公開日:2025.06.26

コンセプトテストとは?6つの重要指標や定量・定性調査の活用方法も解説

  • マーケティングリサーチHowto

新商品やサービス開発において、成功の鍵を握るのは、顧客に響くコンセプトを明確にすることです。
コンセプトとは、「誰に」「何を」「どのようにして」提供するのかを端的に表した、商品やサービスの核となるものです。ただ、どれほど素晴らしいコンセプトを考案しても、それが本当にターゲット顧客に魅力的に映るのか、あるいはどのような懸念点があるのかを把握しなければ、市場投入後の成功はおぼつかないでしょう。

そこで重要となるのがコンセプトテストです。コンセプトテストは、開発中のコンセプトを顧客目線で評価し、その受容性や改善点を明らかにするための調査です。

本記事では、コンセプトの基本的なことから、コンセプトテストの重要性、実施しなかった場合のリスク、どんな指標を押さえた方が良いか、などについて解説します。

 
 

コンセプトとは?

コンセプトとは、以下3点がまとまった商品やサービスの核となるものです。

コンセプト
  1. 誰に(想定顧客)
  2. 何を(提供価値)
  3. どのようにして(提供方法)

 
例えば、ダイソンのキャッチフレーズ「吸引力の変わらないただ一つの掃除」は、上記を内包したコンセプトといっても過言ではないでしょう。具体的には、以下のように考えられます。

  1. 掃除機を使う人
  2. 変わらない吸引力
  3. サイクロン掃除機で提供

 
このように、①~③を端的に表したものがコンセプトとなります。
 
 

コンセプトテストとは?

コンセプトテストとは、開発中のコンセプトが「ターゲット(想定顧客)に対して、本当に魅力的に捉えられているのか? あるいは、どのような懸念点があるのか?」を明らかにするテストとなります。
 
 

コンセプトテストを怠ると、どうなのか?

「商品を販売する」ことは、コンセプトテストを実施しなくてもできます。
では、このテストを怠った場合、どのようなことが起こるのか、解説していきます。

その商品が、よく売れた場合


  1. 商品の何がよくて売れたのか、わからない
  2. 4P施策のどこがよかったのか、分析できない
    ※ 4Pは、マーケティング戦略を立てる際に用いられるフレームワークで、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販売促進)の4つの要素から構成されています。

「商品が売れなかったならわかるけど、売れた場合も分析するの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。もし、分析をしないと、「その商品がどれぐらい売れそうなのか」という需要予測を立てることができず、予想以上に売れた場合に、あちこちで欠品が起こり、機会損失につながる可能性が出てきます。

また、商品のどこがよくて売れたのか、4P施策のどこがよかったのかを分析することもできず、今後に活かすことができません。

 

その商品が、まったく売れなかった場合


  1. なぜ売れなかったのか、わからない
  2. 4P施策のどこがよくなかったのか、分析ができない

売れなかった場合も同様で、なぜ売れなかったのかを分析することができません。コンセプトテストを行うことで、「ターゲットはこう感じているようだ」「調査結果のココが気になる」といったふうに懸念点を見つけることができ、対処できるものについては事前に潰しておくこともできます

 
 
このように、「何がよくて、何がよくなかったのか」が分析できないことが、コンセプトテストを怠ることで、起こり得ます。

また、コンセプトテストについて話をしていると、「調査をしたけど、売上に直接つながらない」といった話もよく聞きます。
広告と比べると、調査と商品の売上が結びつくイメージが持ちづらく、コストや手間をかけてまで調査をすることに疑問を感じたことがあるかもしれません。
まず、調査をすると、どういうところに失敗する可能性があるのか、リスクを先に把握することができます。
また、コンセプトテストをせずに商品開発を行っていくと、「売れた」「売れなかった」をひたすら繰り返していくことになり、データや知見、ノウハウなどが社内に蓄積されません。結果として、「勘・経験・度胸(KKD)」が中心の商品開発となってしまう可能性があります。
社内にとても優秀で熟練マーケターのような方がいる場合でも、「人依存」の部分が大きく、その人に何らかの事情(病気や、競合他社への転職など)で会社を離れてしまったときに、その人が持っていた知見やノウハウが会社に残らず、再現性がない、というリスクがあります。
 
 

コンセプトテストをすることで、何が得られるのか?

