
2020.09.23
これからの日本を支えるデジタルネイティブなZ世代の特徴
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公開日:2025.09.12
学術調査は別として、マーケティングリサーチの多くの定量調査では、冒頭で「この調査は○○のために○○が実施しています」といった具体的な概要を伝えることはほとんどありません。理由は単純で、概要を詳しく説明すれば回答にバイアスがかかる恐れがあるからです。ただし、すべてのケースで黙って進めるのが最適というわけではありません。調査の種類や回答者との関係によっては、適度に概要を共有することが回答の質や協力度を高める場合もあります。
本稿では、この「概要を伝えることは誘導になるのか」というテーマを、調査設計の観点から考察します。
調査で用いられる「概要」という言葉は幅があります。商品改善や働きやすさ向上といった安心感を与えるための大枠の説明を指す場合もあれば、新旧商品の優劣検証やブランド評価のように、調査そのものの核心に直結する場合もあります。前者は参加者に安心を与える一方で、後者を過度に伝えると回答行動そのものをゆがめてしまう恐れがあります。この境界をどう扱うかは、設計段階で常に意識しておくべき課題です。
適切な範囲で概要を伝えることには確かなメリットがあります。従業員満足度調査で「働きやすさ改善に活かします」と伝えれば、回答者は自分の意見が組織変革に結びつくと理解し、具体的で誠実な回答を返しやすくなります。特にインタビューなどの定性調査では、テーマの大枠を共有しておくことで議論が脱線しにくくなり、有用な知見が得られるという実感があります。また、自分の声が社会や組織に役立つと認識できれば、調査を単なる「データ収集」ではなく「共創プロセス」として捉え、回答者の主体性を引き出すことにもつながります。
一方で、概要を過度に詳しく伝えることはバイアスを誘発します。典型例は期待バイアスです。「リニューアル品の評価を調べています」と伝えれば、多くの人が「新しい方が良い」と答えやすくなります。こうした影響を避けるためにブラインドテストが行われるのはそのためです。また、「不満点を集めたい」と説明すると、不満を持つ層ばかりが集まり、代表性が崩れるリスクも生じます。調査設計においては「代表性を守る」という単純な発想よりも、どのようなバイアスが入り得るかを事前に見極め、制御する姿勢が求められます。
実務では、調査の種類によって「どの程度、目的や背景を回答者に伝えるか」の方針が変わります。
まず 消費者向けの定量調査 では、調査概要を明示することはほとんどありません。たとえば商品評価や広告効果測定のアンケートで「新旧商品の優劣を検証しています」と説明してしまえば、回答者が期待に合わせて答えてしまう可能性が高いからです。そのため調査冒頭では、匿名性の確保や「正解はありませんので率直にお答えください」といった安心感を与えるメッセージにとどめるのが一般的です。ここでの配慮は、バイアスを避けてデータの一般化可能性を守ることに直結しています。
これに対して 定性調査(インタビューなど) では事情が異なります。参加者はある程度自由に発言するため、調査の方向性が共有されていないと議論が大きく逸れてしまいがちです。そのため「本日は○○というテーマについて伺いたい」といった大枠を伝えることで、回答者がどの視点で話せばよいかを理解し、より具体的で深い意見を引き出しやすくなります。目的を完全に隠すのではなく、議論を円滑にする範囲で共有することがポイントです。
さらに 従業員調査のように回答者と依頼主体が近い関係にあるケース では、目的をある程度説明した方が効果的です。たとえば「この調査は職場環境の改善に活用します」と伝えると、回答者は「自分の声が組織を変える一助になる」と理解し、協力度や回答の真剣さが増します。逆に背景を全く説明しないと、「どうせ何も変わらない」と不信感を抱かれ、表面的な回答にとどまってしまうリスクがあります。
なお、学術調査は扱いが異なります。研究倫理の観点から、研究目的や使用方法を事前に明示し、参加者の同意を得ることが重視されます。これは「回答者保護」の観点が優先されるためであり、企業リサーチのようにバイアス回避を第一に考える設計とは目的が異なります。
重要なのは、回答方向を押し付けるのではなく、回答者が素直に意見を述べられる環境を整えることです。そのためには、まず「個人が特定されない」「正解は存在しない」と明示して安心感を与えることが大切です。加えて、「商品改善に役立てる」「職場づくりの参考にする」といった活用イメージを示すことで、自分の回答が意味を持つと理解してもらえれば、調査への参加意欲も高まります。
