公開日:2025.08.13

アフターコーディングとは?エクセルでの手順やAIを活用した分析など紹介

  • 調査企画・設計

顧客やユーザーの声、アンケートの自由記述欄(FA:Free Answer)など、テキスト形式のデータをどのように分析すればよいか悩んでいませんか?そのような時におすすめなのが、アフターコーディングという手法です。

アフターコーディングは、テキストデータを定量的に分析するための重要なプロセスです。このプロセスを行うことで、大量のテキストデータから傾向やパターンを抽出し、顧客のニーズや市場の動向などを明確に把握できるようになります。

この記事では、アフターコーディングの基礎知識から、Excelを使った具体的な手順、さらにはAIを活用した効率的な分析方法まで、幅広く解説します。

 
 

アフターコーディングとは?

アフターコーディングとは、アンケートの自由記述欄やインタビューなどから得られたテキストデータを、後から分類・コード化し、定量的に分析する手法です。この手法では感覚的な「生の声」を数値化することで、より客観的な分析や意思決定につなげることができます。

このプロセスは、主に以下のステップで進められます。

  1. FA回答集の作成
    まず、分析の基盤となる自由回答(FA)のデータを、FA回答集としてまとめます。これは、アンケートの自由記述設問に対するすべての回答を一覧にしたものです。

    FA回答集の作成

    例えば、「商品Aの改善点」という設問に対し、「使いにくい」「色が少ない」「デザインが好みでない」といった生の声がここに集約されます。

  2. コーディング(分類・ラベリング)
    次に、FA回答集のデータをコーディングします。これは、回答の内容が似ているものをグループ化し、それぞれのグループに「コード」と呼ばれる名前番号を割り当てる作業です。

    コーディング(分類・ラベリング)

    例えば、「ひねるだけで使いやすそう」「容器がつかいやすそう」といった回答を「使いやすそう」、「収納がすっきりしそう」「大容量を補完できる」といった回答を「収納しやすい」というカテゴリーに分類します。

  3. 件数表の作成
    コーディングが完了したら、各カテゴリーに属する回答の数を集計し、件数表を作成します。

    件数表の作成

    これにより、「使いやすそう」に関する意見が50件、「収納しやすい」に関する意見が30件といったように、どのカテゴリーの意見が多かったかを定量的に把握できます。

  4. クロス集計(属性別分析)
    さらに詳細な分析を行うために、クロス表を作成します。これは、性別や年代といった回答者の属性と、コーディングしたカテゴリーを組み合わせて集計するものです。

    クロス集計(属性別分析)

    例えば、「女性の回答では『収納しやすい』に関する意見が特に多かった」といった、より深いインサイトを得られます。

 
 
アフターコーディングは、このようにテキストデータを数値化することで、具体的な傾向や課題を浮き彫りにするための効果的な手法です。
 

 
 

アフターコーディングの種類

アフターコーディングは、その分析単位によって大きく「文章」と「単語」の2種類に大きく分けられます。

文章単位のアフターコーディングは、回答全体が持つ意味や文脈を重視します。例えば、「このパッケージはコンパクトで使いやすそう」という回答を、「使いやすそう」と「収納しやすい」という2つのカテゴリーに分類します。
一方、単語単位のアフターコーディングは、特定のワードやフレーズをグルーピングして、それぞれのグループに該当する回答が何件あったかを分析する手法です。
この手法では、「好きな飲み物は何ですか?」といった質問に対して活用可能です。こういった質問の場合、回答は「コーラ」や「オレンジジュース」、「レモンサワー」、「サイダー」などといった単語での回答になることが多いでしょう。この「コーラ」や「サイダー」という単語を「炭酸飲料」グループにまとめたり、「コーラ」と「コカ・コーラ」を同じ「コーラ」グループとして扱ったりすることで、回答をすばやく定量化でき、全体傾向の分析を速やかに行えます。
 
 
なお、これらそれぞれのExcelでの具体的なやり方については、後ほど詳しく解説します。
 
 

