公開日:2023.04.04

【飲食店向け】来店顧客の満足度を上げるためのアンケートとは?

  • 顧客満足度

顧客満足度調査(以下CS調査)は、その目的によって、あるいはBtoCかBtoBか、業種、職種等の対象によっても質問内容が異なります。ここでは「飲食店」利用者に対する顧客満足度調査のテンプレートについて解説しています。これまでに該当の飲食店を利用したことがある方が調査対象となります。

また、調査の目的や実施時の注意点、アンケート項目設定時のポイント、実施の流れ、調査結果の活用方法についても解説しています。解説したテンプレートは無料でダウンロードできます。
 

 
 

飲食店における顧客満足度の向上に向けた課題とビジネスモデルの変化

CS調査とは、飲食店として、自店がどのように顧客に評価されているのかを知るための調査です。また顧客との関係性であるロイヤルティの強さ、先々の来店の可能性を知る手立てともなります。CS調査の最終的な目的は、自店の収益の向上、既存顧客の維持確保と新顧客の獲得のための手段を見出すことです。

生活者が求める飲食店の満足度

生活者が飲食店に求める満足度は、社会環境の変化やライフスタイルの変容に伴い、その意味合いに変化が生まれています。少子高齢化とITの進展、SDGsに向けた活動、さらに新型コロナ渦が近年における大きな変容の要因です。その社会環境の変化は、生活者の外食および中食、内食のあり方に影響を及ぼしています。
その状況を反映して、飲食店は美味しい料理を提供するだけでなく、顧客の様々な要望を叶えなければいけない時代となっています。飲食業界の原則であるQSC(Quality/料理・Service/サービス・Cleanliness/清潔さ)を超えて、来店者にどのような感性評価、共感を持って利用してもらえるのか、その追求が重要な課題となります。

飲食店のビジネスモデル

生活者の外食には、それぞれの理由と目的があります。家事の軽減、家族団らんや記念日、懇親などですが、いずれにしても飲食店を訪れての食事です。来店者に飲食を提供するというのが基本のビジネスモデルです。それが自宅で有名店の料理を楽しむ、Webでいわゆる「出前」を頼む感覚でデリバリーを利用するなどの中食機会が増加し、飲食業界のビジネスモデルへ影響を及ぼしています。さらに新型コロナ渦で、テイクアウトやデリバリーを加えた新しい飲食店モデルの広がりが加速しています。そのため、外食と中食の境界線を越えたビジネスモデルの検討が必要になっています。

飲食店における顧客満足度

口コミサイトなどグルメ情報が錯綜する今日ですが、業界の様変わりにそった満足度のあり方を知る手段が必要になっています。ここでは「自店」を選んだ理由だけでなく、飲食店の現状を踏まえた満足度を高める要件の検証、現行サービスの改善と新たなサービスの発見を目的としています。
 
 

アンケート項目を設計するときの注意点

調査目的を明確にする

顧客満足度の調査においては、「どのような人」が、「どのような状況」で、「どのような目的や期待を抱いて」飲食店を利用するのかなど、調査の目的をどこに置くのかを明確にすることが重要です。飲食店の業態は非常に幅広く、さらに顧客の食に対する好みやこだわりの移り変わりもあります。そのため、調査目的の設定では、顧客の食に対する意識への考慮も必要となります。

調査対象を明確にする

調査の目的によって、調査対象とする顧客層が変わってきます。飲食店の業態ごとの満足度なのか、飲食店の利用目的にそった満足度なのか、さらに料理や飲食サービスに限定した満足度なのかなど、様々な満足度を求める場面が存在します。どの場面における顧客満足度を評価するのか、対象を明確にすることが必要になります。

飲食店を利用する目的を踏まえた項目設計

飲食店を利用する目的は、美味しい料理を楽しむだけでなく、その美味しさを他の人と共有し、喜びを共感したいという期待もあります。その美味しさは、店の雰囲気や同席者に左右されることもあります。そのため、飲食の場で得られた共感を誰に対して、どのような気持ちを伝えたいのかなど、具体的な場面が見えるような項目設計が重要になります。

アンケート項目は、回答者が回答しやすい順番となるようにする

CS調査では、起承転結の一連の流れがあります。ここでの「起」は利用した飲食店を知るという認知、「承」で利用したのは誰か、どのような目的で、どれくらいの頻度でなどの利用状況を聞きます。「転」は利用する飲食店を決定するという意思決定行動、続いて「結」の実際に来店した飲食店の「満足度評価」とつながって行きます。

適切な回答方式(単一回答、複数回答、自由回答)を選択する

単純集計、属性クロス集計、質問間クロス集計などの分析方法を考慮した、適切な回答方式を選択します。

適切な集計方法を選択する

分析に応じて集計・分析軸を設定します。

第三者によるアンケート項目と調査票を確認する

関係メンバー以外の社内の方に、調査票全体を客観的に検証してもらう必要があります。回答者が回答しやすい表現になっているのか、その確認が大切です。
 
 

