
2019.12.05
無作為抽出(ランダムサンプリング)とは?概要や抽出方法、メリットを紹介
無作為抽出(ランダムサンプリング)は、統計調査や市場調査などで母集団全体の特性を把握するために用いられる重要な手法です。膨大な調査対象から標本を無作為に抽出する……
公開日:2025.05.08
ビジネスにおいて、自社の製品やサービスを市場の中でどのように位置づけ、競合とどう差別化していくかを明確にする「ポジショニング戦略」は、極めて重要な要素です。その戦略を立てる際にとても役立つのが、「ポジショニングマップ」と呼ばれるツールです。
ポジショニングマップを使えば、市場における自社と競合の相関性を視覚的にとらえることができ、ターゲット顧客にとっての自社の強みや弱み、そして差別化のポイントを明確にする手助けとなります。
この記事では、ポジショニングマップの基本的な考え方から、実際の作成手順、戦略の成否を左右する「軸」の選び方、そして作成時に注意すべきポイントについて解説します。
ポジショニングマップとは、特定の市場における自社や競合他社の製品・サービスの立ち位置を視覚的に把握するためのツールです。
このツールでは、対象とする市場において、製品やサービスを評価するうえで重要な2つの軸(例:価格と品質、機能性とデザインなど)を設定し、それらを縦軸・横軸にしてグラフを作成します。その四象限のマップ上に、自社および主要な競合の製品・サービスをプロットすることで、市場内での相対的なポジションや競合との違いを一目で把握することが可能になります。
ポジショニングマップを作成する主な目的は、自社の製品やサービスが特定の市場において、競合他社と比べてどのような位置にあるのかを把握することです。このマップを活用すれば、自社の市場における相対的な強みや弱み、そして競合との差別化ポイントを視覚的に確認できます。
また、社内の関係者間で市場環境や戦略方針に対する共通認識を築く手助けにもなります。ポジショニングマップは戦略立案にとどまらず、意思決定のスピードや精度を高めるうえでも、重要な役割を果たすツールです。
まず、STP分析はマーケティング戦略を構築する際の基本的なフレームワークであり、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の3つの要素から成り立っています。つまり、ポジショニングは、STP分析の一部になります。
このSTP分析の流れとして、初めに市場全体を顧客の属性やニーズなどの基準で細分化する「セグメンテーション(S)」を行います。その後、自社が注力すべきターゲット顧客層を選定する「ターゲティング(T)」へ進めていきます。これらのステップを経て、「誰にアプローチするか」を明確にします。
そして、そのターゲットに対して「自社の製品やサービスが競合とどう異なるのか」「どのような独自の価値を提供できるのか」という、「どのように差別化していくか」を考えるのが「ポジショニング(P)」です。
このポジショニングにおいて、自社の立ち位置を視覚的に整理・検討するための効果的なツールが「ポジショニングマップ」です。このマップを活用することで、ターゲット顧客にとって最も魅力的なポジションを見つけ出すための戦略的判断が可能になります。
ポジショニングマップは、マップ上で自社と競合他社の製品・サービスを比較することで、「価格は高いが品質はトップクラス」「機能はシンプルだがデザイン性に優れている」など、自社の具体的な強みや差別化ポイントを視覚的に明確化できます。これにより、ターゲット顧客に対して「何を、どのように」訴求すべきかを把握し、マーケティングメッセージやプロモーション戦略の精度を高めることが可能です。
また、競合がまだ進出していない「手薄なエリア」、いわゆる「ホワイトスペース」をマップ上で発見できれば、未だ満たされていない顧客ニーズをとらえる、新たな商品やサービス開発のヒントにもつながります。
こうした分析結果は、自社の経営資源をどこに集中させるべきかといった、戦略的な意思決定を行う上でとても有効です。
ポジショニングマップを効果的に活用するには、正しい手順に沿って作成することが必要です。なんとなく軸を設定したり、感覚的に競合を配置したりしただけでは、的確な市場分析や実効性のある戦略立案にはつながりません。
この章では、ポジショニングマップを作成する際に押さえておきたい基本的なステップについて、順を追って解説します。
ポジショニングマップ作成における最初のステップが「設計」です。この段階では、マップを実際に描き始める前に、「何のために作成するのか(目的)」、そして「誰に向けたポジショニングなのか(ターゲット顧客)」を明確に定める必要があります。
もし目的があいまいなままだと、どのような評価軸を設定すべきか、どの競合と比較すべきかといった基本的な方針が定まらず、結果としてマップを戦略立案に活かしきれない事態になります。例えば、「新たな顧客層を開拓したい」「競合との差別化ポイントを明確にしたい」「既存サービスの改善点を見つけたい」など、具体的かつ戦略的な目的を設定することが重要です。
