公開日:2023.12.22

モニター調査:各手法の解説と成功のためのポイント

  • 定量調査

モニター調査とは、特定の属性や条件を持つ消費者を対象に、アンケートやインタビューなどを行う調査手法です。モニター調査は、市場の動向や消費者のニーズを把握するための有効な手法ですが、その実施方法や活用方法には様々な種類があります。
この記事では、モニター調査の基本的な定義や概要、様々な手法について解説します。
 

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モニター調査の定義と基本

モニター調査とは、企業や団体が特定の商品やサービス、あるいは市場動向やトレンドに関する情報を把握するために実施する調査手法です。具体的には、指定された一定の期間や頻度で、ある特定の対象者に対してデータの収集を行い、そのデータを基に分析や評価を行います。
モニター調査では、対象者からアンケート回答やインタビューによって意見や消費体験を収集します。これらの回答によって、製品の改善点や需要予測、市場動向など様々な情報を得られます。
モニター調査を実施する際は、調査対象者を年齢・性別・住所などの属性に分けて実施されることが一般的です。また、調査を定期的に繰り返すことで、消費者の意識やニーズ変化などのデータ収集が可能となります。
 

モニター調査の目的とは

モニター調査の目的は、企業や団体がマーケティング戦略を立案するための参考情報を収集することです。モニター調査を通じて得られるデータは、商品の開発や改善、顧客満足度の向上、ブランドイメージの構築、購買行動の予測など、幅広いマーケティング施策に活用できます。
例えば、モニター調査を通じて得られた消費者の意見や行動パターンは、製品の開発段階での改良点やニーズの発見に役立ちます。また、商品の評価や満足度を把握できれば、顧客のニーズに合わせたサービスやアフターケアの向上に利用可能です。
さらに、モニター調査を通じて得られる情報は、単に過去の情報だけでなく、市場動向や消費者の変化に対応するための将来予測にも活用できます。このようにモニター調査は、マーケティング戦略の基盤として、とても重要な役割を果たしています。
 

モニター調査のメリットとデメリット

メリット
 
モニター調査のメリットは、市場動向や消費者ニーズに関するデータを収集し、評価できることです。また、調査対象者の属性や条件を詳細に設定することで、自社ニーズに適したデータを収集できます。
そこで得られた情報を様々なマーケティング活動にフィードバックすることで、消費者ニーズにマッチした施策を実施できるようになります。
 
デメリット
 
モニター調査にはデメリットも存在します。まず、調査実施には相応の費用や時間がかかるとともに、データの分析にはある程度の専門性を有したスタッフが必要です。また、調査設計や調査対象者選定を適切に行わないと、適切な調査結果を得られなくなる可能性があります。
 
 

モニター調査の種類と各手法の詳細

モニター調査の方法にはいくつかの種類があり、それぞれの手法に特徴やメリット、デメリットがあります。ここでは、代表的なモニター調査の方法について解説します。
 

定量調査

WEBアンケート
 
WEBアンケートとは、インターネットを利用して、モニターとなる消費者からデータを収集する調査手法です。モニターにはオンライン上でアンケートに回答してもらいます。
インターネットを介することで、モニターの制約条件を少なくし、短い期間で大規模かつ多様な参加者を集められます。さらに、WEB上のアンケートでは回答を制御することもできるので、回答のミスを減らし、正確な回答を集めることができます。
その一方で、インターネットに接続できない人は参加できないため、高齢者などインターネットに不慣れな人の回答を集めにくいというデメリットがあります。また、回答者の本人確認が難しい点から、回答の正確性や信頼性についても注意が必要です。
 
会場調査
 
会場調査とは、特定の会場に対象者を集めて行われる調査手法です。対象者を会場に集めるので、現物を見る・触る・食べる・飲む・試す等の評価を取ることができます。
会場調査のメリットとしては、管理された同じ環境下で調査を実施することで、調査票を確実に回収でき、回答精度の確保や情報漏洩を防ぐ効果も期待できます。
一方で、地方在住の方や、子育て・介護中などで外出がしにくい方など、対象者によってはりクルーティングが難しいこと、モニターの交通費や拘束時間などがかかるため、他の調査に比べて高くついてしまうというデメリットがあります。
 
ホームユーステスト
 
ホームユーステストとは、調査対象者に商品を送付し、自宅で実際に使用してもらい、その上で、商品を使ってみての感想や意見を収集する調査手法です。
ホームユーステストのメリットは、調査対象者が実際に商品を使用した上での評価を聞くことができるため、よりリアルな情報を得られることです。また、使用現場での細かなニーズを把握できるため、効果的な改善に活かせるヒントを見つけやすくなります。
さらに、ホームユーステスト参加者は新たな商品を試す機会を得ることで、高いモチベーションで調査に参加してもらうことが可能です。その結果、信頼度の高い情報を得られる可能性が高まります。
「商品をモニターに送付する」という工程から通常のアンケート調査よりもコストがかかること、機密情報(未公表の製品情報など)が漏れてしまわないよう注意が必要であることがデメリットとしてあげられます。
 
