
2023.11.08
カスタマージャーニーの基礎とその進化:顧客の旅路を理解する
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスに関心を持ち、購入や利用に至るまでの一連の体験や感情の流れを旅に例えて表したものです。企業はカスタマージャーニーを……
公開日:2025.06.26
現代社会において、ユーザーから支持される製品やサービスを生み出すには、ユーザーの本質的なニーズや行動を正しく理解し、それをデザインに反映させることが大切です。しかし、こうしたニーズを的確にとらえるのは決して簡単ではありません。
そこで、近年注目されているのが、「より良いデザインを生み出すための調査アプローチ」であるデザインリサーチです。
この記事では、デザインリサーチの基本的な考え方から、具体的な調査手法、さらには混同されやすいネットリサーチとの違いについて解説します。
デザインリサーチとは、より良いデザインを生み出すことを目的に、最終的な消費者であるユーザーの行動やニーズ、動機、そして抱える課題を深く理解するための調査アプローチです。
この調査の大きな特徴は、ユーザーに「何が欲しいのか」と直接聞くのではなく、「なぜそのような行動をとるのか」「どんな場面で困っているのか」といった背景やニーズ、さらには言葉にしにくい深層心理まで掘り下げていく点にあります。
こうしたアプローチを通じて、ユーザー自身もまだ気づいていない潜在ニーズや、既存の製品・サービスでは十分に応えられていない課題を明らかにしていきます。その結果、共感性と使いやすさを兼ね備えた、革新的なデザインにつながる貴重なヒントを得ることが可能になります。
デザインリサーチには、主に以下の3つの目的があります。
ネットリサーチ(Webアンケート)とは、インターネットを活用して行うアンケート調査です。
調査対象者には、メールやSNS、専用のアンケートパネルなどを通じて実施され、パソコンやスマートフォンから回答してもらいます。
ネットリサーチの主な目的は、特定の事柄に対するユーザーの意見、意識、行動の実態を数値データとして把握することです。
例えば、ブランド認知度、購買意欲、特定の機能の利用頻度、満足度などを、統計的に分析可能な形で把握する際に適しています。
ネットリサーチは短期間で多くの回答を集めることができ、コストも比較的低く抑えられるのが大きなメリットです。さらに、回答の自動集計やグラフ化も行えるため、分析作業の効率も高められます。
デザインリサーチとネットリサーチは、デザインリサーチの一部として、ネットリサーチがあるため、立ち位置が違います。
デザインリサーチは、アプローチ方法の1つであり、より良いデザインを生み出すことを目的に、調査を進めていきます。そして、その調査をする手法として、インタビューなど選択肢がありますが、その内の一つとして、ネットリサーチがあります。
UXデザインとは、ユーザーの視点に立ち、製品やサービスを通じてユーザーが体験するすべてのデザインを設計するプロセスです。このプロセスにおいて重要な役割を果たすのが「デザイン思考」というアプローチです。
デザイン思考は、「共感」から始まり、ユーザーの視点に立って課題を見つけ出し、創造的な解決策を導くためのフレームワークです。
そして、このプロセスを支える強力なツールこそがデザインリサーチです。
デザイン思考は、一般的に以下の5つのステップで構成されており、各段階で適切なリサーチ手法が活用されます。
STEP | 説明 |
---|---|
STEP1 共感 (Empathize) |
ユーザーの立場に立ち、彼らの感情や行動、ニーズ、課題などを深く理解するフェーズです。先入観を捨て、ユーザーに対して徹底的に共感する姿勢が求められます。 このステップでは、ユーザーがまだ言語化していないような潜在ニーズや、行動の背景にある動機を把握します。 リサーチ手法 |
STEP2 仮説 (Hypothesis) |
共感フェーズで得られた情報をもとに、ユーザーが抱えている課題を考え、仮説を立てます。ここでは「なぜそれが問題なのか(Why)」をとらえ、ユーザーの潜在ニーズを踏まえたデザインの方向性を定めていくための、課題および仮説を定義していきます。
リサーチ手法 |
STEP3 想像 (Ideate) |
定義された仮説に対して、これまでのフェーズで得たインサイトと合わせ、多様なアイデアを自由に発想していきます。 アイデアの量と多様性を重視し、多くの選択肢を生み出します。 リサーチ手法 |
STEP4 プロトタイプ (Prototype) |
生み出したアイデアの中から有望なものを選択し、実際に検証するための試作品(プロトタイプ)を作成するフェーズです。 低コストかつ迅速に試作品を作成することが大切です。 リサーチ手法 |
STEP5 評価(Test) |
プロトタイプを実際のユーザーに試してもらい、使い勝手や課題点についてフィードバックを収集します。 この結果を元に、必要に応じてプロセスを再び「共感」フェーズへ戻し、改善を繰り返します。 リサーチ手法 |
UXデザインのプロセスでは、ユーザーへの深い理解を得るために、様々なデザインリサーチ手法が活用されます。ここでは、その中でも特に代表的な調査手法を紹介します。
ネットリサーチ(Webアンケート)
ネットリサーチ(Webアンケート)はデザインリサーチにおいて、プロトタイプに対する評価傾向を把握したり、多数派の意見を定量的に確認したりする手段として活用されます。特に、デザインテストの段階においては、A/Bテストのように複数のデザイン案を多数のユーザーに見せ、どちらがより好まれるか、といった定量的な比較を行う際にとても効果的です。
会場調査(CLT: Central Location Test)
