
2025.07.03
マーケティングにおける座談会とは?メリットやデメリット、費用感など解説
マーケティングにおいて、顧客の「生の声」を収集することは、商品やサービスの改善や、訴求ポイントの明確化につながる重要なプロセスです。特に、「座談会」は、複数の参……
公開日:2025.08.07
調査において、「国内調査には慣れているけど海外調査となるとうまくいかない」といった声を耳にすることがよくあります。例えば、「実施国の選定ミスで、そもそも見積もりが出せない」だったり、「回答者の離脱が多く、せっかく回収したデータが使えない」ことが挙げられます。一見シンプルなところに見えますが、海外調査の場合、国や地域ごとに調査環境が異なってくるため、調査が失敗することがあります。

そこで、本記事では、「調査企画段階」、「調査表作成時」、「調査表作成後」の3つのフェーズで気を付けるべきポイントを順番に解説していきます。
まず、調査企画段階におけるチェックポイントと具体的なNG例を紹介します。企画段階でミスが生じると、調査全体のスケジュールがずれたり、コストと時間の浪費に繋がったりしてしまうためしっかりと押さえておきたいポイントになります。
調査企画段階のチェックポイントは以下の4つになります。
1つ目が、「調査対象の国は明確に定めているか?」です。
海外調査では、調査実施国を明確に定めていない場合、調査対象者の確保が難しかったり、政治・社会情勢の影響で調査が困難であったりするケースがあります。そうすると、見積もりすら出せない可能性があります。
2つ目が、調査テーマは海外現地の文化・慣習に考慮する必要がある点です。
例えば、倫理・法に抵触するテーマや公序良俗に反するテーマといった、調査対象国の文化や慣習によって適切ではないテーマを設定すると、調査自体ができないケースがあります。
3つ目は、翻訳対応は何語が必要かという点です。
国によっては2言語必要な場合があり、後々翻訳の費用や手間が倍になってしまうこともあるため、複数の言語を想定する必要があります。
最後に、現実的なスケジュール設定ができているかという点です。
日本と海外では休日などが異なっているケースがあります。もし、このことを考慮してスケジュール調整が取れていないと、その後の企画設計に大きく影響してしまうので、注意が必要です。
次に、調査企画段階でよくあるNG例を2点紹介します。

