2023.06.30
ドラッグストアの顧客満足度調査テンプレート:顧客の声を活用して競争力を高める方法
ドラッグストアは、私たちの日常生活において欠かせない存在となっています。医薬品をはじめとする健康や美容の製品を提供するだけでなく、日用雑貨や食品などの品揃えも豊……
公開日:2024.11.05
ビジネスのグローバル化が進む現代において、海外市場への進出は、企業の競争力を維持・向上させるための重要な要素となっています。しかし、海外市場での効果的なマーケティング戦略を立案するには、異なる文化や消費者行動を理解することが大切です。
そこで重要となるのが「海外リサーチ」です。海外リサーチとは、海外市場の現状やニーズ、競合などを調査し、進出の可否や戦略立案に役立てるための取り組みです。
この記事では、海外リサーチの概要や主な手法、重要なポイント、そして調査を進めるための流れなどについて、解説します。
海外リサーチとは、海外市場の現状やニーズ、競合などを調査し、進出の可否や戦略立案に役立てるための取り組みです。海外リサーチでは、進出候補地の市場規模や成長性、競合状況、消費者ニーズなど、多岐にわたる情報を収集・分析することができます。
これらの情報を分析することで、進出先の選定、事業計画の策定、マーケティング戦略の立案、リスク管理など、海外事業における重要な意思決定をサポートできます。
海外リサーチは、海外進出を検討している企業だけでなく、既に海外で事業を展開している企業にとっても、事業の成長・発展に重要な情報収集活動です。
海外リサーチは、企業が海外市場に進出する際、あるいは海外事業を拡大する際に、以下のような目的で実施されます。
目的 | 内容 |
---|---|
現地マーケットの把握 | 進出候補地の市場規模や成長性、競合状況、消費者ニーズなどを把握することで、進出の可否や事業計画の策定に利用します。 |
消費者の需要把握 | 現地の消費者がどのような商品やサービスを求めているのか、どのようなマーケティング施策が効果的なのかを把握して、製品開発や販売戦略に活かします。 |
競合分析 | 競合企業の強みと弱みを分析することで、自社の競争優位性を明確化し、マーケティング戦略の立案に活用します。 |
自社についての調査 | 海外における自社のブランドイメージや認知度を把握することで、マーケティング戦略に活用します。 |
海外リサーチを実施する手法は、大きく分けて「定量調査」と「定性調査」の二つに分類されます。それぞれの調査手法は目的や特性が異なり、得られる情報も異なります。そのため、海外リサーチを効果的に行うには、調査目的や対象、予算などを考慮し、適切な手法を組み合わせることが重要です。
ここでは、定量調査と定性調査の特徴や具体的な手法について解説します。
定量調査とは、アンケートや統計データなどを用いて、数値化できる情報を収集し、統計的な分析によって市場の現状や傾向を把握する手法です。市場規模やシェア、顧客の属性、ニーズ、満足度などを数値で捉え、客観的なデータに基づいて市場を分析するために用いられます。
定量調査は、数値データに基づいて分析を行うため、主観的な解釈が入りにくく、客観的な結果を得られることが大きな特徴です。また、得られた数値データを元に、様々な分析手法を適用できる汎用性の高さも魅力です。
ネットリサーチ(Webアンケート)とは、インターネットを通じてアンケート調査を実施する手法です。オンラインで実施できるため、地理的な制約を受けずに広範囲の対象者から迅速にデータを集めることができます。
海外でのネットリサーチでは、回答デバイスの違いを考慮することが重要です。日本ではPCからインターネットに接続する割合が高いのに対し、海外ではスマートフォンの利用が主流となっています。そのため、PCでの閲覧を前提としたアンケート設計では、スマートフォンユーザーにとって見づらく、回答しづらいものになります。例えば、日本では設問数を抑えるためにマトリクス形式の設問が多用されますが、スマートフォンでは画面が小さいため、スクロール操作が増えて回答者の負担が大きくなることに注意が必要です。
このようなアンケート設計にすることで、スマートフォンユーザーでもストレスなく回答でき、質の高いデータを得ることが可能です。
詳しい「海外調査 (アンケート調査)」はこちら>
●欧州
イギリス/フランス/ドイツ/イタリア/スペイン/ロシア/ノルウェー/スウェーデン/フィンランド/オーストリア/ベルギー/スイス/デンマーク/ギリシャ/アイルランド/オランダ/ポルトガル/チェコ/ポーランド/ハンガリー/トルコなど
