
2023.08.28
ブランド評価の深掘り:基礎概念から具体的な応用まで
ブランドとは、消費者の心に残る印象や感情、価値観などを表現するものです。ブランドは企業においてとても重要な資産であり、いかに強いブランド力を築くかはマーケティン……
公開日:2025.09.04
難病や稀少疾患領域におけるリサーチは、マス向けの商材を対象としたリサーチや、患者数の多い疾患のリサーチとは、本質的なアプローチが異なります。患者数が限られているため、定量調査のみでは課題の本質を捉えきれないことが多く、定性調査の役割が非常に重要になってきます。この領域で真のインサイトを獲得し、研究開発やマーケティングに活かすためには、従来の調査手法や考え方を見直す必要があります。
通常の調査では、定量調査で全体像を把握し、定性調査でその背景にある理由を深掘りする、という流れが一般的です。しかし、難病や稀少疾患の場合、患者数が少ないため統計的に有意なサンプルを確保することが難しく、定量調査の結果だけでは意味のあるデータを得られないことが多いです。
この領域の定量調査で生じる課題の一つは、想定外の回答結果です。
例えば、一日に大量の薬を服用する必要がある患者さんに対し、「薬の飲み忘れはありますか?」と質問すると、私たちの常識では「多い」と予測しがちです。しかし、実際に定量調査を行うと、意外にも「飲み忘れが少ない」という結果が出ることがあります。
この結果は定量調査だけでは考察が難しく、そこで調査が止まってしまうと、なぜこのような結果になったのかという疑問だけが残ります。これは定量調査の限界であり、その背景にある「なぜ?」を解明するのが定性調査の役割です。
例えば、飲み忘れが少ない理由を定性調査で深掘りしていくと、「飲み忘れると体調不良がひどくなるから絶対に飲まなければならない」という切実な理由や、「薬を飲むことで症状が回復するため、飲まない選択肢は考えられない」という患者さんの強い意志が見えてきます。
また、中には「飲み忘れによるデメリットが生じる薬剤があるから」という具体的な理由を挙げる方もいます。このようなインサイトは、患者さんの行動の真意を理解する上で不可欠であり、定量データだけでは決して得られません。この深い理解があって初めて、製薬企業は患者さん向けの啓発資材の作成など、適切な意思決定を行うことができるのです。
難病や稀少疾患の患者さんへのインタビューは、単なる質疑応答ではありません。患者さんの病気は、人生全体に大きな影響を与えており、その経験は非常に重いテーマだからです。初対面のインタビュアーに自分の苦しい経験や個人的な話をすることは、患者さんにとって非常に高いハードルとなります。
印象的なエピソードとして、ある患者さんにインタビュー前の事前情報収集を目的とした「ペイシェントジャーニー(発症から現在までの病気の歴史)」を書いてもらうという調査がありました。患者さんは丸2日かけて壮絶な体験を詳細に記述してくれましたが、インタビュー担当者がその内容をあまり深掘りせずにサラッと次の質問に移行したため、インタビュー終了後に患者さんが非常に怒ってしまったという事例があります。これは、患者さんがいかに真剣に自分の病気と向き合っているかを物語っており、調査を実施する側も同様の真剣さを持って向き合うことの重要性を示唆しています。
このような背景を理解した上で、深いインサイトを得るためには、信頼関係(ラポール)の構築が最も重要となります。オンラインでのインタビューが増えている現代において、特に日本人は対面での打ち解けに慣れているため、オンラインだけで深い話を引き出すのは難しい場合があります。理想論にはなりますが、特に難病稀少疾患の患者さんを調査対象とする場合は、複数回にわたって対面で顔を合わせるなど、時間をかけて信頼関係を築くことが望ましいです。
しかし、予算やスケジュールの制約から、1回のインタビューで完結させなければならないケースも多いでしょう。その場合、ブログやSNSで情報発信に慣れている患者さんや、患者会を通して開示に慣れている方々をリクルートすることが効果的です。
または、普段から患者会と丁寧に関係構築を行っているパートナー会社を介して調査への参加募集を行うことで、インタビューに適した候補者を紹介してもらい、心理的な安全性を保った上で調査を行うことで、調査の質を高めることができるのです。
難病・稀少疾患領域における定性調査は、製薬企業の意思決定に直接的な影響を与え、ビジネス価値を生み出します。
難病・稀少疾患リサーチは、今後さらに重要性を増し、進化していくでしょう。
第一に、ターゲットの選別精度が向上します。
