公開日:2025.09.17

事例で学ぶ、若年層リサーチに不可欠な『配慮』とは? ~実践的な調査事例10選~

  • マーケティングリサーチHowto

デジタルが普及した現在、ネットリテラシーが特に高い10~20代の若年層は、選択肢が非常に多い時代だからこそ、よりパーソナライズされたニーズやインサイトがあります。
そのため、“ネット慣れ”をしている若者を対象とするリサーチには、調査設計で配慮すべきポイントが多くあるのが実情です。
この配慮すべきポイントを見誤ると、表面的な情報のみで判断した誤ったデータになってしまう可能性が出てきます。

本コラムでは、若年層へのリサーチの事例を定性・定量調査の視点から厳選してご紹介します。これらの事例の「対象者の定義や手法、テーマ、調査内容など」を参考に、今後の若年層への調査企画のヒントが得られるでしょう。

 
 

定性調査

若年層の移動に関する満足度調査


調査の結果得られたこと 全国の高校生から大学生の男女の多くが、日常の移動手段として自転車、バス、電車を利用しており、移動に対して様々な不便さを感じていることが明らかになった。特に、公共交通機関の混雑や遅延、自転車の駐輪スペースの不足が主要な課題として挙げられた。
クライアント 交通サービス提供企業
調査目的 新規サービスのアイデア創出・企画や、既存サービス改善・連携につなげる
調査手法 ODI
人数・対象者条件 8ss
全国高校生~大学生の男女。普段自転車、バス、電車で移動している。移動に関して不便さを感じている
調査内容 ・日常の移動手段
・移動時の不便さや課題
・改善の要望
・理想的な移動手段やサービスのあり方
対応範囲 調査企画、対象者リクルート、モデレーター手配、当日受付、データ回収、分析、レポート作成
特記事項 対象者には事前に移動に関する思いを日記や写真・動画で提出してもらい、インタビュー時に具体的な意見を収集。
インタビュー内容を基に新規モビリティサービスのアイデア創出や既存サービスの改善提案を行う。

 

音楽サービスに関する満足度調査


調査の結果得られたこと サービスに対して全般的に高い満足度が示された。しかし、広告の頻度やプレイリストの更新頻度に対する不満も一部見受けられた。また、他のプラットフォームとの比較でも使用感や音質に対する評価が高いことが確認された。
クライアント 音楽ストリーミングサービス提供会社
調査目的 若年層における音楽ストリーミングサービスの利用状況と満足度を把握し、サービスの改善や新機能の開発に役立てる
調査手法 オンラインデプスインタビュー(ODI)
人数・対象者条件 20ss
全国18~29歳男女、音楽ストリーミングサービス利用者
調査内容 ・サービスの使用頻度
・満足度
・利用している機能
・改善希望点
・他プラットフォームとの比較
対応範囲 調査企画、対象者リクルート、当日受付、モデレーター手配、データ回収、分析、レポート作成
特記事項 インタビューでは、サービスの具体的な利用シーンや感想を詳しく聞き取り、改善点や新機能の提案を収集。
また、インタビューの内容を基に新商品の開発や既存サービスの改善に役立てる。

 

若者のファッション嗜好調査


調査の結果得られたこと おしゃれに敏感な若者の多くが、最新トレンドや個性的なスタイルを重視していることがわかった。特に、エシカルファッションやサステナブル素材に対する関心が高まっている。また、オンラインショッピングの利用が増加しており、試着サービスの利用意向も高いことが確認された。
クライアント ファッションブランド
調査目的 若者のファッション嗜好を理解し、新商品の企画や既存商品の改善に役立てる
調査手法 DI(デプスインタビュー)+ショップアロング
人数・対象者条件 10ss
首都圏在住18~25歳の男女。おしゃれな方
調査内容 ・最新のファッショントレンド
・購入動機
・ブランドイメージ
・オンラインショッピングの利用状況
・試着サービスへの意向
対応範囲 対象者リクルート、会場手配、当日受付
特記事項 ショップアロングでは、対象者が実際に店舗で買い物をする様子を観察し、選択の過程や商品に対する反応を記録。
また、購入後の満足度や改善点についても詳しくインタビューし、具体的なフィードバックを収集。