実施する流れ

CS調査の実施は、次のような流れで進めるのが基本です。

① 目的と検証課題の想定
② 目的に対応する回答者の属性、回収目標数を決定
③ 回答者のサンプリング、リスト整理
④ アンケート項目の設計
⑤ アンケート項目にそった集計方法、分析方法を決定
⑥ 調査実施、集計作業
⑦ 調査結果の分析および報告書作成

 
 

調査結果の活用方法

飲食店の顧客満足度を聞くことで、自店の強みと弱み、現在とこれからの飲食店としてのあり方も知る機会となります。アンケート調査の一連の流れにそって、活用方法を例示します。

認知

どのような経路で顧客は「自店」を知ったのか、その結果から自店の情報発信効果が検証できます。広告宣伝やHPなど公式サイト、キャンペーン活動などを含め、自店の情報発信の方法を見直す契機ともなります。

利用状況

顧客が自店を知った経路をたどり、その結果として訪れた来店者の状況を知ることができます。利用目的や同行者の様子、利用頻度は店として期待通りの結果となっているのかどうか、その成果を具体的に示してくれます。自身が想定した顧客が取り込めているのかなど、その成果を見ることで、現在のセールスポイントの強化や発信情報の見直しを図る機会としても活用できます。

「自店」の選定(意思決定行動)

顧客はどのような飲食店を選んだのか、誰とどのような目的で利用したのか、さらに店を選んだ理由を重ねることで、顧客が求める飲食店のイメージが確認できます。このイメージと自店の現状との比較が、今後の強化および改善すべき要件の発見へとつながります。その発見は、自店のセールスポイントを充実、コンセプトを進化させる原動力として期待できます。

顧客満足度評価

現状と今後について、優先的に改善すべき顧客の評価ポイントを知ることができます。また満足度が低い項目は、飲食店としての弱みと同時に顧客の潜在ニーズも表している可能性があります。新たなビジネスチャンスを見出す機会として、活用が期待できます。
さらに利用目的や重視点との相関を見ることで、顧客が求める飲食店のあるべき姿やコンセプトなど、気づきを得る機会として期待できます。
 
 

テンプレートの解説

ここでは、飲食店の「総合的な顧客満足度を知るためのテンプレート」を紹介します。設問は、起承転結の流れにそって構成しています。
 
※「自店」の部分に御社の店舗名等を当てはめます。
 

【認知】
Q1.「自店」はどこで知りましたか。(お答えはいくつでも)

1.グルメ情報のWebサイト
2.グルメ情報誌
3.テレビ・ラジオ
4.雑誌
5.インターネット広告
6.インターネット検索
7.SNS・ブログ
8.新聞・チラシ
9.駅や街中の看板
10店舗
11.家族・友人・知人からの口コミ
12.その他(          )

 
この設問では、「自店」の情報に触れた主な場面はどこか、認知経路について聞きます。
 
 

【飲食店の利用状況】(1)利用の目的
Q2.主に、どのような目的で「自店」を利用していますか。(お答えはひとつ)

1.普段の食事
2.家族の団らん
3.家族の記念日などのお祝い
4.地元の友人・知人との懇親
5.遠来の友人・知人との懇親
6.仕事関係者との懇親
7.有名店の探訪
8.その他(          )

 
この設問では、飲食店の業態により、利用目的に特徴が見られるかどうか、検証の意味合いがあります。
 
 

飲食店の利用状況】(2)利用方法
Q3.主に、どのような人と「自店」を利用しますか。(お答えはひとつ)

1.自分ひとり
2.夫婦
3.家族(親子・孫)
4.カップル
5.友人・知人
6.仕事関係者
7.その他(          )

 
この設問では、利用した飲食店の利用者について特徴が見られるかどうか、検証の意味合いがあります。
 
 

【飲食店の利用状況】(3)利用頻度
Q4.どれくらいの頻度で「自店」を利用しますか。(お答えはひとつ)

1.週に3回以上
2.週に1~2回
3.月に2~3回
4.月に1回
5.2~3ヶ月に1回
6.半年に1回
7.それ以下
8.初めて

 
この設問は、業態、利用目的、利用者それぞれのケースで、利用頻度との関係を見るためのものです。自店が求める顧客層の想定に役立つ情報となります。
 
 

【意思決定】店の選定
Q5. 「自店」を選んだ理由を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.自宅もしくは勤務先の近くに立地
2.料理の種類が好み
3.著名なシェフ、料理人の店
4.好奇心を感じさせるメニュー
5.地元の味をアピール
6.地域の推奨店
7.地産地消を推進
8.メニューの豊富さ
9.料理、飲み物価格の納得感
10.店の雰囲気(店舗の内外装など)
11.店の雰囲気(店主および従業員)
12.利便性が高い営業時間
13.予約の取りやすさ(Web利用など)
14.待たずに入店できる(混み具合)
15.テイクアウトができる
16.デリバリーができる
17.その他(          )

 
この設問では、「自店」を選んだ理由を聞きます。飲食店としてのセールスポイントの一面を知るためです。
 
 