その後、設定した目的を達成するために焦点を当てるべき「ターゲット顧客」を明確に定義します。年齢、性別、ライフスタイル、購買動機など、できるだけ具体的な顧客像を描くことで、このステップ以降の分析や判断に一貫性が生まれます。この「ターゲット顧客を明確に定義する」工程は前述した、STP分析のセグメンテーションとターゲティングを行うことも含まれます。
この「目的」と「ターゲット」の明確化は、マップ作成のすべてのプロセスにおいて軸となる判断基準であり、効果的なポジショニングを行うための土台となります。
このステップでは、ターゲット顧客の「生の声」や製品・サービスに対する評価をもとに、購買の意思決定において最も重視される「購買決定要因(KBF:Key Buying Factor)」を洗い出します。
ここで重要なのは、定量※1・定性※2の調査から得られた情報を深く掘り下げて分析することです。インタビューの発言記録(発言録)やアンケート回答といった顧客からのフィードバックを一覧化し、「機能」「価格」「デザイン」「使いやすさ」「ブランドイメージ」「購入体験」などのカテゴリーに分類・整理していきます。
※1 ここでの「定量」とは、定量調査のことを指し、主な調査手法にWebアンケート調査(ネットリサーチ)などがあります。
※2 ここでの「定性」とは、定性調査のことを指し、主な調査手法に、インタビュー調査などがあります。
また、グループインタビューを実施する際、グループワークを行うのも効果的です。下図のような付箋紙を用いた情報のグルーピング(KJ法のような手法)を活用すると、意見の共通点や傾向が視覚的に把握しやすくなります。特に、頻繁に言及されている点や、感情のこもった意見には、注目することが大切です。
また、グループインタビューでは、参加者同士の意見の相互作用から、一人では得られない洞察や共通認識が浮かび上がる場合があります。こうしたグループダイナミクス※3も、購買決定要因を見極める上で貴重なヒントになります。
※3 グループダイナミクスとは、集団における個人の相互作用や影響力関係のことを指します。
このようなプロセスを通じて、「品質が最優先」「とにかく安さ重視」「デザイン性は絶対に譲れない」といった、顧客の購買判断を左右する具体的な要素を複数洗い出していきます。これらの購買決定要因の候補が、次のステップでポジショニングマップの軸を設定するための重要な仮説につながります。
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ポジショニングマップの作成において、マップの精度を大きく左右するのが、縦軸・横軸となる「2つの軸」の設定です。適切な軸を選定することで、市場における自社や競合の立ち位置が明確になり、差別化のポイントも浮き彫りになります。
この軸の選定には、前のステップで洗い出したターゲット顧客の購買決定要因(KBF)が重要な手がかりとなります。購買決定要因の中から「ターゲットにとって重要性が高い」「競合との間に明確な違いが出やすい」といった要素を選び、2つを軸の候補として検討します。
軸の決定には、リサーチデータの活用が効果的です。
定量調査で得られたデータを使えば、下図のような価格の高低や機能の多寡、店舗数など、客観的かつ信頼性の高い数値データに基づく軸を設定できます。
その際、コレスポンデンス分析などの統計手法を用いれば、より実態に近いマッピングが可能です。ちなみに、コレスポンデンス分析のアウトプットイメージとしては、下図となります。
一方で、定性調査によって得られた顧客の印象や感覚からは、下図のような「地味 ⇔ 派手」「親しみやすい ⇔ 高級感がある」といった、感覚的で主観的な軸を抽出できます。
これらは数値化が難しいものの、ターゲット顧客の認識をとらえるうえで、とても効果的な指標になります。
2つの軸を決定する際に重要なのは、ポジショニングマップが「顧客の視点」を反映するものになることです。そのため、マップの作成目的や対象市場、そしてターゲットの購買決定要因に最も合致する2つの軸を、収集したデータをもとに慎重に選定することが、マップ作成の成否を分けるポイントとなります。
ポジショニングマップの軸をどのように選定するかを理解するには、具体的な製品・サービスカテゴリーを想定して考えることが効果的です。ここでは、多くの人に馴染みのある「コーヒーチェーン」を例に挙げてみます。
コーヒーチェーンの例
コーヒーチェーンを選ぶ際、ターゲット顧客が重視する購買決定要因(KBF)としては、「価格帯」「コーヒー豆の品質」「店舗の雰囲気や居心地」「サービスのスピード」「メニューの豊富さ」などが考えられます。
この中から、顧客にとって重要であり、かつ競合との間に明確な違いが生まれやすい2つの要素を軸として選定します。たとえば以下のような組み合わせが効果的です。
・軸1:価格帯(高い ⇔ 安い)
・軸2:店舗の雰囲気(落ち着いている ⇔ カジュアル)
このように、比較的定量的な「価格」と、感覚的・定性的な「雰囲気」という異なるタイプの軸を組み合わせることで、マップに広がりと説得力が生まれます。また、「価格は高めだが落ち着いた空間を提供しているブランド」や、「価格は安いが気軽に立ち寄れる雰囲気を持つブランド」といった、各社のポジションを顧客視点で明確にとらえることができます。