●アフリカ・中東
南アフリカ/UAE/エジプト/サウジアラビア/モロッコなど
●アジア
中国/香港/韓国/台湾/インド/シンガポール/タイ/ベトナム/マレーシア/インドネシア/フィリピン/オーストラリア/ニュージーランドなど
●北米・南米
アメリカ/カナダ/ブラジル/メキシコ/アルゼンチン/チリ/コロンビア/ペルーなど
CLT(Central Location Test)とは、特定の場所に被験者を集めて調査を行う手法です。会場調査とも呼ばれます。
CLTのメリットは、調査環境を統一できる点です。ネットリサーチとは異なり、調査員が直接、被験者に説明や指示できるため、設問の意図を正確に伝え、誤解や記入ミスを防ぐことができます。また、被験者の表情や反応を見ながら調査を進められるため、より深い情報を収集することも可能です。さらに、CLTでは、実物を見たり触ったりしながらの回答を得られるため、製品テストや試飲・試食調査などに適しています。
その一方で、CLTのデメリットは、会場費や調査員の謝礼、交通費などで調査コストが高くなる傾向にある点です。また、調査対象者が特定の地域に限定されるため、広範囲の意見収集が難しいという側面も考慮する必要があります。
HUT(Home Use Test)とは、被験者に商品を自宅で使用してもらい、一定期間試用した後の感想や評価を収集する調査手法です。消費者の生活環境において、商品に対する使用状況や満足度を把握するために活用されます。
HUT最大のメリットは、商品を実際の使用状況に近い環境で評価できる点です。被験者は自宅で普段通りの生活を送りながら商品を試用するため、より自然な使用感や意見を得やすくなります。特に、HUTは食品や化粧品、生活日用品など、ある程度の期間使用しないと効果や使い勝手が分からない商品の評価に適しています。例えば、新しい洗剤の洗浄力や使い心地、化粧品の肌への効果、食品の味や保存性などは、HUTによって価値ある情報を収集することが可能です。
その一方で、HUTには、海外への製品発送が必要になるため、輸送のハードルが高く、実施が困難なケースもみられます。事前に日本から海外への製品輸送が可能なのかどうかを確認しておく必要があるでしょう。
定性調査とは、インタビューやグループインタビュー、観察などを通じて、消費者の行動や心理、意識、価値観といった数値化できない質的な情報を収集し、分析する手法です。現地の消費者の深層心理や潜在的なニーズ、文化的な背景などを理解するために用いられます。
定性調査は、インタビューなどを通じて、消費者の行動や発言の背景にある心理や意識を深く探ることができるという大きな特徴があります。また、事前に設定した仮説にとらわれず、自由な発想で調査を行うことで、新たな発見やインサイトを得られる可能性を秘めています。
海外リサーチにおける定性調査では、現地の言葉や文化に精通したモデレーターを確保することが、とても重要です。スキルの高いモデレーターを確保できれば、現地の文化的な背景を理解した上での観察が可能となります。
詳しい「海外調査 (インタビュー調査)」はこちら>
●欧州
ドイツ/フランス/スペイン/イギリス/イタリア
●アフリカ
アルジェリア/アンゴラ/コンゴ/ガーナ/コートジボワール/ケニア/モザンビーク/ナイジェリア/ルワンダ/セネガル/南アフリカ/スーダン/タンザニア/チュニジア/ウガンダ
●中東
バーレーン/エジプト/イラン/クウェート/レバノン/オマーン/カタール/サウジアラビア/アラブ首長国連邦
●アジア
中国/香港/韓国/台湾/インド/シンガポール/ベトナム/マレーシア/インドネシア
●北米
アメリカ
グループインタビューとは、複数人の被験者を集めて、特定のテーマについて話し合ってもらう定性調査の手法です。消費者の意識や行動、価値観などを探り、文化的な背景を理解するために有効な手段となります。
グループインタビューでは、モデレーターと呼ばれる司会者が、テーマに沿って議論を進行します。参加者同士の意見交換によって、多様な視点からの情報を得ることが可能です。
海外でグループインタビューを実施する際は、文化的な背景を考慮したグループ構成とモデレーターの選定が重要です。例えば、年齢や性別、社会的な地位などが異なる人々をバランスよく集めることで、多様な意見を引き出すことができます。また、現地の文化や習慣に精通したモデレーターを選定できれば、円滑なコミュニケーションを図れ、被験者から本音を引き出しやすくなります。
