サーストン尺度は、人の態度や意見の強さを数値で測定するために開発された心理尺度のひとつです。この尺度の特徴は、あらかじめ用意された複数の意見文（陳述文）に対して、それぞれがどれだけ「肯定的か」「否定的か」を専門家が評価し、1〜11などのスコアを与えておく点にあります。
 
実際の調査では、回答者がその中からもっとも自分の考えに近い意見をひとつ選ぶことで、その人の態度の「強さ」がスコアとして明らかになります。
たとえば、環境問題への関心度を調べる場合、「まったく気にしていない」から「生活すべてを環境配慮に変えている」といった幅広い意見が用意され、それぞれに段階的なスコアが割り当てられています。
 
つまり、回答者がどの意見に共感するかによって、その人の立場や価値観をより定量的に把握することができるのです。
このように、サーストン尺度は単に「賛成・反対」といった二択ではなく、「どの程度賛成か」という“度合い”まで捉えたいときに適した手法です。
 

具体例

たとえば、「環境への配慮」に関する態度を測りたいとします。
この場合、以下のような意見文を10個程度用意し、専門家が事前に「1（否定的）」から「11（肯定的）」までのスコアを割り当てておきます。
その上で、回答者には「あなたの考えにもっとも近い意見を1つ選んでください」と回答を求めます。

回答者がもっとも自分の意見に近いものを選ぶことで、その人の環境意識の「強度」が数値化されますので、上記の場合、「エコ商品を選ぶようにしている」という意見（スコア7）を選んだ人は、環境への意識が中程度から高めであると判断できます。
このように、回答者の選んだ文に対応するスコアをもとに、態度の「強さ」を数値で把握できるのがサーストン尺度の特徴です。

どんな場面で活用されるのか

サーストン尺度は、個人の態度を「どれくらい肯定的か・否定的か」といった絶対的な強さで知りたい場面に適しています。
たとえば、消費者があるブランドにどれだけ好意を持っているかを調べたいときや、社会問題に対する立場を定量的に理解したいときなどに活用されています。
 
また、「タバコ規制」や「働き方改革」「多様性の受容」といった、価値観や立場にグラデーションがあるテーマにおいても、サーストン尺度は有効です。単なる賛否だけでは捉えきれない「微妙な温度感」まで明らかにできる点が評価されています。
 
 

サーストン尺度の利点とは

この尺度の魅力は、何よりも「態度の強さ」を直接的にスコアとして把握できる点にあります。
また、回答者にとっては、選択肢の中から自分の意見に近いものを選ぶだけなので、直感的に答えやすく、心理的な負担も少なくて済みます。
 
さらに、意見文には専門家の評価が反映されているため、測定対象の幅や段階性がきちんと担保されており、信頼性の高いデータが得られるのもポイントです。定性的な意見を「数字で可視化」するという意味で、マーケティング調査や意識調査の場面では非常に有効な手法といえるでしょう。
 
 

注意しておきたい点

一方で、サーストン尺度には注意が必要な点もあります。
まず、意見文にスコアをつける段階で、専門家の主観がある程度入るため、慎重な設計が求められます。
また、すでにスコアを固定しているため、新たな意見を柔軟に取り込むことが難しく、テーマが変われば再構築が必要になります。
 
加えて、回答者の中には「どれも当てはまらない」と感じてしまうケースもあるため、選択肢の表現や内容にも工夫が必要です。
調査テーマに応じて、意見文のバランスや言葉のニュアンスを丁寧に設計することが、成功のカギとなります。
 
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