
2023.06.30
ドラッグストアの顧客満足度調査テンプレート:顧客の声を活用して競争力を高める方法
ドラッグストアは、私たちの日常生活において欠かせない存在となっています。医薬品をはじめとする健康や美容の製品を提供するだけでなく、日用雑貨や食品などの品揃えも豊……
公開日:2025.08.29
「顧客の本当のニーズを知りたいが、インタビューやアンケートだけでは本音を引き出せているか分からない…」
マーケティングや商品開発に携わる中で、このような課題を感じたことはありませんか?今回ご紹介するエスノグラフィー(行動観察調査)は、そうした課題を解決し、顧客自身も気づいていない「インサイト」を発見するための非常に強力な調査手法です。
本記事では、エスノグラフィーの基本的なことから、良いところ・悪いところ(難点含む)、調査を成功させるための調査設計、分析ステップ、そして注意点まで、網羅的に解説していきます。
エスノグラフィーとは、定性調査(Tipsで紹介)の1種で、調査対象者の生活の場に身を置き、行動を共にしながら、観察して記録する調査手法になります。そのため、行動観察調査とも呼ばれます。

エスノグラフィー(行動観察調査)の主な良いところは以下です。
インタビューやアンケートで得られる「言葉」以外のデータを得られる × 顧客の生活空間に入ることで、生々しい生活実感を五感で感じることができる
例えば、「家の様子はどうだろう?」や「家の周辺にはどんなお店があるのか?」、「どういった色のソファーを置いてあるのか?」、「服の整理整頓はどうなっているのか?」など、言葉以外のデータを得ることができます。
こういった顧客の生活空間に入ることで、リアルな生活模様、生活実感を感じることができます。
なぜそのような行動をするのかの背景を理解することができる
また、上記のような情報を得られた上で、例えば、「食器を洗ってください」とお願いをしたときに、その食器を洗っている様子を直に観察することができます。そうすると、「どういう手順で洗っているのか?」や「なぜ、そのような行動をしているのか?」ということを理解することができる、言い換えれば、背景を理解することができます。
また、もう一つ「例えば」というところで、「台所が狭いがゆえに、いくつか手順を踏まなくてはいけない」という情報というのは、意外とインタビューでは、なかなか出なかったりします。そのため、行動観察をしていく中で、こういった環境に合わせた行動を見ることができ、そして「その背景は何か?」といったところを探ることもできます。
意識されていない問題を発見することができる
また、一つ頭の片隅に置いておいていただきたいことがあります。
それは、「生活者は、普段から何か問題があるとか、そういったことを意識して生活しているわけではない」ということです。
一方で、観察者側では「なぜ、このようなことをしているんだろう?」といったところを気づくことができます。そうすると、「生活者が普段意識していないような問題」というと、少し大げさかもしれないのですが、「少し合理的ではないのかな?」と思うことを発見することができます。
以上のような良いところがあるエスノグラフィー(行動観察調査)ですが、悪いところ、ないしは難点もあり、主に以下となります。
対象者の生活空間(自宅など)に訪問する場合、従来のインタビューよりも時間や準備がかかる × インタビューよりも準備・実査・分析に工数がかかるため、費用も高くなることが多い
エスノグラフィーの特性上、どこかに訪問する必要があることがあります。
そのため、ご自宅などに訪問する場合、従来のインタビューよりも時間や準備がかかってしまいます。
また、実査や分析にも工数がかかる部分がありますので、従来のインタビューと比べ、費用が高くなってしまうことが往々にしてあります。
対象者の生活空間に訪問する場合、訪問してもいいと許諾を得た人にしか訪問できない
こちらも当たり前の話とはなりますが、「訪問してもいいよ」という許諾を得た人にした訪問はできません。
もし、従来のインタビューの場合、会場に来ていただいたり、オンラインでインタビューをしたり、という手段があり、比較的「日程が合えば良いかな」という話になると考えておりますが、自宅に来てもらうとなると話は変わります。他のインタビュー系の調査と比べ、参加率というか、許諾率というのが下がります。
実際にいくつかのご自宅へ訪問をさせていただ経験から言いますと、結構きっちりされているご自宅が多い印象です。皆さまもご共感いただける部分かな? と思いますが、散らかっていらっしゃるご自宅ですと、「来てほしくない」というのがあるかと思います。
また、小さなお子様がいるご家庭や介護されているご家庭なども、それぞれのご事情から、許諾が得られないケースがあります。
そのため、本当は行きたいご家庭に行けない可能性もあります。
