
2025.04.11
アンケートで自由記述回答を作るときのポイントを解説
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公開日:2025.07.28
「○○界隈」という言葉、最近よく耳にしませんか?
SNSを中心に、特定の趣味や関心でつながるコミュニティを指すこの言葉は、現代の消費を読み解く上で欠かせないキーワードとなっています。しかし、その実態は捉えにくく、「どうアプローチすれば良いのか分からない」と悩むマーケターの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回アスマークでは、「界隈」や「界隈消費」の基本的なことから、その背景、落とし穴とその対処法について解説するオンラインセミナーを実施しました。
本コラムでは、そのセミナーで語られたことを紹介していきます。
はじめに、「界隈」についてマーケティング的な視点でおさらいをしていきましょう。
下図は、SHIBUYA109 labさまの定義となります。
“
図 界隈消費とは 出典:「SHIBUYA109 lab.変遷レポート トレンド大賞編」(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント)
(https://shibuya109lab.jp/article/report_241024.html)
こちらの内容を少しかみ砕かせていただくと、共通の関心事やカルチャー、好きな世界観を持つもの同士で構成される緩いコミュニティのことを言います。このコミュニティは、SNSやネット上に顕在しており、容易にコンタクトができ、思いや共感・関心で繋がっているので、熱量がすごく高くて、深く共感し合えますが、忘れてはならないのは、緩いコミュニティであることです。
1つのことに共感することで成り立つコミュニティなので、新しい価値観やアイデアが生まれやすく、共感したものや共感してお互いを高め合うもの、それを応援したいと思うときにマッチしたモノの購買活動・購買行動が活発になると言われています。
ここで1つエピソードがありまして、去年のハロウィンの話です。
友達に「ハロウィンイベントに行く?」って聞いたら、「地元の商店街でハロウィンイベントがあって、子供が喜ぶから、それにはいくかな」と伺いました。そんな話をしている流れで、渋谷でハロウィンイベントに関する条例ができて人が減ったけど、新宿に流れて、新宿が大変なことになっていたと思ったので、そのことについて「知ってる?」といったような話をしたんです。そうしたら友達が「渋谷とかで大騒ぎするのはありえない」って話があって、だから「なんで集まって、大騒ぎするのかな?」「何が楽しいかよくわかんなよね」っていう話をしたんです。
そうしたら、そのとき私にとって衝撃の一言があり、それは以下でした。
『その界隈の人が私たちの周りにいないからわかんないだけだよ』
これ、とても納得しました。少なくとも私はとっても腑に落ちたんです。そして、「界隈」の複雑性についても、再認識したのです。
企業のマーケターで、色んな人にアンテナを張り、「人を理解したい」と思っている方多いと思っています。
では、「界隈は?」と言いますと、なかなか難しい部分があるでしょう。
「容易にコンタクトができて」や「緩いコミュニティ」といった話をしてきましたが、ここに繋がることはなかったりします。
例えば、ハロウィンイベントで渋谷や新宿といった場所に集まる人と、私は繋がることはないでしょうし、全く理解ができません。
そういった界隈(繋がることがない界隈、全く理解ができない界隈)も存在しているということを認識する必要があります。
また、界隈に対して従来のマーケティングで言う、性別とか年齢とか居住地、職業といった属性が全く知らないこともあるでしょう。なぜなら、SNSやネット上では、名前はニックネームだったり、属性も明かしていなかったりと、個々人のことが明らかになっていないことが多いからです。
では、界隈の方々にリサーチなどをしたい場合、どんな方法でアプローチしたら良いんでしょうか?
この辺りが、マーケティング戦略を立てようと思っても、「どうしたら良いのか分からない」ということの大きな要因と考えます。
さて、界隈が出てきた背景についても話をしていきます。
人とのつながり疲れ
色んな要素があると思いますが、その1つとして「人とのつながり疲れ」だと考えています。
リアルやSNSなどの様々なコミュニティに参加をしていく中で、ルールであったり、「こうしなければいけない」みたいなことがあったり、コミュニティ内部でカーストやヒエラルキーといったものがあったりなど、「疲れ」が生じることが多くなっている気がするからです。
その一方、「界隈」は、その時々の思いや共感でゆるーくつながれるので、とっても楽であり、心地良いと思います。
消齢化
また、消齢化※も影響しているかな、とも考えます。
※ 消齢化とは、生活者の意識や好み、価値観の年齢による違いが小さくなってきていることを言います。
思いや共感でつながる、ということに対して性別や年代はどうでも良かったりします。
でも、プロフィールを書かなければいけないコミュニティやリアルといったつながりの場合、若い人たちのグループに、おじさん・おばさんは入っていくことは難しいでしょう。身バレもしていますし、発言も気を遣いますよね。
界隈はプロフィールを明かさなくて良いし、興味や関心、共感といったことでつながれるので消齢化のイマドキにはピッタリでしょう。
よく私は「十人十色ではなくて、一人十色だ」っていうふうにいつも申し上げるのですが、多様性が進む現代において、社会の中で色んな価値観やスタイルがあるだけではなく、一人ひとりの中にも、時と場合、カテゴリーによって、自分のスタイルや世界観を使い分けたりしています。
例えば、皆さまSNSでアカウントを複数持っていたりしませんか?