【重視点】
Q6. 「自店」を選ぶ際に重視した点を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.料理、飲み物の品質
2.料理、飲み物品質と価格の納得感
3.注文から配膳までの円滑さ
4.従業員の対応と身だしなみ
5.落ち着いて飲食が楽しめる(席の配置やBGMなど)
6.清潔で安心して飲食が楽しめる
7.快適さの配慮(バリアフリー、トイレの使いやすさなど)
8.継続利用者へのサービス(優先予約、ポイント付与など)
9.その他(          )

【最重視点】
Q7. 「自店」を選ぶ際にもっとも重視した点を教えてください。(お答えはひとつ)該当するQ7の回答例の番号を記入してください。

記入欄(   )

 
これらの設問では満足度の評価で重視する項目は何か、さらに決定要因となる項目は何かを聞きます。
 
 

【総合的満足度】
Q8. 「自店」の総合的な満足度を評価してください。(お答えはひとつ)

1.非常に満足
2.やや満足
3.どちらともいえない
4.やや不満
5.非常に不満

 
この設問では、「自店」の飲食店全体としての総合的な満足度を聞きます。他の設問と総合的な満足度との相関を見ることで、顧客が求めるサービスの姿、店のコンセプトの見直しなどへの活用が可能となります。
 
 

【項目別満足度】
Q9. 「自店」を選択した重視点の項目、それぞれについて満足度を評価してください。(お答えはひとつ)

  非常に満足 やや満足 どちらともいえない やや不満 非常に不満
料理、飲み物の品質
料理、飲み物品質と価格の納得感
注文から配膳までの円滑さ
従業員の対応と身だしなみ
落ち着いて飲食が楽しめる(席の配置やBGMなど)
清潔で安心して飲食が楽しめる
快適さの配慮(バリアフリー、トイレの使いやすさなど)
継続利用者へのサービス(優先予約、ポイント付与など)

 
この設問では、評価項目のそれぞれについて、満足度を聞きます。現在の評価項目の順位から、優先的に強化または改善すべき事柄を見極める手立てとなります。
 
 

【継続利用意向】
Q10.今後、「自店」を継続して利用したいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.非常に利用したい
2.やや利用したい
3.どちらともいえない
4.あまり利用したくない
5.全く利用したくない

 
この設問では、飲食店の満足度を背景として、これからの顧客と飲食店との関係について聞きます。
 
 

【他者への推奨意向】
Q11. 「自店」を友人や知人に勧めたいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.非常に勧めたい
2.やや勧めたい
3.どちらともいえない
4.あまり勧めたくない
5.全く勧めたくない

 
この「継続利用意向」と「他者への推奨意向」は、「自店」と顧客のロイヤルティの強さを知るための設問です。
 
 

【ご意見・ご要望】
Q12. 「自店」に対するご意見などがありましたら、ご自由にお書きください。(自由回答)

(                                     )

 
飲食店のあり方など、顧客の自由な意見を聞きます。アンケート項目では思いつかない顧客の生活感覚や、飲食の場に求める事柄、自由な発想での意見が期待できます。
 
 

【プロフィール】
ご回答者のプロフィールについてお伺いします。
F1.性別(お答えはひとつ)

1.男性
2.女性

F2.年齢(お答えはひとつ)
1.20歳未満
2.20代
3.30代
4.40代
5.50代
6.60代
7.70歳以上

F3.世帯構成(お答えはひとつ)
1.単身世帯
2.夫婦世帯
3.二世代世帯(親・子)
4.三世代世帯(祖父母・親・子)
5.その他(          )

F3.職業(お答えはひとつ)
1.学生
2.会社員
3.会社役員
4.自営業
5.公務員
6.団体教員
7.パート・アルバイト
8.専業主婦
9.無職
10.その他(     )

 
これらのプロフィールについての設問は、飲食店の利用目的や利用状況、満足度についてのクロス分析に使用します。飲食店の利用場面と満足度を、より具体的に表現するためのものです。
 
 

まとめ

CS調査は、「自店」の満足度を聞くことで、今後の飲食店のあり方、ビジネスモデルの改善のヒントとなります。飲食店の満足度評価にライフスタイルの変容がどのように影響しているのか、また感性評価をどのように捉えて行くのかなど、今後の課題を見出す手立てとしても期待できます。テンプレートを使用することで調査の効率性が向上し、より精度の高いデータを収集することができます。テンプレートは無料でダウンロードしていただけます。ぜひご利用ください。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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顧客満足度調査(CS調査)

顧客満足度調査(CS調査)

”顧客満足度調査(略してCS調査)とは、自社の商品ユーザーやサービス利用者から評価・改善点などのアドバイスをいただくための調査です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続け、既存顧客の満足度を維持するだけでなく、新規顧客獲得に結びつけるためにも非常に重要な役割を果たします。また、顧客の「継続購買」や「推奨行動」といった「エンゲージメント」につなげることにあります。

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NPS

NPS

NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略であり、顧客ロイヤリティ(ブランドや商品、またはサービスに対する「信頼・愛着」のこと)を計測するための指標のことです。NPSは事業の業績との相関が非常に高い指標であることから、欧米企業(フォーチュン500)の3分の1が導入しているといわれており、日本でも顧客満足度と並ぶ新しい指標として注目されています。

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