エスノグラフィー(行動観察調査)の活用として、どんなものがあるのか、以下5つ並べました。
こちら、あくまで例となり、他にも数多くの例があります。
詳しい事例が気になる方は以下コラムにて「エスノグラフィー調査の成功事例と活用方法」という章で一部紹介させていただいております。
「エスノグラフィー調査の概要と実践手法」はこちら>
定性調査は、因果関係をひも解くような調査になります。
例えば、20代の人は「こういう理由で、こういう商品を選ぶ」といった相関ではなく、「なぜ、こういうふうにしているのか?」といったところを深掘りしていきます。
数値では表現できないこと、世の中にはたくさんあるかと思います。そういった表現できないことについて、定性調査を行うことによって、「その人の気持ち」や「なぜそういうふうに感じているのか」、「何かのコンセプトを見て、評価するときに、どういう基準なのか」といったことについて、探っていき、因果関係をひも解いていくのです。
エスノグラフィー(行動観察調査)を成功させるための「調査設計」として、まず手順をご紹介します。
成功させるための手順は以下です。
①調査目的を明確にする
エスノグラフィーに限る話ではありませんが、調査目的を明確にする必要があります。
「とりあえず自宅に訪問したら、何か見つかるかもしれない」といった発想はNGです。対象者の方にも、せっかく時間を取っていただいておりますので、大変失礼です。
「何を観察したいのか?」というところを明確にし、「それをどういうふうにつなげるのか?」というところを意識するためにも、必ず調査目的を明確にしましょう。
②目的達成のために、「誰」の「何」を見るかを決める
その目的達成のために、「誰」の「何」を見るかを決めましょう。
調査設計などに関わってくる部分となり、対象者条件を決定し、「そこから何を観察したいのか?」、たとえば「料理シーンを観察したいのか?」、それとも「掃除シーンを観察したいのか?」といったことを決める必要があります。
また、合わせて「写真を撮りたい」や「ビデオを録画したい」という部分も、対象者の方に許諾を得なくてはいけませんので、決めておきましょう。
③仮説立ての下調べと実査準備をする
②まで決めたら、次は仮説立てをするために、テーマについてWeb上などで、『どういった商品が売られていて、どういうサービスがあって』といった基本的なことを下調べしておきましょう。また、社内に専門知識を持った方や、そのテーマに関連することについて詳しい方にも聞きましょう。例えば、洗顔をテーマにする場合、「その洗顔についてどういう風な成分が入っているの?」などを尋ね、基本的なことを押さえましょう。
こういった事前知識、基本知識をもとに、なるべく地に足のついた仮説立てをしていきましょう。
仮説立てができたら、実査準備をしていきます。
録画をするためのテープや、録音するための録音機レコーダーなどが必要になる場合があります。こういった必要な機材などを準備しましょう。
④適切な対象者を選定する
これは、②のところで「誰(対象者条件)」というのを決定しましたが、こちらに合わせて選定をしていきます。
この選定、いわゆるリクルーティングは非常に重要です。「家族構成はどうなのか?」や「年齢はどうか?」といった基本的な部分など、調査目的達成に叶う対象者であるかを終始照らし合わせ、選定していくようにしましょう。
⑤実査をする
実査は、調査設計で設定された調査を実施する工程になります。
エスノグラフィーでは、例えば、自宅に訪問させていただき調査する段階がこれにあたります。
実査を行う際、調査会社でアテンドしてくださるスタッフの方がいらっしゃると思います。その方が、例えばスリッパなど、だいたいの物を持って来てくださる部分があると思いますが、もし調査を行う企業様の方で当日必要な物があれば、忘れず持っていきましょう。事前に、当日の必要な物をリストアップしておき、誰がどれをもっていくのか、決めておくと不安を解消できるでしょう。
また、当日の役割の確認や、当日を想定したロープレもすると良いです。例えば、質問をする人、記録する人、謝礼を渡す人など、役割分担し、ロールプレイングをしておくことで、想定外のことも多々あると思いますが、対処できることも増えると考えます。
実際に、自宅訪問の場合、意外と長い時間(2~3時間くらい)お邪魔させていただくことがあります。加えて、「さらに1時間くらいインタビューを追加する」ということも場合によってはあり、そうなると、より長丁場になってきますので、もしそれを断行する必要がありそうな場合には、前もって対象者へ、「1時間ほど延長させていただいてもよろしいでしょうか?」といった形で、許可をいただきましょう。また、その際には、謝礼の増額といったところも行う必要があると思いますので、合わせて話し合い、対象者に失礼がないようにしましょう。もちろん一番は、当初の時間を守り、延長しないようにすることになります。