アフターコーディングのメリット

アフターコーディングは、テキストデータを集計するとともに、定性的な意見を定量的な情報に変換することで、以下のようなメリットが発生します。

  1. データ全体の傾向を可視化できる
    自由記述の回答は、そのままだと個別の意見にとどまり、全体像を把握するのが難しいものです。しかし、アフターコーディングを行えば、どのような意見が、どれくらいの割合で存在しているのかを数値として表せます。
    例えば、「価格に関する不満が全体の30%を占めている」というように、具体的な傾向を把握できるため、改善施策の優先順位を検討するうえでも効果的です。
  2. 新たな発見や仮説のきっかけになる
    アフターコーディングは、事前に想定していなかった意見や傾向を浮かび上がらせるのにも役立ちます。
    例えば、「便利さ」を重視していたと思われていた顧客が、実は「デザイン」に強いこだわりを持っていたという隠れたニーズや意外なインサイトを発見できる可能性もあります。
    こうした気づきは、新たな仮説の構築や商品・サービスの改善方針に大きなヒントを与えてくれます。
  3. アンケート設計の柔軟性が高まる
    アフターコーディングは、自由記述形式の回答を活用できるため、選択肢をあらかじめ設定する形式と比べて、アンケート設計の自由度が高くなります。そのため、「選択肢では拾いきれない本音」や「思いがけない意見」など、より多様でリアルな声を収集することが可能です。
    これは、顧客理解を深めるうえで、とても大きな価値となります。

 
 

アフターコーディングのデメリットと対策

アフターコーディングにはメリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。その特性を理解して適切な対策を講じることが、質の高い分析につながります。

  1. 作業に時間とコストがかかる
    自由記述の回答数が多かったり、文章単位で詳細な分析を行う必要があったりする場合は、コーディング作業に多くの時間と労力が必要です。

    また、分析の精度が求められる場合は、ある程度の経験や専門知識を持った人材が求められ、その人件費や教育コストを考慮する必要があります。

    もし、簡単な分析で良い場合であるなら、Excelで関数やマクロを活用したり、生成AIサービスを活用したりすることで効率化が図れるでしょう。
    一方で、分析の精度の高さが必要な場合は、リサーチ会社など、専門的な方にお願いすることで、効率化や精度の高さを求めることができるでしょう。

  2. 分析者の主観が入りやすい
    アフターコーディングでは、収集した意見をカテゴリーに分類したり、コードを割り当てたりする際に、分析者による判断が必要です。その際に、分析者の主観が影響しやすく、判断がばらつくリスクがあります
    場合によっては、結果の再現性や客観性を損なう可能性があるため、複数人で作業する際は、以下のような対策が必要です。

    • クロスチェック体制を整える
    • 分類ルール(コーディングルール)を明確にし、文書化する
    • ルールを事前に共有し、必要なトレーニングを行う

    このようなルールと体制を整備することで、コーディングのばらつきを抑え、分析の信頼性を高めることが可能です。

 

Tips

自由回答とは
自由回答とは、アンケートや調査において、回答者が自分の言葉で自由に意見や感想を記述する形式の設問です。例えば、「この商品についてのご意見・ご感想をお聞かせください」といった設問がこれに当たります。
あと、自由回答は、冒頭で記載したFA(Free Answer)やOA(Open Answer)と呼ばれることもあります。
自由回答は、選択肢の中から選ぶ形式(プリコード)とは異なり、回答者の率直な意見や、予期せぬ視点からの回答を得られることが大きな特徴の1つです。また、顧客の本音や潜在的なニーズを引き出すことで、事前に想定していなかった新たな課題や改善点、顧客が本当に重要視しているポイントを発見できる可能性が高まります。

プリコードとは
プリコードとは、アンケートや調査において、あらかじめ回答の選択肢が用意されている形式の設問です。自由回答とは対照的に、「はい」「いいえ」のような二択式や、「非常に満足」「満足」「普通」「不満」「非常に不満」といった段階評価、複数の選択肢の中から該当するものを選ぶ形式などがこれに当たります。
この形式は、回答が集まった時点で既に分類が完了しているため、コーディング可能なデータとして迅速に分析できます。これにより、収集したデータの全体傾向を素早く客観的に把握することが可能です。

 

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アフターコーディングとテキストマイニングの違い

アンケートやインタビューなどで得られた自由記述データの分析方法には、「アフターコーディング」の他に、代表的なものとして「テキストマイニング」があります。どちらも文章データを整理・分析する手法ですが、そのアプローチや目的には明確な違いがあります。

