公開日:2025.09.05

ペイシェントジャーニーとは?実例や必要性、解決課題と企画への取り入れ方など紹介

  • マーケティングリサーチHowto

患者さんを対象とした調査で、「もっと本音を引き出したい」「表面的な言葉の奥にあるインサイトを掴みたい」と感じたことはありませんか?
患者さんは、ご自身の病気や治療と向き合う中で、本当の気持ちに蓋をしてしまうことがあります。そのような繊細な心情を丁寧に解きほぐし、真のニーズを理解するために有効な事前課題が「ペイシェントジャーニー」です。

本記事では、患者さんの経験や感情の変遷を可視化するペイシェントジャーニーについて、その基本的なことから、製薬会社が抱える代表的な課題と解決策、マクロペイシェントジャーニーとミクロペイシェントジャーニーの実例、調査設計のポイントまで解説します。

 
 

調査の質が高まる、ペイシェントジャーニーとは

「調査の質が高まる、ペイシェントジャーニー」ということで、ペイシェントジャーニーの基本的な部分を解説していきます。
まずは、ペイシェントジャーニーの必要性という部分で、患者さんの気持ちに寄り添うことについて話をしていきます。

病気のことについてインタビューをすると、患者さんから言葉がうまく出てこないことがあります。それは、病気と向き合っていると、多々あきらめたり、自分と向き合うことを避けて本当の気持ちに蓋をしてしまったりすることがあるからだと思います。
その時にいつも「大切」だと思っているのが、先ず患者さんの気持ちの本音に寄り添っていくことです。
そのために、調査前に事実を振り返り、その時々の感情や時間経過の変化についてご自身で振り替えっていただくことが必要です。

そして、インタビューの時に心がけたいのは、患者さんの気持ちをすべて私に取り込むというよりも、気持ちに寄り添って受け止めてあげることです。思い出したくないことも多々あるかと思いますので、それを聞いても、モデレーター(≒インタビュアー)自身が一緒に同調するのではなく、先ずは受け止めて、共感してあげるということが必要だと思っています。

患者さんの気持ちに寄り添うことが重要

 
こういった中で、患者さんのインサイトを引き出さなければ、調査の本当の目的に沿っていくことができません。本当に願っていること、困りごとを見つけてあげることで、患者さんの気持ちに寄り添うこともできると考えます。
 
 

意識と行動

患者さんの気持ちに寄り添い、「インサイトを把握する」ということがどういうことかを解説していきます。

先ず、患者さんの意識行動を深く知り、明らかにしている必要があります。
この意識と行動の違いは以下です。

意識:頭の中で「こうしていきたい」と考えること
行動:実際に動いていくこと

 
突然で恐縮ですが、皆さま、「朝早く起きよう」と思っても、実際には二度寝をしてしまうことありませんか?

おそらく、ご経験がある方多いのではないかと思います。
患者さんの場合、治療のために行動をしようと思っていても、なかなかできなかったり、取り組めなかったり、することがあります。
そのため、意識と行動を一括りにはできませんので、ペイシェントジャーニーマップというものを作成することによって、ご自身でも見つめ直していただくことが必要と考えています。

患者さんの意識と行動を深く知ることが必要

 
具体的には、上図で箇条書きにした、「治療方法・薬剤の認知のきっかけは何かを把握」であったり、「治療に向き合う意識の変遷に影響を与えた事を把握」などとなります。
患者さんには、こういった内容について整理、明らかにして、ペイシェントジャーニーマップを作成していただき、インタビューに臨んでいただくことが有効だと考えております。
 
 

