公開日:2025.09.12

アンケートの平均回答率は?回答率を上げる工夫や計算方法を紹介

  • マーケティングリサーチHowto

アンケート調査は、顧客満足度や市場のニーズを把握するための効果的な手段です。しかし、どれほどていねいに調査票を作成しても、分析に適した回答数を集められなければ、適切な調査結果を得ることはできません。
特に回答率が低い場合、偏った意見だけが反映され、調査結果そのものの信頼性が損なわれてしまう恐れがあります。

そこでこの記事では、アンケートの平均的な回答率の目安や、回答率を高めるための具体的な工夫について、分かりやすく解説します。

 
 

アンケートの平均回答率は?

アンケートの回答率とは、アンケートの配布数に対してどれだけの回答が集まったかを示す割合であり、調査の信頼性を左右する重要な指標です。

回答率は、調査手法や対象者によって大きく異なります。一般的に、郵送調査や訪問調査では比較的高い回答率が得られる一方、オンライン調査では回答率が低めに出る傾向があります。

Pointerproによると、アンケートの平均回答率は33%とし、アンケートの作成、配布、回収の方法に依存すると述べています。
また、Pointerproでは、最新のデータに基づいた下図も紹介しています。

Average Survey Response Rate Based on Survey Method
Average Survey Response Rate Based on Survey Method

引用元:What’s the average survey response rate?: Tips for consultants, marketers, HR and anyone looking to boost data collection

 
この図では、調査手法ごとの平均回答率が記載されており、日本語にすると以下の通りです。

表 調査手法ごとの平均回答率
調査方法 平均回答率
訪問調査 57%
郵送調査 50%
メール調査 30%
オンライン調査(Webアンケート) 29%
電話調査 18%
アプリ内アンケート 13%

 
このように、アンケートの回答率は、調査手法によって大きな差があることが分かります。

さらに、日本国内の公的調査を例に挙げると、次のような具体的な回答率データがあります。

例1


調査年度 2020年
実施機関 総務省
調査内容 国勢調査【都道府県別】 令和2年国勢調査 回答状況(インターネット・郵送)
対象者 本邦(日本)内に常住している者(外国人を含む、一部除外あり)
回答率系 【参考】率
インターネット:37.9%(回答世帯数 21,125,508)
郵送:42.3%(回答世帯数 23,583,395)

 

例2


調査年度 2024年
実施機関 内閣府
調査内容 男女共同参画社会に関する世論調査「男女共同参画社会に関する世論調査」の概要
対象者 全国18歳以上の日本国籍を有する者(5,000人)
回答率系 有効回収率:53.5%
(有効回収数:2,673人[郵送:1,797人、インターネット:876人])

 

例3


調査年度 2024年
実施機関 内閣府
調査内容 青少年のインターネット利用環境実態調査令和6年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要)
対象者 満10歳〜満17歳の青少年(5,000人)
回答率系 3,129人(62.6%)
・個別面接聴取法:911人(18.2%)
・訪問配布・訪問回収法:1,719人(34.4%)
・WEB調査法:371人(7.4%)
・郵送回収法:128人(2.6%)

 
上記の例から分かるように、調査の目的や対象、手法によって回答率は大きく異なります。そのため、アンケート調査を実施する際は、調査の目的と対象を明確にした上で、回答率の目安を把握することが重要です。
 
 

有効回答率とは?

さて、前述もしましたが、アンケートの回答率は、調査手法であったり、調査対象であったり、配布の方法、回収方法などさまざまな要因から上下します。また、こういった中でもそうですし、すでに上記の例2で登場していますが、『有効回答率』も知っておく必要があります

この『有効回答率』とは、アンケート調査の目的を達成するために利用できる回答データの割合のことです。単に回答が集まった割合を示す「回収率」とは異なり、回答内容の質を考慮した上で算出されます。

例えば、アンケートに回答があったとしても、以下のような回答は無効と判断される場合があります。

  • 回答が途中で終わっている
  • 質問意図と異なる回答が記入されている
  • 不適切な言葉が使われている
  • 明らかにデタラメな情報が入力されている

 
これらの無効な回答を除外することで、より正確で偏りのない分析が可能になり、調査結果の信頼性が向上します。
有効回答率を高めることは、質の高いデータを効率的に集める上で欠かせない要素です。

 
 

有効回答率が重要な理由

アンケート調査の目的は、単に多くの回答を集めることではなく、質の高い回答を分析し、そこから有益なインサイトを導き出すことにあります。
有効回答率が低い場合、たとえ回答数が多くても、回答の途中で離脱した不完全な回答や無意味な回答が多く含まれている可能性が高く、分析の精度が低下してしまいす。その結果、調査結果の信頼性が損なわれ、偏った分析や不正確な結論につながってしまいます。