この章では、テキストマイニングの特徴と、アフターコーディングとの違いについて解説します。
 

テキストマイニングとは

テキストマイニングとは、大量の記述された文章(テキストデータ)を単語や文節に分割し、その出現頻度相関関係などを分析する技術のことで、最も代表的なデータマイニングのひとつです。
データの背後にある傾向やパターン、隠れたルールなどを発見します。

この技術は、AI(人工知能)や自然言語処理(NLP)といった高度な技術を基盤としており、人間が手作業で行うには時間と労力がかかる膨大なデータ処理を、自動的かつ高速に行うことで実現しています。

テキストマイニングの主な分析手法としては、以下のものが挙げられます。

分析手法 解説
主成分分析 テキスト内で使われている単語の関係を整理し、情報を損なわずに少数の主成分に集約して傾向を把握します。
共起分析 特定の単語と一緒に出現しやすい単語を分析することで、単語同士の関連性を明らかにします。
センチメント分析
(感情分析)
文章が肯定的か否定的か、あるいは中立的かを判定し、顧客の感情を把握します。

 
テキストマイニングは、コールセンターのログ分析、SNSの評判分析、市場トレンドの予測など、多岐にわたる分野で活用されています。

 
 

テキストマイニングとの違い

アフターコーディングは、人が主導して行う分析手法であり、分析者が回答を一つひとつていねいに読み取り、背景や文脈、言葉のニュアンスまで考慮してカテゴリー分けやコード化を行います。そのため、定性的な情報から深い洞察を得たい場合に効果的です。

一方、テキストマイニングはコンピュータ処理によって、膨大なテキストデータから単語の出現頻度や関連性といったパターンを、客観的かつ自動的に抽出します。これにより、人間の手作業では処理しきれない膨大なデータの分析を、高速かつ効率的に実施できます。

そのため、アフターコーディングは「人の目による深い理解」を得意とし、テキストマイニングは「コンピュータによる大規模かつ機械的な解析」を得意とする方法といえます。これらの手法を用いる際は、分析の目的や扱うデータ量に応じて適切に判断することが大切です。

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アフターコーディングのやり方

アフターコーディングは、自由回答データをカテゴリー化し、定量的に分析できる形へ変換するための重要なプロセスです。しかし、初めて行う場合は、具体的にどう進めれば良いか分からない方も多いのではないでしょうか。

そこで本章では、多くの方が日常的に使っているExcel(エクセル)を用いたアフターコーディングの具体的な手順を解説します。

Excel(エクセル)

Excel(エクセル)で、アフターコーディングを実施する場合のやり方を、文章単語の場合に分けて解説します。

文章のアフターコーディングの場合
  1. 自由回答を表にまとめる
    まず、自由回答の内容を下図(FA回答集)のようにまとめます。

    図 文章の場合:FA回答集
    図 文章の場合:FA回答集

    項目の左から、回答者のナンバー、性別、年代、そしてQ1の回答を記載しています。
    そして、右端が例として用意した「洗濯に関する不満」という質問に対する回答内容です。

  2. コーディング(コード化)
    次に、コーディング(コード化)という工程に入ります。これは、端的に、カテゴリー(分類)を定義し、整理する流れとなります。
    カテゴリーの例としては、下図となります。

    図 文章の場合:カテゴリー例
    図 文章の場合:カテゴリー例

    調査目的によって、カテゴリーの分け方は変わりますし、主観が入る部分となるため、簡単そうに見えて非常にセンシティブかつ難易度が高い工程です。
    ここでは、わかりやすく「洗濯に関する不満」という質問や回答から、直感的に想像しやすい大分類、中分類、小分類を用意しました。

    そして、これを下図のようにFA回答集の横に項目として並べ、各回答どれに当てはめるかを、考えていきます。当てはまる場合は、「1」を入れます。

    図 文章の場合:FA回答集+カテゴリー
    図 文章の場合:FA回答集+カテゴリー

    一番下には、合計としてSUM関数【=SUM(数値1,数値2, …)】ではじき出します。
    上図の【不満】の合計を算出する条件として以下となり、関数は「=SUM(H8:H13)」となりました。
    【不満】の列:H列
    【不満】かつ「1」が入っているエリア:8行目~13行目

  3. 件数表
    FA回答集+カテゴリーを、分類ごとに集計を下図のようにします。

    図 文章の場合:件数表
    図 文章の場合:件数表

    件数をFA回答集+カテゴリーから出力するため、HLOOKUP関数【=HLOOKUP(検索値,範囲,行番号,[検索方法])】を使います。
    例えば、不満の件数「5」を出力する場合、以下式を入れました。