ペイシェントジャーニーとは

そもそものペイシェントジャーニーについて解説をしていきます。

ペイシェントジャーニーとは、患者さんが医療サービスを受けることで経験する“あらゆる接点”のプロセスです。

例えば、時系列で思い出す限りの経験を書き出し、その時のお気持ちを折れ線グラフなどで変遷を記載していただきます
こうすることによって、同じような治療のときでも、そのときの状況で「辛く感じていたり、そうでなかったり」や「それの違いはどうだったのか」など、その時々の気持ちの変化について深く探っていることができるようになります。
また、ご作成いただいた作成物を見ることによって、お互いに可視化しながら患者さんの気持ちに寄り添ったインタビューをすることができますので、気持ちの負担にならないように、本音を探っていくということが重要です。
 
 

ペイシェントジャーニーを活用することで得られるメリット

ペイシェントジャーニーを活用することで得られるメリットについて解説していきます。

メリットをまとめると下表になります。

表 ペイシェントジャーニーを活用することで得られるメリット
メリット 解説
対象者のインサイトを明確 表面的な言葉は、顕在化しているので、わりとポロ、ポロと話していただきます。一方で、表面的ではなく、奥底にあるものは、自分でもわかっていない部分もあったりするため、話すことが困難です。

そういった時にペイシェントジャーニーがあると、「本当の気持ちは何だったのか?」といったところを探っていることができます。

コンタクトポイントの状況を把握 その時々で、どんな情報を得て、どう気持ちが変わっていったのか、というところを明らかにすることによって、どんな情報の影響を受けたのか、どういう事象がその方に影響を与えたのか、といったことを明確にすることできます。
対象者の行動と気持ちの関連性を理解 前述、意識と行動の話をさせていただきましたが、この意識と行動には、必ず関連性があります。その関連性をひも解くことで、「なぜその意識から行動に至ったのか?」といったことを理解していくことができます。
インタビューの効率化 インタビュー中は、対象者の方が自分の中で強く思っていることを喋りがちで、それにずっと耳を傾けているだけですと、限られている時間の中で、大切なところまでたどり着くことができません。

そのため、先ず事実を列挙していただき、全体を俯瞰した中で、ポイントをこちらで見極め、インタビューをすることがカスタマージャーニーがあると可能となるため、インタビューの効率化が図れます。

 
 

2つのペイシェントジャーニー

ペイシェントジャーニーは、下図のようにマクロとミクロの2種類があります。

2つのペイシェントジャーニー
図 2つのペイシェントジャーニー

 
マクロは、人生単位発症前~現在に至るまでのペイシェントジャーニーとなるため、広くその方を俯瞰してみることができます。
一方で、ミクロは、患者さんが発病して認知するところ~現在に至るまでのペイシェントジャーニーとなるため、ピンポイントで見ていく形になります。

このマクロとミクロは、両方を使うこともありますし、片方だけ使うこともあり、目的課題に合わせて使い分けることが求められます
 
 

解決課題と企画への取り入れ方

製薬会社が抱える代表的な課題と解決策について解説しつつ、マクロペイシェントジャーニーとミクロペイシェントジャーニーの一例を紹介していきます。

製薬会社が抱える代表的な課題と解決策

この章では、製薬会社が抱える代表的な課題と解決策について、「開発・薬事」、「メディカルアフェアーズ(Medical Affairs: MA)」、「マーケティング」の3つに分けて紹介します。
※ メディカルアフェアーズ(Medical Affairs: MA)とは、製薬会社において、新薬の開発から市販後までをコーディネートする組織です。

まず、まとめた図が下図です。

製薬会社が抱える代表的な課題と解決策
図 製薬会社が抱える代表的な課題と解決策

 
開発・薬事
開発・薬事の部分では、「患者にとっての治療の意義を明らかにしたい」や「治験における要配慮事項が分からない」が代表的な課題として挙げられます。

これらの課題に対して、ペイシェントジャーニーを活用することで、例えば、患者さんが疾患を発症してしまったときに、「生活上でどのような困難を抱えていらっしゃるか?」や「通院や入院のご経験から、どのような不安や負担を感じたか?」などを把握することができます。
また、新薬開発の際に、「どの症状が患者のQOL(Quality of Life)に最も影響を与えているか?」なども捉えていくことができます。
 
