公開日:2026.03.26

物価高の中で見直された支出と継続したいもの|社会人男性へのインタビューから見えた判断軸とは

  • インタビューコラム

物価高が昨今続く中で、生活者はどのような支出を見直し、何を維持しようとするのでしょうか。

今回は、単身世帯かつ東京在住の社会人男性に、値上がりを感じたものから、節約、お金をかけ続けたいものなどについてインタビューを実施しました。

得られたヒント


  • 事業成長のために既存顧客の維持や利用継続に目を向けることも重要で、顧客がどのような気持ちでサービスを契約し、どのような価値を感じて利用しているかを改めて把握する方法として、インタビュー調査がおすすめ
  • 機能や価格だけでなく、悩みが生まれた瞬間に思い出してもらえるか、また「検索する」などの行動が起きたときに接点を持てるかという視点で施策を考えることが重要

 
インタビューをした方の簡単なプロフィールは下表となります。

性別 男性
居住エリア 東京都
家族構成 一人暮らし
ご職業 情報通信業(エンジニア系)
※ 在宅が1週間に4日ある
趣味 特定の映画館(グランドシネマサンシャイン 池袋)で映画を観ること
金曜日の夜や土曜日、休みの日に行っており、週に2日行くこともある。
この映画館の良さは、日本一の大きな画面だそうです。
悩み 肥満体質になってしまったこと
コロナ禍になってから、在宅勤務がメインになり、運動不足が続き、肥満体質になってしまったことが悩みだそうです。
食生活は気を遣うように努力をしているそうです。

 
この記事では、物価高騰に関する発言を整理し、商品・サービス開発に携わる皆さまに役立つヒントを丁寧に読み解き、紹介します。
 
 

 

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値上がりを感じたもの

まず、彼が値上がりを実感したものとして挙げたのは、「光熱費」でした。
かなり値上がりを感じているようで、2021年12月ごろと2022年12月ごろの金額を比べると、約2倍の差があったそうです。
2021年も2022年も同じ環境で仕事をしていたものの、もともと8,000円ほどだった金額が、1万7,000円〜1万8,000円ほどまで上がったといいます。

実際のインタビュー風景
実際のインタビュー風景

 

もともと一人暮らしとしては光熱費が高めだと感じていたそうで、その理由として、暖房を使うことに加え、仕事の都合で作業時にはモニターを4台使用していることなどから、電気を使う機器がやや多いことを挙げていました。

しかし、同じ環境で仕事をしていたにもかかわらず、1年後に金額が約2倍になっていたことについては、「ちょっとびっくりしてしまうな」と話していました。
 
 

値上がりを感じたもの|日用品編

続いて、光熱費のほかに、日用品で値上がりを感じるものはないかをインタビュアーが尋ねました。
すると彼は、「日用品だとあまりちょっと、電気代があまりにもインパクトが強すぎて…」と話していました。

そのうえで、行きつけのクリーニング屋から届いたメルマガに「来月からサービスの品質を保つため、値上げをいたします」といった案内があったことを挙げていました。
また、言われてみれば、クリーニング屋に限らず、何かを利用する会員制サービスなどでも、こうした値上げの案内を目にすることが増えており、さまざまなサービスで値上げが進んでいるように感じると話していました。
 
 

値上がりを感じたもの|食品編

今度は、食品で値上がりを感じるものはないかをインタビュアーが尋ねました。
これに対して彼は、普段あまり値段を見て食品を買うことがなく、価格を強く意識したことはあまりないと話していました。
一方で、値上がりの例としてよく挙げられるもののひとつにハンバーガーがあるとし、マクドナルドも知らないうちに値上がりしていたといいます。
そして、「昔は100円で食べられたりとかできたのに」と話していました。
 
 

普段は外食?それとも自炊?