    =HLOOKUP(“*”&J17&”*”,シート名!$H$7:$R$14,8,FALSE)

    まず、「”*”&J17&”*”」で、ワイルドカードの「*」を使い、「『不満』という言葉が入っていたら」という条件を設定します。このときカテゴリーの中に「不満」という言葉が入っている場合、それも集計されてしまうので、適宜改良する必要があります。
    そして、「シート名!$H$7:$R$14」は、集計するエリアを示します。
    FA回答集+カテゴリーで「1」を入れているエリアが、H7~R14となるため、「$H$7:$R$14」としており、固定化させる「絶対参照の『$』」を含めて、「特になし」の「1」をコピー&ペーストで出力できるように設定しています。
    なお、「シート名」の部分は、FA回答集+カテゴリーの表を作ったシート名が入り、もし「アフターコーディング」というシート名であれば、「アフターコーディング!$H$7:$R$14」となります。

    続いて、合計はSUM関数で出力しています。
    割合は、「合計÷件数」で出力しており、不満の割合の場合「=K17/K19」と設定しています。

  4. グラフ化
    件数表の横に下図のように横棒グラフを加えると、視覚的にどの項目に寄っているのかわかりやすくなります。

    文章の場合:グラフ化
    文章の場合:グラフ化

    横棒グラフを表示するには、下図手順のように操作します。

    文章の場合:横棒グラフを表示
    1. 範囲を指定する(「手間が増える~その他」と「0.60~0.00」を選択
      ※ 離れているエリアを同時に選択する際、「手間が増える~その他」を選択した後、ctrlキーを押しながら「0.60~0.00」を選択することで、同時に選択できます
    2. 「挿入」タブをクリック
    3. 棒グラフのアイコンをクリック
    4. 横棒グラフをクリック
      こうすることで、下図が表示されます。

      文章の場合:横棒グラフを表示②

      このままでも使えますが、少し工夫するのであれば、下図のように操作するのがオススメです。

      文章の場合:横棒グラフで工夫
    5. グラフタイトルを設定/削除(設定または削除)
    6. 左の項目部分で右クリック
      ※ 右クリックして⑦の「軸の書式設定」のメニューを表示させる
    7. 「軸の書式設定」をクリック
    8. 「軸を反転する」にチェック

    あとは、グラフの大きさや位置を調整することで、上図のような見た目にすることができ、定量化+可視化完了(アフターコーディング完了)です。
    なお、必ず注意したいのが、中分類や小分類の割合の見方です。今回使用した例では、大項目の不満は全体の83%となりました。そして、その不満の方の内「手間が増える」は60%です。一方で、全体の内「手間が増える」は、6人中3人となるので、50%となります。こういった見方によって割合の意味が変わりますので、取扱いには注意しましょう。

 

単語のアフターコーディングの場合
  1. 自由回答を表にまとめる
    単語のアフターコーディングの場合でも、文章の場合同様、まず、自由回答の内容を下図(FA回答集)のようにまとめます。

    図 単語の場合:FA回答集
    図 単語の場合:FA回答集

    文章の場合と同様に見える部分あるかもしれないのですが、回答の内容を比較してみると、こちらでは、回答内容が、「です、ます調」で終わるような文章ではなく、単語での回答となっております。

  2. コーディング(コード化)
    さて次の行程も文章のとき同様、コーディング(コード化)という工程に入りましょう。
    カテゴリーの例としては、下図となります。

    図 単語の場合:カテゴリー例
    図 単語の場合:カテゴリー例

    このビールや発泡酒、日本酒などは、ご自身で用意するものとなります。文章と比べると、ある程度カテゴリーを想像しやすい、設定しやすいと思いますが、「うめ酒」など表記ゆれには注意が必要です。
    また、右側にコードというものを用意していますが、どれとどれが同じコード(カテゴリー)なのかを設定しています。わかりやすいのは「梅酒」と「うめ酒」で、どちらも「7」と設定しており、同一コード(同一カテゴリー)を示しています。
    カテゴリーとしての各単語の網羅性(表記ゆれ含む)とコードで分類/まとめる、というところで、ここでも主観が入ります。また、どちらも文章のとき同様、調査目的によって、種類が異なったり、分類の仕方が異なったりします