 
メディカルアフェアーズ
メディカルアフェアーズでは、「クリニカルクエスチョン(Clinical Question: CQ)になるような患者の課題を知りたい」が代表的な課題として挙げられます。
※ クリニカルクエスチョン(Clinical Question: CQ)とは、臨床的疑問のことで、病態や評価、治療、リスク、予防に関するものなど様々な種類があります。

この課題に対してはペイシェントジャーニーを活用することで、患者さんのお悩みやお困りごとなどについて、時系列で整理するので、クリニカルクエスチョンを導き出すことが可能になります。
また、「特定のシチュエーションについて振り返ってもらうことで、困りごとの解像度を上げる」こともできます。
例えば、難病の患者さんほど、治療と向き合う時間や期間が長いことが往々にしてあると考えており、色んなことがあるでしょう。「なぜそのタイミングでその薬を服用したのか?」や「なんでこのタイミングでセカンドオピニオンに切り替えたんですか?」などの疑問に対して患者さんの生活の背景を定性的に知ることができ、より具体的な対応策を検討することにつながります。
 
 
マーケティング
マーケティングでは、「患者のペルソナが浮かんでいない」や「どのように処方が変化しているか知りたい」が代表的な課題として挙げられます。

ペイシェントジャーニーを活用することで、発症から治療に至るまでの流れを整理することができ、患者さんの全体像を可視化できます。また、薬剤変更時に特化したジャーニーにより、薬剤スイッチの実態を把握することもできます。
例えば、あるタイミングで別の薬を切り替えた患者さんは、「どのような不安や興味・着たいを抱いていたのか?」などを分析することで、適切なマーケティングの施策に応用していけます。
 
 

ペイシェントジャーニーで解決するには

ペイシェントジャーニーには、マクロとミクロの2種類があることを前述させていただきましたが、先ほど提示した図の右側に、そのマクロとミクロをオレンジ色と水色でテキストを塗った図が下図です。

製薬会社が抱える代表的な課題と解決策(マクロ/ミクロ)
図 製薬会社が抱える代表的な課題と解決策(マクロ/ミクロ)

 
そして、マクロな課題とミクロな課題という部分で、簡単な例と共に話をしていきたいと思いますが、先ずは感覚的にわかりやすいミクロの話からしていきます。
 
 
ミクロな課題

ミクロな課題の簡単な例として以下となります。

  • 診断の遅れ:がんの早期発見が困難だった
  • 治療が大変であり、副作用が辛くQOLが低下してしまった
  • 医療従事者目線:過重労働や看護師不足、電子カルテが普及していない、などで情報共有がうまくできていない

 
こういった現場レベルでの課題というのがミクロとなります。
 
 
マクロな課題

マクロな課題の簡単な例として以下となります。

  • 医療費増大
  • 少子化によって、医療従事者が不足する

 
こういった社会的なレベルの課題がマクロとなります。
 
 

課題別「定性調査」の事前課題としてのペイシェントジャーニー活用例

ここで、事前課題としてマクロのペイシェントジャーニーが必要な課題はどんなときか? ミクロのペイシェントジャーニーは必要か? といったことについて解説していきます。
※ 事前課題は、実査(リサーチの実施)の前に調査対象者へ、日記やカスタマージャーニーマップ、マインドマップの作製などのタスクをお願いすることです。

ここでもマクロあり/なし、ミクロあり/なしをマトリックス形式で図を下図、用意しました。

マクロあり/なし、ミクロあり/なしをマトリックス形式の図

 
マクロあり × ミクロあり
マクロとミクロの両方が必要な場合は、上図の左上部分です
「治験や研究のエンドポイント(アウトカム)設定インタビュー」や「疾患啓発・教育資材開発インタビュー」などでマクロの全体俯瞰とミクロのポイント的なもの、フォーカスしたものが必要なときがあります。