 

学習塾・学習教材に関する教育市場調査


調査の結果得られたこと 中学生・高校生の学習塾および学習教材の利用状況と満足度、改善希望点が明らかになった。
特に、オンライン学習の利便性や対面授業の効果を重視する傾向が強いことが判明した。また、保護者の意見も大きな影響を持つことが確認された。
クライアント 教育サービス提供企業
調査目的 学習塾および学習教材の利用実態を把握し、サービス改善や新商品の企画に活かす
調査手法 ODI(オンラインデプスインタビュー)
人数・対象者条件 12ss
全国中学生・高校生の男女。現在学習塾または通信教育等を利用している。
調査内容 ・学習塾の利用状況
・満足度
・オンライン学習の利便性と対面授業の効果
・学習教材の利用頻度
・教材の評価
対応範囲 対象者リクルート、当日受付
特記事項 中学生のモニター登録は不可としているため、中学生を持つ親にアンケートを配信しリクルートを行う。
インタビューでは保護者の意見も併せて収集し、家族全体の学習環境を総合的に分析。

 

SNSユーザーの利用実態調査


調査の結果得られたこと 指定のSNSにおいて、友人と一緒にコンテンツを楽しむことが利用者のエンゲージメントを高める重要な要素であることが判明した。
クライアント SNS運営会社
調査目的 SNSユーザーの利用実態を把握し、ユーザーエンゲージメント向上策を見出すため
調査手法 ペアインタビュー
人数・対象者条件 20ss(10組)
首都圏、15歳~22歳、指定のSNSユーザー、友人と一緒にインタビューを受けられる方
調査内容 ・SNS利用の頻度
・利用目的
・友人とのやり取り
・利用時の感情や満足度
・改善点など
対応範囲 調査企画、対象者リクルート、インタビュー実施、データ分析、レポート作成
特記事項 友人同士でのインタビュー形式を採用することで、実際の利用状況に近い環境を再現し、より具体的なインサイトを得ることを目指す。
通常のリクルートよりも集まりにくくなるため、一緒に参加する友人への報酬や幅広い日時を提供する。

 

番組に関する視聴行動調査


調査の結果得られたこと Z世代の視聴傾向として、短い動画コンテンツやインタラクティブな要素を好むことが判明。さらに、ソーシャルメディアとの連動が高い関心を引く。
クライアント テレビ局
調査目的 Z世代の視聴傾向を把握し、番組制作や編成に活かす
調査手法 MROC(オンラインコミュニティリサーチ)
人数・対象者条件 60ss
全国、Z世代の男女、指定の番組を視聴できる方
調査内容 ・視聴行動
・好みのコンテンツ
・ソーシャルメディアの利用状況
・インタラクティブ要素への関心
対応範囲 調査企画、オンラインコミュニティ運営、データ回収、分析、レポート作成
特記事項 コミュニティ内でのディスカッションを通じて、リアルタイムでの意見収集とフィードバックが可能。定期的にデータをチェックし、未回答者に対しては督促を行う。

 

 
 

定量調査

高価格帯シャンプー/コンディショナーの新香調受容性調査


調査の結果得られたこと 新香調に対して好意的な反応が多く、特にフレッシュで長持ちする香りが評価された。一方、香りの強さや持続時間についての意見が分かれる部分もあり、微調整の必要性が示唆された。
クライアント ヘアケア製品メーカー
調査目的 ターゲットであるZ世代における新香調の受け入れ性の確認
調査手法 HUT(事後アンケート)
人数・対象者条件 50ss
全国の18~28歳の女性、高価格帯シャンプー/コンディショナーを使用
調査内容 ・新香調の評価
・使用感
・香りの持続性
・購買意欲
・他ブランドとの比較
対応範囲 調査企画、対象者リクルート、製品配布、使用後アンケート、データ回収、分析、レポート作成
特記事項 対象者にはシャンプー/コンディショナーを1週間使用してもらい、使用後のアンケートにて香りや使用感についての詳細なフィードバックを収集。
テスト品使用前~試用期間中は調査に影響を及ぼすヘアケア製品の使用やカラー・パーマ等の施術はNGとする。