    そして、これを下図のようにFA回答集の横に「コード」という項目を用意し、上図のカテゴリーの表からVLOOKUP関数【=VLOOKUP(検索値,範囲,列番号,[検索方法])】を使って、自動的にコードの数値を出力させます。

    図 単語の場合:FA回答集+カテゴリー
    図 単語の場合:FA回答集+カテゴリー

    No.1の「ワイン」と回答している人のコードが「3」となっておりますが、そこに入力した関数は以下となります。

    =VLOOKUP(F8,シート名!$B$4:$C$24,2,FALSE)

    「ワイン」が入力されているセルが「F8」となり、上図のカテゴリーの表は別シートのB4~C24で用意したので、「シート名!$B$4:$C$24」を入れています。
    そして、続く「2」は、B4~C24がBとCの2列となり、C列にコードの数値が入っているため、2列目を出力してもらうよう「2」と入力しています。
    最後の「FALSE」は「完全一致」を示し、カテゴリーの表の「B列にあるカテゴリーで『完全一致』するものを」という設定をしています。

  3. 件数表
    下図のように、コードごと集計します。

    図 単語の場合:件数表
    図 単語の場合:件数表

    まず、「名称」というのがいきなり出てきましたが、「コード」に対して命名したものとなります。
    ここも主観的な要素が入り、調査目的などから、よく考えて設定する必要があります。
    この例では、果実酒と梅酒、うめ酒を「7」としているため、統合して「果実酒(梅酒など)」としています。

    そして、(それぞれの)合計は、COUNTIF関数【=COUNTIF(範囲,検索条件)】で出力しております。
    具体的に、「ビール・発泡酒」は、以下を設定しました。

    =COUNTIF(シート名!$H$8:$H$13,E4)

    最初の範囲設定は、「単語の場合:FA回答集+カテゴリー」という図でコードの数値が入っているエリアがH8~H13となるため、「シート名!$H$8:$H$13」と設定しています。
    「検索条件」は、コードの数値が「E4」にあるため、「E4」と設定しました。

    残る、下側の(項目すべての)合計はSUM関数を使っており、割合は「(項目ごとの)合計÷(項目すべての)合計」で算出しています。

    そして、右側のグラフは、文章のとき同様の設定で、設置しています。

 

 
 

番外編:AI(ChatGPT)

続いて、番外編としてAIを活用した、自由回答に対する分析の方法を解説します。

AIを普段から活用してらっしゃる方からすると、当たり前のことかと思いますが、AIに何かメッセージを送ると回答してくれ、その回答として要約もしてくれます。さらには、メッセージの質を上げるということで、プロンプトと呼ばれる定型指示文のようなものも色々ネット上などで紹介されています。

そこで今回、以下のプロンプトを用意して出力させました。

以下は、「○○」についての自由回答アンケート結果です。

【質問文】
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

【目的】
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

【対象者】
性別:○○
年齢:○○

【要約の粒度】
・回答全体から見られる主な傾向や意見を、3〜5点程度に要約してください
・類似の意見はまとめつつも、特徴的な表現やニュアンスはできるだけ活かしてください
・明確にポジティブ/ネガティブに分けられる内容がある場合は、それぞれ分けて記述してください
・「特になし」「ない」などの無回答・肯定的回答がある場合は、その傾向も補足してください

【自由回答データ】
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 
 
このプロンプトの特徴は目的や対象者を含めている点にあります。これらは、調査を設計する序盤で必ず考えるものであり、軸となるもので欠かせません。
また、慣れてきたら、仮説市場の状況、AIに対しての役割を振ることも良いでしょう。
 
 
さて、「文章のアフターコーディングの場合」で使用した、「洗濯」に関するアンケート結果の場合、以下のように○○の部分に記載しました。

以下は、「洗濯」についての自由回答アンケート結果です。

【質問文】
あなたが感じている洗濯の不満についてお知らせください。(自由回答)

【目的】
家庭での洗濯における不満や課題を把握し、洗剤・洗濯機・洗濯関連グッズの商品開発やマーケティング施策に活かすためです。

【対象者】
性別:男女
年齢:20代~40代

【要約の粒度】
・回答全体から見られる主な傾向や意見を、3〜5点程度に要約してください
・類似の意見はまとめつつも、特徴的な表現やニュアンスはできるだけ活かしてください
・明確にポジティブ/ネガティブに分けられる内容がある場合は、それぞれ分けて記述してください
・「特になし」「ない」などの無回答・肯定的回答がある場合は、その傾向も補足してください

