公開日:2025.08.15

若者の「テレビ離れ」は本当か?—Z世代の視聴習慣を探る

  • インタビューコラム

はじめに

「若者のテレビ離れ」が話題になって久しく、特にZ世代を中心とした若年層の間では、“テレビを持たない生活”が当たり前になりつつあります。この変化は、単にテレビというデバイスへの関心が薄れたという話にとどまりません。情報の受け取り方の変化、コンパクトな住空間の設計思想、さらには家族との関わり方の変化など、複数の要因が複雑に絡み合って生まれている現象です。

こうした状況をより具体的に捉えるために、今回は広島県で一人暮らしをしている20歳の女子大学生にインタビューを実施。
Z世代が映像コンテンツとどのように関わり、どのような価値観で“いる・いらない”を線引きしているのか。その実態を探ることで、若年層に向けたマーケティングのヒントを得る手がかりとなるはずです。
本コラムでは、Z世代の視聴習慣とその背景について詳しく解説していきます。

 

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テレビを持たないという自然な選択

インタビューに協力してくれた女子大学生は、一人暮らしを始める際にテレビを購入しませんでした。その理由は次のとおりです。

  • テレビに元々あまり関心がなかった
    実家では母親と一緒にドラマを観ることはありましたが、自分からテレビをつける習慣はなかったそうです。テレビは日常の中心的な娯楽ではなく、あえて持つ必要性を感じていませんでした。
  • 一人暮らしの空間に合わない
    「スペースを取る」「配線が面倒」「電気代が気になる」など、物理的な制約からテレビは敬遠されました。ミニマルで機能的な生活を求めるZ世代にとって、テレビは“かさばる存在”だったのです。
  • スマホとPCがあれば十分

普段からスマートフォンやノートパソコンで動画を楽しんでおり、それらがテレビの代替となっています。持ち運びやすさや手軽さを重視し、テレビは「不要」と判断されました。
このように、「テレビを持たない」はZ世代にとってごく自然な選択肢となっているのです。

実際のインタビュー風景
実際のインタビュー風景

 

動画視聴のメインはYouTubeとTVer

では、テレビを持たない彼女は普段どのように映像コンテンツを楽しんでいるのでしょうか?

  • ・YouTube
    音楽、動物動画、ニュース、ドキュメンタリーなど、多岐にわたるジャンルを視聴。興味のあるテーマを検索し、短時間で手軽に情報収集やエンタメを楽しんでいます。
  • ・TVer
    テレビ番組を観たくなったときに利用。特に、母親からLINEで勧められたドラマを好きな時間に視聴しています。リアルタイム放送に縛られることなく、見たい番組だけを選んで効率的に楽しむスタイルです。

 
このように、無料かつ自分の都合に合わせて楽しめるプラットフォームが、若者の動画視聴の中心になっています。一方で、NetflixやAmazon Prime Videoといった有料動画配信サービスは、無料トライアル期間中に観たい作品だけを視聴し、終了後はすぐに解約するというスタンスです。「継続する必要がない」と感じたとのことで、これは“必要なコンテンツだけに反応する”Z世代特有の行動傾向を象徴していると言えるでしょう。
つまりZ世代の視聴スタイルは、「無料で」「自分のタイミングで」「必要なものだけを見る」という、非常にパーソナルかつ能動的な形にシフトしているのです。
 

 
 

若者の会話にテレビは登場しない

友人との会話について伺うと、テレビの話題が登場することは「ほとんどない」とのことでした。
高校時代には、流行っているドラマを話題にすることもありましたが、それもごく一時的なもので、日常的に盛り上がるようなテーマではなかったと振り返ります。大学生になってからは、その傾向はさらに顕著になり、会話の中心は大学の授業やアルバイト、趣味など、それぞれの関心が多様化した内容になっているそうです。
また、彼女の周囲の友人たちも、テレビを持っていても実際にはほとんど見ていない、というケースが多いと話していました。

もはや、テレビがかつてのように、共通の話題を生み出す存在としての役割を失いつつあるのかもしれません。代わってSNSやYouTubeなど、よりパーソナルでリアルタイムな興味に基づいたコンテンツが、若者たちの間での共通言語となっています。
 
 