郵送調査
 
郵送調査とは、郵便を利用して調査票を送付し、対象者に回答を求める調査手法です。主に大規模な調査を行う際に使用されます。
郵送調査のメリットは、インターネットを利用していない方を含めた、幅広い対象者への調査実施に適していることです。また、「対個人」だけではなく「対企業・施設」からの回答を集めたいときにも適しています。
郵送調査のデメリットとしては、その性質上、回答作業を調査対象者に任せてしまう調査方法であるため、回答の間違いや不備、調査期間を過ぎた返送などが起きやすいという点があります。
郵送調査を実施する場合はこのような問題点を意識して、分かりやすい説明、回答しやすい内容、返送の確認を行うことが大切です。
 

定性調査

インタビュー調査
 
インタビュー調査とは、直接、調査対象者との対話を通じて情報を収集する調査方法です。
インタビュー調査は、調査対象者の意見や考えを直接聞くことで、調査対象者の行動や考えの背景にある理由や感情を読み取れます。また、調査対象者の言葉だけでは伝わらない情報を観察することで、アンケート回答では得にくい言葉にできない考えやニーズを引き出すことも可能です。
しかし、インタビュー調査で調査対象者の考えやニーズを引き出すには、インタビュアーが上手に信頼関係を構築する必要があります。また、調査対象者の回答を誘導したり、偏りが起きないよう、中立性を保ったインタビューを行うことも重要なポイントです。インタビューで価値ある情報を引き出すには、インタビュアーの能力がとても重要になります。
インタビュー調査には大きく分けてグループインタビューとデプスインタビューがあり、グループインタビューは、複数の人を集めて、特定のトピックについて話し合うもので、グループの相互作用を通じて様々な意見や感覚を探ることができます。一方で、デプスインタビューは、一人の参加者と深く話し合うもので、個人の詳細な意見や経験を深く理解することができます。
 
日記調査
 
日記調査は、対象者に日々の活動、感情、経験を記録してもら調査方法です。
メリットとしては、個人の経験や感情の詳細な洞察を得ることができ、長期間にわたる行動や感情のパターンを追跡できます。出来事が起きた状況や背景を理解するのに役立ちます。
長期間にわたる記録が必要な場合、参加者が継続するのが難しいことがあります。また、自由形式のテキストデータの分析は複雑で時間がかかることなどがデメリットにあげられます。
 
 

モニター調査の実施フロー

モニター調査で適切な調査結果を得るには、調査の目的や手法に応じたフローに基づいて調査を実施することが大切です。ここでは、基本的なモニター調査の実施フローについて解説します。
 

調査企画の立案

モニター調査実施の第一ステップは、調査企画の立案です。調査企画の立案とは、自社の抱えるマーケティング課題をピックアップして、その課題を解決するために必要な情報は何かを明らかにすることです。
例えば、「新商品を開発したい」というマーケティング課題があった場合、どのような情報を得られたら、新商品開発に効果的なフィードバックができるか、調査の目的を考えます。
モニター調査の目的を設定する際に注意すべき点は、できるだけ目的をシンプルにすることです。調査目的の設定は、自社のマーケティング課題を考慮して、適切な範囲で設定しましょう。
モニター調査で得たい情報が設定できたら、次は仮説の立案を行います。仮説を立てることで、調査の焦点や方向性が明確になり、調査の質問を設計する際の指針となります。
 

調査方法の選定と実施の流れ

調査企画の立案ができたら、調査方法を選定します。モニター調査の方法には、様々な方法があります。調査の目的や内容、予算や期間などを考慮しながら、適切な方法を選択します。
調査方法が決まったら、次は実施計画を作成します。実施計画では、調査のスケジュールや予算、調査対象者の数や属性、調査票の作成やモニター手配などの詳細な内容を決めていきます。
実施計画が作成できたら、その計画に基づいて調査票の作成とモニター手配を行います。
調査票の作成とモニター手配が完了したら、調査計画のスケジュールに沿ってモニター調査を実施します。調査の実施中は、回答の回収が計画通りに進んでいるかの確認をします。回収が予定通りに進んでいない場合は、回答の催促を検討しましょう。
 

結果の集計と分析手法

回答を回収できたら、その結果の集計と分析を行います。
集計する際には、データの信頼性や整合性を確保するために、漏れやエラーがないか、データを確認することが重要です。
データの分析を行う際は、まずは全体像を把握する分析を行います。全体像を把握することで、分析の方向性や重要ポイントを見出せるようになります。
全体像が把握できたら、そこからは仮説の検証や詳細な分析に進みます。仮説と実際の結果を検証することで、より詳しい分析を進めていきます。
 
