公開日:2023.04.19

【顧客満足度調査】医療機関受診者の満足度を上げるためのアンケートとは?

  • 顧客満足度

自院が受診者やその家族からどのように評価されているのかを知る方法として顧客満足度調査(以下CS調査)は非常に有効です。CS調査は、その目的によって、あるいは受診者かその家族か等の調査の対象によっても質問内容が異なります。ここでは、予防接種、健康診断、診察、入院など、様々な目的で医療機関を訪れる受診者の方を対象として実施する顧客満足度調査のテンプレートについて解説しています。

この調査を行うときのターゲット は以下の方々を想定しています。

直近の1年間、該当の医療機関で予防接種、健康診断、診察、入院などの医療行為を受けた方を対象とした構成となっています。また、受診者の親族など患者のサポートをされている方が、患者ご本人の代理として回答されるケースにも対応しています。

 
また、調査の目的や実施時の注意点、アンケート項目設定時のポイント、実施の流れ、調査結果の活用方法についても解説しています。解説したテンプレートは無料でダウンロードできます。
 

 
 

CS調査の重要性と目的:医療機関運営に必要な顧客満足度の向上

CS調査とは、自院がどのように受診者やその家族などに評価されているのかを知るための調査です。また医療機関としての信頼性、患者およびその家族などとの関係性の強さも知ることができます。CS調査の最終的な目的は、現在および今後の自院の健全な運営、医療機関としての発展に向けた手段を見出すことです。

医療機関に必要な顧客満足度

医療機関にとっての顧客満足度は、患者の治療成果により評価されるのが基本です。そして、初診の受付から治療の終わりまでに関わる手順の円滑さ、医師を含めたスタッフの対応、さらに看護をする人への配慮の適切さも、医療機関の満足度評価に関わってきます。継続的に地域の健康管理施設としての役割を果たすためには、健全な医療機関の経営を基本とした医療サービスの提供が必須です。そのため患者やその関係者が納得できる医療の提供、顧客満足度の充実が必要です。ここでは、健全な医療機関運営に必要な顧客満足度を向上する手立ての確認と発見を目的としています。
 
 

アンケート項目を設計するときの注意点

調査目的を明確にする

顧客満足度の調査においては、「どのような人」が、「どのような症状」で、「どのような医療機関」を利用するのかなど、調査の目的をどこに置くのかを明確にすることが重要です。ケガや病気は時と場所を選ばずに起こります。また通院で診察、入院で治療を受ける人など、医療機関で治療を受ける環境によっても満足度の感覚に差が見られます。さらに、医師のアドバイスを受けた家族が患者を見守るなど、高齢者の増加に伴い治療のサポートが必要になる場面も想定されます。医療機関がどこまで看護をする人をサポートできるのかなど、新たな課題も生まれています。そのため、明確な調査目的の表現が重要になっています。

調査対象を明確にする

調査の目的によって、調査対象とする顧客層(受診者、看護関係者など)が変わってきます。予防接種、健康診断、診察、入院など、医療機関を訪れる目的は様々です。また満足度の対象は医療機関全体なのか、診療科ごとの評価なのか、医師やスタッフの対応なのかなど、何についての顧客満足度なのかを明確にする必要があります。また受診者が安心して診療を受けることができるような付き添いなど、新しい環境づくりも重要になっています。受診者の事情が多様化している今日、調査対象の明確化がより重要となっています。

医療機関を利用する目的を踏まえた項目設計

受診者に共通する満足度の評価事項としては治療実績、診療に対する信頼と安心感、受付から会計までの様々な手続などの快適性、医師やスタッフの対応などがあげられます。どのような人、どのような診療プロセスに焦点を当てるのかなど、調査目的により項目設定は変化します。調査目的は何か、さらに具体的な評価場面が想定できるような項目設計が必要になります。

アンケート項目は、回答者が回答しやすい順番となるようにする

CS調査では、起承転結の一連の流れがあります。ここでの「起」はどのような目的で医療機関を訪れたのか、その医療機関をどのようにして見つけたのかという目的と認知、「承」はどのような診療科で、誰と医療機関を訪れたのかという受診状況、「転」はその医療機関で診療を受けると決めた意思決定行動、続いて「結」の実際に診療を受けた医療機関の「満足度評価」とつながって行きます。