コンセプトテストで得られた調査結果を踏まえてマーケティング施策を考え、予算を確保し、実行することで、「その結果どのような売れ行きになったのか?」というデータやノウハウを蓄積していくことができます。
会社全体として、「『再現性のない商品開発』を繰り返すのではなく、統計的なエビデンスに基づいて商品開発をしていこう」という、段取りづくりのきっかけになり得るのがコンセプトテストです。

そのため、コンセプトテストは、「コンセプトテストをした結果、商品が売れた(あるいは売れなかった)」という結論を出すことではなく、そのテストから得られたデータやノウハウを蓄積して、今後の商品開発に活かすことが重要です。
 
 

コンセプトテストは受容性調査の一つ

まず、受容性調査は、何かを提示したときに「それがどれぐらい受け入れられているのか」といったものを調査します。そのため、コンセプトを提示するコンセプトテストは、受容性調査に含まれるのです。

それでは、コンセプトテストを含め、受容性調査はどんな調査があるのか、と言いますと、主に以下6種類あります。

  1. コンセプトテスト(商品、サービス、事業など)
  2. ネーミングテスト
  3. 価格受容性調査
  4. 広告やキャンペーンの受容性調査
  5. デザイン評価
  6. 喫食や喫飲、試用による評価

 
何かを提示したとき、と前述しましたが、「何か」には、上記種類の通り、コンセプトであったり、名前であったり、価格、広告、デザイン、商品そのものが入ります。それらがどれぐらい受け入れられているのかを調査するのです。

Tips:受容性調査と実態調査は異なる
受容性調査と混乱する調査として、実態調査が挙げられるでしょう。
いわゆる実態調査というのは、「どんな使い方をしているのか?」「どれぐらいの頻度で使っているのか?」といった、行動の部分についての調査になります。
受容性調査では、「何かを提示してみて、どうか?」という反応を調査するので、実態調査とは異なっています。

 
 

コンセプトテストで押さえておきたい指標

コンセプトテストを実施する際に押さえておきたい指標は、主に以下6つとなります。

表 コンセプトテストを実施する際に押さえておきたい指標
指標 内容
魅力度 どれくらい魅力的に見えるのか
好意度 どれくらい好きか
斬新度 目新しいと思うか
理解度 「なるほど」と理解できるか
ユニーク度 独自性があるか、他の商品と違うか
購入意向 買いたいと思うか

 
この表で、「魅力度と好意度」が、やや重なる部分を感じるかもしれません。

「魅力度と好意度」の違いとして、魅力度は、商品の機能的価値を表す度合いとなります。「それが本当に自分の生活に使えるか」「役に立ちそうか」といった有用度で魅力度を測ります。好意度は、「好き」という情緒的な価値を評価する度合いとなります。また、商材によっては、好き/嫌いという尺度で考えることがそもそも難しい場合もあるため、魅力度だけ測る場合もあります。
 
 

使う指標を決める前に確認しておきたい重要なポイント

実施しようとしているコンセプトの目的が「純粋にコンセプトを評価する(よいところ、悪いところを洗い出す)ためのものなのか」、あるいは「需要予測をするためのものなのか(この商品を出したら、どれくらい売れそうなのか)」で、調査設計が大きく変わります。そのため、何を明らかにする調査なのかは、事前にすり合わせて明確にする必要があります。

たとえば、初期段階のコンセプトであれば、「尖っている部分をどれくらい削るのか」、あるいは「もっと尖らせるのか」といった観点での調査が考えられるでしょう。また、調査後に何度か改良を重ねていった上で「どれくらい売れそうか」を判断したい場合は、需要予測がメインとなり、調査の対象者を「どういった条件にするべきか」より丁寧に考える必要が出てきます。

まずは、調査目的を明らかにし、その目的を達成するため(明らかにするため)に必要な指標を選択※するようにしましょう。
※ 欲しい指標すべてを盛り込むことができれば、理想的な場合があると思いますが、予算との兼ね合いで魅力度以外の指標は優先度を下げる、といったケースもあります。