彼は、外食をすることもあるものの、基本的にはご自宅で食事をとることが多いそうです。

また、お昼ご飯については、そのときの状況に応じてさまざまなパターンを取り入れているといいます。
たとえば、買い置きしてあるカップラーメンを食べたり、ご飯を炊いてカレーのルーをかけて済ませたり、Uber Eatsなどの宅配サービスを利用したりすることもあるそうです。

 
 

光熱費などが高くなり、全体的な節約も兼ねて生活を見直した

光熱費などの負担が大きくなったことで、「その分、どこかを切り詰めないといけない」と考えるようになり、全体的な節約も兼ねて生活をいろいろと見直したそうです。
 
 

宅配の利用を控えるように

その見直しの一つが、宅配サービスの利用でした。
宅配サービス系について、「元から高いかもしれないですけど」と前置きしつつも、以前より感覚的に「高いな」と感じるようになったと話していました。
そのため、宅配の利用は少し控えるようになり、代わりに買い溜めをしておいたレトルト食品や、スーパーで購入しておいたお惣菜などを活用して、食事をとるように切り替えたそうです。
 
 

サブスクリプションサービスを解約

生活の見直しの一環として、サブスクリプションサービスも解約したと話していました。

たとえば、音楽配信サービスでは、SpotifyとApple Musicの2つを契約していたそうですが、聞いていなかったSpotifyを解約したそうです。

また、動画配信サービスでは、NetflixとAmazon Prime Videoの2つに加入していたものの、料金の高いNetflixを解約したといいます。
視聴する量自体はどちらも同じくらいだったそうですが、昨年あたりにNetflixが値上がりし、3つある料金プランのうち最上位プランに加入していたこともあって、月額が2,000円ほどかかっていた点が負担に感じられたそうです。
一方、Amazon Prime Videoは年額契約で、月あたりに換算すると490円ほどだったとのこと。そのため、Netflixと比べて「結構差があるな」と感じたと話していました。
 
 

電気代の上昇をきっかけに生活を見直し始めた

彼は、電気代が上がり始めたと感じた昨年10月ごろから、生活の見直しを始めたそうです。

電気代が急に2倍ほどに増え、「『色々見直す機会かな』と、ちょうど色々思っていた」ため、クレジットカードの明細を確認しながら、「これは必要ないサービスだから、今後は使わないようにしよう」といった形で、支出を見直していったそうです。
 
 

得られるヒントについて|光熱費などが高くなり、全体的な節約も兼ねて生活を見直した

この章から得られるヒントは、彼がどのような支出を見直し対象として捉えていたのか、その判断軸にあります。

今回のインタビュー内容を整理すると、2倍ほどに上がった光熱費に強い値上がり実感を持ち、それをきっかけに、毎月支払っている音楽配信サービスや動画配信サービスの複数契約を見直していました。
一方で、日用品や食品については、光熱費ほど強く値上がりを意識していない様子もうかがえました。

こうした状況から、彼は以下のようなタイプがまず目につくのかもしれません。

  • 1回あたりの支払金額が大きいもの
  • 同類サービス × 複数契約 × サブスク

 
 
実際に彼は「同類サービス × 複数契約 × サブスク」という状態にあった音楽配信サービスや動画配信サービスについて、使用量価格を踏まえて解約を行っていました。
これはあくまで彼個人のケースであり、基本的なことではございますが、商品・サービス開発や事業成長を考えるうえで、見逃せないポイントとなります。
 
 

1:5の法則と5:25の法則という考え方もある

こうした見直しが起きる場面をどう捉えるかは、事業側にとっても重要です。
よく知られている考え方に、1:5の法則があります。これは、新規顧客の獲得には既存顧客の維持よりも5倍のコストがかかるというものです。
さらに、5:25の法則では、顧客離れを5%改善できれば、利益が最低でも25%改善するとされています

こうした考え方を踏まえると、事業成長のためには新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の維持や利用継続に目を向けることが重要だといえます。
もちろん、一定の解約は避けられない部分もあります。しかしその一方で、現在契約中のユーザーに対して、利用頻度を増やしたり、サービスの活用範囲を広げたりする施策を考える余地もあるでしょう。

そのため、使用量を0から1に増やす施策はもちろん、1から2、3へと利用を深めてもらう施策を検討するうえでは、まず顧客がどのような気持ちでそのサービスを契約し、どのような価値を感じて利用しているのかを改めて把握することが大切です。
その実態を知る方法として、インタビュー調査を実施し、継続理由や見直し理由、他サービスとの比較軸を丁寧に深掘りしていくことが有効でしょう。