この他にも、マップの目的やターゲット顧客の関心によっては、以下のような軸設定も可能です。
・「品質(高い ⇔ 低い)」×「サービスの提供スピード(速い ⇔ 遅い)」
・「メニューのバリエーション(多い ⇔ 少ない)」×「健康志向(高い ⇔ 低い)」
重要なのは、マップ作成の目的とターゲット顧客の購買決定要因に最も適した2つの軸を選定することです。
ステップ③でタテ・ヨコの軸が決まったら、次はポジショニングマップのテンプレート上へのプロット(マッピング)作業に進みます。
まずは、市場内で主要な競合とされる製品やサービスを、下図のように事前に把握している情報に基づいてマップ上に配置していくのが一般的です。
これにより、市場全体における各競合の立ち位置や関係性を視覚的に把握でき、市場構造が一目で分かるようになります。
その上で注目すべきポイントは、マップ上で競合が少ない、あるいは存在しない「ホワイトスペース」と言われる領域の発見です。この領域は、競争が緩やかで、かつ顧客のニーズが十分に満たされていない可能性があり、新たなビジネスチャンスが潜んでいることを示唆しています。このホワイトスペースや、自社の強み・ベネフィットを最も効果的に活かせると考えられるポジションを検討します。
ここで重要なのは、単に「空いている場所」を埋めるという発想ではなく、ターゲット顧客の視点に立ち、顧客にとって自社の価値が最も魅力的に映るポジションを選ぶことです。このようにして作成されたポジショニングマップは、競合との違いや自社の強みを客観的に確認できる有力な戦略ツールとなり、今後のマーケティング施策の方向性を明確にする手助けとなります。
ステップ④でポジショニングマップが完成したら、次にマップの詳細な分析を行います。
まず、現在の自社のポジションが戦略的に意図した通りの位置にあるかを確認し、さらに市場環境や競合との関係において、十分な優位性が確保できているかを客観的に評価します。その際、自社と競合の位置がマップ上でとても近く、差別化が図れていない場合や、狙っていたポジションが顧客ニーズと乖離していると判断される場合には、市場における自社の立ち位置の見直し(リポジショニング※4)が必要となります。
※4 リポジショニングとは、市場動向や顧客ニーズの変化、競合の新たな動き、あるいは自社製品・サービスの刷新などに応じて、自社のポジションを戦略的に再定義するプロセスです。
マップの分析結果から、より明確な差別化が可能な領域や、新たなホワイトスペースが見つかれば、そのポジションへのリポジショニングを検討します。
ここで重要なのは、リポジショニングが単なる「位置の入れ替え」ではないという点です。リポジショニングは、ターゲット顧客への提供価値やブランドの伝え方などの再設計を伴う、本質的なマーケティング戦略転換を意味します。
ポジショニングマップは、戦略策定においてとても効果的なツールです。しかし、その作成方法を誤ると、期待した効果を得られないこともあります。
軸の選定
何より重要なのが、軸の選定です。軸を選定する際は、自社の都合や主観に基づいて軸を決めるのではなく、必ずターゲット顧客の購買決定要因(KBF)をもとに、顧客視点に基づくことが大切です。
また、「良い/悪い」などのあいまいな表現や、「価格が高い⇔安い」と「高級感がある⇔ない」のように関連性が強すぎて区別しづらい軸の組み合わせは避ける必要があります。
マッピングの客観性
次に大切なのが、マッピングの客観性です。自社や競合の位置を主観や印象だけで配置するのではなく、できる限り定量・定性調査に基づいた信頼性のあるデータを活用することが重要です。また、対象とする市場や競合の選定が適切であるかも、マップの妥当性を左右する重要な要素となります。
マップ作成が目的化
マップ作成が目的化してしまうことに注意が必要です。ポジショニングマップはあくまで、市場における自社の立ち位置を可視化し、そこから戦略的な意思決定やマーケティング施策につなげるための手段です。そのため、マップを作成して満足するのではなく、その結果をもとにどのようなアクションを起こすかが重要となります。
定期的な見直しと更新
最後に、市場環境や顧客ニーズは常に変化しているため、ポジショニングマップも一度作って終わりではなく、定期的な見直しと更新が必要です。環境の変化に応じてマップを柔軟に修正し、常に実態に即した効果的な戦略立案へとつなげます。
この記事では、「ポジショニングマップ」について、その基本的な考え方から具体的な作成手順、そして作成時の注意点について解説しました。
ポジショニングマップを活用すれば、市場における自社と競合の立ち位置を視覚的に把握できるだけでなく、自社の持つ独自の強みや提供価値をより明確にすることが可能です。さらに、まだ競合が十分に進出していない「ホワイトスペース」など、新たな市場機会を見出すきっかけにもなります。
激しく変化する市場の中で競争優位性を築き、持続的な成長を実現するためには、的確なポジショニングの設定が重要です。
ぜひこの記事で紹介した手順やポイントを参考に、貴社のビジネスに最適なポジショニングマップを作成し、今後の戦略立案や意思決定に活用していきましょう。
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