公開日:2026.08.03

調査における仮説とは?仮説を調査に落とし込む3つのポイントを紹介

  • マーケティングリサーチHowto

調査を行う目的は、「データを集めること」ではなく、得られたデータをもとに、「次に何をすべきか」を判断し、具体的な意思決定につなげることです。
そのためには、調査を始める前に仮説を明確にすることが欠かせません。

本記事の要点(サマリー)


  • 調査における仮説とは、過去の知見や分析をもとに導き出される「仮の答え」を指します。この「仮の答え」が正しいかどうかを調査で確かめるという視点を持つことが、調査成功の第一歩となります。
  • 「仮説」を調査に落とし込むための調査設計のポイントは次の3つです。

    1. 誰に聞くか?(ターゲット選定)
    2. 何を聞くか?(質問項目・指標)
    3. どうやって聞くか?(調査手法)

 
 
本コラムでは、調査全体の流れと、質の高い調査を実現するためのポイントまで解説します。
 

 
 

調査全体の流れ(定量調査の例)

弊社が日常的に行っている定量調査、なかでもWebアンケート調査を例に、基本的な進め方を解説していきます。

調査全体の流れは、大きく分けると下図に示した4つのフェーズに分かれています。ただし、実際の調査では、それぞれのフェーズの中でさらに細かな工程に分かれています。

調査設計の基礎(定量調査の例)
調査設計の基礎(定量調査の例)

 

  1. 企画設計のフェーズ
    マーケティング課題や調査目的を整理し、何を明らかにしたいのかを明確にします。
    そのうえで、最も重要な調査仮説を設定します。
  2. 調査票作成のフェーズ
    企画設計の内容を検証するために必要な調査項目や設問、選択肢を具体的に作成します。
  3. 実査のフェーズ
    実際にアンケート画面を作成し、パネルへの配信と回収を行います。
    さらに、回収したデータに問題がないかを確認し、分析に進める状態へと整えます。
    ※パネルとは、アンケート回答者の集団のことを指します。たとえば、アスマークでは、D style Webという会員組織を持っており、アンケートに答えていただけるアンケートパネルを運営しています。
  4. 分析・レポーティングのフェーズ
    最後に、回収したデータを集計・分析し、企画設計のフェーズで設定した調査目的や課題、調査仮説に基づいて考察・レポーティングを行います。
    そして最終的に、その結果を意思決定に活かすための示唆へとつなげていきます。

 

 

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調査における仮説とは?

調査における仮説とは?
調査における仮説とは?

 
調査における仮説とは、過去の知見や分析をもとに導き出される「仮の答え」を指します。つまり、「おそらくこうなっているのではないか」と当たりをつけた予測です。

アンケート調査の本質は、この仮説を検証することにあります。
そのため、この仮の答え」が正しいかどうかを調査で確かめるという視点を持つことが、調査成功の第一歩となります。

また、仮説は調査の方向性を定めるだけでなく、得られた結果をどのように解釈するか、その一貫性を支える基盤にもなります。言い換えれば、仮説は「調査の質を担保するための前提条件であり、意思決定を最短で導くための地図」ともいえるでしょう。

ほかにも、仮説があることで、マーケティング戦略全体の意思決定もスムーズになります。

以下は具体的な仮説の例です。

仮説の例として、とある企業で「商品の売れ行きが落ちている」という課題がある場合を考えていきます。
この課題に対する仮説とは、「商品の売れ行きが落ちている原因は何か」に対して立てる“仮の答えとなります。

たとえば、過去の知見から「パッケージが奇抜すぎること」が原因として考えられる場合には、「パッケージデザインが奇抜すぎるから、売れ行きが落ちているのではないか?」といった仮説を立てることができます。

また、同じ課題であっても、もとにする知見や分析内容によって立てられる仮説は異なります。
そのため、仮説の内容に応じて、次のような仮説と、それぞれに対応した検証内容を考えることができます。

仮説 検証内容例
パッケージデザインが奇抜すぎるから、売れ行きが落ちているのではないか? パッケージデザインの〇〇を中心に刷新するか検討する
当該商品の市場がシュリンク(縮小)しているため、売れ行きが落ちているのではないか? 撤退を視野に入れ、デスクリサーチ及びPOSデータからその妥当性を検証する
価格が高すぎるから、売れ行きが落ちているのではないか? 市場にない中価格帯のラインナップを検討する

