公開日:2024.01.19

学術調査チームが語る~学術調査のいろは~

  • リサーチャーコラム

学術調査には独自の要点や注意点が必要であり、アスマークではそれに対応すべく学術調査チームを立ち上げ、現在では年間約500件の学術調査プロジェクトに取り組んでいます。この対談では、学術調査チームのメンバーが蓄積した知識と経験に基づき、学術調査における役割や実績、被験者募集からアンケート、当日の運営まで幅広いトピックについてご紹介します。

 
 

社員紹介

パネリスト

 富田 光樹

 ・所属:営業部営業1G/学術調査チーム

 

 

 増田 賞

 ・所属:営業部営業1G/学術調査チーム

 

 

 若菜 志保

 ・所属:営業部営業1G/学術調査チーム

 
 

インタビュアー

 東川 亜紀

 ・所属:マーケティングコミュニケーションG 営業推進チーム

 
 
 
 

学術チームの役割

東川:まず初めに学術調査について教えてください。

富田:学術調査とは「アカデミック調査」や「アカデミックリサーチ」とも呼ばれ、 学生や教授・研究者の方々が学術研究のために行う調査を指します。 マーケティングリサーチと同様に調査手法は目的や内容により様々で、インターネットを活用したネットリサーチをはじめ、インタビューや会場調査といった調査も行われます。研究論文や卒業論文・修士論文などの裏付けとしての活用や、研究に利用することを目的に実施をします。

東川:チームとして運営している理由はなんでしょうか?

富田:学術調査は同じ調査でもマーケティングリサーチとは異なる点や、調査以外にも契約や発注などの事務手続きも一般企業と違いがあることが多いです。 そのため、よりスムーズで最適なご対応ができるようにアスマークでは2020年に学術調査チームを発足しました。

東川:チームのメンバーについてもご紹介いただけますか?

富田:はい。今同席している若菜・増田と、この場にはいませんが曽我部・小川の計5名で活動しています。

東川:メンバー内での役割等はあるのでしょうか?

富田:チーム内でのポジション的なものは特にはありませんが、分からないことがあればチーム間でフォローし合っています。また、メンバー全員が同じクオリティで対応できるよう、学術調査への理解を深めるため日々勉強しています。

東川:学術チームとして行っている取り組みはありますか。

富田:学術調査チームのメンバーが大学へお伺いさせていただき、大学生の方々へマーケティングリサーチについてのセミナーの実施や、ゼミ生の皆様と共同調査を実施する等調査のサポート以外の活動も行っております。

東川:面白そうな取り組みですね!ちなみに共同調査ではどのようなことをされたのでしょうか?

富田:はい、ゼミ生の皆様が研究テーマを決め、調査票の作成や計画を立案していただきました。作成いただいた実際のアンケートの実施や画面作成などの作業は、弊社が担当し、データの納品を行いました。その後のデータ分析は大学の先生とゼミ生の皆様が協力して行い、研究プロジェクトを進行しました。
「一人暮らしの新卒社員の離職意向」をテーマにしており、地方出身者も少なくない大学生達が、自分たちがこのまま関東圏に就職した場合に心細くないかという素朴な疑問から生まれたものでした。
前向きに調査設計に臨む学生さんたちのひたむきな姿勢を見ていて、我々も学ぶものがありましたし、調査データからは有意差も出ており、先生にとっても研究の一助となったようで双方ともに価値ある取り組みができたと感じています。

※【アスマーク×文教大学】一人暮らしの新卒社員の離職意向における学術分析レポート~大橋洸太郎先生のインタビュー記事を公開~

学術調査チーム

 
 

学術調査の実績と傾向

東川:実績について教えてください。

富田:学術調査全体で年間約500件の調査を実施しています。 昨年度は大学の方々からご発注いただいた案件は約240件でした。中には外国に住んでいらっしゃる方へのアンケート調査や、在日外国人を対象としたものなど様々な対応実績もあり、多岐にわたる内容となります。

増田:アンケートにインタビューやWebアプリの試用を組み込んでの実施や同じ方に複数回のアンケート回答をいただく縦断調査など、調査手法に関しても様々なご対応をしています。

東川:どのようなご依頼・ご相談が多いのでしょうか?