デプスインタビューとは、インタビュアーが被験者と1対1で向き合い、深く掘り下げたインタビューを行う定性調査の手法です。消費者の個人的な意見や経験、潜在的なニーズなどを詳細に探るのに効果的な手段となります。
デプスインタビューは、グループインタビューとは異なり、他の参加者の影響を受けずに個人の考えや感情を自由に語ってもらうことが可能です。そのため、より深いレベルでの情報を収集でき、消費者の行動や心理、文化的な背景などを理解する上で貴重なインサイトを得られます。
海外でデプスインタビューを実施する際は、言語や文化の壁を乗り越えるための工夫が重要です。現地の言語に精通したインタビュアーを選定することはもちろん、文化的な背景を理解した上で、適切な質問を投げかける必要があります。
海外リサーチを成功させるためには、国内リサーチとは異なる点に注意が必要です。現地の文化や商習慣、言語、法規制など、日本とは異なる環境を理解し、適切な調査設計と運用を行うことが、海外リサーチを成功させる大事なポイントとなります。
特に、海外リサーチでは、言語の壁や文化的な違いによる誤解が生じやすく、調査結果の精度に影響を与える可能性があります。また、現地の法規制や商習慣を理解していないと、調査の実施自体が困難になる場合もあります。
ここでは、海外リサーチを成功させるための重要なポイントについて解説します。
海外リサーチでは、現地の言語への理解と対応が、とても重要です。単に言葉を翻訳するだけでなく、文化的な背景を踏まえた表現やニュアンスを使用することで、より正確な情報収集と分析が可能となります。
インタビューガイドの翻訳においては、現地の言語に精通した翻訳者による翻訳が重要です。さらに、翻訳されたインタビューガイドが、現地の文化や習慣に照らして適切な表現になっているか、考慮することも大切です。
例えば、同じ言葉でも国や地域によって異なる意味を持つ場合や、文化的な背景によって、表現の仕方や受け取り方が異なる場合もあります。このような違いを理解せずに翻訳を行うと、誤解が生じ、調査結果の精度が低下してしまいます。
海外リサーチを実施する際は、言語への配慮を徹底し、正確な情報収集と分析に努めることが重要です。
海外リサーチでは、対象国の文化への理解も欠かせません。文化的な価値観や行動様式、習慣などを考慮することで、適切な調査設計と解釈が可能となり、より深い分析結果を得られます。
例えば、海外では、現地の宗教や歴史、社会構造などの文化的背景が、消費者の行動や意識に大きな影響を与えています。これらの文化的要素を理解せずに調査を行うと、回答者が誤った解釈をしてしまう可能性があります。
現地文化への理解を深めるためには、事前のデスクリサーチや現地でのフィールドワークが効果的です。現地の文化に関する書籍や文献を読んだり、実際に現地を訪れて生活を体験したりすることで、現地の消費者が持つ価値観を、より深く理解できます。また、現地の文化に精通した専門家やコンサルタントに意見を聞くことも、効果的な手段です。
海外リサーチを実施する際には、対象国の法規制に対する遵守が必要です。個人情報保護法や競争法、知的財産権などは国ごとに異なる法規制が存在し、これらを遵守しなければ、法的トラブルに巻き込まれる可能性があります。
特に、個人情報の取り扱いには注意が必要です。近年、多くの国で個人情報保護法が強化されており、個人情報の収集や利用、管理について厳格なルールが定められています。海外リサーチでは、インタビューなどで個人情報を取得することが多いため、現地の個人情報保護法を遵守し、適切な安全管理措置が必要です。
例えば、EUの一般データ保護規則(GDPR)では、個人情報の取得に際して、利用目的を明確に示し、本人の同意を得ることが義務付けられています。また、個人データの第三者への提供や国外への移転についても、厳格な制限が設けられています。
さらに、業界によっては、特定の規制や認可への対応が重要です。例えば、医療分野の調査では、倫理委員会の承認を得たり、食品や化粧品に関する調査では、成分や表示に関する規制を遵守したりする必要があります。
法規制への対応を怠ると、罰金や制裁金の対象となるだけでなく、企業の信頼を失墜させ、事業活動に大きな支障をきたす可能性があります。海外リサーチを実施する際は、事前に現地の法規制について十分な調査を行い、専門家のアドバイスを受けるなどして、適切な対応を心がけましょう。
海外リサーチを実施することで、企業は様々なメリットを得ることができます。主なメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