マクロあり × ミクロなし
マクロのみ必要な場合は、上図の左下部分です。
「患者レジストリ構築のためのインタビュー」や「一般的なペイシェントジャーニー分析」といったマクロの全体俯瞰が必要なときに、マクロあり、ミクロなしで行うときがあります。

マクロなし × ミクロあり
ミクロのみ必要な場合は、上図の右上部分です。
「アドヒアランスに関するインタビュー」や「製品デバイス/アプリ等のユーザーテスト」、「他社/自社製品の満足度調査」などは、ミクロのポイント的なもの、フォーカスしたものが必要とあり、ミクロのみで調査することきがあります。

マクロなし × ミクロなし
マクロもミクロも必要がない場合もあります。
「プロトコル事前レビュー(患者アドバイザリーボード)」や「メディカルアドバイザリーボード」、「ブランディング/コミニケションメッセージ評価インタビュー」などのインタビューではペイシェントジャーニーは必要がない場合があります。
一方で、ペイシェントジャーニーとは違った事前課題を利用することもありますので、調査目的に沿った事前課題を検討しましょう。
 
 
以上、このマトリックスをご覧いただくことで、マクロまたはミクロのカスタマージャーニーをどう活用していくのか、ということを整理していきましょう。
 
 

マクロペイシェントジャーニーの一例

ここでマクロペイシェントジャーニーの一例を紹介していきます。

マクロペイシェントジャーニーの一例
図 マクロペイシェントジャーニーの一例

 
この例の項目を上から解説したものが、下表です。

項目 記載していただく内容
年齢 調査対象者ご自身の年齢を書いていただきます。
心身の変化 ご自身が感じる変化のポイントを星マークなどで書いていただきます。
これは、治療の変換点とも言えるポイントになるため、重要です。
就業・就職等 生活形態 上の段に「高校生」や「大学生」、「流通の会社に勤務」といったライフステージを書いていただきます。そして、その下に「流通システム部配属 定時に帰れる」や「営業に移動し激務」など生活形態の変化について文章で書いていただきます。
お身体の状態 「子育てでゆっくり眠れず、肌荒れ気味」であったり、「頬のシミが気になりだす。全体にくすんだ感じの顔色」であったりなど、ご自身の身体の状態やその考え方について書いていただきます。直接疾患には関係がなくても、遠因として関わっていることがありますので、重要です。
ご自身の対処方法・治療方法 実際の治療や生活での治療状況について書いていただきます。「サンゴのシミが気になり、ホワイトニング効果のマスクを使ったが、効果の実感がない」など、その時、どんな気持ちから、どんなことをしていたのかしっかり書いていただくことが重要です。
薬剤 実際の薬剤や、治療の何を使ったのかを書いていただきます。たとえば「家にある石鹸を使っていた」や、「***のチューブ」、「雑誌・口コミなどで評判の固形石鹸を通販で購入」など、経緯や気持ち含め、具体的に書いていただきます。

 
これはあくまで一例となり、その時のテーマや課題に沿って、この内容を変えていく必要がありますので、注意しましょう。
 
 

ミクロペイシェントジャーニーの一例

続いて、ミクロペイシェントジャーニーの例として下図を用意しました。

図 ミクロペイシェントジャーニーの一例
図 ミクロペイシェントジャーニーの一例

 
ミクロペイシェントジャーニーは、ピンポイントで患者さんの疾患に対するある時点から現在まで、というところで、短い期間で書いていただくことが多いです。
上図は『糖尿病』の例となりますが、「糖尿病に関して取り組んだ最初の時点から」というときもあったり、「その薬剤を使い始めてから」といったりするときもあるので、調査目的に沿う形で検討する必要があります。

そして、折れ線グラフには、その時々でどんなこと(事実)があって、どの時の気持ち(意識)はどうだったのかを吹き出しに書いていただくことが多いです。
また、折れ線グラフの縦軸として、上図では「糖尿病に対する深刻度」としています。そのため、真ん中の線より上は、「深刻に考えていたとき」などが該当します。なお、「糖尿病に対する深刻度」という基準も調査目的やテーマ、課題で変わりますので、注意が必要です。

