公開日:2025.05.08

LINEは“親しい人専用”?Z世代男子大学生のSNS行動に学ぶ、若年層との接点設計

  • インタビューコラム

はじめに

「連絡先を交換しない」「LINEは重い」「DMで十分」。Z世代の間では、こうしたコミュニケーションの“軽やかさ”が当たり前になりつつあります。SNSの浸透により、連絡手段の選び方には世代ごとの特徴が色濃く現れています。
 
今回アスマークでは、ガラケーからスマホへの移行期を経験した現役男子大学生にインタビューを実施。LINE、Instagram、Twitter、TikTok…。複数のSNSを使いこなすZ世代が、誰とどのようにつながるのか、その基準と背景を探ります。
本コラムでは、Z世代がSNSをどのように使い分け、ツールごとにどんな“距離感”を保っているのかをひも解きながら、若年層への適切な接点設計のヒントを詳しく解説していきます。

 

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“つながる”だけならインスタがちょうどいい

サークルやアルバイト、講義での出会い。新しい人と出会う場面で、まず交換するのはInstagramだといいます。LINEは“会話を始める前提”があるからこそ、初対面ではハードルが高いと感じられる傾向があるようです。一方で、インスタは「投稿を見る」「フォローする」など、リアクションを求めない関係性が成り立つため、心理的負担が少ないとのこと。気軽に接点を持てるツールとして重宝されていました。

Z世代の第一接点は「交換=会話」ではなく、「交換=観察」
つながり=やり取りとは限らず、まずは相手の雰囲気を知る“観察フェーズ”が自然に組み込まれています。こうした“余白のある関係性”が好まれる背景には、必要以上に踏み込まない、無理に距離を縮めないといった価値観の変化がうかがえます。

実際のインタビュー風景
実際のインタビュー風景

LINEは“親しい人だけ”が知っているもの

LINEの役割は「ある程度仲の良い相手と使うもの」として明確に棲み分けられていました。サークルや講義などで知り合ったばかりの相手といきなりLINEを交換することはほとんどなく、むしろインスタを介したゆるやかな接点から関係が深まった結果として、LINEに移行するケースが多いようです。グループLINEに追加される流れから、自然につながる場合はあるものの、いきなりLINEを聞くことには抵抗感があるようです。

また、友人の中には「LINE交換しよう」と言われても、代わりに「インスタやってるよ」と返すこともあるとのこと。それだけ“LINE交換”には“相手と距離を詰める”意図があると捉えられているようです。
むやみに踏み込まないのがZ世代の基本スタンス。信頼関係が築かれたのちにLINEが共有される、という順序が定着しています。

 
 

SNSの「見る・つながる・検索する」使い分け

インタビューからは、SNSの使い分けが非常に明確であることも見えてきました。

プラットフォーム 特徴
Instagram 投稿・ストーリー・DMを通じた“つながり”
Twitter 匿名性のある自由な発信の場
TikTok・YouTube 完全に“見る専門”、暇つぶしや娯楽

 
また、検索の使い方にも特徴が見られました。

プラットフォーム 利用目的
Google 概要や基本情報を知るため
Instagram 商品の使用感やビジュアルの雰囲気をつかむため

 
特にファッションや雑貨など、“実際に使っている人の様子”を確認したいときはInstagramのハッシュタグ検索が有効だといいます。
 
Z世代は、目的によって検索エンジンとSNSを使い分けて情報を収集する、“複線的”な情報感度を持っています。これは、場面ごとに最適なルートを選び取る、柔軟で立体的なリテラシーの表れと言えるでしょう。
検索の起点がGoogleではなくSNSへとシフトしている現実を踏まえた情報設計が、これからの施策には欠かせません。

 
 

「相手によって使い分ける」Z世代のSNSリテラシー

同世代の大学生とはInstagram、年上のバイト先スタッフや教員などとのやり取りではLINEや電話番号を使うなど、相手の属性に応じて使用するツールを変えている点も印象的でした。
また、今後社会人になった際には「まずLINEでつながり、関係が深まったらInstagramへ」という“逆のパターン”になるかもしれないという見解も。インスタが気軽に交換できるツールとして定着している一方で、「全員にインスタ交換OK」というわけでもないようです。
このように、SNSの選択は単なる好みではなく、相手との関係性や場の空気を見ながら柔軟に対応している点にZ世代らしさが表れています。
 
 

まとめ

Z世代のコミュニケーションは、いきなり距離を詰めることよりも、「安心できる関係性を、少しずつ築いていく」ことを大切にしていることが分かりました。今回の男子大学生インタビューを通じて見えてきたのは、ツール選択そのものが“関係性の温度”を示す行為であるという点です。
本インタビューから得られた主な示唆は以下の通りです。

・最初の接点はインスタDMが定番
・LINEは親しい関係になってから使用
・SNSごとに役割を明確に使い分け
・相手の年代や立場でツール選択を調整
・GoogleとSNSを目的別に検索使い分け

Z世代への接点づくりでは、“一方的に発信する”よりも、“ちょうどよい距離で見つけてもらう”ことがポイントとなりつつあります。

 
 

おわりに

Z世代にとって、誰とどのツールでつながるかは、その人との“距離感”や“関係性の深さ”を反映する選択行動のひとつです。“連絡先交換”は、かつてのような「コミュニケーションの始まり」ではなく、むやみに距離を詰めずに「まず観察して、必要があれば話すための起点」に変化しています。

Z世代へのアプローチにおいて重要なのは、「何を伝えるか」以上に「どうつながるか」。企業と若年層の間に、ちょうどよい“接点の距離感”をどう築くかが、これからのマーケティングに問われるポイントとなるでしょう。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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