富田:大学の方からの案件ですとネットリサーチなどのアンケート関連のものが多く、年間で約200件、インタビューなどアンケート以外のものが約40件でした。
研究機関の方々ですと被験者募集のご相談が割合としては多いですね。5か年での研究だったりするものもあるため、定期的に被験者を集め続けている案件などもあります。

東川:どのような被験者を集められているのでしょうか?

富田:実験や研究内容によって異なりますが、例えばライトなものですと20代から60代の男女各数名の被験者を募集したり、難易度の高いものですと特定の疾患を持つ人々や腰痛に悩む人々を募集することもあります。

若菜:実験内容に応じて特定の条件を設定することもありますね。例えば、VRの映像を使用する場合には視力に関する条件や眼鏡やコンタクトの装着状況、目の疾患歴があるか等の確認を行っています。被験者の募集については、実施内容に合わせて適宜こちらからもご提案をさせていただき、適切な条件で募集を行っています。

ネットリサーチについて

東川:アンケート調査を依頼した際のポイントや注意点はありますか。

増田:調査票(質問紙)に対象者条件を絞るための「スクリーナー」と呼ばれる設問がないケースや、性別、年齢、職業などの属性の聴取が設問の後に来ているケースが多く見受けられます。ネットリサーチは調査対象を絞り込むためのスクリーナーと呼ばれる設問と、絞り込んだ対象に聞く本調査の2部構成になります。スクリーナーという概念は街頭アンケートなどでは見られないため、なじみがない方もいらっしゃいますが、ネットリサーチを成功させるうえで、非常に重要な要素になります。アスマークで配信するアンケートでは、保有しているパネル情報から対象を絞って配信することも可能なので、余計なスクリーニング回収を減らし費用の削減にもつながっています。

富田:もちろん属性情報の更新は行っていますが、状況が変わっている可能性もあるためアンケートごとに都度聴取していますので、対象条件に沿わない方はスクリーニング時点で排除することもできます。

東川:なるほどですね。その他の注意点についても教えてください。

若菜:弊社に限らず調査会社独自の設問カウントルールというものがあり、設問カウントによって費用が変動します。アンケートを確認させていただくと、ご認識されている設問数よりも少なくなることが多いです。理由は五件法や七件法の設問はマトリクスの設問としてまとめて作成が可能なため、設問数を減らすことができます。10個の項目で1問とカウントするため、20問ありますと言われても見てみるとすべて5件法であれば、2問扱いとなります。

東川:20問が2問になるのは非常に大きいですね。

富田:はい、費用が大きく異なります。あとは研究参加の同意文も重要な点ですね。最初に触れた通り、対象者か絞り込むためのスクリーニングがある関係で、アンケートの構成は初めにスクリーニング、その後研究参加の同意文提示と同意を取得してから本調査という流れになります。

若菜:同意文をスクリーニングの後ろとしている理由はアンケートの冒頭で提示することでどのような対象者に回答いただきたいかが分かってしまい、バイアスがかかった状態で回答をされる可能性があるためです。同意文の内容についても弊社でお任せいただくことも可能です。
また、途中答えたくない設問は飛ばしてもかまわないというような文言を入れるお客様がいますが、全ての設問を任意回答で作成しなくてはならないため、基本的には答えたくない設問がある場合は調査を中止してくださいの文言に変更いただきたいとご案内することが多いですね。

富田:WEBアンケートはやめたければ自由にやめられる環境にあるので、設問自体は基本必須回答として実施しています。そういった仕様回りも事前に調整ができると費用を抑えることに繋がります。
倫理審査を終えてからですと設問の内容や順番の変更が難しいかと思いますので、できるだけ事前にご相談をいただけるとより良いアンケートとすることができます。

東川:調査に慣れていなくても問題ないでしょうか?