有効回答率を正しく把握し、改善に取り組むことには次のような意義があります。

  • 調査結果の信頼性向上
    無効な回答を除外することで、データが偏らず、より正確な分析が可能になります。
  • 意思決定の精度向上
    信頼性の高いデータに基づいた意思決定をうながし、ビジネスの成功をサポートできます。
  • アンケートの改善
    有効回答率が低いことは、設問構成や質問文に課題がある可能性を示しており、アンケートそのものを改善するヒントになります。

 
このように、有効回答率はアンケート調査の成功に大きく影響する重要な指標であるといえます。

Tips:サンプル数とサンプルサイズの違い
「サンプル数」と「サンプルサイズ」は混同されやすい用語ですが、それぞれ以下のように意味が異なります。

サンプルサイズ
調査や実験で抽出された標本の大きさ、つまり1つのグループに含まれる個体数を指します。
例)高校3年生から50人を抽出した場合、サンプルサイズは「50」。

サンプル数
標本抽出を何回行ったか、あるいはいくつのグループに分けて調査を行ったかを表します。
例)1年生・2年生・3年生からそれぞれ50人ずつ抽出する場合、サンプル数は「3」。

上記それぞれの高校の例(1年生、2年生、3年生からそれぞれ50人ずつ抽出して調査を行う場合)を抽出数やサンプルサイズ、サンプル数を表にすると、下表のようになります。

表 ある高校の生徒の意識調査例のサンプルサイズとサンプル数のイメージ
学年 抽出数 サンプルサイズ サンプル数
1年生 50人 50 3
2年生 50人 50
3年生 50人 50

つまり、サンプルサイズは「1グループの人数」サンプル数は「グループの数」を意味します。この2つを正しく区別して用いることは、調査の設計や結果の解釈においてとても重要です。

 

 
 

回答率の計算方法

回答率とは、アンケートの配布数(母数)に対して実際に返ってきた回答数の割合を示す指標です。

調査の成果を測るうえで重要な基準であり、次の式で求められます。

回答率(%) = (回答数 ÷ 配布数) × 100

例えば、1,000人にアンケートを配布して300人から回答があった場合、回答率は以下のようになります。

(300÷ 1,000)× 100 = 30%

 
この計算方法によって、アンケート調査の効率や対象者の関心度を客観的に把握することが可能です。また、回答率が低い場合は、設問内容や配布方法、対象者の選定などの改善を検討する必要があります。
 
 

有効回答率の計算方法

また、前述の「有効回答率」を算出する際は、回答数に代えて有効回答数を使用します。

有効回答率(%) = (有効回答数 ÷ 配布数) × 100

 
有効回答率を算出することで、収集した回答のうち分析に適した回答の割合を把握でき、調査の精度をより正確に評価できます。
 
 

必要なサンプルサイズの計算方法

アンケート調査では、統計的な信頼度と精度を確保するために、必要なサンプルサイズを事前に計算することが重要です。この計算には、主に以下の3つの要素が関わっています。

信頼水準 信頼水準(信頼度、信頼係数とも言う)とは、調査結果が母集団の正しい値をとらえている確率を示します。一般的には95%や99%を用います。信頼水準を高くすると必要なサンプルサイズは大きくなります。
標本誤差
(誤差範囲)
標本誤差(誤差範囲)とは、結果が母集団の真の値からどの程度ずれる可能性があるかを示します。通常は±3%や±5%を設定します。誤差範囲を小さくするほど精度は高まりますが、その分サンプルサイズも大きくなります。
標準偏差(p) 標準偏差はデータのばらつき具合を示す指標です。母集団の分布が不明な場合は、最も大きなばらつきを想定して0.5を使うのが一般的です。

 
これらの要素を基に、以下の計算式でサンプルサイズ(n)を求められます。

サンプルサイズ(n)を計算するための式
図 サンプルサイズ(n)を計算するための式

 
※Zは信頼水準に対応するZ値、pは標準偏差(一般的には0.5)、eは標本誤差(誤差範囲)です。参考として、信頼水準95%、誤差範囲±5%、標準偏差0.5の場合、必要なサンプルサイズは385となります
 

 
 

出現率調査とは

アンケート調査では、あらかじめ設定したサンプルサイズを満たす回答を集める必要があります。しかし、調査内容によっては、対象者がどの程度存在するのか想定できない場合もあります

例えば、「20代女性で、週に3回以上コンビニを利用する人」を対象とした調査では、必要なサンプルサイズを回収するために何人にアンケートを実施すればよいか、正確に推測することは難しいでしょう。

このような場合に役立つのが、「出現率調査」です。出現率調査とは、本調査の前に、簡単なスクリーニング調査を実施し、調査対象となる条件を満たす人が母集団全体の中でどれくらいの割合で存在するのかを推定するプロセスです。