海外リサーチを実施する際は、国内リサーチとは異なる言語や文化、商習慣、法規制などを考慮しながら、綿密な計画と準備を進めることが大切です。各プロセスにおいて、言語や文化への配慮や法規制の遵守などをしっかりと押さえ、適切な手順でリサーチを進めることが、質の高いデータ収集と的確な分析につながります。
ここでは、海外リサーチを成功させるための具体的な流れを7つのステップに分け、それぞれの段階における注意点やポイントを解説します。
海外リサーチにおける最初のステップは、調査設計です。この段階では、調査の目的を明確化し、それに基づいて企画設計、調査対象、調査地域、調査手法、調査期間、予算などを決定します。さらに、調査票のローカライズ(現地の文化・習慣に合わせた設計)をします。そして、海外リサーチを調査設計する際には、以下の5点を明確にすることが重要です。
また、調査設計の段階では、現地の法規制や倫理的な問題についても検討することが大切です。個人情報の取り扱い、知的財産権の保護、宗教的なタブーなど、文化や社会的ルールに配慮した調査設計が求められます。
さらに、調査が実施可能なのかを、事前に確認することも重要です。例えば、LGBTQに関する調査は国によって異なる規制が存在し、中東の一部の国々では、LGBTQが容認されていないため、調査自体が行えません。そして、対象地域におけるインターネット普及率や調査協力機関の有無、政治的な状況などを考慮し、現実的な調査計画を立てる必要があります。
続いて、調査票作成時の注意点を以下に7つ挙げます。
注意点 | 内容 |
---|---|
設問の明確化 | あいまいな表現や専門用語を避け、分かりやすい言葉で質問を記述します。 |
選択肢の設定 | 回答者が選びやすいよう、選択肢はダブリや漏れがないように設定します。また、選択肢が多い場合、モニターに回答負荷がかかり、回答不備や途中離脱に繋がってしまうので、1つの設問で、選択肢の個数が15個以上ある場合は、見直す必要があります。 |
質問の順序 | 回答者が自然な流れで回答できるように、質問の順序を工夫します。 |
設問数(質問数)のボリューム調整 | 海外リサーチは、国内調査と比べてアンケート回答時間が長くなると、離脱率が大幅に増える傾向があるため、スクリーニング設問を含めて30問以内にするのが望ましいです。そのため、30問以内に収まるように設問の削除をするなど、リサーチャーと相談して進めると良いでしょう。 |
LGBTQを考慮した性別設問 | 性別の選択肢には「男性」と「女性」以外に「その他」や「わからない/答えたくない」を設定する必要があります。これにより、回答者が回答しやすくなります。 |
居住地の区分 | 居住地の区分は国によって異なります。いくつかのパターンが存在する国もあります。モニターが回答しやすい区分になっているか確認することが重要です。 |
収入のレンジ | 国によって年収で聴取するか、月収で聴取するかが異なります。月収で聴取すべき国で年収の選択肢を設定すると、モニターが自身の年収を認識していない可能性があり、回答ミスが発生することがあります。また、日本の収入レンジをそのまま換算するのではなく、各国ごとの収入レンジで選択肢を設定することが重要です。 |
これら注意点に注意をする必要があるため、リサーチャーとの連携も重要になります。
作成した調査票から、日本語画面を作成していきます。この画面により、質問項目間の整合性や論理的な流れを確認することを可能にします。また、クライアントや関係者と内容を確認し、修正や調整を行えます。
日本語で作成した画面を、対象国の言語に翻訳します。
翻訳を依頼する際は、単に言語を翻訳するだけでなく、文化的な背景を踏まえた表現やニュアンスを理解できる、現地の言語に精通した翻訳者を選ぶことが重要です。また、翻訳された調査票が、現地の文化や習慣に照らして適切な表現になっているか、専門家によるチェックも行いましょう。
このようなプロセスを経ることで、信頼性の高い調査票を作成できます。
翻訳された調査票を基に、実際の調査で使用する多言語の画面を作成します。ネットリサーチの場合は、オンラインアンケートのフォームを作成し、インタビュー調査の場合は、質問項目を記載したインタビューガイドを作成します。
多言語画面作成では、翻訳の正確性を維持しながら、現地の文化や習慣に合わせた表現やレイアウトに調整することが重要です。
