70代から健康維持に積極的になる傾向があります。また、スマホのリテラシーに関しても、男性は60代、女性は50代以降で低下する傾向があります。また、流行感度という視点でも年齢による境界線が見られます。特に50代を境に、広告に対する影響度が低下し、自主的に情報を収集する姿勢が強まることがわかりました。そして、これは女性が、特に顕著でした。
このように、「どこでみるか」によってシニアの定義は大きく変わり、それに応じた適切なアプローチが求められると考えることができます。シニア世代の多様性を理解し、適切な視点から定義を行うことが、より効果的なマーケティング戦略の策定につながると考えられます。
シニア層への調査を行う際には、いくつかの重要な留意点があります。まず、アンケートモニターであるという前提があるので、「インターネットを全く使わない人はいない」ということが前提になっていることはご理解いただく必要があります。
次に、調査対象となるシニアがどのような特性を持つのか、その定義を明確にすることが重要です。シニアと一口に言っても、年齢、生活スタイル、健康状態などによって大きく異なります。『シニア』と一括りにするのではなく、どのようなシニアを対象とするのかを具体的に定めることで、より的確なデータを得ることができるようになります。
また、シニアや高齢者と呼ばれることに対してネガティブな反応を示す人がいる点にも注意が必要です。そのため、調査における言葉遣いや質問の仕方には細心の配慮が求められます。調査対象者に敬意を持って接し、適切な呼称を使用することが、調査への協力を得るために重要です。
さらに、シニア層は視力、聴覚、運動能力といった身体的な能力において個人差が大きいことも考慮する必要があります。これらの違いに対応するため、アンケートの文字サイズを大きくする、質問を簡潔にするなど、調査環境を整える工夫が求められます。調査を円滑に進めるためには、こうした身体的な制約に配慮した設計が不可欠です。
一般的なシニアとは何なのか? 定義はどうなのか? シニアのライフスタイルは? など、『シニア』に関して、解説してきました。これらから、シニアを一括りにすることは避けるべきだということがわかってきました。
若者の定義が多様であるように、シニアもまた個々の特徴やライフスタイルによって異なります。例えば、「シニア向け」と言うだけではなく、「どのようなシニア向けなのか」を明確にすることで、共感を得やすくなります。
世代についても同様です。Z世代やミレニアル世代といった世代ごとの定義は存在しますが、それらの中には多様な価値観を持つ人々が含まれており、一括りにして捉えることは困難です。シニアについても同様で、年齢やライフスタイル、価値観などの多様性を考慮することが、より効果的な調査や商品・サービスの提供につながります。
シニア層を対象とする際には、その多様性を尊重し、調査対象の定義を明確にしつつ、それぞれの状況に合わせた調査方法を取り入れることが重要です。これにより、シニア層の実態に即したデータを収集することが可能となり、より正確で有用なインサイトを得ることができるでしょう。
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