結局のところ、概要を伝えることが誘導になるかどうかは単純に白黒をつけられる問題ではありません。重要なのは、どの概要を、どの程度、どのタイミングで伝えるかという判断です。不用意に伝えれば調査結果は歪み、意思決定を誤らせかねません。しかし適切に伝えれば、回答者の安心と主体的協力を引き出し、深いインサイトにつながります。調査設計におけるこの微妙なさじ加減こそ、リサーチャーの判断力が試される領域といえるでしょう。
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アンケートの調査票の作り方
初めてアンケート調査をする方は、調査票(質問紙)の設問文と選択肢をどのように作っていくべきか悩まれると思います。アンケートの調査票の作り方と押さえるべきポイントをご紹介します。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 初めてアンケート調査を実施する
● アンケート調査の作り方がわからない
● アンケート調査で失敗したことがある
● より質の高いアンケート調査をしたい
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【検証レポート】「聞き方の違い」「アンケート画面の作り」による回答への影響とは?
アスマークのリサーチャーによる実験調査シリーズの第3弾として、今回は様々な業種や商材をテーマに、NPS・NRS間における比較を初めとした「聞き方の違い」に焦点を当て、どの程度調査結果が変容するかを調査しています。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● モニターの回答バイアスを最小限に抑えたい
● NPS・NRSのどちらが自社のアンケートに適すか知りたい
● 自社カテゴリに合うアンケートの特性を知り、調査設計や実務へ活かしたい
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【検証レポート】アンケートの回答負荷、データに与える影響は?
「回答負荷によってどの程度調査結果が変わるのか?」について、実データによる具体例を提示し、以下項目などを検証し解説したレポートです。
● 設問文の長さ
● 意識してほしい文言の強調の有無
● 選択肢の多さ
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● アンケートの回答負荷でどの程度調査データに差が出るのか知りたい
● 設問設計による回答バイアスを最小限に抑えたい
● アンケート調査を設計しているため、事前に設計による回答の違いを把握しておきたい
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バイアスとは
インターネット調査をはじめとして、市場調査において決して無視することのできないものがバイアスです。バイアス(bias)とは、”偏った”や”斜めの”という意味を持つ言葉で、一般的には“先入観”や“偏見”といった言葉と認知されています。バイアスは人が何か物事を考えたり、判断したりするときに頻繁に生じます。
そんな「バイアス」について、本記事では基本的なことから、種類、及ぼす影響などについて解説しています。
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バイアスはゼロにならない!だからこそ重要になる調査設計
調査をしていると、必ずといっていいほど出てくる言葉があります。それが「バイアス」です。
バイアスとは、調査結果に影響を与える偏りのこと。統計や心理学の分野では、さまざまな種類のバイアスが知られています。
本記事ではバイアスの影響を小さくする工夫や設計で抑えられるバイアス、結果の解釈で意識すべきことなどについて解説しています。
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回答バイアスとは?アンケートの調査票作成時に気を付けたい回答バイアスについて、種類や具体例を紹介
マーケティングリサーチにおいて、顧客のニーズや市場動向を正確に把握することは非常に重要です。そして、そのための手段として欠かせないのが「調査票」を用いたアンケート調査です。しかし、どんなに綿密に調査設計を行っても、調査票の作り方次第では、回答者に「回答バイアス」が生じ、結果的に誤ったデータを取得してしまう可能性があります。
本記事では、回答バイアスが発生するメカニズムを理解し、その種類と具体的な対策方法を学ぶことで、より精度の高いマーケティングリサーチを実現するためのノウハウを提供します。
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