公開日:2024.02.19

調査における疾患患者のリクルートメント方法について

  • マーケティングリサーチHowto

患者調査とは?

患者調査は、製薬会社や医療機関が、新薬の開発や既存治療法の改善に必要な患者さんの生の声を集めるために実施する調査です。また、患者さんの身体データや生理学的指標の収集を行うことも患者調査に含まれます。
これらにより、患者さんの実際のニーズや治療に対する反応を理解し、より効果的な医療ソリューションを提供することが可能になります。
 

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調査設計の基礎

調査設計は、目的に合ったデータを効率的に収集するために必要になります。患者さんの負担を考慮しつつ、必要な情報を得るためには、調査の種類(定性調査や定量調査)、方法(アンケート、インタビュー、観察など)、および参加者の選定基準を慎重に決定する必要があります。
患者さんの負担がある分、調査のやり直しをするハードルも高いため、調査を失敗しないための調査設計の高いノウハウが求められます。また、調査対象者が患者さんであるため、調査設計者では分からない特殊な習慣やライフスタイル、課題などを感じている場合も多く、患者さんに寄り添った設計が求められるのが特徴です。
 
 

患者リクルートメントの方法

患者さんを調査に参加させる方法は多岐にわたりますが、ここでは主要なアプローチを紹介します。
※ここで紹介する全てのリクルートメント方法について、当社で提供可能です。
 

大規模パネルを利用したリクルート

多くの場合、会員数が多い大規模パネルを保有するリサーチ会社を通じて調査対象者となる患者さんをリクルートします。これにより、短期間で多くの患者さんからデータを収集することが可能になります。
大規模パネルの会員に対して予め疾患情報などを聴取している場合もあり、協力者数の推計が行いやすいことからも、最も一般的なリクルート方法となっております。
 

臨床試験の被験者募集(CROサービス)を行っている会社との連携

臨床試験の被験者募集サービスを行っている会社から患者さんをリクルートする方法もあります。このアプローチは、特定の疾患を持つ患者さんを正確にターゲットにするのに有効です。
 

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患者会との協力

特定の疾患に特化した患者会と協力することで、希少疾患を持つ患者さんなど、他の方法ではリクルートが難しい患者群にアクセスすることができます。
ただ患者会によっては会報誌を活用したリクルートがメインであったり、そもそもの連携自体を行わなかったりと、対応が会の方針によって千差万別となっており、事前にリクルートの可否を伺うことや前例を確認することが大切となってきます。
 

疾患のインフルエンサーと連携したリクルート

2020年ごろからコロナの影響を受けて、SNSを活用した患者さん同士の交流が急激に増えてきております。その中には多くの患者さんとつながって同病患者さんに生活の工夫を伝える患者さんや、患者さん同士のグループをFacebookやLINEオープンチャットで立ち上げた患者さんもいらっしゃいます。そういった「インフルエンサー患者」との連携により難航するリクルートが一気に加速する場合があります。
 
 

リクルートメントが難航しやすい4つのケースと対策について

患者 リクルートの中で、シンプルなアプローチだけでは患者さんが十分に集まらないケースにしばしば直面します。
そのような場合、事前にリクルートメント戦略を策定することが非常に大切になってきます。
ここではリクルートメントが難航しやすい4つのケースと、それぞれの解決策をご紹介します。
 

希少疾患のリクルート

国内に5万人未満と定義される希少疾患では、患者さんの募集が難航するケースが多くあります。
数百万人が登録している大規模パネルを活用しても、アンケートで100名・インタビューで10名にご協力いただくのにもかなり苦労することがあります。そして患者数が数千人・数百人というケースにもなると一層リクルートの難航が予想されます。
そのような場合、大規模パネルに加えて患者会や専門医からもリクルートを依頼する方法が一般的となっております。ただ患者会や専門医からのリクルート割合が高くなってしまうと調査対象の患者層に大きな偏りができてしまうので、インフルエンサー患者との連携で幅広い層に声かけしていただいたり、複数のリクルート手法を組み合わせたりすることが望ましいです。
 

広く普及していない疾患のリクルート

希少疾患と呼ばれるほど患者数が少なくないものの、その病名自体があまり知られていない場合、対象者の発掘にも苦戦が強いられます。具体例としては化膿性汗腺炎・セリアック病・流涎症といった疾患が挙げられます。
このような場合は大規模パネルで背景情報として疾患名が聴取できておらず、また患者会も設立されていないケースが多いです。
そのためリクルートとしては大規模パネルでスクリーニング調査を行い、その病気である可能性が高い方を発掘し、本調査に進んでもらうことがスピード面・コスト面で良い方法と考えられています。一方で当該疾患であることの確からしさに比重を置く場合は、専門医との連携によるリクルートが主に用いられています。
 

薬剤の使用患者数が少ないケースでは?