 

モニター調査の効果を引き出すポイント

モニター調査の効果をできるだけ高めるには、適切な準備と実施が重要です。ここでは、モニター調査を成功させるために、その効果を最大限まで引き出すポイントを紹介します。
 

スクリーニング調査の重要性

スクリーニング調査とは本調査を行う前に、本調査に必要な調査対象者をふるい分けるために行われる事前調査です。スクリーニング調査は、市場調査や消費者調査などでよく用いられる手法です。
スクリーニング調査を行うことで、本調査では適切な対象者のみが参加することになり、調査範囲の明確化や、調査結果の信頼性を向上できます。
ただし、スクリーニング調査であまりにも詳細な抽出を行うと、本調査の適正サンプル数を確保できなくなる可能性があります。そのため、スクリーニング調査を実施する際は、本調査で十分なサンプル数を確保できるように、調査対象者数やスクリーニング項目数などのバランスを考慮することが必要です。
 

調査項目の設計

モニター調査で効果的な分析結果を得るためには、調査項目の設計がとても重要です。なぜなら、調査項目設計の方向性に誤りがあると、実施や分析の段階でその誤りを修正するのは困難だからです。
調査項目の設計には、マーケティングや市場調査に関する知識が求められます。調査目的、調査方法、立案した仮説、質問順序や選択肢の設定など、様々な要素を考慮する必要があります。
社外の専門家を活用することも効果的な方法です。マーケティングや市場調査に熟知した専門家は豊富な経験と専門知識を持っており、適切な調査項目の設計やサポートが期待できます。外部の専門家のアドバイスや意見を取り入れることで、調査の質と信頼性を高められます。
 

対象者へのインセンティブと謝礼の効果

モニター調査では回答を調査対象者に依頼しますが、これは調査対象者にとってはかなりの精神的負担になります。回答者は、自分の時間や労力を使って、自分にとっては直接、関係のない調査に協力することになります。
その際、調査対象者の意欲を高めるのに有効なのがインセンティブや謝礼です。インセンティブや謝礼とは、調査対象者に調査への参加や回答を促すために提供する報酬や景品のことです。効果的なインセンティブや謝礼を用意することで、回答の回収率や回答内容を高められます。
 
 

モニター調査の成功例と事例研究

モニター調査は、マーケティング活動において重要な役割を果たす手法です。ここでは、モニター調査の成功例や事例を通じて、その有効性と具体的な活用方法について解説します。
 

商品開発に役立つモニター調査の事例

モニター調査を活用した商品開発の事例の一つとして、あるゲームメーカーの事例を紹介します。このゲームメーカーは、ゲームの新商品開発にあたり、モニター調査を実施しました。モニター調査の目的は、新商品の評価と改善点を得ることです。モニター調査の方法は、ターゲットユーザーに開発途中のゲームをプレイしてもらい、その評価と問題点を確認しました。
モニター調査の結果、グラフィックやサウンド、操作の快適さなどでは高い評価を得たものの、ストーリーやプレイのボリューム感に問題があることが判明しました。そこで、モニター調査の結果をもとに、ゲームメーカーは次回作との連動性を持たせることで、ストーリーの魅力を高めるように仕様変更を行いました。
その結果、新商品はヒット作となり、次回作への期待を高めることにも成功しました。
 

市場認知度に関するモニター調査の具体例

ある家電メーカーの事例では、市場認知度を高めるためにモニター調査が活用されました。自社の家電製品CF(コマーシャルフィルム)を対象に、ユーザーの認知度と好感度を調査しました。さらに、一部タレントについても、その好感度と印象を調査しました。
このモニター調査によって、家電メーカーは家電製品ごとに認知度を把握することで、プロモーションの費用対効果を検証することが可能となりました。また、家電製品のターゲットユーザーにおけるタレントの好感度や印象を把握することで、今後のCF起用の参考情報を得られました。
その結果、家電メーカーは広告予算の効果的な配分を行い、効果的な家電製品のプロモーション活動を進めました。
 
 

まとめ:モニター調査を活用した継続的な成長戦略

モニター調査は、市場動向や消費者ニーズの「今」を知るための重要な調査方法です。このモニター調査を定期的に継続すると、過去から現在までの変化を把握できるとともに、未来の予測精度が向上し、戦略的な商品開発や市場認知度の向上を図れます。
現代は市場動向や消費者ニーズの変化が速い時代です。企業が継続的な成長を遂げるためには、いち早く市場や消費者の変化を読み取ることが重要です。モニター調査をマーケティング活動の重要な情報源として活用すれば、市場や消費者の変化を素早く察知し、企業の競争力を高められます。
企業の継続的な成長戦略のためにも、モニター調査をマーケティング戦略の重要な施策ととらえ、企業の成長を支える重要な情報源として活用していきましょう。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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