私は、ワンちゃんがいるので犬垢があったり、とあるテニス選手が大好きなのでテニス垢があったりなど、複数のアカウントを持っています。
こんなふうに、使い分けていたりすると思います。
だから、「十人十色ではなくて、一人十色だ」と言っているんです。
そのため、現在では色んな界隈が存在しており、私たちはその時々の思いなどによって、別垢ごとに色んな界隈の住人になることができます。
続きまして、「ファン」と「推し」と「界隈」の違いについて、お話してきます。
よく「ファン作り」という言葉をマーケターなど使うかと思いますが、自社のブランドやサービスのファンになってもらい、それらを「買ってもらいたい」「リピートを増やしていきたい」といった考えがあるので、「ファン作り」という言葉があると思うのです。
ただ、改めて今日言われているファンというのは、「受動的に好き」という立場なんです。
一方で、よく言われる「推し」というのは、自分から発信したり、普及させるために、お金を使ったり、手作りグッズを使ったりと、多様な行動を積極的にしている人たちを指します。
分かりにくい部分もあると思いますので、私の話を例にとり、「ファン」と「推し」と「界隈」について話をしていきますね。
私は、ジャニーズのSnow Man が大好きです。
私は「めめたん」だったのですが、Snow Man を好きになっていくうちに、他のメンバーも好きなところがあり、今はグループ全体を推す箱推しです。
ただ、ファンクラブには入っていないし、グッズも買いません。そのため、推し活をしているわけではないので、『ファン』だと思っています。
だから、先ほど『箱推しです』とは言いましたが、ファンクラブに入っていたり、コンサートでグッズを買ったりしている人たちに対して「私は箱推しなの」っていうのは、ちょっと憚られるんですね。
一方で、前述しましたが、とあるプロテニス選手のプレーが大好きで、長年のファンです。ほぼ全試合リアルタイムで見て、応援をしています。リアルなので、時差があるところでやっている時は、朝にやってたり、雨が降ったりすると、遅れたりするので、その間ずっと(徹夜込み)待っています。日本で大会があるときは、間近で見たいので、出るかどうかがわからないのですが、直前までかなり高額な席のチケットを買って見に行きますし、試合を見るためにいくつかの動画配信サービスも課金をしています。
ですが、それは私がその選手を他の人に知ってもらうためにお金を使っているわけではないので「推し」とは言わないんですよね。その選手を応援するファンなのです。
整理すると、下図になるかなと、思います。

人や物事があり、それをスタンドから応援している、自分の楽しみのためにお金を使っているのが『ファン』であり、それを普及するために自らお金を使って行動をしているのが『推し』です。
『界隈』は、共感できる思いがあり、その思いを応援したり、高め合ったりしている、そういう心地が良い場所です。
このことを含めて改めて考えると、いわゆるファンマーケティングと推し活マーケティングというのと、界隈消費マーケティングは、全て違ったアプローチが必要になるってことになると思っています。
また、考え方として、経済面でこの3分類(ファン・推し・界隈)にしていく場合と共感軸で3分類にしている場合とでは、ポジションが変わってくると思います。そのため、マーケターの方はこの辺についてもしっかりと考えた上で、どこを狙っていくのか、考える必要があります。
ここまでで、だいぶ「界隈」の解像度が上がってきたかと思います。
それでは、その界隈をターゲットとした時に「どんな商品を作ったら良いのか」ということや、「どうマーケティング戦略に落とし込んだら良いのか」ということを次の段階として考えると思います。
でも、少し待ってください。
その界隈をターゲットとするということ自体が、今までのマーケティングの価値観でくくるやり方になってないですか? という話をさせていただきたいです。
色んなセミナーに参加をして思うのが、セミナーのタイトルで「マスを狙うより界隈消費を狙え」っていうふうな感じが多い気がしていて、新しいターゲティング戦略だと勘違いしてしまうんじゃないかなって思います。
界隈は、共感やその時々の思い出繋がっているので、○○界隈の人をターゲットとしようとして、仮説作りのために定性調査するときに、今までのスクリーニング調査票のように、「性別や年代、居住地、職業などを聞いて、そこで足切りしてしまう。そして、価値観軸を設定して、共通する価値観を持っている人を探す」みたいなことをしても、その界隈を理解するってことは不可能に近いと思っています。
これは、従来のマーケティングの罠(落とし穴)だと思います。
