
2020.05.14
5Gの普及で、今後の市場調査の在り方はどのように変わる?
2020年3月25日、ついに日本でも5G(第5世代移動通信システム)が、各キャリアから本格的なサービスが開始されました。 日本における5Gの展開は、2019年……
公開日:2025.09.25
マーケティングリサーチの実務において、避けて通れないのが「仮説」との関わり方です。調査設計における仮説は、単なる推測ではなく、調査の方向性を定義し、結果の解釈に一貫性を与える基盤となります。
一方で、「仮説は特にありません」とおっしゃる調査のご担当者様も中にはおられます。そのとき、調査を進める側としては、出発点をどう設計すべきか、どこにリスクが潜むのかを冷静に見極める必要があります。本稿では、当社の経験を踏まえながら「仮説との向き合い方」について整理し、ビジネスの意思決定に資するリサーチを実現するためのポイントを考察します。
仮説とは、過去の知見や分析を踏まえた「仮の答え」です。
たとえば、調査の目的が「消費者は何を重視して商品を選んでいるのかを知りたい」であったとします。このとき、単に「商品Aが選ばれるか否か」ではなく、「30代女性は価格よりもデザイン性を重視して商品Aを選ぶのではないか」といった具体的な仮説を立てることで、調査票の設問や分析の軸が明確になります。
ところが、仮説がなければ、「重要な質問を盛り込めなかった」「深掘りすべき視点が抜け落ちた」といった事態に陥ります。結果として報告書が散漫になり、意思決定に使える示唆が得られないリスクも大きいのです。
つまり、仮説は「調査の質を担保する最小限の前提条件」であり、設計の段階から欠かすことができない要素だと考えています。
とはいえ、現場では「仮説がないので白紙の状態からお願いします」とご依頼いただくことも少なくありません。その場合、当社がよくご提案するのが、定性調査を経て仮説を抽出し、その後に定量調査で検証する二段構えのアプローチです。
デプスインタビューやグループインタビューによって生活者の生の声を拾い上げると、消費者自身が意識していなかった行動理由や価値観の手がかりが浮かび上がります。そこから「価格よりも利便性が重視されているのではないか」「ブランドストーリーへの共感が購買を促しているのではないか」といった仮説を導き出すことができます。
もちろん、スケジュールやコストの制約から定量調査のみで進めるケースもあります。その場合でも、事前の丁寧なヒアリングを通じて「これまでに社内で得られた知見」や「暗黙的に共有されている仮説的な見解」を引き出し、それを仮説の土台とすることが重要です。最終的に「どのような意思決定につなげたいのか」を共有することが、最適な調査設計の前提となります。
仮説を持つことの最大の効用は、調査の効率と精度の両立にあります。
逆に仮説がなければ、必要以上に多くの質問を盛り込むことになり、回答者に負荷がかかるうえ、データが煩雑になりやすい。さらに「結局何を明らかにしたかったのか」という焦点がぼやけ、報告書の価値を損なうリスクがあります。
探索的に定量調査を実施することも全く不可能ではありませんが、その成果は「仮説構築のための材料集め」にとどまる場合が多いです。現状把握や市場全体のマクロな理解が目的であれば有効な場合もありますが、戦略的意思決定に直結する調査としては不十分だと考えています。
一方で、仮説を前提に調査を進める際にも注意すべき点があります。典型的なリスクは以下の二つです。
このリスクを避けるために、調査設計やデータ分析の際には「仮説を疑う」視点を忘れないことや自由回答設問を効果的に活用することが有効です。
要するに、仮説は調査の方向性を定めるために不可欠ですが、それを“唯一の正解”として扱うのではなく、仮説を道具として柔軟に活用する姿勢が重要なのです。こうしたスタンスが、思い込みに左右されない健全な調査プロセスを実現します。
仮説は「調査を終えるための条件」ではなく、「次のアクションを導くための前提条件」であるべきです。
「30代女性は商品Aを選ぶと思う」ではなく、「30代女性は価格よりデザインを重視して商品Aを選ぶと思う」と設定すれば、結果を施策に繋げやすくすることができます。逆に粒度の粗い仮説では、得られる示唆が抽象的にとどまり、経営判断に結びつきにくくなります。
調査の成功は、仮説構築の精度に大きく依存しますので、お客様と当社が「その仮説を検証すれば、次の一手を描けるか」という観点で共に考えることが、調査価値を最大化する鍵だと考えています。
調査における仮説の扱い方は、単なる技術論にとどまりません。仮説を適切に設定し、検証し、必要に応じて修正するプロセスこそが、企業の意思決定を支える「知のフレームワーク」となるのです。
このサイクルを確立できれば、調査は単なるデータ収集ではなく、未来の打ち手を導く投資となるでしょう。
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マーケ戦略をシャープにする「正しい仮説の立案・検証方法」