【自由回答データ】
洗い方などの細かい事が良くわからない(いつも洗濯機のお任せコースでやってる)これで本当に良いのかと疑問に思う事はある
洗濯物により洗い方が違うので何回かに分けて洗わないといけないのが面倒くさい
洗濯物を個別に洗濯ネットに入れるのが面倒
ワイシャツのエリ汚れをこするのがいや
いろんな洗剤があるが、どれも納得のいく洗浄力が無く、CMみたいに綺麗に汚れが落ちていない
不満に思っていることはない

 

図 ChatGPTのチャット内イメージ

 
 
こちらを実際にGPT-4oの方で送信してみると、下図のような回答結果となりました。

図 ChatGPTのチャット回答イメージ

 
 

以下に、いただいた自由回答データの要約を記載いたします。


主な不満・課題(ネガティブ意見)
1. 正しい洗濯方法が分からず不安
 - 「お任せコースでやっているが、これで本当に良いのか疑問」といった声から、洗濯方法に関する知識不足や不安感がうかがえる。
2. 洗濯工程の煩雑さ・手間がストレス
 - 「洗濯物ごとに分けて洗うのが面倒」「洗濯ネットに入れるのが面倒」など、手間の多さ・工程の多さに不満を感じる意見が複数見られる。
3. 頑固な汚れに対する不満
 - 「ワイシャツの襟をこするのがいや」「洗剤の洗浄力に納得していない」など、部分的な汚れ落ちの悪さや洗剤への不信感が表れている。


ポジティブ・不満なしの意見
• 「不満に思っていることはない」という回答があり、現状に満足している層も一定数存在することが示唆される。


補足ポイント
• 洗濯そのものの機能や性能への不満というよりも、「使い方がわからない」「作業が煩雑」「汚れ落ちが実感できない」といった生活者視点の不安や負担感が中心。
• 製品開発や施策では、「使い方の正しさを可視化できる機能」「汚れ落ちを実感できる仕組み」「手間の軽減(例:ネット不要、全自動対応)」などがニーズに合致する可能性が高い。


ご要望に応じて、この内容をスライド形式や表形式にすることも可能です。ご希望があればお申し付けください。

 
 
人によって、参考になる部分が異なると思いますが、「『補足ポイント』は少し参考になりそうだな」と思う方がいらっしゃるのではないかと、考えます。
そのため、サッと雰囲気を知りたい方には、良い相棒となるでしょう。

一方で、精度に関しては、2025年7月現在、同じプロンプトを送っても、全く同じ出力結果は出ませんので、バラつきが出るでしょう。
また、定性調査は『主観』の取扱いも重要な調査です。そのため、

  • 慎重にデータを取り扱いたい
  • 調査目的に即した分析をしたい
  • 膨大な回答データから分析したい
  • 量的・質的、双方分析できる人材がいない
  • プロの意見が欲しい

 
という場合は、調査会社に相談するのが、おすすめとなります。
 

 
 

アフターコーディングの行う上での注意点

アフターコーディングを効果的に行うためには、以下の点に注意が必要です。

  • コーディングのルールを明確にする
    コーディングのルールがあいまいだと、担当者によって解釈が異なり、分析結果に一貫性をなくす恐れがあります。作業を始める前に、カテゴリーの定義や分類基準を明確に定め、チーム全員で共有しましょう。
  • 客観性を意識する
    コーディングは、どうしても主観が入りやすい作業です。そのため、分析結果の信頼性を確保するためには、できる限り客観的な視点を持つことが大切です。事前にルールをしっかり把握し、個人的な意見や解釈を反映させすぎないよう注意しましょう。
  • 複数人でチェックを行う
    コーディングのミスを減らして客観性を高めるには、複数人によるチェック体制を整えることが効果的です。異なる視点を持つ人が確認することで、見落としなどを防ぐことができます。
  • カテゴリー数を適切に設定する
    カテゴリーが多すぎると分析が複雑になり、全体像を把握しづらくなります。逆に少なすぎると、重要な情報を見落とす可能性があります。分析の目的やデータの特性に応じて、適切なカテゴリー数を設定しましょう。
  • 回答の文脈を考慮する
    回答内容を断片的にとらえるのではなく、前後の文脈を踏まえて解釈することが大切です。文脈を理解することで、回答者の意図をより的確に把握でき、適切なカテゴリー分類が可能となります。