あと、お店に行き、その後、ご自宅でインタビューをする流れをとるエスノグラフィーの場合、移動時間などが読めない部分があるので、押してしまいがちです。そのため、『移動』も絡むエスノグラフィーの場合は、特に時間について検討をし、もし延長する必要がある場合は、出来る限り早く相談し、許可をもらうようにしましょう。
そして、威圧感を与えかねそうなことはやめましょう。
例えば、大人数で押しかけたり、服装であったり、男性だけで行ったりすることが当てはまります。もちろん、調査目的上仕方がない部分であれば、要検討の上、実施する必要がありますが、基本的にはやめましょう。
例えば、ワンルームに、4~5人といった人が押しかけてしまうと、「怖いな」って思われてしまうかもしれません。スーツでバシッと決めていく場合も、意外と威圧的だったりしますので、カジュアルな服装が望ましいでしょう。また、男性だけですと、威圧的に感じられる方もおりますので、男女でお伺いするのが良いと考えています。
⑥調査の振り返りを行う + ⑦分析を行う + ⑧次のアクションにつなげるために議論する
インタビューなどでもデブリーフィングと呼ばれる振り返りを行ったりしますが、エスノグラフィーでも振り返りを行いましょう。
「この方はこういう方でしたよね。こうでこうでこうで…」というところを、しっかり振り返りましょう。もし、一人が「ここ見落とした」という部分があっても、他の人が「ここは、こうだったよ」といった形でチームでカバーできるようにします。
そして、分析を行い、次のアクションにつなげるための議論をします。
この⑥~⑧は、比較的、黙々と調査して、分析して、といった流れになってしまいがちなので、⑥と⑦でしっかり話し合ったり、一緒にビデオを見たりするなどをすることが重要です。
定性調査の中でも、エスノグラフィーは『観察力』が問われます。この『観察』という行為には、主観によるところが大きくなりますので、なるべく客観性も保てるようにする意味でも、他の人とディスカッションする機会というのは、非常に重要なのです。
前述した説明と重複する部分が多々含まれますが、調査前に準備をしておくことは大事なことは、エスノグラフィーを成功させるために大事なことの1つです。
「どのように仮説までの準備をするか?」について、別途列挙すると以下になります。
「誰」の行動を観察するかを先ず決めます。そして、その「誰の」という対象者条件で、「何の」行動を観察するかを決めます。
次に、「調査テーマについてどう調べていいかわかりません」といった時には、4Pの観点で調べましょう。この4Pとは、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(プロモーション)」の頭文字を取った名称のフレームワークとなり、市場にはどんな製品があって、「それはいくらなのか?」、はたまは、「流通やプロモーションはどうなっているか?」といったことを調べておくと、仮説を立てるときに、有効に働くかと思います。
また、「観察する行動」について、ご自身で1回試してみましょう。「自分だったら、どうやるだろう」といったところを体験しているのと、体験していないのでは、雲泥の差です。
そして、調べた情報とご自身の体験を整理し、調査目的と照らし合わせて仮説を立てましょう。
この章も前の章同様、重複する部分あるのですが、この章では、実査と分析について細かい流れを列挙すると以下となります。
当然、事前に調べた情報や仮説は頭に入れつつ、実査を行っていきますが、実査中は先入観を捨て、観察することに集中しましょう。
また、観察するパートとインタビューするパートがあった場合、必ずパートを分けましょう。観察しながらしゃべるというのは、難しく、色々なことに意識を向けないといけないことになるため、注意散漫になってしまい、最悪調査目的を失った情報しか得られなくなってしまいます。そういったことを回避するために、パートを分けましょう。
写真や動画で記録を残しましょう。もちろん、メモなども必要に応じて残しておくと後で便利です。あと、それぞれの対象者で抜け漏れが無いようにしましょう。例えば、「『Aさんは写真撮ったけど、Bさんはうっかり忘れて取らなかった』というのは、やめましょう」という話です。
そして、実査後に調査参加者でしっかりと振り返りを行いましょう。
これらを基本的な行動として、行っていただくのがオススメです。
続きまして、調査設計で押さえるべきポイントについて、解説していきます。
まず、ポイントは以下です。
●調査する人数は1属性ごとに3名程度が望ましい(目的による)
調査において、「どれらくいお家に行けば良いですか?」といった疑問は、いつでも付きまといます。
そして、これは費用の問題であったり、スケジュールの問題もあったりするので、一概には言えません。