適切な回答方式(単一回答、複数回答、自由回答)を選択する

単純集計、属性クロス集計、質問間クロス集計などの分析方法を考慮した、適切な回答方式を選択します。

・適切な集計方法を選択する

分析に応じて集計・分析軸を設定します。

第三者によるアンケート項目と調査票を確認する

関係メンバー以外の社内の方に、調査票全体を客観的に検証してもらう必要があります。回答者が回答しやすい表現になっているのか、その確認が大切です。
 
 

実施する流れ

CS調査の実施は、次のような流れで進めるのが基本です。

① 目的と検証課題の想定
② 目的に対応する回答者の属性、回収目標数を決定
③ 回答者のサンプリング、リスト整理
④ アンケート項目の設計
⑤ アンケート項目にそった集計方法、分析方法を決定
⑥ 調査実施、集計作業
⑦ 調査結果の分析および報告書作成

 
 

調査結果の活用方法

医療機関の顧客満足度を聞くことで、自院の強みと弱み、現在とこれからの医療機関としてのあり方も知る機会となります。アンケート調査の一連の流れにそって、活用方法を例示します。

目的

生活者が医療機関へ行く目的は、健常者の健康管理、ケガや病気を抱えている人の治療のためと大きく別れます。健常者とケガ人や病人とでは、医療機関に対する満足度の感じ方に違いが生じることがあります。そのため、ここでは来院の目的を明確にします。

認知

受診者が医療機関を訪ねる目的は様々です。どのような経路で自院を知ったのか、その目的別に見た結果から、自院の情報発信効果を検証できます。HPなど公式サイト、医療機関紹介サイトを活用した広告宣伝、公的な医療情報の広報活動などを含め、自院の発信情報の内容と方法を見直す契機ともなります。

診療の状況

来院者の認知経路と目的別に、受診状況を知ることができます。また同行者の様子なども合わせ、医療機関として想定している来院者層となっているか、その結果を具体的に示してくれます。

医療機関の選定(意思決定行動)

どのような目的で自院を選んだのか、その選んだ理由を尋ねることで、受診者が求める医療機関のイメージが確認できます。そのイメージと自院の現状との比較が、医療機関運営の強化および改善すべき要件の発見へとつながります。その発見は、地域の医療機関としての役割を充実させ、健全な経営を進化させる原動力として期待できます。

顧客満足度評価

現状と今後について、優先的に改善すべき受診者の評価ポイントを知ることができます。また満足度が低い項目は、診療目的別に見た受診者の潜在ニーズも表している可能性があります。さらに受診者の診療目的と満足度の相関を見ることで、受診者が求める医療機関としてのあるべき姿、発展の方向性を知る機会となります。また、かかりつけ医として関係を定着させ、新しい受診者を誘導する効果も期待できます。
 
 

テンプレートの解説

ここでは、医療機関の「総合的な顧客満足度を知るためのテンプレート」を紹介します。設問は、起承転結の流れにそって構成しています。
 
※「当院」の部分に該当の医療機関名等を当てはめます。

【目的と認知】(1)来院目的
Q1.「当院」に来院した目的は何でしたか。(お答えはいくつでも)

1.予防接種
2.健康診断
3.診療(初診)
4.診療(再診)
5.入院
6.その他(          )

 
この設問では、健康管理を目的とするのか、傷病の治療のためかといった来院の目的を聞きます。
 
 

【目的と認知】(2)認知
Q2.「当院」はどこで知りましたか。(お答えはひとつ)

1.Webの医療機関紹介サイト(自治体など公共サイトを含む)
2.健康関連雑誌
3.街中・近隣の看板
4.ネットで検索
5.医療機関のホームページ
6.家族の紹介
7.友人・知人の紹介
8.かかりつけ医の紹介
9.テレビ・ラジオの番組
10.その他(          )

 
この設問では、「自院」の情報に触れた主な場面はどこか、認知経路について聞きます。
 
 