出現率調査を行うことで、以下のメリットを得られます。

  • アンケート対象者数の推測
    マーケティング調査では、特定の顧客層やターゲットに絞ってアンケートを実施することがよくあります。このような場合、出現率調査は、必要な回答数を確保するために、どれくらいの対象者にアンケートを配布すべきかを事前に予測するのに役立ちます。
  • 効率的な本調査の実施
    過剰なアンケート配布や追加調査を防ぎ、時間やコストを抑えて、効率的かつ効果的に調査を実施できます。

 
 

アンケート調査の回答率を向上させるポイント

アンケート調査から精度の高い分析結果を得るには、できるだけ多くの有効な回答を集めることが大切です。ここでは、回答率を高めるための具体的な工夫を紹介します。

図 アンケート調査の回答率を向上させるポイント
図 アンケート調査の回答率を向上させるポイント

 

  1. 目的とメリットを明確にする
    アンケートの冒頭で、調査の目的を明確に伝え、回答者にどのようなメリットがあるのかを示しましょう。回答者自身や社会への貢献、今後のサービス改善につながるなどを具体的に提示することで、回答へのモチベーションを高められます。
  2. 回答にかかる負担を軽減する
    設問数を少なくしたり、1問あたりの回答時間を短くしたりすることで、回答者の負担を減らしましょう。また、自由記述形式の質問は必要最低限に抑え、選択肢形式を増やすのも効果的です。スマートフォンなど、多様なデバイスで回答しやすいデザインも心がけましょう。
  3. 回答者へのインセンティブを用意する
    アンケートに協力してくれたお礼として、インセンティブ(謝礼)を用意するのも効果的な手段です。具体的な報酬としては金券やポイント、自社サービスで使えるクーポン、抽選で景品が当たるキャンペーンなどが一般的です。
  4. 適切なタイミングでリマインドを送る
    アンケートを配布しただけで終わらせず、回答期限の数日前にリマインドメールを送りましょう。そうすることで、多忙な人でも思い出して回答するきっかけになります。ただし、回答者に不快感を与えないよう、送る回数や時間帯には注意が必要です。
  5. 信頼性をアピールする
    アンケートの実施主体が企業や公的機関であることを明記し、回答がどのように活用されるかを具体的に示しましょう。また、個人情報の取り扱い方針を明確に記載し、プライバシーへの配慮をアピールすることも重要です。

 
 

アンケート調査で有効な回答を得るためのポイント

アンケート調査で有効な回答を得るためには、回答率を高めるだけでなく、回答の質を確保することが重要です。ここでは、回答の精度を上げるためのポイントを解説します。

図アンケート調査で有効な回答を得るためのポイント
図アンケート調査で有効な回答を得るためのポイント

 

  1. 質問の意図を明確にする
    質問文は、回答者が迷わず答えられるように、あいまいな表現や専門用語は避け、誰が読んでも同じように解釈できる内容にしましょう。質問の意図が複雑になると、回答者の不安を招き、無効な回答が増える原因となります。
  2. 回答形式を工夫する
    質問内容に合わせて、単一選択式、複数選択式、自由記述式など、適切な回答形式を選択しましょう。また、自由記述は回答者の負担が大きいため、本当に必要な箇所に限定することが大切です。
  3. 誘導質問やダブルバーレル質問(二重質問)を避ける
    「当社のサービスは便利で使いやすいと思いますか?」といった、特定の回答に誘導する質問や、「AやBはしますか?」といった、ひとつの質問に複数の内容を含める「ダブルバーレル質問(二重質問)」は避けましょう。
  4. 回答の選択肢を必要最低限にする
    選択肢形式の質問では、回答者が自分の意見に合うものを選べる必要があります。当たり前のことを言っているように思えるかもしれませんが、意外と網羅的に選択肢を用意することは難しいことです。なぜなら、回答者への理解を進めていないと網羅的に用意することができないからです。また、簡単な工夫では、「その他」や「わからない」といった選択肢も用意することです。こういった工夫で回答者が無理に回答を選んでしまうことを防ぎ、データの精度を保つことが一部可能ですが、選択肢は必要最低限にする必要もあり、やはり意外と難易度が高い部分になります
  5. 回答しやすさを考慮したデザインにする
    アンケートのレイアウトやデザインは、回答のしやすさに大きく影響します。視覚的に見やすく、回答欄やボタンがわかりやすいデザインにしましょう。特に、スマートフォンでの回答は、スクロールやタップの操作がスムーズに行える工夫が大切です。

 

 
 

まとめ

この記事では、アンケートの平均回答率から有効回答率の重要性、計算方法、さらに回答率を高める具体的な施策まで解説しました。

アンケート調査を効果的に実施するには、回答率やサンプルサイズに関する知識を理解することが大切です。そうすることで、明確な目的に基づいたアンケート設計や、回答者が答えやすい工夫を組み合わせた調査実施が可能となります。

ぜひ、この記事の内容を参考にして、今後のアンケート調査設計や実施に活かしてください。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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