さらに、スマートフォンやタブレットなど、様々なデバイスでの表示を想定し、レスポンシブデザインに対応した画面を作成することが重要です。
多言語画面を作成できたら、調査を実施してデータの回収を行います。ネットリサーチであれば対象者にアンケートを配信し、インタビュー調査であれば、現地でインタビューを実施し、録音やメモなどの形でデータを収集します。
データ回収中は、進捗状況を常に監視し、必要があれば追加の調査を実施することで、目標とするサンプルサイズの確保を図りましょう。
データ回収が完了したら、次はデータのチェックを行います。海外リサーチでは、回答者の不注意による記入ミスなどが起きやすいため、入念なチェックが必要です。データチェックでは、以下のような項目を確認します。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
論理エラー | 矛盾する回答や、スキップすべき質問に回答しているなど、論理的な誤りがないかを確認します。 |
記入ミス | 数値入力欄に文字が入力されているなど、明らかな記入ミスがないかを確認します。 |
外れ値 | 極端に偏った回答や、他の回答と大きく異なる回答がないかを確認します。 |
もし必要であれば、回答者に再確認を行うなどして、データの精度を高めるように努めましょう。
アンケート調査などで自由記述形式の質問を設定した場合、回収した回答を分析するためには、回答の翻訳を行う必要があります。自由記述の翻訳は、単に言葉を置き換えるだけでなく、回答者の意図や感情、文化的背景などを理解した上で、適切な日本語に訳すことが重要です。そのため、現地の文化や言語に精通した翻訳者による翻訳が求められます。
翻訳の精度を高めるには、翻訳者に対して、調査の背景や目的、対象者などの情報を提供することが大切です。また、必要があれば、翻訳した回答に原文の意味を補足する説明を加えます。さらに、翻訳された自由記述回答を分析する際には、翻訳による微妙なニュアンスの違いや解釈のずれが生じることを考慮する必要があります。
収集したデータのチェックが完了したら、次は集計作業です。定量調査であれば統計ソフトなどを用いて、数値データを集計し、グラフや表を作成します。定性調査であれば、インタビュー記録や観察記録などを分析し、共通点や特徴などを抽出します。
海外リサーチでは、国や地域による文化や社会背景の違いを考慮することが大切です。単純な数値比較だけでなく、このような違いを念頭に置くことで、より深い分析結果を得られます。
集計および分析の結果は、その内容を報告書にまとめます。報告書では、調査の背景や目的、調査方法、調査結果、考察などを分かりやすく記述します。図表やグラフなどを効果的に利用して、視覚的に理解しやすい報告書を作成することが重要です。
海外リサーチでは、現地確認や翻訳作業など、国内調査では発生しない工程が生じることにより、お見積りや納品までのリードタイムが長くなります。そして、実査期間も国内案件と比べ、長めに見ておく必要があり、インターネット調査でも8日間以上かけてデータを回収する必要があります(サンプルサイズや出現率にもよります)。また、海外は休日や祝日などの事情も国内とは異なりますので、プロジェクト開始前に現地の暦を確認してからスケジュールを立てる必要もあります(例:旧正月、ラマダンなど)。
海外リサーチの費用は、調査手法や対象国、サンプルサイズ、サービス範囲など、様々な要素によって異なります。また、海外リサーチの場合は、翻訳や多言語画面作成などの費用が加わるため、国内調査よりも費用が高くなる傾向があります。
具体的な費用感としては、以下のような例が挙げられます。
項目 | 内容 |
---|---|
調査手法 | Webアンケート |
対象国 | フランス、イタリア |
対象条件 | 20-60代男女、自動車運転免許保有者 |
回答時間 | 10分 |
サンプルサイズ | 各国1,000名(計2,000名) |
サービス範囲 | 調査票翻訳~画面作成、データ回収、ローデータ納品 |
備考 | 調査設計、調査票作成、集計~レポーティングはお客様にて実施 |
費用 | 310万円(税抜) |
項目 | 内容 |
---|---|
調査手法 | デプスインタビュー |
対象国 | 中国(上海) |
対象条件 | 20-50代男女、週1回以上運転する方 |
回答時間 | 60分 |
サンプルサイズ | 5名 |
サービス範囲 | リクルート、謝礼、会場手配、同時通訳手配 |
備考 | 書記、モデレーションはお客様にて実施 |