会場調査(CLT:Central Location Test)は、特定の会場に調査対象者を集め、製品やサービスを実際に体験してもらい、その場で評価や意見を収集する手法です。試作品の比較検討や、特定の条件下での反応を見たい場合に、とても効果的です。
デザインリサーチにおいては、ユーザーがプロトタイプに触れたり、特定の環境下でタスクを実行する様子を観察したり、その場で詳細なフィードバックを得られたりする点が強みとなります。例えば、新しいUIデザインの直感性や、物理的な製品の使い心地を評価してもらったり、観察と質問を組み合わせたりすることで、ユーザーの具体的な行動やその背景にある思考プロセスを理解するのに役立ちます。
Webシェルフ(棚調査)
Webシェルフ(棚調査)は、仮想のオンラインストアや商品棚を再現し、ユーザーにその中で自由に商品を閲覧・選択してもらうことで、購買行動や選択肢の優先順位を分析する手法です。この手法は、実際の購買に近い状況下で、ユーザーが何を基準に商品を選ぶのか、どのような情報に注目するのかといった行動パターンを把握できることが大きな特徴です。
デザインリサーチにおいて、パッケージデザインの視認性、情報の配置の適切さ、価格設定の影響などを検証する際に効果的であり、UX観点からは、情報アーキテクチャやナビゲーションの改善につながる洞察を得ることが可能です。
デプスインタビュー
デプスインタビューは、調査対象者と1対1で対話し、特定のテーマについて深く掘り下げて質問を行う手法です。ユーザーの生の声や感情、思考プロセス、過去の経験、未来への期待などを深く理解でき、言語化されていない潜在的なニーズや、行動の背景にある動機、価値観を発見することに極めて効果的となります。
デザインの初期段階において、ユーザーがデザインに対して抱く印象やユーザー課題の発見、プロトタイプへの詳細なフィードバックなどを収集する、重要な調査手法と言えます。
ユーザビリティテスト
実際に開発中の製品やプロトタイプをユーザーに操作してもらい、その様子を観察することで、使いやすさや改善点を洗い出す調査手法です。ユーザーがどの操作でつまずくのか、どんな誤操作が起きるのか、期待通りにタスクを完了できるかなど、その行動を詳細に分析します。
デザインリサーチにおいて、プロダクトの完成度を高める上で重要な工程であり、特に評価フェーズで中心的に行われます。ユーザーの自然な行動を観察することで、言葉では表現しきれない課題やニーズを見つけ出せます。
デザインリサーチから価値あるインサイトを得るには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
エクストリームユーザー | ユーザー像 |
---|---|
毎日長時間プロダクトを使う ヘビーユーザー |
プロダクトの利用頻度が高いため、製品の限界や細かな不満点、通常のユーザーでは気づかない課題を示してくれる可能性があります。 |
全く使用経験のない ノンユーザー |
既存プロダクトでは満たされていないニーズや、そもそも使おうとしない理由(参入障壁など)を浮き彫りにすることが可能です。 |
上表のようなエクストリームユーザーの視点は、一般的なユーザーからは得られにくい革新的なアイデアや、改善の突破口となるヒントをもたらしてくれます。
ここでは、ユーザーの潜在ニーズを明らかにし、プロダクトの価値を高めた実践例として、食品メーカーA社の事例を紹介します。
A社では、健康習慣をサポートする新しいアプリの開発にあたり、ユーザー中心のデザインを実現するため、デザインリサーチを実施しました。
A社が直面していた課題は、多機能な健康習慣サポートアプリを設計する中で、ユーザーが「どのような機能を求めているのか」「どのような状況でアプリを使っているのか」「既存の機能が本当に課題解決に役立っているのか」という点が明確でなかったことです。
そのため、新しいアプリの開発現場では、漠然としたニーズではなく、ユーザーの日常生活に根ざした具体的な利用シーンや、そこに伴う感情の理解が求められていました。
この課題に対し、A社はプロトタイプ(試作品)を作成し、実際にそれを操作してもらいながら、ユーザーの行動データを詳細に取得・分析しました。さらに、ユーザーインタビューや行動観察も並行して実施し、データだけでは見えにくい感情の動きや無意識の行動パターンも深く掘り下げていきました。
このようなリサーチを通して得られたのが、ユーザーが健康習慣を継続するためには、「機能の多さ」よりも、「手軽さ」と「個別に寄り添ったサポート」が重要であるというインサイトです。特に、利用シーンによってはUIが分かりづらく、ユーザーが期待していた機能とのギャップが習慣化を妨げている実態が浮き彫りになりました。
こうしたインサイトに基づき、A社では、直感的に操作できるUIの見直しや、ユーザーのライフスタイルに合わせた機能改善を実施しました。具体的には、ユーザーの行動をうながすリマインダー機能や、日々の進捗を一目で把握できるダッシュボードの最適化などを導入しました。
このような取り組みによって実施されたユーザー視点に基づく改善は、アプリの顧客体験を向上させ、健康的な行動の継続化にも貢献することができました。
この記事では、デザインリサーチの基本的な考え方から、具体的な調査手法実践時のポイントなどについて、幅広く解説しました。
デザインリサーチは、ユーザー体験を深く理解し、彼らが本当に求めているものは何か、どのような課題に直面しているのかを明らかにし、より良いデザインを生み出すための大切なアプローチです。これはDX時代におけるビジネスにおいて重要な要素であり、ユーザーの視点に立ち、プロダクトを「あるべき姿」に近づけていくことが、結果としてユーザー満足度を高め、市場での成功につながっていきます。
ぜひ、ここで解説した内容を参考に、効果的なデザインリサーチを実施して、真にユーザーから喜ばれる商品開発を進めていきましょう。
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