そこで、『分析』という観点で考えていきます。この場合、1属性あたり3名をお願いしたいと考えております。例えば、地方在住のシニアの女性のお家で調査をしたい場合、「シニア女性で地方在住の3名(3名別々のご自宅)に訪問し調査」といった具合です。
もし、もっとマルっとして、「シニア世代の掃除の実態を調査」したい場合、まずシニアの定義から始まります。すると、前期高齢者と後期高齢者で分けていく必要がある場合、この2つの属性それぞれで3名ずつ(合計6名[=6宅])調査をするのがオススメとなります。
エスノグラフィーは行動観察となりますので、インタビューよりも、よりパーソルな内容になります。その人の行動やその人の属性など、データとして影響を受けますので、分析するのが難しかったりします。そのため、3名以上がオススメとなります。1名だと、「その属性のことなのか?」「その人のことなのか?」「その人の特徴なのか」などが分からなかったりします。2名だと、対立したときに「どっちがその属性の特徴を表しているのだろうか?」というところが見えづらい部分があります。
もちろん、4名以上でも問題はございませんが、やはりその辺は、費用とスケジュールの問題が絡んできます。
●調査参加者で振り返る時間を別途設定しておく
エスノグラフィーは、ご自宅に訪問させてただいて戻ってくるときの移動が長いケースがあります。そうすると、振り返りが意外とできていないことがあります。そのため、しっかりと振り返る用の時間を別途、あらかじめてスケジュール上に設定しておくことをオススメします。
●議論するときは役職や経験年数など立場関係なく話せる工夫をしておく(外部ファシリテーターを用意するのもよい)
エスノグラフィーに限らない話ではございますが、議論するときは、役職や経験年数など、立場関係なく話せる工夫をしておくと良いです。
「経験年数が上であったり、役職が上の人が意見を出すと、その意見が通る」といった話ありませんか?
こういった話あるある、だと思っているのですが、そういったことが無いように、若い人でも、役職がない人でもフラットな会話ができるようにしましょう。工夫としては、モデレーターさんに入っていただいて、ファシリテーションをしてもらうのが、一つ案となります。
●複数ラインで観察をする場合は、観察ポイントやインタビューポイントがズレないように事前に練習しておく
たくさんの人数にエスノグラフィーをする場合、複数のライン(複数のチーム)で調査に行く場合があります。
例えば、「Aチームはαさんに訪問し、Bチームはβさんに訪問し、Cチームはγさんに訪問する」といった形です。
こういった、複数のラインになった場合注意しなくていけないのは、観察ポイントやインタビューするポイントにズレが発生してしまうことです。
Aチームは「収納のことについて深掘り」をしていて、Bチームは「たいして収納については尋ねず、掃除の仕方に時間を割いた」となった場合、分析が上手くできません。
そのため、複数のラインで観察をする場合は、観察ポイントやインタビューポイントがズレないように、事前に意見のすり合わせや、ロープレをしておくことが望ましいです。
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この章では、エスノグラフィーの分析について解説していくのですが、非常に難しい分野です。
もちろん、定量調査の統計的な分野も難しい分野ではございますが、定性調査も定性調査で、難しいのです。
そして、特にエスノグラフィーは、前述した通り『観察力』というのも問われ、定性調査の中でも、より難しいと考えております。
そんな分析について話をしていくのですが、手順を先ず紹介します。
①記録した写真や動画を整理
「この辺はこうで、この人にはこんなニーズある」といった話をする前に、先ずは、記録した写真や動画を整理しましょう。
②対象者ごとに行動とその背景にある理由や意味合いを整理
そして、対象者ごとに行動と、その背景にある理由や意味合い、「これ何で、こんな行動をしているのか」ということについて整理しましょう。
以前に、70代くらいのおばあちゃんが一人暮らしをしているご自宅にお邪魔させていただいて、エスノグラフィーを実施したことがあります。
そして、観察をさせていただいたら、おばあちゃんは「掃除好きで、綺麗好き」というお話をしてくれました。一方で、掃除をしている様子を見ていると、部屋の隅っこの部分まで、掃除機が行っていないことに気づきました。そこで、「隅っこの方は掃除しないんですか?」といったことを尋ねてみると、「あーちょっと腰が痛くてね」といったような話をしてくれました。つまり、「老化によって、なかなか体の自由が利かなくて、本当は掃除好きで綺麗好きなんだけれども、隅のところまでしっかりとできない」といった事情が分かったのです。
こういったのは、従来のインタビューだと、なかなか出なかったりするので、「なんかすごい綺麗好きなおばあしゃん」で片づけられてしまうこともしばしばです。