SNSや患者会の活用により、患者さんの背景情報をより正確に把握できるようになります。これにより、調査目的に合致した、より深いインサイトを提供してくれるであろう患者さんを的確にリクルートできる時代が到来するでしょう。
第二に、調査の継続性が重視されます。
2024年10月に改定された「ヘルシンキ宣言」では、臨床研究のあらゆる段階で患者さんの声を反映することが明記されました。これは、単発の調査ではなく、開発からマーケティングに至るまで、継続的に患者さんの意見を取り入れることが義務化される流れを示唆しています。この流れは、製薬企業が患者さんや患者会との関係性を長期的に構築することの重要性を一層高めるでしょう。
難病・稀少疾患リサーチにおける定性調査は、単にデータを集めるだけでなく、患者さんの人生に寄り添い、彼らの声に耳を傾けることで、真のインサイトを提供し、社会的な価値を創造するマストな活動へと進化していくと予想しています。
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難病・希少患者の3名へグルイン調査! 「医療の社会的認知における、実態とバイオ製剤の認知向上」
昨今、「患者中心の医療」という言葉が各所で聞かれるようになってきており、研究開発やマーケティングにおいて患者さんの声を取り入れる動きが増えてきています。
そこで今回はバイオ製剤を実際に使用している3人の難病患者さん(強皮症・乾癬・多発性硬化症&潰瘍性大腸炎を抱える方々)に「最新の医療を受けていて感じること」についてインタビューを行いました。バイオ製剤の使用に至るまでのプロセス、使用して感じたこと、通院や医療費の負担など、患者さんの声を幅広く伺っております。
下記に当てはまる方にお薦めの動画です。
・バイオ製剤の利用者の声が聞きたい
・通院や医療費の負担の実態を知りたい
・患者さんの声を研究開発やマーケティングに活かしたい
> 詳しく見る
ペイシェントジャーニーマップで可視化する、難病患者のリアルな心の動きとは?
ペイシェントジャーニーとは、患者さんが病気を発症してから診断、治療、そして回復に至るまでの一連のプロセスを、患者さんの視点から時間軸に沿って可視化したものです。
薬の選択、転院、そして退院——難病を抱える患者さんの道のりには、様々な「心の動き」があります。病と向き合い、治療を進める中で、どのような情報に触れ、誰の言葉に耳を傾け、そしてどのような選択をしているのでしょうか?
今回は、難病と向き合い、治療を経験されてきた方へのインタビューを実施しました。
実際のペイシェントジャーニーマップをもとに、診断時の衝撃から、周囲の反応、就職、再発や退職といった人生の転機における複雑な心情を深く掘り下げています。
下記に当てはまる方にお薦めの動画です。
・ペイシェントジャーニーマップの活用事例を知りたい方
・難病患者のインサイトを深く理解したい方
・患者の声から、より良い医療コミュニケーションのヒントを得たいと考えている方
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難病・希少疾患患者への調査事例集
難病・希少疾患の患者に対して調査を行う場合、定量調査であれば回答数が大切になってくるため、多くの患者さんの協力を得ていくことが重要です。
アスマークでは、当社が抱えるパネルからだけではなく、患者会との連携や疾患のインフルエンサーと連携したリクルートを可能としているため、難病・希少疾患の患者さんのリクルートについても実績がございます。
本紙では、当社で実施可能な「難病・希少疾患の患者に対する調査」の事例をまとめてご覧頂けます。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● メディカルリサーチを担当している
● 難病・希少疾患患者への調査方法が知りたい
● 患者の声を生かしたマーケットイン開発がしたい
> 詳しく見る
アンケート等の学術研究における倫理審査項目への配慮・対応
アンケート調査やインタビューなど、人を対象とした学術研究を実施する際には、研究の有用性だけでなく、調査対象者の人権やプライバシーへの配慮が強く求められます。そのため、多くの大学や研究機関では、調査を実施する前に「倫理審査委員会(IRB)」による審査と承認を受ける必要があります。
このコラムでは、倫理審査がなぜ必要なのか、どのような研究がその対象となるのか、そして、具体的にどのような項目が審査されるのかについて解説します。
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