公開日:2025.08.21

【海外調査】中国人データアナリストから見る日本家電の印象とは?

  • インタビューコラム

はじめに

事業拡大の一環として海外市場への参入を検討する日本企業は増加しています。特に家電製品は「高品質」「信頼性」といったイメージで長らく評価されてきました。しかし、海外市場の競争環境は変化し、中国や韓国メーカーなどが台頭するなかで、日本家電はどのように見られているのでしょうか。

今回は、中国出身のデータアナリストの方に、日本の家電製品に対する考えや購入経験についてインタビューをしました。彼は、2015年に高等教育を受けるために来日し、その後データアナリストとして働くことになり、入社して7年になるとのことです。現在では家庭を持ち「I have a family of three members」とのことでした。

本記事では、中国出身の方の発言内容を整理し、海外展開を考える家電メーカーに役立つヒントを慎重に読み解き紹介します。

 

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購入したことがある日本製品

「日本の家電製品は世界的にとても有名だと思います」とし、「高品質かつ素晴らしい機能性などを備えているから」だと彼は語ります。
1980年代か90年代くらいのとき、どの家庭でも日本製のテレビや冷蔵庫を買うことを夢見ていたと思うとのこと。来日後は、当然日本の製品がたくさんあるので、選択肢が多すぎて選べないと思うようになったそうです。家電を選ぶのが好きな部分があると前置きをしつつ、無印良品の「minimalism design(ミニマルデザイン)」が好きだと語ってくれました。また、機能性も備えていて、かつ価格もリーズナブル、ということで、大学院生だったころは完璧だと思っていたそうです。
そして、結婚して少し余裕ができてからは、持っているものをいくつかアップグレードしていこうとしているとのことでした。

実際のインタビュー風景
実際のインタビュー風景

ここでいうミニマルデザインというのは、装飾を最小限に抑えて、無駄をそぎ落したデザインを指すかはわかりませんが、無印良品はとてもシンプルな商品が多いと考えます。また、白系統の色を基調としたデザインも多い印象に思います。一方で、少し家電と離れるかもしれませんが、アップル製品もデザイン的にはシンプルで日本人に人気かと思います。そういったことから、現在もシンプルなデザイン、またはミニマルデザインな商品は多いと思いますが、海外市場でも需要があるかもしれませんね。
また、「余裕が出てきて、いくつかアップグレード」と言った話がありましたが、これも分かる気がします。最初は、お金の兼ね合いで、ある程度金額のボーダーがある中で、自分が求めるものを購入するが、お金に余裕が出てきたら、その当時は求められなかった機能や、またこの方はご家庭もありますから、それに応じた機能を求め、アップグレードを徐々にしていくのは想像できるのではないでしょうか。

 
 

好きな日本の家電

「ものによる」とし、カテゴリー次第では、別々のメーカーのものが欲しくなることもあると、話します。
デザインに関しては、先ほどもお話した通り、無印良品が大好き(I love is Muji)とのことです。また、キッチン家電において、高級ブランドで、デザインは黒を基調とした、現代的なデザインのブランドも好きだそうです。
また、日立やパナソニックといった製品の機能性は素晴らしいと思うが、デザインは普通に感じるそうです。

彼からは、日立やパナソニックといったデザインは、ただただ普通のようで、ミニマルデザインであったり、現代的なデザインであったりする方が好みのように見えます。
たとえば、パナソニックはテレビやドライヤー、冷蔵庫といった家電が身近だと思いますが、デザイン性は皆さま、どう感じるでしょうか。当然、他社もデザイン性の部分で努力している部分があるでしょうし、なかなかデザイン性で頭抜けるのは難しい領域だと考えてしまいます。
そのため、安直とはなりますが、サブブランドとして「ミニマルデザイン」に注力した商品を展開し、それを謡うことで彼の目に留まるかもしれません。

 
 

日本の家電製品の信頼性

「品質」と「イノベーション」の2つの側面があると話し、以下品質とイノベーションについてそれぞれ説明してくださりました。

品質
品質について言えば、かつては非常に良かったと言います。また、今も主要な有名メーカーは信頼しているとのこと。一方で、「製品にトラブルがあった」という話を何人かから聞いたことがあるそうです。また、「そういったのは生産の多くを他国に委託をしたからだろう」であったり、「大企業も、もはや昔のように品質管理などに力を入れることはなくなった」といった話も聞いたことがあり、以前と比べると現在の品質は、やや劣るように感じているそうです。