コンセプト調査・コンセプトテストの必要性と評価ポイント

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コンセプトにおける定量調査と定性調査の活用

コンセプトテストでは、ターゲットとなる消費者を対象に、製品の受容性や興味・関心の度合い、魅力度、改良すべき点などを定量・定性の両方の側面で検証することが可能です。
そして、一般的な流れとして、以下となります。

  1. 定量調査のアンケートを実施し、定量的なデータを収集して、傾向を把握します。
  2. 定性調査のデプスインタビューなどを実施し、定性的な確認をします。

 

コンセプトにおける定量調査と定性調査
図 コンセプトにおける定量調査と定性調査

 
 

そもそも、定量調査と定性調査の違いって何?

定量調査と定性調査の違いは、上述でも軽く触れておりますが、調査手法や取り扱うデータ(数値的なデータなのか、文字的なテキストデータなのか)、分析手法など違いがあります。

ここで、コンセプトテストにおける「定量調査とは?」「定性調査とは?」という部分も解説をしていきます。
 
 

コンセプトテストにおける定量調査とは?

コンセプトテストにおける定量調査では、アンケートを実施し、魅力度や購買意向といった指標に対して、リッカート尺度を用いて評価してもらいます。その評価していただいたデータから、「『魅力的だ』『購入したい』と回答した人が何パーセントいる」といったように数値で見ていくことができます。
※ リッカート尺度とは、あらかじめ用意した明確な評価段階(スケール)のことを言います。たとえば、5段階評価が相応し、「非常に満足している、やや満足している、どちらともいえない、あまり満足していない、全く満足していない」といった評価段階です。

必要に応じて、下記のような項目も追加します。

  • コンセプトの文章を文節で区切り、どの部分に魅力に感じたのかを選択してもらう
  • 魅力的だと答えた人に、どんなところが魅力に感じたのかを自由回答で記述してもらう
  • 魅力的だと答えた人に、その商品がどのような場面(シーン)で使えそうかを答えてもらう
  • 魅力的だと答えた人に、どういった使い方を想起しているのかを答えてもらう

 

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コンセプトにおける定性調査とは?

コンセプトテストにおける定性調査では、「このコンセプト、いいな」「使いたいな」など、回答していただいた人に対して、「どういったところが使いたいと思ったのか」「どこに魅力を感じたのか」「どういうところが好きなのか」「魅力的ではあるけど、なぜ買いたいとまでは思わないのか」といったことについて、個別にインタビュー(デプスインタビュー)をして深掘りしていきます。
定性調査においても、定量調査と同様に5段階評価で評価をしていただいたり、点数を付けて(100点満点中の何点)評価していただいたり、○△×の記号に定義付けして選択してもらったりするようなケースもあります。そして、その回答に対して「なぜそう感じたのですか」「これはあなたにとってどんなメリットがあるのですか」といったことを尋ね、深掘りをします。

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それぞれの違いを理解した上で調査設計をする必要がある

定量調査で数値的な部分を把握しつつ、定性調査で「なぜ?」の深掘りをしていき、消費者の気持ちやロジックを丁寧に読み取っていきます。そして、収集したデータ、読み取ったことをコンセプト開発に活用をしていきます。
一方で、こうした理想的な調査の流れはありますが、商品開発のフェーズや予算感によって取捨選択も必要でしょう。そのときは、やはり調査目的に沿って、適切な調査方法・調査手法・調査対象者・指標などについて適切に選んでいきましょう。

 
 

まとめ

ここまで、商品開発の要であるコンセプトと、その成否を測るコンセプトテストの重要性を解説してきました。

コンセプトテストは、コンセプトがターゲット顧客に受け入れられるか、改善点はないか、を探る上で不可欠です。テストを怠ると、たとえ商品がヒットしても成功要因が不明瞭で、今後の施策に活かせません。
そして、コンセプトテストは、魅力度や購入意向といった指標を、調査目的に合わせて選択することが重要です。また、調査方法として、定量調査と、深掘りを行う定性調査を組み合わせることで、消費者のニーズを多角的に理解し、コンセプト開発に活用できます。

この記事を参考に、顧客に響くコンセプト創造の精度を高め、今後の商品開発に活かせるコンセプトテストにしていきましょう。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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