若菜:大学のお客様だと学生さんの方も多くいらっしゃるので初めての方も多いですよ。

増田:営業を始め画面作成チームや集計チームなど、調査における各工程のプロフェッショナルが対応しますので、慣れていなくても全く問題ありません。配信したいアンケート内容についても、質問紙を確認しちゃんと対象者を抽出できるスクリーナーになっているか、設問の回答対象が間違っていないかなど細かくチェックを行っています。

富田:学術研究における質問紙調査は、一般のマーケティングリサーチのアンケート調査と異なる部分も多いため、その違いを把握した上で適切なご提案もさせていただきます。

東川:一般の調査とどのようなところが異なるのでしょうか?

富田:様々ではありますが、一番大きいのは求めているところが違う点ですね。研究の場合、その研究のテーマに従って、実態がどういうものかを正確に把握することが大切になります。そのため割り付けを人工構成比に合わせたり、その他の部分も綿密に設定されています。逆にマーケティングリサーチですと案件の内容に従って、精緻なものを取るというよりは、あくまで判断材料を取ることが目的になってくるので、学術調査と比べますと少しゆるい考え方になってきます。

若菜:学術研究は研究として行っているものになるので、回答者への配慮や設問の聞き方、選択肢の設定の仕方など不十分な場合が見受けられます。そういったところも踏まえてより適切に実施ができるような提案を心がけています。

東川:調査初心者の方でも安心してお任せできそうですね!
 
 

被験者募集について

東川:どのような対象者を集めることができますか。

富田:募集時にスクリーニングアンケートを実施することで、年齢や性別といった基本的な属性はもちろん、ご要望に合わせた条件に合致する方を集めることが可能です。 全国約100万人の自社オリジナルパネルを中心に、最大1,600万人以上の生活者パネルへのアプローチが可能です。パネルモニターの特性上登録者が少ないといわれている高齢者や若年層のモニターも提携しているパネルを利用しながら集めることができます。
パネルからのリクルートが難しい出現率が低いニッチなターゲットへの調査の場合には、機縁リクルートなどパネル以外のアプローチ方法でのリクルートも可能です。

増田:他にも、親子リクルートや実証実験の被験者募集なども承っております。
また、在日外国人モニターも保有しておりますので、在日外国人のリクルートも可能です。

東川:在日外国人モニターはどのような方々が登録されているのでしょうか?

増田:日本に住まれている方で、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ等様々な国籍の方が登録をされています。性年代や居住地以外にも、日本滞在歴だったり、英語や日本語の会話レベルや読み書きレベルだったり、現在の職業等の情報が登録されています。

東川:例えば日本に来て日の浅い方にインタビューすることも可能ですか?

増田:滞在年数をもとに募集をかけることももちろんできます。また、そういう方の場合日本語のアンケート画面ではなく、英語や対象者の方に合わせた言語画面でお作りすることで募集が可能となっています。

若菜:あとはスペシャルパネルのご用意もありますよ。通常の基本属性として必須で聴取する項目とは別に、疾患や職業や喫煙状況や住居・車等、よくアンケートのテーマとして用いられる情報を細かく聴取し、スペシャルパネルとして集計データをまとめています。
スペシャルパネル内にある情報であれば絞り込みで配信もできますし、事前にどのくらい集まりそうかを予測することも可能です。

東川:基本の登録情報とは別に在日外国人やスペシャルパネル等あらゆるアプローチ方法で絞り込みをかけることが可能なのですね。

若菜:はい。テーマに適したパネルを選択させていただきます。また、過去案件で実施がある場合もどの程度集まるかの確認が可能なのでリクルート可否についても是非お問合せいただければと思います。

東川:運営部分についても教えてください。

富田:そうですね、アスマークでは被験者募集支援だけでなく、実施施設の貸出提供・実験や試験の現場対応などもしております。 実施施設に関しましては、都内3か所(神田/秋葉原・王子・蒲田)に臨床試験に協力的な提携医療施設があり、実験・試験の内容に合わせて貸出提供することが可能です。 試験内容によってもまいりますが、最大16名/回の検査が可能で、午前中のみでも、最大3回転=合計48名の検査を実施することができます。

東川:1日にするとどの程度実施が可能ですか?