共感マーケティングという言葉がありますが、こういったのは性別や年代、職業も関係ありません。先ほど申し上げた、一人十色なので、色んな価値観があるので、そこで足切りしてしまうっていうのは、共感マーケティングでは相応しくないんだろうなと思うんです。
ではどうしたら良いのか? というところですが、界隈が顕在化しているSNSや、ネット上で界隈の住人になり、どんなことに共感しているのか、ということを大枠掴み、自分の商品やブランド、企業がつながれるのかどうか、つまり、その界隈を盛り上げたり、支えてあげたりすることができるのかどうか、それを先ず判断するべきだと思います。
去年ぐらいまでに流行った界隈を下図にて紹介しますね。

こういった界隈があったかと思います。もしかしたら、今もあるのかもしれません。
こういった界隈に一回参加してみるのをオススメします。
繰り返しとはなりますが、疑似体験でも良いので、皆さまで住人となり、理解ができるのかどうか、もし理解できたら、共感をしてみてください。そうして、その界隈の住人となり、その上で自分の商品やブランド、企業がこの界隈を盛り上げたり、支えたりすることができるかどうか、ということを先ずそこでジャッジする。「それは違うな」「うちの商品だと支えたりすることはできないな」とか、「盛り上げたりすることはできないな」と思ったら、合う界隈というのを探してみる、っていうふうに、まずは参加してみないことには、次のステップに進めないと思います。
それが「できそうだ」と考えた場合、その界隈の住人を選ぶためのスクリーニング調査票を作ってみて、スクリーニングして、深く意見を伺うための定性調査をしてみるのが良いと思います。
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ここでもう1つ落とし穴があります。
それは、「その界隈はどのくらいの人がいるの?」や「マーケットボリュームを測ろうと量的に判断する」というものです。これは不毛な話です。
先ほども述べましたが、「界隈」に対して「支えることができる」や「盛り上げることができる」といったことを商品やブランドが行っていくので、「今現在、量的に少ないから、これはないな」とうふうに判断するのは時期早々です。
これよりも定性調査で、それが大きなムーブメントになるかどうかの判断や感触をつかむことが重要です。
インタビューする際には、その界隈をよく理解して共感していることを、その界隈の人たちに向けて標榜※することが大切です。その界隈について共感をしていない人がモデレーターをやったり、インタビューをやったり、そういう立てつけのインタビューフローだったりすると、「この人に行っても仕方がないわ」というふうに思われてしまうので、有意義なインタビューにすることが難しくなります。
そのため、マーケターだけではなく、モデレーター(インタビューアー)も「共感をしている」と「理解している」ということを標榜することを心得なくてはいけないと、考えています。
※ 主義や主張などを掲げ示すこと。
ここまで、「界隈」という新しいコミュニティについて、その基本から「ファン」や「推し」との違い、そして具体的なアプローチ方法までを解説しました。
重要なポイントを改めて整理します。
| ポイント | 解説 |
|---|---|
| 界隈の本質は「共感」 | 界隈は、共通の関心事や価値観でゆるやかに繋がるコミュニティです。年齢や性別といった従来の属性ではなく、「共感」がその中心にあります。 |
| 「一人十色」の時代 | 現代では、SNSのアカウントを使い分けるように、関心事に応じて複数の「界隈の住人」となっているケースもあります。 |
| 「狙う」ではなく「支える」へ | 界隈へのアプローチに関する最大の落とし穴は、従来のターゲティング思考で「狙う」ことです。成功の鍵は、まず自らがその界隈を理解・共感し、コミュニティを「支え、盛り上げる」というスタンスを持つことにあります。 |
| 量の分析より「熱の兆し」 | 最初から市場規模を測ろうとするのではなく、まずは定性調査などを通じて、その界隈が持つ熱量や、大きなムーブメントになる「兆し」を捉えることが重要です。 |
界隈へのアプローチとして、属性で分類するのではなく、彼らが大切にする「共感」に寄り添い、信頼されるパートナーとなる視点が不可欠です。
このコラムを機に、疑似体験でも良いので、まずは興味のある界隈に一歩足を踏み入れ、その熱量を感じてみることから始めてみてみましょう。
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