最後に一番下は、「取り組んでいた事/摂取商品」を書いていただく部分になります。
いつからいつまでの間、それを取り組んでいたのか、といったところを見ることによって、患者さんの全体的な深刻度と実際の事実というのを俯瞰して見ることができます。

 
 

実例紹介「難病希少患者のペイシェントジャーニー」

実例紹介として、難病希少疾患の方に実際に書いていただいたものを例にとってご紹介していきます。

マクロペイシェントジャーニーの例

下図は、多発性硬化症と診断された方に書いていただいたマクロペイシェントジャーニーとなります。

図 マクロペイシェントジャーニーの実例

 
このマクロペイシェントジャーニーはとても丁寧に、詳しく書いていただいた例となります。

この折れ線グラフのスタート地点は、気持ちの変化として、真ん中の方にあるので、可もなく不可もなくといったところです。そして、そこから悪化するのがわかり、それが「今後の注射の治療が続くことに不安」が関わっていそうなことがわかります。
普通の生活ができるようになると、だんだん気持ちも上がっていき、就職決定では「嬉しい・ポジティブ」の最高点に来ていることもわかります。
次に訪れるのは「再発・退職」となり、インタビューでは「再発・退職」や「毎日注射をすること」、「変薬への期待と怖さ」に関して深掘りをしていくことになるでしょう。特に「変薬への期待と怖さ」は、期待があるからこそ「気持ちの変化」の真ん中より上にはいますが、「その怖さとは何だったのか?」などを深掘りしてくこと可能です。

このように、しっかり書いていただけると大変深掘りがしやすく、お話が伺いやすくなり、有意義なインタビューを実施することができます
一方で、病歴が長い方の場合は、書き出すのが大変です。上図でも10年間くらいのものになりますが、もっと病歴が長い場合は、「どこから書いていただくのか」であったり、「特に何年ぐらいをしっかり書いていただきたい」であったり、検討する必要があります。また、薬剤に特化する場合は、発症年や症状の確認に加え、薬剤にポイントを絞ったマクロのペイシェントジャーニーが必要になってきます。
 
 

ミクロペイシェントジャーニーの例

下図は、先ほどのマクロペイシェントジャーニーの真ん中あたりの「やっと注射から解消」~現在までのあたりを詳しく書いていただいたミクロペイシェントジャーニーとなります。

図 ミクロペイシェントジャーニーの実例

 
このペイシェントジャーニーもしっかり書いてあるものになります。
こうしっかり書いていただけると、例えば、「調子が良くないので、仕事を休職」と書いてあるので、「どの程度、調子が良くなかったのか」を尋ねることができますし、「3日で効果を感じた。健康に戻った??」では、「どういう気持ちだったのですか」と尋ねることができます。

そのため、病気そのものを知るための調査の場合は、発症からの流れを知ることは重要ですが、ピンポイントで「薬剤の投与の経過」などをしっかり聞いていくことも重要です。
 
 
以上、マクロとミクロのペイシェントジャーニーについて例を用いて簡単に解説をさせていただきました。
重要なのは、「必要な部分に対して、しっかり書いていただいているか」、です。その“しっかり”という部分で、記入例の出し方お願いの仕方など工夫が可能です。一方で、記入例の使い方を間違えると、同じような内容を患者さんが書いてしまう場合があり、注意が必要です。
 
 

ペイシェントジャーニーを作成していただいた患者さんの声

患者さんにペイシェントジャーニーを作成していただいたことに関して尋ねてみると、下図のようなお声がありました。

図 ペイシェントジャーニーを作成していただいた患者さんの声

 
ポジティブな部分では、「事前課題を通して、自分の病気のことを振り返る良い機会になった」や「予期しないことを聞かれると急に緊張してしまうが、事前課題に沿った質問をしてもらえたお陰でとても話しやすかった」というお声をいただいております。