 

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生活に関わるものすべてを楽天サービスにまとめた

光熱費の使用量などを以前から確認していたのか尋ねると、『楽天でんき』と契約しており、そこから届くメールで使用状況を確認していると話していました。
また、引き落とし方法を「楽天ポイント」に設定することも可能で、ポイントが引かれたのを見ると、「『あっ』と思って、『今回は2万円だったのか』っていうふうにちょっとしんみりした感じになってしまう」とも話していました。
 
 

他の楽天サービスの利用状況と、利用し始めたきっかけについて

彼は、楽天市場をはじめ、インターネット回線、モバイル、銀行など、さまざまな楽天サービスを利用していると話していました。

楽天サービスを使い始めたきっかけとしては、クレジットカードを作ろうと思ったときだそうです。
新卒のころ、クレジットカードを作ろうと考えてネットで調べたところ、専門家のような人が「この会社がいいよ」と紹介しているサイトを見つけ、利用してみようと思ったといいます。さらに、付帯サービスなども申し込んだ結果、最初にかなり多くのポイントが貯まり、「これはなかなかいいな」と感じたそうです。
 
 

楽天サービスにまとめたきっかけについて

一人暮らしを始めた当初は、電力は東京電力、ガスは東京ガスというように、特に考えずにそれぞれ契約していたそうです。

そして、前述したように楽天サービスを使ったときのポイントの付与率がかなり高いことが判明し、生活に関わるものすべてを楽天にまとめたそうです。その結果、今では“ほとんど楽天ポイントで生活しているようなもの”になったと話していました。
 
 

電気を節約することはほとんどない

彼はワンルームのアパートに住んでいることから、電気の節約については「ちょっと難しい」と話していました。
「本当に気づいたときに『あ、あそこの電気がつけっぱなしだ。消しておこう』ぐらいしかちょっとできてなくて」ともいいます。

 
 

エアコンの使い方について

また、インタビュアーから、エアコンの使い方を工夫して節約している人もいることを伝えると、彼はエアコンで節約している感覚はないと話します。
というのも、エアコンは体調に関わることもあるため、夏と冬では次のように使っているそうです。
:18℃に設定して、一気に冷やす
:ヒーター類がないため、12月や1月といった寒い時期には、「とりあえずフルパワーで温める」ようにしている
 
 

在宅勤務に対する会社からのサポートについて

まず彼が会社からのサポートとして挙げたのは、スポーツ補助でした。
月に13,200円(税込み)までであれば、スポーツに関するサービスに利用できるといいます。

また、在宅勤務に関するサポートについては、人によって異なるものの、会社から椅子やモニターを借りている人もいるそうです。

一方で、在宅勤務に対する補助金のようなサポートはないとのことでした。
そこで、インタビュアーが在宅勤務に対してどの程度の手当があると嬉しいかを尋ねると、彼は「パッと今出た金額だと1,000円ぐらい」と話していました。
現実的には、月額1,000円程度が妥当ではないかと思うそうです。

 
 

お金をかけ続けたいもの

さまざまなものが値上がりする中でも、お金をかけ続けたいものとして、まず“健康に関すること”が挙がりました。

具体的には、最近パーソナルジムに通っており、その中で「食生活をちょっと変えてみませんか」といった話が出たそうです。そこで、プロテインやビタミン剤を摂ったり、特定のスポーツ飲料を飲んだりするようになり、実際に効果も感じているといいます。
現在もまだ肥満体ではあるものの、「筋肉もだいぶ増えてきたな」という実感があり、このまま続けていけば脂肪燃焼の効果も期待できると考えているそうです。そのため、健康に関すること”については、無理に節約をしないほうがよいと考えているそうです。
 
 

趣味の映画について

インタビュアーから趣味についてはどうかと尋ねると、彼は「変わることはないと思います」と話していました。

趣味があるかどうかで、私生活のクオリティや充実感が変わると考えているそうです。
実際に、「今週はこの映画があるから仕事頑張れる」「この仕事が終わればこの映画を観に行こう」といった気持ちをモチベーションにして動いているといいます。
こうした理由から、映画という趣味は自分にとって大切なものであり、なるべく削らないようにしているといいます。
 