 

お酒に関する味覚・パッケージデザイン評価


調査の結果得られたこと リニューアル品の味覚に対する評価は全体的に高く、特にフルーティーな香りとスムーズな口当たりが好評だった。一方で、パッケージデザインに関しては、伝統的なデザインを好む意見とモダンなデザインを支持する意見が分かれた。
クライアント 酒造メーカー
調査目的 リニューアル品の味覚・PKGデザインに対する評価を得る。商談につかえる材料を集めたい
調査手法 CLT
人数・対象者条件 100ss
首都圏20~29歳男女、お酒を定期的に飲む人
調査内容 ・ブランドに対するイメージ
・リニューアル品・現行品・競合品の試飲評価
・パッケージデザイン評価
・購入意欲
対応範囲 調査企画、対象者リクルート、CLT実施、データ回収、分析、レポート作成
特記事項 対象者にはリニューアル品を試飲してもらい、味覚とパッケージデザインについての詳細なフィードバックを収集。
一部参加者はインタビューへ誘導し、具体的な意見や改善点を掘り下げる。また、試飲会場には複数のデザイン案を展示し、視覚的な評価も行う。

 

Z世代の消費行動に関する調査


調査の結果得られたこと Z世代は有料・課金コンテンツに対して高い支出意欲を持っており、特にサブスクリプションサービスや独占コンテンツに対する支出が顕著であることが判明した。また、口コミやインフルエンサーの影響が購買行動に大きく影響していることがわかった。
クライアント マーケティングリサーチ会社
調査目的 Z世代の有料・課金コンテンツ利用状況を把握し、マーケティング戦略やサービス改善に活かす
調査手法 WEB調査+オンラインインタビュー
人数・対象者条件 WEB調査500ss+オンラインインタビュー20ss
18~29歳男女、有料・課金コンテンツ利用者
調査内容 ・有料・課金コンテンツの利用頻度と支出額
・利用動機
・購買経路
・満足度
・改善希望点
対応範囲 調査企画、調査票・画面作成アンケート配信、データ回収、クラスター分析、当日受付、モデレーター手配、レポート作成
特記事項 WEB調査終了後にクラスター分析を行い、クラスターをもとにインタビュー対象者を選定。
各クラスターごとに異なる購買行動や嗜好を詳細に分析し、ターゲット戦略の具体化を図る。

 

Z世代の広告に対する視覚的反応調査


調査の結果得られたこと Z世代はビジュアル重視の広告に対して高い反応を示しある要素に注目する傾向が強いことが判明した
クライアント 広告代理店
調査目的 Z世代に向けた広告デザインの最適化と効果的な視覚要素の特定
調査手法 アイトラッキング
人数・対象者条件 15ss
首都圏、Z世代(18~25歳)の男女
調査内容 ・広告視認性の分析
・視覚的注意の集中領域
・視線の動きの追跡
・広告要素に対する反応の評価
対応範囲 対象者リクルート
特記事項 複数の広告フォーマット(静止画、動画、インタラクティブ広告)を用いて比較分析を実施。
リクルートの際は視力や目の疾患の確認、及び眼鏡・コンタクトの装着の有無をヒアリングする必要がある。

 

 
 

おわりに

若年層はデジタル環境に慣れ親しんでいる一方で、調査の受け止め方や回答行動には独自の傾向があります。本コラムでご紹介した事例からも分かるように、対象者の定義や調査テーマ、さらには質問の設計ひとつで、得られるデータの質は大きく変わってきます。

調査結果を単なる数値や発言の集まりとして扱うのではなく、背景にある価値観や生活スタイルを踏まえて読み解くことが、若年層リサーチにおいては特に重要です。

このコラムが、皆様の若年層リサーチに対する理解を深め、より良い製品やサービスの開発につながる一助となれば幸いです。

当社では『若年層向けの調査』についてのお困りごとについて、ご相談を随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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若年層とは?若者への調査方法や傾向、実施/分析での注意点について解説

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