費用 | 60万円(税抜) |
項目 | 内容 |
---|---|
調査手法 | グループインタビュー |
対象国 | 韓国 |
対象条件 | 直近日本に観光に来て日用品を買った方 |
回答時間 | 120分 |
サンプルサイズ | 4名×3グループ |
サービス範囲 | フルサービス |
備考 | リクルート、謝礼、会場手配、同時通訳、書記、モデレーション、レポーティングまでのフルパッケージ |
費用 | 190万円(税抜) |
これらの費用はあくまで一例であり、実際の費用は個別のケースによって大きく異なります。
費用を抑えるためには、調査手法や対象地域、サンプルサイズなどを工夫する必要があります。例えば、Webアンケート調査であれば、対象国を絞ったり、サンプルサイズを減らしたりすることで費用を抑えられます。また、「在日外国人」を対象にして調査をする「プレ調査」という方法もあります。当社(アスマーク)が保有する在日外国人パネル「e-gaikokujin」の会員に対して直接アプローチできるため、海外調査に比べて手間・時間・コストを抑えることが可能です。実際、海外進出に向けたプレ調査としてご利用されるケースが多いです。
「在日外国人に向けた市場調査」 はこちら>
海外リサーチは、様々な業界の企業が、それぞれの目的や課題に合わせて実施しています。ここではその実例を、3つ紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
調査目的 | くせ毛の女性に対するヘアケアの実態調査 ヘアケア、スタイリングに関する実態の把握。また指定商品の特徴やコンセプトに対してどのようなイメージを持っているか把握する。 |
調査地域 | アメリカ |
調査手法 | オンラインデプスインタビュー |
対象者条件と人数 | サンプル数:4名 年齢:20代~30代 性別:女性のみ 収入:中階級 地毛がくせ毛の方 美容院に2~3ヶ月に1回通っている アフリカ系アメリカ人(黒人)出身者(地毛のくせが強い方にヒアリングしたかった意図を伝えたうえでリクルート時にヒアリング実施) |
インタビュー時間 | 120分(逐次通訳を入れたので通常のインタビュー時間の約2倍の時間設定) |
対応範囲 | 日本語スクリーナーリライト対応 スクリーナーの英語翻訳(国内&ネイティブチェックあり) 対象者リクルート(現地) 謝礼対応(現地) 受付対応(現地英語対応) 逐次通訳手配(現地手配) |
費用 | 約100万(税別) |
スケジュール | 約1か月 |
対策 | 髪質の定義は個人差があるので事前に髪型の写真を回収して対象か判断。またリクルート時と当日で髪型が変わる可能性がないか(ステイリングが変わる為)も事前に確認した。 |
項目 | 内容 |
---|---|
調査目的 | 開発中のオフィス用品のデザイン評価、競合他社製品との比較。また、日本とイギリスにおけるサステナビリティ意識を比較したい。 |
調査地域 | 日本、イギリス |
調査手法 | デプスインタビュー (日本:オフライン/イギリス:オンライン) |
対象者条件と人数 | サンプル数:22名(各国11名) 20~65歳の男女 オフィス勤務をしている 週に1回以上指定のオフィス用品を使用している |
インタビュー時間 | 60分 |
対応範囲 |
日本語スクリーナー作成 スクリーナー英語翻訳(国内&ネイティブチェックあり) 対象者リクルート(日本/現地) フロー打ち合わせ(英語) 逐次通訳手配(国内/日英) フロー英語翻訳(バイリンガルモデレーターが対応) 同時通訳手配(現地/日英) モデレーター手配(国内/バイリンガルモデレーター) ライブストリーミング(現地設定/日本語録画) 会場手配(日本) 発言録(日本語) レポート作成(日本語) |
費用 | 約630万円(税別) |
スケジュール | 約2ヶ月 |
対策 | 製品が与える印象の聴収に加え、使いやすさや環境配慮等の項目を設け7段階評価の結果を数値化し、デザインを多角的に評価できるようにした。 |
項目 | 内容 |
---|---|
調査目的 | デジタル/アプリ分野の市場戦略発掘 ゲームユーザーの新しい価値観や考え方を発見する。 |
調査地域 | 韓国、ドイツ、アメリカ、ブラジル |
調査手法 | オンラインデプスインタビュー |