Z世代向けコンテンツのヒント

今回のインタビューから見えてきたのは、Z世代のテレビ離れとは「映像コンテンツからの離脱」ではなく、「視聴の仕方の変化」であるということです。企業がZ世代に向けて映像コンテンツを届ける際には、彼らのライフスタイルに即した視聴環境や体験設計が求められます。

例えば、短時間で気軽に視聴できるフォーマットは大前提です。YouTubeの短尺動画やTVerの見逃し配信のように、いつでもどこでもアクセスできる柔軟な視聴設計が必要です。縦型動画やスマホ最適化も効果的でしょう。
また、視聴のきっかけがLINEやSNSでの“シェア”で生まれていることから、バズや口コミを意識した拡散戦略も不可欠です。「誰かに教えたくなる」仕掛けを組み込むことで、自然とコンテンツが広がっていく流れをつくることができます。
さらに、料金体系もZ世代に合わせて柔軟に設計する必要があります。「必要なときにだけお金を払う」という価値観に寄り添い、従量制や単品購入など、使い方に応じた支払い方が好まれる傾向にあります。
そして、デバイスや空間に対する配慮も重要です。彼女は「テレビの代わりにプロジェクターを検討している」と話しており、大きな画面で楽しみたいというニーズはある一方で、設置スペースや配線の煩わしさは避けたいという心理が垣間見えました。
 

 
 

テレビは不要、だがコンテンツは求められている

Z世代の「テレビ離れ」は、単に映像コンテンツを見なくなったという話ではなく、「どう視聴するか」「何を選ぶか」という意思がより明確になっていることを示しています。今回の女子大学生インタビューを通じて見えてきたのは、テレビという存在そのものが、彼らの生活スタイルや価値観とずれ始めているという点です。
本インタビューから得られた主な示唆は以下の通りです。

  • ・テレビは「かさばるもの」「不要なもの」として初めから選択肢に入っていない
  • ・YouTubeやTVerなど、無料かつ手軽なサービスが視聴の中心
  • ・有料サービスは「必要なときだけ使う」という割り切った利用スタイル
  • ・友人との共通話題はテレビではなくSNSやYouTube
  • ・「自分に合った形で見る」「リアルタイムに縛られない」ことを重視

 
Z世代にとって、コンテンツの良し悪しだけでなく、「どこで・どうやって・どのタイミングで届くか」がますます重要になっています。彼らの視点に立った設計こそが、これからの映像コンテンツに求められていると言えるでしょう。
 

 
 

おわりに

Z世代の「テレビ離れ」は、単にメディアの利用形態が変わったというだけでなく、彼らのライフスタイルや価値観、そしてコミュニケーションのあり方そのものが変化していることを示しています。彼らは“テレビ的”なコンテンツを否定しているわけではなく、自分のリズムや関心により合った手段を選んでいるに過ぎません。情報が過剰に存在する現代社会において、Z世代は受け身ではなく、自ら主体的に情報を選び取る姿勢を強めています。
 
だからこそ、今私たちが考えるべきなのは「何を届けるか」ではなく、「どのように届けるか」なのです。Z世代のメディアとの向き合い方は、これからのコンテンツづくりやメディア戦略において、多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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~Z世代のテレビ離れに関する調査~女子大生編~

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普段の動画視聴方法~友人との興味関心事、更にはテレビへの考え方などについて、20歳の女子大学生にインタビューを実施しました。

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近年若者を中心に「テレビ離れ」が進んでいます。昔は、「家族でテレビを囲んで見る」というのが日常でしたが、今ではスマートフォンやタブレット、PCなど、個人のライフスタイルに合わせて動画コンテンツを自由に楽しんでいるように感じます。

アスマークの学術調査チームが文教大学(大橋ゼミ)と共同で『サブスクリプションの利用増加・若者のテレビ離れと現代の若者の動画視聴時の環境について』を明らかにするべく、アンケート調査を実施しました。

下記についての調査データが得られます。
● 【親】「テレビ購入を推奨する」を答えた割合は、上の世代のほうが高い
● 【子】「テレビが必要か聞かれた」と答えた割合は、若い世代のほうが高い
● 20代男女が同居人とテレビをつける時間帯のピークは朝と夜の2つ
  ● 休日は午前中にテレビをつけている時間帯がなだらか

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本記事では、Z世代のコミュニケーションに見られる行動パターンやSNSごとの位置づけ、企業として押さえるべき接点設計のヒントについて詳しく解説していきます。

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