 

得られるヒントについて|お金をかけ続けたいもの

この章から得られるヒントは、彼が支出を見直す中でも、趣味や悩みの解決につながるものは残したいと考えていた点にあります。

また、その理由を整理すると、次のようにまとめられます。
悩み:改善や効果を実感できている施策(食生活を変更)だから
趣味:私生活の充実感やクオリティ、日々のモチベーションに関わるから

ただ、これだけでは「そんなもんだよね」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 
 

商品・サービス開発へのヒント

しかし、こうした一見すると基本的なことこそ、商品・サービス開発を考えるうえでは重要です。
ここで大切なのは、「このような支出は削られにくい」と捉えることだけではありません。むしろ、彼のような人が悩みを抱えたときに、自社の商品やサービスを最初に思い出すかどうか、また「検索する」「比較する」といった行動を起こしたときに、きちんと候補に入れるかどうかが重要になります。

たとえば、健康の悩みを抱えたときに第一想起されるブランドになることや、検索・比較のタイミングで情報接点を持てるようにすることは、売上を伸ばすうえでの第一歩になりうるでしょう。

 
 
そのため、彼のような人に向けた商品・サービスを考える際には、機能や価格の設計だけでなく、悩みが生まれた瞬間に思い出してもらえるか、また「検索する」などの行動が起きたときに接点を持てるかという視点で施策を考えることが重要でしょう。

 
 

おわりに

今回のインタビューから見えてきたのは、彼が物価高の中であっても、すべての支出を一律に見直していたわけではなかったということです
光熱費のように家計へのインパクトが大きいものは強く意識され、その結果としてサブスクリプションサービスの見直しにつながっていました。

こうして得られた内容からヒントを整理すると、以下のようになります。

図 得られたヒント
図 得られたヒント

 
 
また今回、GeminiのNanoBananaで、下図のようなグラフィックレコーディング風の画像も生成してみました。

図 GeminiのNano Bananaで生成(生成AIで生成した画像)
図 GeminiのNano Bananaで生成(生成AIで生成した画像)

※ 本記事の理解を助けるために、生成AIで画像を作成しています。生成AIによる画像は必ずしも正確ではなく、誤った表現が含まれる場合があります。画像内容の真偽や正確性は保証できませんので、あらかじめご了承ください。

それぞれ“注意は必要”ですが、ご参考になれば幸いです。
 
 
価格変化に対する反応を見るだけでなく、「何が見直されやすく、何が残されやすいのか」を考えるうえでの手がかりになります。特に商品・サービス開発に携わる方にとっては、価格や機能だけではなく、ユーザーが悩みを抱えた瞬間や、検索・比較を行う場面で思い出される存在になれているかを見直すことも重要でしょう。

ぜひ、このコラムをもとに、インタビューで顧客理解の精度を上げながら、自社の商品開発の精度もアップデートしていきましょう。

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執筆:アスマーク編集局

執筆:アスマーク編集局

アスマーク編集局は、数多くのメーカー、官公庁、大学との広範な調査実績に基づき、実務に直結するマーケティングリサーチの知見を発信する専門組織です。単なる手法の解説に留まらず、「現場で求められる判断基準」や「実務上の留意点」を網羅した専門コンテンツを企画・制作しています。

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監修:竹中 重雄(Shigeo Takenaka)

監修:竹中 重雄(Shigeo Takenaka)

株式会社アスマーク マーケティング管轄 マネージャー
リサーチ業界およびマーケティング領域で10年以上のキャリアを持つスペシャリスト。学術調査チームの立ち上げや、業界内でも難易度の高い「難病・希少疾患」「障がい者」のリクルートサービスの立案・リリースを主導。

専門領域
消費者インサイト分析、セグメンテーション。学術的根拠に基づき消費者モニターをタイプ分類する「インサイト・セグ」を開発。

発信実績
日本のマーケティングリサーチ20年の変遷」の執筆や、最新技術を網羅した「ChatGPTを調査設計・レポートに活用する検証セミナー」への登壇など、伝統的手法から最新トレンドまで幅広い知見を保有。

本記事の監修にあたって
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