このように、同じ「売れ行きが落ちている」という課題であっても、どの仮説を設定するかによって、確認すべきことや次の打ち手は変わります。
そのため、調査の初期段階で仮説を設定しておくことが重要です。

 

 
 

仮説を立てるメリット

仮説を立てることで、調査設計から分析、意思決定までの流れに軸ができ、調査全体をより効率的かつ効果的に進めやすくなります。

  • 必要最低限の設問設計で済み、調査コストを抑えられる
    仮説があることで、「AだからBではないか?」という問いに答えるための本当に必要な設問だけを選びやすくなります
    その結果、調査に不要な設問を減らすことができ、調査コストの抑制にもつながります。
    さらに、設問項目が絞られることで回答時の負担も軽減されるため、回答者の集中力を保ちやすくなり、回答の質の向上も期待できます。
  • 仮説検証がスムーズに進むため、意思決定のスピードが速まる
    収集したデータが仮説に合致するかどうかを判断基準にできるため、複雑なデータの中から答えを探し出すような手間を省くことができます。その結果、次のアクションへの移行がより迅速になります

 

 
 

仮説を立てる際の注意点

一方で、仮説は調査の方向性を定めるうえで有効である反面、向き合い方を誤ると、見えるはずの事実を見落とす原因にもなり得ます。

  • 確証バイアス
    確証バイアスとは、「自分が立てた仮説を支持する情報ばかりに注目してしまい、仮説の反証データを見逃す危険」のことを指します。そのため、最初に立てた仮説を正しいものと決めつけず、反対の可能性も含めてデータを見ることが大切です。
  • 想定外の発見の見落とし
    仮説検証に集中しすぎるあまり、調査範囲を狭めてしまい、市場に現れた新たな気づきや予想外の示唆を取りこぼしてしまう可能性に注意しましょう。

Tips
仮説なき調査の失敗
仮説を立てようとしても、現実には「仮説が思いつかない」「仮説がない」場合もあります。
このような場合は、定性調査(インタビュー)で生活者の声を拾い上げたり、当社(調査会社)がご依頼いただいたクライアント様へヒアリングを行い、お互いにコミュニケーションをとりながら、仮説的な見解を引き出したりすることも可能です。

 

 
 

調査設計の3つのポイント

では、「仮説」を、具体的な調査に落とし込むにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは、調査設計のポイントとして、以下の3点を挙げます。

  1. 誰に聞くか?(ターゲット選定)
  2. 何を聞くか?(質問項目・指標)
  3. どうやって聞くか?(調査手法)

 
それでは、この3点について、例を踏まえながら見ていきましょう。
 
 

誰に聞くか?(ターゲット選定)

1つ目は「誰に聞くか?」、すなわちターゲット選定についてです。

ターゲット選定では、対象者の解像度を上げることが欠かせません。仮説の内容から「どのような情報が欲しいのか」を明確にした上で、主要ターゲットを定めます。
さらに、主要ターゲットと比較するための「対照グループ」も調査対象に加えることで、仮説の妥当性を評価できる場合があります。

具体的な例を見ていきましょう。

【仮説】

商品Aは、時間効率重視や商品の使いやすさが競合品より高く評価され、30代フルタイム勤務女性がターゲットになり、週に3回以上の継続利用意向が示されそう

【ターゲット選定の例】

グループ デモグラフィック 行動特性
主要ターゲット 30代女性フルタイム勤務 既存の同カテゴリー商品を月に1回以上購入している層
対照グループA
勤務形態比較
30代女性非フルタイム勤務
対照グループB
年代比較
20代or40代女性フルタイム勤務

 
主要ターゲットは、仮説にある「30代のフルタイム勤務の女性」です。ここに、「週に3回以上の継続利用意向」を検証するという目的を加味し、行動特性として「既存の同カテゴリー商品を月に1回以上購入している層」という条件も追加しています。

そして、重要なのが「週に3回以上の継続利用意向」という傾向が、本当に主要ターゲット固有のものなのかを検証することです。
そのため、検証したい条件だけを変更し、その他の条件は揃えたグループを用意します。今回は、勤務形態の影響を見るための「対照グループA」と、年代の影響を見るための「対照グループB」を設定しました。