以下が具体的なNG例の説明です。
× 調査対象国が決まっていない・不適切なテーマ設計
1つ目が、調査対象国が決まっていない・不適切なテーマ設計です。
例えば、「東南アジアで調査をしたい」というケースです。
この内容だけでは、見積りもスケジュールも確定することができません。理由は、国によって調査の実施可否が大きく変わってくるからです。
大まかなエリアではなく国ごとで見積りを出しているため、国を明記して調査検討をする必要があります。
また、テーマ設計で言えば、例えばLGBTQに関するテーマを設定したケースがNG例の一つです。中東などの地域では、法律や文化の制約で調査そのものが実施できなかったり、センシティブな内容は聞くことができなかったりする国もあります。
そのため、調査対象国の決定、テーマ設計という点は、事前に確認が必要になるでしょう。
× 翻訳対応と言語事情スケジュールの見落とし
2つ目が、翻訳対応と言語事情・スケジュールの見落としです。
翻訳に関しては、マレーシアを例に挙げると、マレーシアは基本的に英語だけの対応だと思われがちなのですが、実はマレー語と英語の2言語での対応が必要になります。
そして、スケジュールの見落としに関しては、クリスマスや旧正月などの大型連休を避けて調査を行わないと、配信がうまくいかなかったり、パネル会社※自体稼働していないケースもあったりします。日本のカレンダーを基準にスケジュールは組ませていただきますが、国によって年末年始のお休みが違ったりするので、その都度現地のスケジュールと確認が必要になってきます。
※ パネル会社とは、アンケートやインタビューに協力してくれる消費者(モニター)を大規模に集めて組織化し、その「パネル(モニターの集合体)」を管理・提供する専門企業のことです。
続いて、海外調査における調査票作成時についてです。
調査票作成時も、国内調査と同様にいくつか注意するべきポイントがありますが、チェックポイントとNG例の順にそれぞれ解説していきます。
調査票作成時のチェックポイントは以下の6つになります。
1つ目が、性別設問はLGBTQに配慮できているか?」という点です。
海外では、「男女」のみの選択肢ではなく、国ごとの回答者の多様性を尊重した選択肢を作成する必要があります。
2つ目は、居住地区分はモニターに回答しやすい形式になっているかどうかという点です。
海外の居住地区分は、日本とは異なるケースがあります。そのため、現地の人が認識している居住地区分にしましょう。
3つ目は、収入設問のレンジは各国に合わせているかどうかです。
経済水準や通貨は、国それぞれ異なります。そのため、日本の感覚で「これくらい範囲の所得が低所得で、これくらい範囲なら高所得」といった形にせず、その国に合った範囲(レンジ)で選択肢を設ける必要があります。
4つ目は、設問数に対して選択肢が多すぎないかどうかという点です。
国内での調査と同様に、設問あたりの選択肢が多すぎることで、回答時間が増加し、精度の低下につながるため、1度にあまり多くの選択肢を提示しない方がよいでしょう。
5つ目は、センシティブな設問に対しての対策ができているかです。
先ほどの企画段階における不適切なテーマ設計と同様に、各国で政治的信条や宗教、収入などに回答することへの不快感を覚える方がいらっしゃる可能性があるため、事前の同意設問を設けるなどの対策が必要です。
6つ目が、回答デバイスを考慮しているのかどうかです。
海外ではPCよりスマートフォンでの回答が主流です。そのため、スマホ画面での見やすさや操作しやすさといった、ユーザーエクスペリエンスを理解した設計をする必要があります。
続いて、調査票作成時によくあるNG例を3つの観点から紹介します。