富田:終日ご対応ができる場合であれば、もちろん内容にもよりますが、最大100名ほどの実施も可能になっています。
実験・試験の現場対応に関しましては、実験当日の受付を始め、被験者への事前案内や説明・誘導に関する人員の貸出が可能です。 被験者様、スタッフの安全と健康を守るため、検査対応時に感染症対策として、マスク・手袋・フェイスシールドの着用、こまめな消毒を実施させていただきます。 また、採血などの医療行為を伴う臨床データ取得の際は、立会いが必須となる医師の手配も可能です。

東川:採血以外にはどのような臨床試験がありますか?

富田:採血以外ですと、採尿を伴うものだったり、心拍や血圧を測ったり、運動試験のようなものをすることもあります。例えば階段の昇降運動をしていただき、前後で身体系の数値の差を測るといったことも実施しています。

増田:医療行為や特別な機材等必要ない場合は弊社では自社でインタビュールームや会場を持っておりますので、リクルーティングから当日の実査対応まで一貫して対応可能です。また、個人で管理するにはハードルが高い個人情報の取り扱いについても、当日の緊急連絡先や受付対応含め弊社スタッフにお任せください。


 
 

さいごに

東川:チームとしての目標はありますか。

富田:ご依頼いただいた調査の実施だけでなく、共同調査やセミナーの開催などを通してより多くの研究をしている方々へ調査会社ならではのお手伝いをしたいと考えています。残念ながらご対応が難しいご相談もあるので、できることを少しずつ増やしていき研究者の皆様のパートナーといえる存在になることが目標です。

東川:学術調査を検討している方にメッセージをお願いします。

富田:初めてのアンケートや被験者募集でしたら、分からないこともあるかと思うので、些細なことでも気になることは事前にお問い合わせいただければスムーズに不安なく調査設計を進めていただけると思います。
リサーチ会社ならではの知見を元に、「質問紙におけるデータ精度向上」「調査の実施方法」についてのご提案もいたしますので、具体的な仕様まで固まっていなくともまずはお気軽にご連絡ください。

増田:ネットリサーチ等はGoogleフォームなどの無料のツールを利用することでご自身ですべて対応することもできるかと思いますが、アンケートの画面を作ったり、回答してもらう人を集めたり、データのチェックっていう部分は慣れていないと手間に感じたり、時間がかかってしまったりと、結構実施までの障壁になってしまうようなところがあると思います。自分で対応されるよりは費用がかかってはしまいますが、弊社にお任せいただければ、プロのスタッフが一からサポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

若菜:アスマークは他の調査会社様と比べたときに、モニターの回答内容が充実していると言っていただくことも多いです。学術調査チームとして、特に多く対応しているメンバーもいるので、1度ご相談いただけたら嬉しいです。


 
 

対談を終えて

アスマークの学術調査チームは学術調査の複雑さや独自性を深く理解しており、研究者の方だけでなく、調査経験の浅い学生さんに対しても非常に丁寧にフォローを行いながらプロジェクトを進行していることがよく伝わってきました。
また、アスマーク社の学術調査チームは、研究者との連携を通じて研究を支援し、研究者のパートナーとして存在することを目指しており、今後のチームの発展が楽しみです。
本記事が学術調査に興味を持つ方々にとって、有益な情報かつ学術研究の品質向上に役立てたらと思います。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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