【診療の状況】(1)来院回数
Q3.「当院」の来院回数を教えてください。

(   )回

 
この設問では、診療を受けた医療機関の来院回数について聞きます。来院回数と満足度等の相関関係の検証の意味合いがあります。
 
 

【診療の状況】(2)受診した診療科
Q4.どの診療科で受診しましたか。(お答えはいくつでも)

1.内科
2.循環器内科
3.心療内科
4.総合診療科
5.小児科
6.産婦人科
7.整形外科
8.脳神経外科
9.歯科
10.眼科
11.皮膚科
12.リハビリテーション科
13.耳鼻咽喉科
14.その他(          )

 
この設問では、受診した診療科を聞きます。受診した診療科の種類により満足度等に違いがみられるのかどうか、検証の意味合いがあります。
 
 

【診療の状況】(3)同行者
Q5.診療の同行者は誰でしたか。(お答えはひとつ)

1.本人ひとり
2.配偶者が同行
3.親が同行
4.子供など親族が同行
5.その他(          )

 
この設問では、付き添いを必要とする人の状況を聞きます。診療科ごとでの偏りなど、診療者へのサポート対策の必要性の有無を確認するための設問です。
 
 

【意思決定】医療機関の選定
Q6.「当院」を選定した理由を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.地元の医療機関なので安心
2.総合医療機関なので安心
3.名医と評判の医師がいる
4.診療体験者の評判のよさ
5.在宅診療、高齢者医療など地域医療への貢献姿勢
6.複数の診療科の受診ができる
7.先進医療に対応
8.医療機関の受付や待合室の雰囲気のよさ
9.医療機関スタッフの対応のよさ
10.自宅や勤務先に近い
11.緊急搬送されたため
12.即時入院の必要があった
13.その他(          )

 
この設問では、「自院」を選んだ理由を聞きます。地域の医療機関として信頼感や期待などを含む「自院」の印象を知るためです。
 
 

【重視点】(1)外来・入院共通
Q7.「当院」を選ぶ際に重視した点を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.受付・事務スタッフの対応の丁寧さ
2.看護スタッフの対応の丁寧さ
4.医師・看護師への相談のしやすさ
5.病状や痛みなど精神的なケアと配慮
6.医師・看護師・職員間の連携
7.医師の診断や処置の信頼感
8.診療・治療実績
9.受付から診療(予防接種、健康診断を含む)までの所要時間
10.診療から会計までの時間(予防接種、健康診断を含む)までの所要時間
11.診察の呼び出し案内の分かりやすさ
12.負担の少ない待ち時間、待ちスペースへの配慮
13.プライバシー保護への配慮
14.付き添い・看護者への配慮
15.院内施設の清潔さ(トイレなど)
16.院内のバリアフリー化
17.駐車場の使いやすさ
18.その他(          )

 
この設問は、「自院」を選択する際に重視した点を聞きます。
 
 

【重視点】(2)入院
入院された方へのみうかがいます。
Q8.「当院」に入院する際に重視した点を教えてください。(お答えはひとつ)

1.入院費用や手続きなどの説明の分かりやすさ、丁寧さ
2.入院から退院後までを含む疑問や不安の相談のしやすさ
3.病室の快適さと安心感(室温など環境、プライバシー保護など)
4.病室や共用部の清掃、清潔さ
5.談話室など共有スペースの使いやすさ
6.食事内容
7.ナースコール対応
8.その他(          )

 
この設問は、「自院」の入院に際して重視した点を聞きます。
 
 

【最重視点】
Q9.「当院」を選ぶ際にもっとも重視した点を教えてください。(お答えはひとつ)
該当するQ7の回答例の番号を記入してください。

記入欄(   )

 
これらの重視点に関する設問では、満足度の評価で重視する項目は何か、さらに決定要因となる項目は何かを聞きます。
 
 

【総合的満足度】
Q10.「当院」の総合的な満足度を評価してください。(お答えはひとつ)

1.非常に満足
2.やや満足
3.どちらともいえない
4.やや不満
5.非常に不満

 
この設問では、「自院」の医療機関としての総合的な満足度を聞きます。他の設問と総合的な満足度との相関を見ることで、受診者が求める医療サービスの姿、医療機関として果たすべき役割の見直しなどへの活用が期待できます。
 