対象者条件と人数 | サンプル数:アメリカ&韓国各2名、ドイツ&ブラジル各1名(予備なし) 18-49歳の男女、英語話者 PC・スマホゲーム、VRゲームを週3~4回以上利用する 2個以上のゲーム用PC、スマホ・タブレット用ゲームのアカウント所有者 1個以上のゲーム機器所有者 事前課題(45分X3日間)を対応できる方 |
インタビュー時間 | 120分 |
対応範囲 |
スクリーナー翻訳(日本語⇔英語⇔各国言語)※ネイティブチェックあり 対象者リクルート(現地リクルート) モデレーター(英語の場合は国内のバイリンガル。その他言語は現地手配) 謝礼対応 同時通訳(英語は国内手配、その他言語は現地手配) 受付対応(Zoom発行、日本語録画納品) 発言録作成(日本語/同時通訳者の日本語動画からデータ起こし) |
費用 | 約300万円(税別) |
スケジュール | 約2か月(日本語スクリーナー作成着手~発言録納品まで) |
対策 | ゲームの種類やソフトのジャンルも多岐にわたるのでどのターゲットに向けてヒアリングをすべきかを事前にクライアントの意向を明文化し、リクルートの際の条件設定に留意した。 |
関連資料
関連サービス
ここまで、海外リサーチの目的や手法、そして実施する際の重要なポイントや具体的な流れについて解説しました。
日本国内のマーケットは、少子高齢化による人口減少の影響を受け、長期的には縮小傾向が懸念されています。そのような状況下において、企業が今後大きく成長していくためには、海外市場への進出がますます重要性を増しています。
しかし、海外市場への進出は、文化や商習慣、法規制など、国内とは異なるビジネス環境への対応が必要となり、様々なリスクを伴います。海外リサーチは、これらのリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることで、海外進出を成功へと導くための重要な手法です。
この記事で紹介した内容を参考に、海外リサーチを効果的に活用することで、海外市場におけるビジネスチャンスを最大限に活かし、企業の成長と発展を実現していきましょう。
海外リサーチについてのご相談はこちら>
海外調査・実施前のチェックリスト
日本国内の調査の経験が豊富な方でも、初めて海外調査を実施する際には様々な注意が必要です。文化・慣習・言語・法律・価値観・ライフスタイルなど、日本とは全て異なるため、調査設計でも思わぬ落とし穴が存在します。本資料では、3つのフェイズに分けて、 アンケート調査を成功に導くためのチェックリストを公開し、解説していきます。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
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【チェックリスト】海外の定性調査、実施における注意点
海外調査で定性調査を行う際、国内調査で慣れた方でもその特性を理解していないと調査を失敗してしまう恐れがあります。文化背景、モニター特性、時差、言語の違いなど、国内同様に考えてしまうと思わぬ結果を招いてしまいます。本資料では、3つのフェイズに分けて、インタビュー調査を成功に導くためのチェックリストを公開し、解説していきます。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 海外調査(定性調査)の実施を検討している
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● 海外の定性調査で必要な準備やノウハウをチェックしたい
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海外における「定性調査事例集20選」
海外にむけてマーケティングリサーチを実施する際、多国間でのバイアス発生を防ぐため、「文化的な違い」「言語の多様性」「法的な規制」および、生活価値観や環境に左右されないよう、現地のローカライズ(地域性に合わせる)など多数の考慮することが重要です。そこで本資料では、アスマークが過去手がけた海外における定性調査の事例を20選チョイスし、注意点とともにピックアップしご紹介いたします。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● アジアの定性調査事例6選
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● 在日外国人の定性調査事例5選
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