患者数が多い疾患でもリクルートに苦戦するケースがあります。
その中でも代表的なのが新薬を処方されている患者さんへの調査です。特に発売されて間もない薬剤の場合、薬剤の採用状況や2週間処方のルールによって実際に処方されている患者さんが全国で数千人・数百人程度ということも少なくないです。
こうなってくると大規模パネルでも目標患者数に届きにくくなってしまい、その他の方法でも効果が出にくくなっています。ただSNSを見渡すと新薬が処方された際に薬剤の写真をアップする患者さんが増えてきていることから、直接インタビューの交渉を行い、そのままご協力いただけるケースもあります。
 

注意が必要な高齢者リクルート

意外とリクルートが難航しやすいのが、対象患者が高齢者中心である場合です。
大規模パネルへの参加やSNSの利用には一定のWebリテラシーが必要で、高齢者に敬遠されがちな一面があります。昨今はWebの利用に慣れている高齢者も増えてきているものの、70歳を超えると一気にリクルートが難航し始めます。
例えば、パーキンソン病は患者数が約20万人程度と決して少なくはないですが、ほとんどの方が70歳以上であることからパネルへの登録者数やSNS利用者数はかなり限られてきてしまいます。
そのような場合では患者会や専門医にリクルートメントの協力を仰ぐことや、両親の介護をおこなっている大規模パネル会員に病気の当事者であるお父さま・お母さまを紹介いただく方法が有効になってきます。
 
 

リクルートメントのプロセスにおける課題と解決策

患者リクルートメントは、多くの課題を伴います。ここでは、一般的な問題とその解決策を探ります。
 

信頼関係の構築

患者さんから協力を得るためには信頼関係の構築は重要です。
特に病気については、その患者さんにとっての要配慮情報であることから、患者さんのプライバシー保護に対する配慮が必要です。
個人情報の取り扱いを明確化し、それを患者さんに分かりやすく伝えることが大切です。
 

倫理的配慮

患者リクルートメントでは、協力いただく患者さんの保護の観点が大切になってきます。特にインタビュー調査は予め調査の概要を通知して参加への同意を得た上で行うことが望ましいです。また調査終了後も回答内容の撤回の依頼があれば、一定期間内であればそれに応じることが協力者への配慮として必要となってきます。
 
 

成功事例と学び

実際の患者リクルートメントを通じて得られた成功事例や学びについていくつか紹介します。
 

効果的なコミュニケーション戦略

対象者が非常に限られたケースでのリクルートメントでは、一人一人から得られるインサイトが特に重要になってきます。
このことは患者さんにも理解してもらうことが望ましく、自分の意見が大きな価値を持つということ、そして安心して参加できる調査であることを事前のコミュニケーションでお伝えすることが重要です。
 

参加者からのフィードバック

調査終了後に参加者からフィードバックをいただくことで、次回以降の患者調査の改善に役立てることができます。
例えば、呼吸機能が低下している患者さんから伺った話として、テレビの取材に応じた際、一方的な質問が1時間以上続き、最後の方はへとへとで意識も朦朧としてしまったことがあったようです。
思わぬところに患者さんにとっての負担が潜んでいることから、率直なフィードバックを受けることで、時に重要な気付きを得ることができます。
 
 

まとめと今後の展望

患者リクルートメントは、患者調査の成功を大きく左右します。
今後も、テクノロジーの進化や患者さんのニーズの変化に応じて、リクルートメント戦略を進化させていく必要があります。
 
 

アスマークでの疾患患者のリクルートメントについて

アスマークには、モニターご自身や家族の疾患や介護の状況がわかる「疾患パネル」を保有しており、登録データを基に患者調査のリクルートができます。
また、患者会との連携やSNSを利用している患者さんへのアプローチも行っており、様々なリクルート戦略のご提案が可能です。

 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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