仮に、調査によって下表のような結果が得られたとします。

グループ 週に3回以上の継続利用意向有無
主要ターゲット
対照グループA(勤務形態比較)
対照グループB(年代比較)

 
この結果の場合、当初の仮説とは異なる事実が浮かび上がります。主要ターゲットだけではなく、非フルタイム勤務の「対照グループA」でも利用意向が「有」となっているため、「フルタイム勤務」という条件は必須ではなく、「30代女性」全般に需要がある可能性が見えてきます。
 
 
このように、比較したい要素だけを変更し、他の条件は揃えたグループを配置することで、「本当に主要ターゲット固有のものなのか」を、比較して、評価がしやすくなります。
 
 

何を聞くか?(質問項目・指標)

2つ目の「何を聞くか?」、すなわち質問項目および指標についてです。

質問項目を設計する際にまず考えることは、「仮説を検証するために必要なデータは何か?」です。
具体的には、「その質問の答えが得られたら、仮説が証明されるのか」を逆算し、抽象的な仮説を具体的な質問へと落とし込んでいきます。

先ほどの仮説を例に、見ていきましょう。

【仮説】

商品Aは、時間効率重視商品の使いやすさが競合品より高く評価され、30代のフルタイム勤務の女性がターゲットになり、週に3回以上の継続利用意向が示されそう

【質問項目・指標の例】

質問 選択肢
ニーズの特定 この商品を選ぶ際に、重視する項目をお知らせください。
  • 価格
  • 品質
  • デザイン
  • 時間効率
  • など
狙い:ターゲットが「時間効率」をどれだけ重視しているかを特定する
使いやすさの評価 この商品の使いやすさについて、あてはまるものをお知らせください。
  • とても使いやすい
  • やや使いやすい
  • どちらともいえない
  • やや使いにくい
  • とても使いにくい
狙い:ターゲットに対して商品の「使いやすさ」がどれだけ評価されているかを検証する
行動意向 あなたはこの商品を週に何回程度利用したいですか。
  • 毎日
  • 週に4~5回程度
  • 週に2~3回程度
  • 週に1回程度
  • など
狙い:具体的な行動意向を検証する

 
この仮説を丁寧に読み解くと、検証に必要なデータは以下の3要素であることが分かります。

  • 時間効率重視が競合より高く評価されているのか?
  • 商品の使いやすさが競合より高く評価されているのか?
  • 週に3回以上の利用意向はあるのか?

 
もし、上記の「商品の使いやすさ」に関する質問を省略してしまったらどうなるでしょうか
調査の結果、「ターゲット層は週に3回以上利用したいと思っている」というデータ(行動意向)は得られるかもしれません。しかし、その理由が仮説通り「使いやすさ」にあるのか、それとも別の要因によるものなのか、要素間のつながり(相関関係)を証明できなくなってしまいます。 これでは、せっかく調査を行っても仮説を正しく検証できたとは言えません。

このように、仮説の内容をしっかり読み込み、「必要なデータを漏れなく回収できる質問と選択肢」を揃えることではじめて、仮説の証明が可能な質の高い調査へと昇華させることができます
 

 
 

どうやって聞くか?(調査手法)

最後に「どうやって聞くか?」、すなわち調査手法についてです。

調査手法を検討する際には、「仮説を検証するために最適な手段は何か」を考える必要があります。
たとえば、「商品の使いやすさを高く評価している層は、利用意向も高い」といった数値的な関係性を検証したい場合は、ネットリサーチ(Webアンケート)に代表される定量調査が適しています。
一方で、対象者の行動や意識の背景にある「なぜ?」を深く掘り下げて理解したい場合は、インタビュー調査などの定性調査が適しています。

また、定量・定性を問わず、設計において必ず意識すべきなのが、バイアスのない中立的な表現や順序です。質問の表現や選択肢の並び順によっては、回答者が特定の方向に誘導されてしまう恐れがあります。また、特定の情報を先に提示することで、その後の回答に影響を与えてしまう「順序バイアス」にも注意が必要です。