× 回答できない方が発生する設問設計:性別・収入・居住地
まず、性別に関するNG例が、選択肢を「男女2つのみ」に設定したケースです。人によっては、不快感を覚えたり、回答したりすることができない場合があります。具体的な対策例としては、「男性」・「女性」に加えて「その他」や国の法律で認められている性別のカテゴリーを設定することです。
次に、収入設問についてです。
「日本の感覚で収入の範囲を設定したところ、調査対象国では全く異なってしまい、調査がうまく進まなかったケース」というのがあります。これは、日本で「収入」と聞くと、一般的には「年収を想像する場合が多いイメージ」ですが、国によっては収入=月収をイメージするケースもあるためです。収入設問を国の経済状況や通貨に合わせないと、モニターの誤回答や回答の離脱に繋がってしまう可能性があります。
最後に居住地のNG例です。例えば、私たちでも「関東甲信越地方」と言われてもどの県が所属しているのかイマイチわからないことはありませんか? 同様なことが他の国でもいえ、日本感覚で居住地の区分を分けたり、ネットで調べた区分をそのまま流用したりしますと、現地の人が「ん?」となってしまうことがあります。
そのため、現地の回答者にとって分かりやすい居住地の分け方になっていないと、選択ミスにつながるため、現地でよく使われている行政区分などに合わせるのがポイントの一つになると考えます。
× 選択肢過多・スマホ非対応
設問設計全体にかかわるNG例としては「1問の中で選択肢が15以上設けた」ケースです。15個以上あると、モニターへの負担が増加し、途中離脱や回答不備が増える傾向があります。特に、マトリクス形式では選択肢も多いためより多くの負担がかかることになります。
また、日本の調査であれば「※+小文字」で注釈を表示するケースが多いと思われますが、海外調査ではそもそも注釈を読んでくれないケースも多いため、文字の色・サイズ・見やすさを考慮する必要があると考えます。加えて、海外ではPCよりもスマートフォンでの回答が主流です。そのため、長いスクロールが必要なレイアウトや複雑なマトリクス設問は、離脱を引き起こす原因になりやすいです。
× 動画・画像・設問数の過多
動画に関するNG例として、「動画の数が4本以上」つまり、動画の数が多いケースがあげられます。
あまりに動画の本数が多いと、回答に時間がかかり、離脱の原因になるため1~3本までが理想的(日本も同様)です。
もう一つ動画に関して、日本ですと、ブラウザに遷移して戻ってくるケースも多いかと思われますが、海外だと戻ってこずにそのまま終了してしまうケースが発生してしまうこともあります。そのため、動画はアンケート内に埋め込む形式にして、ブラウザの遷移が起きない設計にするのも重要です。
続いて、画像についてです。
このNG例も動画のように、画像の枚数が5枚を超えた場合があげられます。画像の枚数が多ければ多いほど、回答者の集中力が低下してしまいます。そのため、画像は5枚以内に抑えるのが適切です。複数の種類の画像を見せなければならない場合もありますが、多すぎると、回答者の集中力が切れてしまいます。
設問数についてです。
設問数が多く、回答時間が25分を超えたケースもよくありません。回答時間が25分を超えると、途中離脱が増える傾向があります。そのため、全体(スクリーニングも含む)で40問以内に抑えることが、ひとつの目安です。
最後に、調査票完成後のチェックポイントについて紹介します。
この最終チェックを怠ると、回収ができなかったり、データが使えなくなったりするリスクが発生します。特に、スクリーニング設問の数には要注意です。
調査票完成後のチェックポイントは以下の5つになります。
まず、1つ目が動画や画像の提示数が最適かどうかであるかというポイントです。
調査表作成時のポイントでも挙げましたが、画像や動画の提示数が多すぎると、回答者の負担増加や集中力の低下によって回答精度の低下につながります。
2つ目が、設問数が多すぎないかという点です。
こちらも同様に、設問数が多すぎることで、調査時間が長くなってしまうため、離脱率が高くなったり、コストが増加したりしてしまう恐れがあります。
3つ目は、回答者が注釈を読めるような工夫がされているかどうかです。
調査表作成時のポイントにもありましたが、海外では日本のように注釈を読まれない可能性があるため、回答者に正しく設問を理解してもらうためにも注釈の工夫をしましょう。
4つ目は、スクリーニング設問が10問以内になっているかです。
11問以上になる場合、パネル会社から配信NGと言われるケースがあるのが、1つの理由です。
最後に5つ目が、自由記述が多すぎないかどうかという点です。
こちらも、自由記述(FA)は回答者にとって多すぎると回答負荷の高さであったり、翻訳の費用も増加したりするため、多用しないようにする方がよいでしょう。
直前でよくある見落としポイントをご紹介します。

× 調査票完成後に見落としがちな注意点
スクリーニング調査のNG例として、11問以上でスクリーニングを行ったケースがあげられます。
海外調査の場合、スクリーニングの回答者へ謝礼を付与していないケースがあるため、スクリーニング設問は、最大10問で実施させていただいています。11問以上になる場合、パネル会社から配信NGと言われるケースもあります。
次に自由記述を4問以上で設定した場合です。 自由記述に関しては、4問以上で設定すると選択肢が多すぎる場合と同様に、モニターの負担が増加するため、 回答者の離脱や適当回答を招く可能性が高くなります。また、国内とは異なり、自由記述の翻訳費用も高額になってしまう可能性があります。
最後に、表側や表頭※が多く、スマホ対応の設計になっていないケースです。 回答負荷が高くなり、品質の低下につながる恐れがあります。
※ 「表側や表頭」とは、アンケートのクロス集計という集計表に使われたりする単語です。表側はクロスする軸、つまり「誰がどのように回答したのか」を示す部分で、表頭は各設問に対する回答選択肢が記載される部分です。
こうしたトラブルは、最後のひと手間で回避できることがほとんどです。
ここまで、海外調査において気を付けるべきポイントを、「調査企画段階」、「調査票作成時」、「調査票完成後」の3つの段階に分けて解説しました。
最後に重要なポイントが以下の3つになります。

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失敗しない海外調査~チェックリスト形式で解説!~
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