製品やサービスの開発過程におけるリサーチ段階で、開発者の「仮説」はいわばプロダクト命運を握る核ともいえます。
調査においての「仮説」は、製品やサービスの明らかにすべき調査課題を見つけるカギとなり、正しい方向性を見極め効果的な戦略を立てるためには、適切な仮説の立て方が不可欠です。
本紙では、リサーチにおける「仮説」の立案方法と検証のプロセスに焦点を当て、「消費者ニーズに基づく製品開発」に活きる、「仮説構築」のノウハウとコツをご紹介。リサーチ仮説の立案から検証に至るまでの実務的プロセスで解説いたします。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 「仮説構築」についてイチから学び直したい
● 調査すべきマーケ課題を見極めたい
● 仮説の立て方を誤り、調査を失敗したことがある
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使用実態把握調査の調査票作成のポイント【テンプレート付】
「使用実態把握調査」は、サービスや商品、施設、機関等の利用状況・利用シーン・スイッチポイント等を把握する調査です。
消費者・ユーザーの声を拾い上げることができ、評価されているポイントだけではなく、課題や改善点も明確にすることができます。
このような課題に応えてくれる「使用実態把握調査」の設問の意図の解説つき【テンプレート】を公開しました。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 「使用実態把握調査」を実施予定
● 「使用実態把握調査」のやり方が分からない
● 簡単に「使用実態把握調査」をやりたい
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企業イメージ調査の調査票作成のポイント【テンプレート付】
企業イメージが良好であれば、あるいは、期待通りのイメージを持っていただいていれば、消費者が商品・サービスを選択する際に、その企業イメージは、自社にとって有利に働きます。
企業イメージ調査を実施することで、消費者に自社がどのように映っているのかということを把握することができます。期待するイメージとのギャップがあるのであれば、それを埋めるための改善策を講じるのに役立ちます。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 「企業イメージ調査」を実施予定
● 「企業イメージ調査」のやり方が分からない
● 簡単に「企業イメージ調査」をやりたい
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調査における仮説の立て方とは?例題や仮説思考、検証の流れなど解説
ビジネスの現場では、常に「なぜ売上が落ちたのか」「なぜこの商品は選ばれなかったのか」といった問いが生まれます。その問いに対して最短距離で答えを導くために欠かせないのが、「仮説を立てる」という行為です。
「仮説」という言葉を聞くと、難解な分析や専門的な知識が必要な印象を持つかもしれませんが、実は日常生活の中でも私たちは自然と仮説を立てています。
本記事では、調査における仮説の立て方や論点との関係、検証の流れ、例題を絡めた仮説の立て方について解説していきます。
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定性調査の成功の鍵を握る『仮説』と質を高める『技法』の種類とは?
定性調査は、消費者の「なぜ」を深く掘り下げ、その意識や行動の背景を理解するための重要な手法です。インタビューや観察など、定性調査にはさまざまな技法があり、調査の目的に応じて使い分けることが求められます。適切な手法を活用することで、調査の質を大きく向上させることが可能です。
本記事では、定性調査を成功させるために必要な、調査の背景や目標の整理、目的と課題の明確化、そして仮説の立案とその検証について解説します。
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シニアマーケティング大転換期の再考|バブル世代・新人類の60代突入から紐解く仮説
「団塊の世代」800万人全員が75歳以上、すなわち後期高齢者となることで、2025年問題として注目される「超高齢社会」が “今” 到来しています。
一方で、シニア向けマーケティングに携わる方々にとっては、「新人類・バブル世代がほぼ全員60代になる」という事実も注目しないといけないかもしれません。
なぜなら、「新人類」や「バブル世代」と呼ばれた人たちは、これまでのシニアと経験してきた事柄が異なるからです。
本コラムでは、新たなシニアマーケット像について、リサーチャーとマーケターが仮説を話すオンラインセミナーで語られたシニアのイメージや定義、落とし穴などを解説していきます。
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