一方でネガティブな部分では、「事前課題で自分の病気のことを時間かけて振り返ったが、聞かれたのは薬のことだけで、一生懸命課題に取り組んだのが馬鹿らしく思えた」というお声があります。これは注意しなくてはいけないことです。「無駄なことをしていただくことは失礼」と実感し、反省しました。
また、「自分は病歴が長いから、書くことが多くなってしまった。その上、老眼で小さい字で記入するのがとても大変だった」というお声もありました。調査対象者さんの状況に応じて、適切ものでご回答いただく工夫が必要と反省しました。

このように、何事もポジティブな面もあり、ネガティブな面は真摯に受け止め、反省し、改善に努め、より良い調査ができるように努めております。

皆さまも、こういったネガティブなことが発生しないように、このコラムの内容を活かしていただけたらと思います。

 
 

調査設計のポイント

この章では、調査設計のポイントについて解説していきます。

まずは、調査設計のポイントとして押さえておきたいのは、「フィードバックを行える環境を整える」ことです。
マクロのペイシェントジャーニーは、患者さんが自分の人生を振り返って作成するため、時間がかかる上に、辛い記録と記憶と向き合っていくので、精神的なダメージを与えてしまう可能性があることを重々考慮する必要があります。そのためには、インタビュー中フィードバックをすることがとても重要です。
もし、フィードバックをする時間が取れない場合は、「ポイントを絞った事前課題にする」や「事前課題を設けない」という選択肢も検討する必要があります。

図 フィードバックを行える環境を整えることが重要

 
また、インタビュー中にも、このことを頭に入れてインタビューしていくことも重要です。
 
 

患者の特性に適した課題設計をする

続いて、重要なポイントとして「患者さんの特性に得した課題設計」というのがあります。
高齢者に多い『がん』や『認知症』といった疾患の場合、パワーポイントで作業できる方が少ないです。紙であっても印刷ができないなど発生する場合があります。そういったことを考慮しながら課題設計をする必要があります。

図 患者さんの特性に適した課題設計が重要

 
 

ワークショップで得られた情報を収れん

最後のポイントとして、「ワークショップで得られた情報を収れん(1つにまとめる)」する工程についても押さえましょう。

ペイシェントジャーニーを使ったインタビューをした後に、インタビューのときの発言のみならず、「そこの奥にあることはどういうことだろうか」や「これは、裏を返せばこういうことだよね」、「あの時、ハッとしていらっしゃったけど、あのハッとしたところが重要だったんじゃないか」といったことを話し合うため、ワークショップを開催し、得られた情報を収れんさせていきましょう。

図 ワークショップで得られた情報を収れん

 
そうすることで、言葉尻だけではなく、対象者の表現や表情など情報を加味していくことで、より良い調査にすることができます。

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まとめ

ここまで、調査の質を高めるための「ペイシェントジャーニー」について、その必要性から具体的な作成例、調査設計のポイントまでを網羅的に解説しました。

ペイシェントジャーニーの最も重要な価値は、単に患者さんの行動を時系列で追うだけでなく、その時々の感情の起伏や、意識と行動の背景にある関連性を可視化できる点にあります。これにより、患者さん自身も気づいていないような潜在的なニーズ、すなわち「インサイト」を深く理解することが可能になります。

効果的な活用のためには、以下の3つのポイントを意識することが不可欠です。

調査目的に合わせた設計:人生全体を俯瞰する「マクロ」と、特定の期間に焦点を当てる「ミクロ」を適切に使い分ける。
患者さんへの配慮:ペイシェントジャーニーの作成が精神的な負担になり得ることを理解し、インタビューでの丁寧なフィードバックを心がける。
情報の集約:インタビューで得た情報をワークショップなどで多角的に分析し、言葉の裏にある本質を見抜く。