また、若い男性の部屋にお邪魔させていただき、「インスタント食品をどんな風に作っているのか」を見させていただきました。電子レンジでチンして食べるインスタント食品だったのですが、ワット数が、規定のものと異なっており、その商品に書かれているものと電子レンジのものが異なっていたので、時間が合わず、何回か温めなおしている行動がありました。
こういった行動を見て、「なぜ?」というところを整理しましょう、という話になります。
③共通する行動や異なる行動を整理 + ④観察された行動に共通する理由や意味合いを抽出 + ⑤関係者間で分析した内容を共有
こういった工程(過程)を何回も行うと、共通する行動や異なる行動が出てきます。これを整理する必要があります。
「行動する」というのは、何かしたいことがあり、そのしたいことを達成するためにやっていると考えられます。そのため、その達成したいことがあって、それを達成するためにやっている内容と、同じような達成したいことだけれども、違うアプローチでやっている内容が出てくるのです。
そして、「その達成したいこと」、つまりはニーズを満たすための「How」が同じところと、「How」が異なっているところを押さえるようにすることで、整理する一歩になると思います。
そして、観察された行動に共通する理由や意味合いを抽出し、関係者間で分析した内容を共有して、ディスカッションをしていきます。
以上が分析手順となります。
この分析手順を踏まないと、思いつきみたいな、フィーリングみたいな話になってしまいます。
黙々とデータと向き合い、一つずつ整理し、進めていくことが重要です。
③~⑤の「何かしたいこと」、言い換えると「達成したいこと」や「ニーズ」、「何したいの?」といったものになりますが、これらをそれぞれの対象者の「何したいのか?」から比較して分析することで、真のニーズを探索していきましょう。
図で表すと下図となります。

ここで、ニーズとウォンツの関係性について理解を深めておく必要があります。
例えば、「コードレス掃除機がある」という事実があったときに、「部屋を綺麗にしたい」というのはあるのかもしれませんが、別にコードレス掃除機じゃなくても、それこそ、コードのついている掃除機でも良いと思います。あるいは、「お掃除サービスを利用する」や「断捨離する」といった代替手段があります。
では、「なぜ、コードレス掃除機なんだろう?」といったところを探っていくと、実は部屋を綺麗にしたいだけではなく、「部屋をおしゃれなデザインにしたい」といったことも、本質的なその人のニーズとしてあったりします。もちろん、これは人によって違います。

そのため、事実のモノをしっかりと押さえつつ、「コードレス掃除機が欲しいなぁ」といった時に、「コードレス掃除機が欲しい」というのはウォンツであることを理解し、そのウォンツの裏側にあるニーズというのを探っていく、これをエスノグラフィーでは、行動などを観察しながら「何をしたいのか?」というところを探っていく必要があるわけです。
ニーズの次は、インサイトも理解する必要があります。そして、ウォンツとニーズ、インサイトに分類することで、消費者への理解につながっていきます。
まず、簡単にウォンツとニーズ、インサイトをまとめると下表となります。
| 消費者理解までの流れ | 分類 |
|---|---|
| ①行動や体験について把握 | ウォンツの洗い出し |
| ②当時の思考・感情の把握 | ニーズの整理 |
| ③多角的に対象者の価値観の把握 | インサイトを探る |
まず、今まで話してきた「行動(や体験)の把握」というのは、「ウォンツの洗い出し」になります。つまり、「コードレス掃除機がある」や「ミキサーがある」といった、事実を整理していくのです。
そして、当時の思考や感情など、「何したいのか?」というのを把握していくのが、「ニーズの整理」にあたります。
その後、多角的に対象者の価値観を把握していくことが、「インサイトを探る」に当てはまります。この「インサイト」というのは、対象者は語ってくれません。そのため、ニーズを整理していく中で、「この人はこういうことがしたいんだ」というのを探っていく、消費者も気づかないことを探っていくことがエスノグラフィーでは大切なのです。
エスノグラフィーでは、その行動を見ながら、その人が何をしたいのか、どんな価値観を持っていて、何を達成していきたいのか、どんな生活をしていきたいのか、といったところを探っていくことで、消費者インサイトにつながっていきます。
従来のインタビューの場合、会場に来ていただいたり、オンラインでインタビューを行ったりすると、発言ベースでの分析となるため、それだけでは分からない部分、実際の生活を見てみて「こういった生活をしているんだ。その生活空間の中でこういった行動をしているんだ」というところを理解していく、これがエスノグラフィーの良いところになります。