 

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まとめ

この記事では、アフターコーディングの基礎知識から、Excelを使った具体的な手順、さらにAIを活用した効率的な分析方法までを解説しました。

アフターコーディングは、アンケートの自由記述やインタビューといったテキストデータを定量化し、顧客の本音や潜在的なニーズを明らかにするための効果的な手法です。時間やコストという課題はあるものの、ルールや体制をしっかり定めて進めることで、精度の高い分析結果を得られます。
さらに、AIツールを効果的に組み合わせれば、作業効率を飛躍的に高め、分析者の負担を軽減することも可能です。

ぜひ本記事の内容を参考にして、顧客理解を深めるためのデータ分析にアフターコーディングを活用していきましょう。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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アンケートの分析手法と手順|分析の質を上げるポイントを解説

アンケートの分析手法と手順|分析の質を上げるポイントを解説

アンケートには「企画」「データ収集」「分析」などのステップがあります。その中で「価値ある情報を見つけ出す」のが分析作業。この分析でいかに問題解決のヒントを見つけられるかが、アンケート調査の成否を決定します。そこで今回の記事ではアンケート調査を成功させるための分析手順と、効果的な分析手法について解説します。

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マーケ課題別に分析手法を解説~リサーチ手法から対応表、事例まで紹介~

マーケ課題別に分析手法を解説~リサーチ手法から対応表、事例まで紹介~

「調査手法はある程度理解できているが、実際に調査を行った結果データをどのように扱えば良いのか分からない」という方も多いのではないでしょうか?マーケティングにおいて、商品やサービスを成功に導くためには、様々なフェーズにおける課題や悩みに対して適切な分析手法を選ぶことが重要です。

本記事では、悩みに対する分析手法の紹介とそれぞれの分析手法について紹介していきます。

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【目的別】定量調査-虎の巻セット

【目的別】定量調査-虎の巻セット

『ブランド認知』『コンセプト』『パッケージ』『顧客満足度』—マーケティングリサーチにおける代表的な4つの調査と、分析の元となる『アンケート集計』について、実務で役立つ以下の情報を網羅的に掲載した【虎の巻】を全て一括でダウンロードいただけます。
●  調査の目的から設計ポイント
●  見積例・アウトプット例
●  データ集計の種類と方法

下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 商品企画・ブランド・パッケージなど、幅広いテーマで調査を検討している
● 自社で頻繁に行う調査の進め方や設計手法を整理したい
● 他社ではどう設計・分析しているのか、実例ベースで比較・参考にしたい
● 集計方法の種類や集計方法についておさえておきたい
● これから調査の担当になり、基本的な知識・費用感・アウトプットイメージをつけたい

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「分析・設計の前提」が分かる正しいデータの見方とは

「分析・設計の前提」が分かる正しいデータの見方とは

「データの扱い方」についての悩み、実際の施策にどのようにして結びつけるかの悩みの解決に役立つ「データ活用の課題」に対する解決策を具体的な手法と実例と共にご紹介しております。

下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● データを活用して、マーケティング戦略をより強化したい方
● 顧客インサイトを深く理解し、施策に反映させたいマーケター
● 定量データを活用して、製品やサービスの改善に取り組みたい方

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社会調査におけるコーディング(≒アフターコーディング)とは?

社会調査におけるコーディング(≒アフターコーディング)とは?

社会調査では、アンケートやインタビューを通して大量のデータが集まります。これらのデータを分析し、有益な情報を得るためには、データを分類・整理することが重要です。特に、自由回答(FA)のアンケートやインタビューで得られた情報は、そのままでは分析が難しい場合が多く、回答を分類・関連付け・比較する作業が必要です。そのための分類作業を「コーディング」と言い、社会調査において、とても重要な役割を担っています。
※ 社会調査は、私たちの暮らしをより良くするために、自治体や官公庁が行う政策決定、企業における商品開発、学術調査による社会現象の解明など、様々な場面で活用されています。

この記事では、社会調査におけるコーディング、特にアフターコーディングについて焦点を当て、その定義からメリット・デメリット、具体的な流れまでを解説します。

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