
2019.12.05
重回帰分析とは
重回帰分析とは・・・ 購入意向に影響を与える要因を知りたい・・・ このようなケースで有効な手法が、重回帰分析です。例えば、購入意向という一つの目的に……
公開日:2025.06.24
ビジネスにおける意思決定やマーケティング施策の根拠として、調査データは非常に重要な役割を果たします。
しかし、データを見誤ることで、誤った因果関係を信じてしまうリスクもあります。その代表例が「交絡(こうらく)」です。
この記事では、「交絡とは何か?」という基本から、ビジネスシーンでありがちな錯覚のしくみ、交絡を避けるための調査設計のポイントまでを分かりやすく解説します。
調査初心者はもちろん、調査結果を正しく読み解きたい中級者にも役立つ内容となっています。
交絡(こうらく)とは、本当の原因ではないものを原因だと勘違いしてしまう現象です。
一見すると「AがBを引き起こしているように見える」データでも、実は、AとBの両方に影響を与えている“第三の要因”が裏に潜んでいることがあります。
たとえば、次のようなデータを見たとき、あなたはどう感じるでしょうか?
この数字だけを見ると、「運動すると心疾患のリスクが高まるのでは?」と思ってしまうかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか?
ここで重要になるのが「年齢」という要素です。
高齢になると、健康維持のために運動を始める人が多くなります。
同時に、年齢が上がるにつれて心疾患のリスクも自然と高くなる傾向があります。
つまり、「運動」と「心疾患」の間に直接的な関係がなくても、年齢という第3の要因の影響によって、両者に関連があるように見えてしまうのです。
このように、原因と結果の両方に影響を及ぼす要因を「交絡因子」と呼びます。
交絡因子が入り込むと、まったく無関係な2つの項目の間に、見せかけの因果関係が生まれてしまいます。
交絡は、バイアス(bias)の一種として位置づけられています。
特に疫学や統計学の分野では、交絡バイアス(confounding bias)と呼ばれ、体系的な分類の中に含まれています。
バイアスとは、調査や分析結果が、真の値や関係性から体系的にずれてしまうことを指します。
これは偶然の誤差ではなく、調査の設計・実施・測定の過程で起こる偏りによるものです。
バイアスにはさまざまな種類があり、交絡もそのひとつとして位置づけられます。
ここでは代表的なバイアスを比較してみましょう。
バイアスの種類 | 定義 |
---|---|
交絡バイアス | 第3の因子が介在し、見かけ上の因果関係を生む |
選択バイアス | 調査対象の選定に偏りがあり、標本が母集団を代表しない |
情報バイアス | 測定や回答、記録などの不正確さによってデータに偏りが生じる |
こうした分類からも分かるように、交絡バイアスは、単なる「データの偏り」ではなく、因果構造そのものに深く関わる誤りである点が特徴的です。
選択バイアスや情報バイアスは、主に「誰を対象に調査したか」「どのように情報を得たか」に起因する調査設計や測定の精度の問題に分類されます。
これに対して、交絡バイアスは、Aという要因がBに影響を与えたように“見える”が、実際にはCという別の要因がAとBの両方に影響していた、という因果推論の誤りを引き起こします。
このため、交絡バイアスを放置すると、施策の評価や意思決定が根本から誤った方向へと導かれてしまうリスクがあります。
とくにマーケティングリサーチや医療研究など、因果関係の正確な理解が求められる場面においては、交絡因子を見極め、適切にコントロールする設計・分析が極めて重要です。
因果構造に介入するバイアスであるがゆえに、交絡バイアスは他のバイアスとは性質も対応策も異なる、より慎重な取り扱いが求められるバイアスといえます。
交絡は学術研究に限らず、日常のビジネス判断でも頻繁に起こりうる錯覚です。
たとえば、ある商品の広告を出した直後に売上が伸びた場合、多くの人は「広告が売上に貢献した」と考えがちです。
しかし、広告出稿のタイミングが繁忙期(季節的需要のピーク)だったとしたらどうでしょうか?
繁忙期という時期的な要因は、広告出稿の判断(原因)にも、売上の伸び(結果)にも影響する可能性があります。
このように、原因と結果の両方に影響を与える「時期」という交絡因子が介在することで、「広告 → 売上」という見せかけの因果関係が成立してしまうのです。
顧客属性や時期などの交絡因子を考慮せずに判断すると、誤ったマーケティング戦略につながるリスクがあります。
したがって、表面的なデータの因果関係に飛びつかず、「他に影響している要因はないか?」を常に検討する視点が重要です。
交絡やバイアスを避けるためには、調査設計の段階で以下の点に留意する必要があります。
交絡は、一見すると確かに見える因果関係を、見せかけにすぎないものへと変えてしまう力を持っています。
そしてそれは、バイアスの一種として、調査や意思決定の精度を大きく左右します。
調査設計の段階で交絡やバイアスの可能性を丁寧に検討することが、信頼できる分析結果と、正しい施策判断への第一歩となります。
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