公開日:2025.05.09

データの見える化と統合で意思決定は加速するのか?

  • マーケティングリサーチHowto

「データは揃っているのに、なぜ意思決定が進まないのか?」これは、いま多くの企業で起きている共通の悩みです。アクセス解析ツールやSFA、MA、CRMといった各種システムを通じて、企業は日々膨大なデータを蓄積しています。しかし、いざ経営判断をしようとしたとき、「何を見ればよいのかわからない」「見ているはずなのに動けない」という声が後を絶ちません。
 
本コラムでは、「見える化すれば意思決定が早くなる」という安易な前提を疑いながら、「なぜ活用できないのか?」「どうすれば使える形にできるのか?」を事例とともに掘り下げていきます。
 
 

データはあるのに使えないのはなぜか?

Googleアナリティクス、SFA、MA、CRMをはじめ、企業は日々さまざまなツールでデータを取得しています。
しかし、現場では以下のようなデータ疲れの声があがっています。

  • レポート作成に追われ、解釈や意思決定まで至らない
  • KPIは可視化されているが、改善アクションに結びつかない
  • 数値を見て「増えた/減った」で終わり、改善につながらない

 
このような状況の根本には、「データが整っていない」のではなく、「整えたつもりで、意味づけがなされていない」という問題があります。
つまり、データが語るストーリーが不在のまま、形だけが整っている状態に陥っているのです。
 
 

意思決定を止める4つのボトルネック

1. サイロ化されたシステム

部門ごとに異なるシステムを使用していることで、顧客や施策の全体像が見えなくなっています。
 
たとえば、ある化粧品企業では、実店舗とECサイトで顧客情報が分断されていました。その結果、既に高額商品を購入済みの顧客にも、「初回限定クーポン」が何度も配信されていたのです。
こうしたつながらないデータは、顧客体験の毀損やリピート離脱にも直結します。
 

2. 意味のない数値の羅列

「1,200件の資料請求」と聞いても、それだけで判断するのは難しいはずです。前年や目標値との比較、広告施策との因果関係などが見えてこそ、初めて意味を持ちます。
 
ある住宅メーカーでは、フォームCVRの急落に気づきながら、長らく原因が特定できませんでした。後にヒートマップを導入したところ、「年収入力欄」で離脱が集中していたことが判明し、項目を任意に変更したところCVRが大きく回復しました。
数字に文脈を与える。それがデータ活用の第一歩です。
 

3. 伝え方の設計不足

どんなに精緻なデータ分析がなされても、意思決定層への伝え方が設計されていなければ、結果は活かされません。
 
「広告流入数が増えました」という報告は、経営視点では「だから何?」で終わってしまいます。「増加の要因はSNS経由の資料請求施策」「コンバージョン単価が○○円でCPAを下回っている」など、施策と成果の因果関係まで整理して報告できるかが鍵となります。
 

4. 意思決定バイアス

ノーベル賞経済学者のダニエル・カーネマンらの研究によれば、人は数値の提示方法(フレーミング)次第で結論が変わることがあるといいます。
つまり、データは「見せ方次第で、意思決定を誤らせる可能性がある」のです。

具体例

  • 「前年比+10%成長」と聞くと好印象だが、前年が異常値なら誤解を招く
  • 「CVR改善率30%」と見るとインパクトがあるが、母数が小さいと意味がない

 
こうしたバイアスもまた、使えないデータの正体の一部です。
 
 

安易なBI導入は逆効果

「見える化」「統合」というキーワードはもはや常識ですが、方法を間違えるとダッシュボード中毒に陥るリスクがあります。

  • 見える化は判断を助けるためにある
  • BIツール(Looker Studio、Tableauなど)を使えば、情報の即時共有が可能になります。ただし、表示項目が多すぎると「見ること」が目的化してしまい、本来の目的である行動のトリガーが見失われ、過度な可視化が思考停止を生む可能性があります。

  • 統合は全体のストーリーを作るためにある
  • 統合とは、単にシステムをつなげる作業ではなく、断片的な情報を結び付けて「一つの物語」として再構成することです。営業履歴、Web行動、購買データ、問い合わせ記録などが別々に存在していても、それらはすべて顧客の行動としてつながっているはずです。

    APIやDWH、iPaaSなどを活用すれば、異なるシステム間のデータを一元化できますが、重要なのは「なぜその行動が起きたのか」という因果関係の解釈を可能にする設計です。数字を並べるのではなく、変化の理由や背景を読み取れるようにすることで、初めて意思決定につながる情報として機能します。

 
つまり、統合とは“ただの記録”を”問いに答えるデータ”へと変えるプロセスなのです。
 
 

疲弊しない見える化のコツ

見える化や統合は、必ずしも大がかりなシステム導入から始める必要はありません。むしろ、小さな試行と共有の積み重ねが、組織のデータ判断力を底上げしていきます。
 
たとえば、以下のような小さな取り組みが考えられます。

  • 月次KPIをスプレッドシートでグラフ化し、部門間で週1レビュー
  • Googleフォームで集めた顧客の声を、分類タグをつけて可視化
  • 営業/マーケで共通のKPI指標を定義し、ズレを毎週共有

 
このように、段階的導入による文化の成熟が、データ活用成功の最大要因となります。
 
 

すべての起点は問い

可視化や統合といった施策を進めても、「何を明らかにしたいのか」という問いが曖昧なままでは、意味のある成果にはつながりません。
問いこそが、データ活用の起点であり、意思決定を動かす原動力です。
 
アスマークの「データクリアパス」は、単なるデータ統合にとどまらず、仮説の設計から検証、そして実行支援までを一貫して伴走できるリサーチ視点のサービスです。社内に点在する顧客データや売上データ、Webログなどを統合し、意思決定に使える形に整備。さらに必要に応じて、アンケートやインタビューなどの定性調査を追加することで、「なぜその行動が起きたのか」という理由や背景まで可視化します。
 
「データはある。でも活かせていない」と感じている今こそ、
そのデータの意味とつながりを問い直し、動ける戦略を描き直すタイミングではないでしょうか。

 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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