 

【項目別満足度】
Q11.「当院」を選択した重視点の項目、それぞれについて満足度を評価してください。(お答えはそれぞれひとつ)

  非常に満足 やや満足 どちらともいえない やや不満 非常に不満
地元の医療機関なので安心
総合医療機関なので安心
名医と評判の医師がいる
診療体験者の評判のよさ
在宅診療、高齢者医療など地域医療への貢献姿勢
複数の診療科の受診ができる
先進医療に対応
医療機関の受付や待合室の雰囲気のよさ
医療機関スタッフの対応のよさ
自宅や勤務先に近い
緊急搬送されたため
即時入院の必要があった

 
この設問では、評価項目のそれぞれについて、満足度を聞きます。現在の満足度の評価に基づいて、優先的に強化または改善すべき事柄を見極める手立てとなります。
 
 

【継続受診意向】
Q12.今後、「当院」を継続して受診したいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.非常に受診したい
2.やや受診したい
3.どちらとも言えない
4.あまり受診したくない
5.全く受診したくない

 
この設問では、医療機関としての満足度を背景として、これからの受診者と医療機関との関係について聞きます。
 
 

【他者への推奨意向】
Q13.「当院」を友人や知人に勧めたいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.非常に勧めたい
2.やや勧めたい
3.どちらともいえない
4.あまり勧めたくない
5.全く勧めたくない

 
この「継続受診意向」と「他者への推奨意向」は、「自院」と顧客のロイヤルティの強さを知るための設問です。
 
 

【他者への推奨意向】
Q14.「当院」に対するご意見などがありましたら、ご自由にお書きください。(自由回答)

(                                     )

 
医療機関としてのあり方など、顧客の自由な意見を聞きます。アンケート項目では思いつかない顧客の生活感覚や、医療の場に求める事柄、自由な発想での意見が期待できます。
 
 

【プロフィール】
ご回答者のプロフィールについてお伺いします。
F1.性別(お答えはひとつ)

1.男性
2.女性
 
F2.年齢(お答えはひとつ)
1.20歳未満
2.20代
3.30代
4.40代
5.50代
6.60代
7.70歳以上
 
F3.世帯構成(お答えはひとつ)
1.単身世帯
2.夫婦世帯
3.二世代世帯(親・子)
4.三世代世帯(祖父母・親・子)
5.その他(          )
 
F4.職業(お答えはひとつ)
1.学生
2.会社員
3.会社役員
4.自営業
5.公務員
6.団体教員
7.パート・アルバイト
8.専業主婦
9.無職
10.その他(     )

 
これらのプロフィールについての設問は、医療機関の受診目的や利用状況、満足度についてのクロス分析に使用します。医療機関の受診目的や状況と満足度の関係を、より具体的に表現するためのものです。
 
 

まとめ

CS調査は、「自院」の満足度を聞くことで、今後の医療機関のあり方、医療機関の運営指針を改善するヒントとなります。受診者の目的や診療状況別に見た満足度の評価で、今後の課題を見出す手立てとしても期待できます。テンプレートを使用することで調査の効率性が向上し、より精度の高いデータを収集することができます。テンプレートは無料でダウンロードしていただけます。ぜひご利用ください。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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顧客満足度調査(CS調査)

顧客満足度調査(CS調査)

”顧客満足度調査(略してCS調査)とは、自社の商品ユーザーやサービス利用者から評価・改善点などのアドバイスをいただくための調査です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続け、既存顧客の満足度を維持するだけでなく、新規顧客獲得に結びつけるためにも非常に重要な役割を果たします。また、顧客の「継続購買」や「推奨行動」といった「エンゲージメント」につなげることにあります。

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NPS

NPS

NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略であり、顧客ロイヤリティ(ブランドや商品、またはサービスに対する「信頼・愛着」のこと)を計測するための指標のことです。NPSは事業の業績との相関が非常に高い指標であることから、欧米企業(フォーチュン500)の3分の1が導入しているといわれており、日本でも顧客満足度と並ぶ新しい指標として注目されています。

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