イノベーション
YesともNoとも言えると考えているとのこと。
Yesと言える理由は、ほとんどの日本ブランドはイノベーションしていると信じているから。そして、お店に行けば、新しい機能を備えた新製品がリリースされているのがわかる、と話します。そのため、Yesと言えると考えるそうです。
一方で、同時にNoと言える理由は、かつてのイノベーションと比較すると劣るため、とのことです。そして、ここが印象的だったのですが「昔はたくさんの本物のイノベーションがあったからです、0から1を生み出すようなイノベーションです」という指摘でした。全く新しい機能であったり、革新的な新製品であったり、たとえば、CDプレーヤーやウォークマンなどがそうでしょう、と続けます。
近年は、ほとんどの会社はイノベーションを起こしていると思いますが、0から1を生み出すようなイノベーションではなく、1を2にするようなイノベーション、と言います。

この方的には、日本の家電製品は、品質やイノベーションといった部分で、他の海外製品と比べると劣りそうです。
品質にしても、イノベーションにしても目標値であったり、課題として掲げていたりする部分あると思いますが、どちらも一朝一夕で向上することは難しいことでしょう。この品質に関しては、品質ズバリといった形ではございませんが、類似した部分で意見を述べている部分がありますので、「日本製品が展開する上で直面している課題や障壁」で紹介します。

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他国の製品のローカライズの話

「私は中国出身なので、中国の会社の方が詳しいかもしれません」と前置きがあり、『例えば』という部分で、Haireの話をしていただきました。
Haireは、今は使っていませんが、北京にいた頃はよく使っていたとのこと。大学生だったころもお金の部分から、無印良品かHaireで決めていたそうです。また、機能性で言えば非常にローカライズされたとしていると思うと語ります。
例えば、かなり昔だったと思いますが、Haireの洗濯機は、ジャガイモを洗うのにも使えると言います。なぜそのようなものを作ったかと言うと、山間部の田舎に住んでいる複数の顧客から機械の不具合についての報告がいつも上がってきており、従業員が現地に行って調べてみると、地元の人たちの多くがジャガイモを含め、何でも洗濯機で洗っていることを知った、とのことでした。そして、彼はこう続けます。「ほとんどの企業ならこう言うでしょう。『そんな使い方をするなんでどうかしている、洗濯機はジャガイモを洗うために設計されていないぞ』 しかし、興味深いことにHaireは、それを合理的だと考えたのです。」
既存のモデルの調整に加え、ジャガイモの洗浄に適したモデルを開発し、田舎ではとても人気だったそうです

こういったローカライズの話、日本国内でも重要な位置にいるかな、と思いますが、海外でも重要です。当然、言語が異なりますし、文化なども違います。そういった異なる背景がある中で、海外でも日本国内と同じ企画や施策を展開するのは、これらから失敗する可能性があることは想像できるでしょう。そのため、事前に海外調査特有のポイントを理解し、調査目的に応じた調査をすることがリスク軽減につながると考えています

 
 

「日本製品はステータス」の裏側

「今でも日本製品はステータスになる?」と伺うと、「一般的にはそうだと思います」と回答いただきました。その理由として、日本以外と日本の価格を比べたときに、基本的に日本の製品が高いから、そう思うそうです。ハイエンドブランドは当然そうですが、テレビや洗濯機、冷蔵庫といった家電を見ると、最高価格帯にいるのは、たいてい日本ブランドの製品、ということでした。

市場において日本製品が高値で取引される理由

「複数の異なる要因が重なった結果」と思うそうです。
その要因の一つとして、「ブランドに引き継がれてきた歴史的なもの」と言い、端的に「日本製品はピラミッドの頂点のように考えられてきた」と思うそうです。
続いて、二つ目として機能性×コンビネーションにおいて「高い」要因として考えられるという話で、「特にハイブランドモデルの機能性は素晴らしい」と語ります。テレビ1つとってみても、普通は性能・画面・色・解像度の美しさなどで判断すると思いますが、ハイエンドモデルの場合、YouTubeやNetflixに接続できたり、テレビ番組を録画する機能であったり、不適切なコンテンツの視聴から子供を守る機能などがあります。
こういった「あらゆるものを提供するスーパーマシンのようなハイエンドモデルですから、当然ながら値段もスーパープライスといったところ」とお話いただきました。
 
 

海外でも日本製品は人気があるのか?