先ほどの仮説を例に、見ていきましょう。

【仮説】

商品Aは、時間効率重視や商品の使いやすさが競合品より高く評価され、30代のフルタイム勤務の女性がターゲットになり、週に3回以上の継続利用意向が示されそう

【調査手法・設計の例】

項目 内容
調査手法 「ネットリサーチ(Webアンケート)」
設計
  1. ニーズの特定:この商品を選ぶ際に、重視する項目をお知らせください。
  2. 使いやすさの評価:この商品の使いやすさについて、あてはまるものをお知らせください。

 
調査手法は、検証したいことが「使いやすさを高く評価している層は、利用意向が高い」といった数値的な関係性になるため、「ネットリサーチ(Webアンケート)」が適しています。

また、設計として、質問を「①ニーズの特定」⇒「②使いやすさの評価」の順にすることで、回答者のバイアスを防いでいます。
もし、先に②の「使いやすさの評価」について質問してしまうと、回答者の意識がその特定の要素に強く引っ張られてしまいます。その視野が狭くなった状態のまま、続けて①の「ニーズの特定」を尋ねると、本来の価値観ではなく、直前に考えた「使いやすさ」を優先して回答してしまう可能性があります。

 
このように、質問の順序や表現といった回答者の心理にまで配慮した設計を行うことで、初めてバイアスを軽減させたデータを集めることが可能になります。
 

 
 

まとめ

ここまで、調査における仮説の重要性を解説してきました。

いうまでもなく、調査の目的は、「データを集めること」自体ではありません。
目的は、得られたデータをもとに「次に何をすべきか」を判断し、具体的な意思決定につなげることにあります。そのためには、調査を開始する前の段階で、検証すべき仮説をできるだけ明確にしておく必要があります。なかでも重要なのは、単なる思いつきの仮説ではなく、調査によって客観的に検証可能な「質の高い仮説」を設定することです。

質の高い仮説を構築する際は、次の3つのポイントを意識しましょう。

  • 調査によって真偽を判断できること
  • 検証結果が具体的な意思決定につながること
  • 抽象的な内容ではなく、特定の要因と結果の関係が具体的に示されていること

 
これら3つのポイントを満たした質の高い仮説を立て、「調査設計の3つのポイント」で紹介したことを実践し、得られた結果を丁寧に検証していくことが大切です。
 
ぜひ本記事を参考に、意思決定を力強く後押しする「質の高い調査」へと昇華させていきましょう。

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執筆:アスマーク編集局

執筆:アスマーク編集局

アスマーク編集局は、数多くのメーカー、官公庁、大学との広範な調査実績に基づき、実務に直結するマーケティングリサーチの知見を発信する専門組織です。単なる手法の解説に留まらず、「現場で求められる判断基準」や「実務上の留意点」を網羅した専門コンテンツを企画・制作しています。

普及活動の実績
調査・分析に関する自社セミナーは累計参加者26,000人を突破。関連資料の利用者は11,000人を超えています(※2026年現在)。

学術・教育支援
日本社会学会や日本行動計量学会等への参画、大学での講義(累計受講者1,000人以上)を通じ、リサーチノウハウの普及に努めています。また、大学等の教育機関へ1万人規模の実証データを提供し、PBL(課題解決型学習)教育の支援も行っています。

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監修:竹中 重雄(Shigeo Takenaka)

監修:竹中 重雄(Shigeo Takenaka)

株式会社アスマーク マーケティング管轄 マネージャー
リサーチ業界およびマーケティング領域で10年以上のキャリアを持つスペシャリスト。学術調査チームの立ち上げや、業界内でも難易度の高い「難病・希少疾患」「障がい者」のリクルートサービスの立案・リリースを主導。共同著者として参画した研究論文が学術誌『グローバルビジネスジャーナル』に掲載された実績を持つ。

専門領域
消費者インサイト分析、セグメンテーション。学術的根拠に基づき消費者モニターをタイプ分類する「インサイト・セグ」を開発。

発信実績
日本のマーケティングリサーチ20年の変遷」の執筆や、最新技術を網羅した「ChatGPTを調査設計・レポートに活用する検証セミナー」への登壇など、伝統的手法から最新トレンドまで幅広い知見を保有。

本記事の監修にあたって
自身の豊富な実務経験に基づき、公開情報の正確性と、読者の皆様のビジネスに即した実用性を厳格に審査しています。

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