この章では、エスノグラフィー(行動観察)における注意点を紹介していくのですが、前述で多々重複している部分がありますので、ご了承ください。
さて、主な注意点は以下です。
どんな調査でも無駄になってしまうような調査にしてはいけませんが、エスノグラフィーでは、ご自宅にお邪魔させていただいたりするので、様々な人の時間も工数も取るため、さらに「無駄にならないような調査」というは意識する必要があります。
そういった中で、調査に協力をしていただいた対象者には、しっかりと敬意を払って、適切にするようにしましょう。例えば、「挨拶をしない」「勝手に冷蔵庫を開ける」「時間を守らない」など、失礼にあたることはやめましょう。
また、議論をする際、オープンかつフラットに発言できる環境づくりは、工夫であったり、心がけであったり、実行に移すようにしましょう。
そして、分析をした後に「なんか行って良かったね」みたない話にならないようにする必要があります。
行って、分析して、次のアクションを議論する時間をしっかり取りましょう。
最後に、エスノグラフィーは定性調査なので、「こんなニーズがあった」「こんなインサイトがあった」といった気づきから、「これはアイデアとしていけるんじゃないか?」と思うのは良いと思いますが、「受容性があるかどうか?」というのは分からないことに十分注意する必要があります。この受容性が大きくない場合、ビジネスにならないことが多いかと思います。そのため、そのアイデアの受容性を見るために、別途定量調査が必要となるので、この点、押さえておきましょう。
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ここまで、顧客の「インサイト」を深く探るための調査手法、エスノグラフィー(行動観察調査)について、その基本的なことから成功させるための調査設計、分析ステップ、注意点までを詳しく解説しました。
エスノグラフィーは、対象者の生活に入り込み、その行動をじっくり観察することで、アンケートやインタビューといった「言葉」による調査だけでは決して得られない、生々しい実態や無意識のニーズを捉えることができる強力な手法です。
その効果を最大限に引き出すためには、以下の点が特に重要です。
時間や費用がかかるという側面はありますが、それらを乗り越えて得られる深い顧客理解は、競合との差別化や、これまでにない革新的なアイデアを生み出すための大きな原動力となります。
この記事を参考に、エスノグラフィーを成功させ、商品開発やサービス改善といった次のアクションにつなげてきましょう
エスノグラフィ(行動観察)調査の活用方法を解説
エスノグラフィ調査(行動観察)は、顧客の行動やライフスタイルに密着し、その背後にある意識や価値観を深く理解するための有力な手法です。
アンケートやインタビューでは捉えきれない微細な行動パターンを観察できるので、顧客の本質的なニーズやインサイトを明らかできる点が強みにもなります。行動の「なぜ」に焦点を当てるため、実施することで、従来の定量的調査とは異なった見落とされがちだったアンメットニーズなどの新たな発見を得ることができます。
本セミナーでは、エスノグラフィ調査の基本的な概念から、効果的な調査設計の方法、具体的な分析ステップに至るまで、実践的な視点で解説します。
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定性調査の報告書の作り方とは?作る上でのポイントから流れ、NGまで解説
マーケティングリサーチにおいて、消費者の行動や意識を深く理解することは、効果的な施策を立案する上で不可欠です。これらを理解する方法として、調査方法が大きく分けると定量調査と定性調査の二つがあります。
そして、定性調査で得られた貴重な示唆を、どのように効果的な報告書としてまとめるかは、多くの担当者にとって頭を抱える課題となっているのではないでしょうか。
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訪問調査(ホームビジット)とは?メリットや事例、注意点、流れなど紹介
訪問調査とは、生活者の自宅へ調査員が伺い実施するアンケート調査のことを指します。
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「ニーズ・ウォンツ・ベネフィット」ワードの整理整頓
「ニーズ(Needs)」「ウォンツ(Wants)」「ベネフィット(Benefits)」等のビジネス用語は、多くのマーケティングリサーチにおける日常的な場において散見されます。これらのワードは、いずれも消費者行動の根幹や喚起について説明するには不可欠であり、商品やサービスを開発する上では、区別と使い分けを徹底理解しておきたい概念です。
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