公開日:2020.06.30

ミレニアル世代のコト+ヒト消費

  • リサーチャーコラム

ミレニアル世代が消費をしないことがメーカーの頭を悩ませており、彼らのニーズ把握や生活実態、消費行動実態などの調査依頼もしばしば目にします。
生まれたころから、モノは身近に豊富にあり、生活必需品であるテレビ・洗濯機などの家電を持っていない家庭は少なく、そんな時代を生きる彼らにとって、モノへのハングリー度が低くなることは想像に容易いことです。

しかし、全くお金を使わない、所有することに全く価値を感じない、ということはありません。
飲食店へも行くし、混雑したテーマパークへも出かけるし、流行の行列ができる店にも並ぶ。スマホアプリなどのデジタルコンテンツも購入するし、YouTubeでスパチャしたり、ライブに行けばグッズを買い占めたりもする。
そんな彼らの「消費行動」となるきっかけは一体何なのでしょうか。

まず「コト消費」というワードにたどり着きます。
「コト消費」は「商品・サービスによって得られる経験に価値を感じて使うこと」で、インバウンド市場でも注目された消費活動であり、日本の商品を購入することよりも、日本でしか味わえない何かを期待して来日する傾向から、「コト消費」につながっていると考えられています。
若者も同様、「そこでしか味わえない体験」にお金を使う「コト消費」に着目されてきました。
SNSに写真や動画を投稿することを目的として行動することも、「コト消費」の一環です。

では、その「コト=体験できる内容」さえ充実させれば、若者の消費を促すことができるのかというと、そうとも言い切れません。

会社の忘年会などの飲み会を例にして考えてみます。

『会社の会合・飲み会』は、職場の一体感を築く、結束を高める、チームワークをよくする目的で、上司や経営者が部下の思いをリサーチするための重要な場でもあるとされています。
ところが、あるインタビュー記事によると、「会社の飲み会に参加するなら、その時間分の給料を支払ってほしい」といった意見が若者から挙がっていました。結束とか一体感を高める目的が背景にある会社の飲み会には、彼らにとって価値を見出せないようです。また、昨今はアルコールを飲まないといった傾向も増し、親しみを込めて「遠慮せずに飲もう」とすすめたらアルハラと受け取られてしまう・・・といったこともしばしば耳にします。
これらのことは会社側からすると、前述の部下の思いをリサーチする場が得られないため、経営課題の1つでもあるといわれています。

しかしながら、アルコール離れしていても、会社の会合には参加したがらないとしても、友人との飲み会や集会には時間もお金も惜しまないそうです。
同じ会合の場であるにも関わらず、彼らが参加・不参加を決定する違いは何でしょうか。
それは、「その場にいるヒト」に起因していることに気が付きます。

単に、一体感や結束を高めるための会合、という名目では、若者の参加率は低いままでしょう。
しかし、たとえば「いつも自分を機にかけてくれる上司」「話が合う先輩」「いるだけでなぜか安心感を与えてくれる同僚」など、彼らにとって、何らかの肯定的要素を持った人物も参加するとしたらどうでしょうか。少なくとも「今回だけでも行ってみようかという気持ちになるのではないでしょうか。

元々魅力度の高いイベントとして考えてみても同様に、一人では参加しづらいといった躊躇があったとしても、そこに、共に楽しさを共有できる人物が一人いれば、参加へのハードルはぐっと下がります。

これらのことから、実行している内容は「コト消費」でも、それをするきっかけは「ヒト」であるといえるのではないでしょうか。そしてそれは、決して若者だけに限った話ではありません。

一見面倒だと思える飲み会でも、そこに親しいメンバーがいたら参加する。
新しくオープンした店、ちょっと高いけれど、店員さんの感じが良いから行く。
昔からなじみのお店の店員さんは、自分を見かけると声をかけてくれるから何となく足を向けてしまう。

上記のように、魅力的要素が備わっている店舗やサービスに、魅力的な「ヒト」要素がさらにプラスされれば、より新規導入力は増し、また、リピート率にもつながることが考えられます。

サービス、または体験内容など、実際にその「コト」を誰と経験したのか、誰に向けて共有したいのか、誰と一緒であれば経験してみたいと思うのか。
また、なぜその人と分かち合いたいのか、その人が自分にとってどんな感情をもたらすのか、なぜその感情を求めるのか。

「コト」についての魅力度を測るだけでなく、「ヒト」に対する価値観も併せて探ってみると、今まで気づかなかった何かに気づき、新たな発見・発想に結び付くかもしれません。

『誰が、誰に、誰と、何をするか』がコト+ヒト消費です。
AIの時代はすぐそこに迫ってきていますが、「ヒト」にしかできないこと、「ヒト」だからこそできることは何か。代わりのきく店だとしても、代わりのきかないヒトがいれば、それはオンリーワンの店になることでしょう。
 

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執筆者
遠藤 久美
株式会社アスマーク リサーチソリューショングループ
市場調査会社にてインターネットリサーチのフィールドワーク業務に従事した後、2019年にアスマークに入社。現職ではリサーチャーとして、消費財から耐久消費財まで幅広い業界において、調査の企画・設計・分析業務を担当しながら、NeuroAIの分析担当も務める。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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