ペイシェントジャーニーは、患者さんという「一人の人間」に真に寄り添うための強力な事前課題です。
本コラムを参考に、患者さんへの調査の質を一段と高め、より有意義な調査にしていきましょう。

 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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メディカル領域のマーケ課題を解決、ペイシェントジャーニーを活用したリサーチ手法とは

メディカル領域のマーケ課題を解決、ペイシェントジャーニーを活用したリサーチ手法とは

オンライン診療や少子高齢化が加速する昨今の医療・製薬業界において「患者視点」のマーケティング活動はますます重要視されています。

新薬の市場浸透や疾患啓発、治療継続率の向上に寄与できるリサーチソリューションの一つに、患者の行動や感情の変遷を可視化する「ペイシェントジャーニー」 の活用が挙げられます。ペイシェントジャーニーとは、患者が疾患の認知から治療選択・継続・中止に至るまでの意思決定プロセスや情報接点を可視化し、行動や感情の変遷を分析する手法です。

本セミナーでは、ペイシェントジャーニーを活用してマーケティング施策を強化する方法を、実際の難病患者の事例とともに詳しく解説します。

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難病・希少疾患患者への調査事例集

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難病・希少疾患の患者に対して調査を行う場合、定量調査であれば回答数が大切になってくるため、多くの患者さんの協力を得ていくことが重要です。

アスマークでは、当社が抱えるパネルからだけではなく、患者会との連携や疾患のインフルエンサーと連携したリクルートを可能としているため、難病・希少疾患の患者さんのリクルートについても実績がございます。

本紙では、当社で実施可能な「難病・希少疾患の患者に対する調査」の事例をまとめてご覧頂けます。

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ペイシェントジャーニーマップで可視化する、難病患者のリアルな心の動きとは?

ペイシェントジャーニーマップで可視化する、難病患者のリアルな心の動きとは?

ペイシェントジャーニーとは、患者さんが病気を発症してから診断、治療、そして回復に至るまでの一連のプロセスを、患者さんの視点から時間軸に沿って可視化したものです。

薬の選択、転院、そして退院——難病を抱える患者さんの道のりには、様々な「心の動き」があります。病と向き合い、治療を進める中で、どのような情報に触れ、誰の言葉に耳を傾け、そしてどのような選択をしているのでしょうか?

今回は、難病と向き合い、治療を経験されてきた方へのインタビューを実施しました。
実際のペイシェントジャーニーマップをもとに、診断時の衝撃から、周囲の反応、就職、再発や退職といった人生の転機における複雑な心情を深く掘り下げています。

下記に当てはまる方にお薦めの動画です。
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難病・希少患者の3名へグルイン調査! 「医療の社会的認知における、実態とバイオ製剤の認知向上」

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昨今、「患者中心の医療」という言葉が各所で聞かれるようになってきており、研究開発やマーケティングにおいて患者さんの声を取り入れる動きが増えてきています。

そこで今回はバイオ製剤を実際に使用している3人の難病患者さん(強皮症・乾癬・多発性硬化症&潰瘍性大腸炎を抱える方々)に「最新の医療を受けていて感じること」についてインタビューを行いました。バイオ製剤の使用に至るまでのプロセス、使用して感じたこと、通院や医療費の負担など、患者さんの声を幅広く伺っております。

下記に当てはまる方にお薦めの動画です。
・バイオ製剤の利用者の声が聞きたい
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アンケート調査やインタビューなど、人を対象とした学術研究を実施する際には、研究の有用性だけでなく、調査対象者の人権やプライバシーへの配慮が強く求められます。そのため、多くの大学や研究機関では、調査を実施する前に「倫理審査委員会(IRB)」による審査と承認を受ける必要があります。

このコラムでは、倫理審査がなぜ必要なのか、どのような研究がその対象となるのか、そして、具体的にどのような項目が審査されるのかについて解説します。

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本記事では、スクリーニングの概念と重要性、各段階、倫理的観点について解説します。

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