発展途上国、特にアジアに行くと、ほとんどの場合、日本ブランドは一番人気があり、なおかつ最も高価だったと思うと、言います。
一方で、ヨーロッパでは、アジアや発展途上国ほど人気はないと思うそうです。

近年では、若者の間で人気が?

近年では、日本のブランドが若者の間で人気を取り戻しつつあると、感じているそうです。
その理由として、「文化的な影響」を提示してくれました。
そして、「主に若者の間でアニメ・音楽・ゲームなど日本へのサブカルチャーへの関心が高まっています。そして、彼らは日本製のものに愛着があります」と語ります。加えて、サブカルチャーとコラボした製品と提供することで、関連グッズとして買ってくれると、考えているそうです。

これは、国内でも「ちいかわ」とのコラボグッズが並んだり、海外でもそうだと思いますが、「鬼滅の刃」とのコラボグッズが展開されていたり、していますよね。そのため、多くの企業がすでに取り組まれていることかと思いますので、何か海外市場に自社商品を展開する際に、サブカルチャーとのコラボについて一つ検討してみるのも良いかもしれませんね
 

日本製品が展開する上で直面している課題や障壁

  1. 市場に対して機能が過剰なことがある
    日本製品が得意とするのは、ハイエンドモデルと、言います。そのハイエンドモデルで、あまりに多くの機能を備えすぎているとのこと。「私自身、テレビや冷蔵庫を選ぶとき、冷蔵庫がインターネットに接続できるかどうかはそこまで気にしません。『今日、牛乳を買わなければ使い切ってしまう』と教えてくれる必要があるのでしょう? どうでもいいのです。」と話します。特に、中国やその他アジア、一部の発展途上の市場では非常に重要なことだと、思うとのことでした。「普通の人には、使わないかもしれない、あるいは年に一度しか使わないような機能にたくさんお金をかける良いがないと」思うそうです。
  2. 中国と韓国に依然としてある日本への感情
    日中または日韓の戦争の歴史の影響で、中国人や韓国人の中には感覚的に日本ブランドを嫌う方がいる、と話します。そして、「どこの国の製品かわからないような名前を付ける」というアプローチができるのではないかと、提言します。小規模ブランドや大企業が新しいシリーズや製品を売り込みたいときは、新しい名前や新しいサブブランドを付けるのは、ひとつの方法かもしれません、ともお話していただきました。

 
 
これら2つは参考になる部分もあるのではないでしょうか? 商品開発において機能面というのは、多々議論に上がることでしょう。そして、そこで重要なのがプロダクトアウトなのか? マーケットインなのか? というところです。
マーケットインは「顧客のニーズや市場の需要を最優先に考え、それに基づいて製品やサービスを開発・提供するアプローチ」となり、プロダクトアウトは「企業の技術力や独自性を重視し、市場のニーズよりも自社の強みを前面に押し出して製品を開発するアプローチ」となりますが、現状どちらのアプローチ寄りかを見極めることが重要です。詳しくは以下コラムで解説をしています。
「マーケットイン・プロダクトアウトとは?それぞれの意味や違い、メリットを解説」はこちら>
 

 
 

おわりに

インタビューをさせていただいた方にとって日本家電は、「信頼性」の部分で評価している一方で、「品質」や「イノベーション」が他の海外製品と比べ劣っているという印象がわかりました。また、海外市場での競争力としては、それらもそうだと思いますが、ローカライズや機能面、ネーミングなども考える余地があるといった、ヒントが得られました。そういったヒントを下図に整理しますね。

図 得られたヒント
図 得られたヒント

 
これらのヒントを検討するため、調査し、判断することが海外市場を「知る」という部分で第一歩となるでしょう。そして、それら知見を活かし、日本の家電メーカーの従来の強みに加え、海外市場特有の文化・生活習慣・価値観を起点にした開発やブランディングを行うことで、競争優位を築けるかもしれません。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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