
2020.04.08
「買い物」の意味が大きくかわる
コロナウイルスによる買い物行動の変化は著しいですが、それ以前に消費者は買い物に疲れています。 買い物は楽しいものと言われていたのも一昔前の話しなのかもしれませ……
公開日:2026.05.20
イチ生活者として、店頭で「うわ、おしゃれ!」「これ、かわいい!」と思って購入した商品はないでしょうか?購入に至らなくとも「今までにないデザインだな」と記憶に残った商品はないでしょうか?
商品コンセプトと商品デザインやパッケージデザインの関係は、骨格と肉付けです。簡単に言うと「誰にとってどんなベネフィットを生むのか」を明確にした商品コンセプトに基づき、それを視覚的・機能的に表現したものがデザインとなります。
一方で、商品デザインやパッケージデザインは「コミュニケーション戦略の1つ」という側面も担っています。「買いたい・手に入れたい」と思ってもらえる要素を盛り込むことで、購入に至る後押しとして機能します。
その際に重要視すべきことは「感性価値」をどう表現に盛り込むか、ということです。以前、感性価値についてお話ししたセミナーを開催いたしました。このコラムと併せてご覧いただければと思います。
感性価値とは、製品やサービスの機能・価格だけではなく、五感や心に訴えかけ、「感動」「共感」「心地よさ」「ワクワク感」などを生み出す付加価値のことです。機能的な「モノの充実」から、心を満たす「ココロの充実」へと消費者のニーズがシフトしている現代において、感性価値は非常に重要視されています。
感性価値の訴求手段には様々な方法がありますが、本稿では商品デザイン戦略にどう取り入れるかについて、リサーチ事例を交えながらお話ししたいと思います。
調査手法:アスマークがおすすめしたオンラインコミュニティ調査(MROC)
本コラムでは、その調査の事例について、守秘義務の観点から内容を変更した事例を一つ取り上げます。まずは、結論から言うと次のような示唆が得られました。
以降では、背景から対象者構成、コミュニティ運営のプロセス、分析結果とインサイト、そして成功した3つのポイントまでを順に解説します。
ある化粧品メーカーにおいて、ファンデーションのシェア維持・拡大が課題となっていました。
当該商品は機能性やUXにおいては高い評価を得ているものの、「思わず買いたくなる」「持っているだけで気分が上がる」といった感性的な魅力において、近年台頭する新興ブランドに後れを取っているのではないか、という疑問がありました。
新興ブランドの商品は、デコラティブで「ときめき」を重視したデザインが特徴であり、それが購買意欲を強く刺激しているという仮説のもと、クライアント内部では「自社商品にもこの『ときめき要素』を取り入れるべきか」「購買を促進するデザインとは何か」という議論が行われていました。
しかし、単に「かわいい」「おしゃれ」といった言葉をアンケートで回収しても、その定義は人によって異なり、具体的な商品デザインに落とし込むことは難しい状況でした。そこで、言葉では表現しきれない「感性価値」を解明するため、非言語アプローチを活用したオンラインコミュニティ調査(MROC)を実施しました。
オンラインコミュニティ調査(MROC:Market Research Online Community[エムロック])とは、消費者のインサイト(深層欲求)を探るための定性調査の一種です。
オンライン上で、商品・企業・ブランドなどに関心が高い人を集め、マーケティングリサーチ専用のクローズドなコミュニティをつくります。そこで、「生活者×生活者」、「企業⇔生活者」の対話の場を設定します。そのコミュニティの中で「定性調査(ディスカッションほか)」と「定量調査(アンケートなど)」を組み合わせ、繰り返し進めることで、表面的な意見だけでは見えにくいインサイトを抽出していきます。
MROCでは大規模なコミュニティ運営を行うこともありますが、本コラムでご紹介する調査事例においては、精度の高いアウトプットを得るためにあえて少人数のコミュニティを形成し、一人ひとりの発言を深く掘り下げる「深耕型」のアプローチを採用しています。
MROC(エムロック)のサービスの詳細はこちら
アスマークでは、MROC(エムロック)を提供しております。専用のオンラインコミュニティ上で、定性調査(ディスカッションなど)や定量調査(アンケートなど)を組み合わせ、繰り返し進めることで、消費者のインサイトを抽出するリサーチ手法です。
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本調査の目的は、完成されたデザイン案の評価(A/Bテスト)ではなく、「買いたくなるデザインの要素」をゼロベースで探求することにあります。そのため、以下の特殊な設計を採用しました。
本調査の目的は商品デザインを完成させることではありません。デザインに感性価値を反映させるための要素を探求し具体化することが目的です。そのためリサーチに造詣の深いデザイナーに調査運営メンバーとしてアサインしてもらいました。
対象者の発言を即座にスケッチに起こし、「こういうことですか?」と視覚的に投げかけることで、言語化できないニュアンスを具体化する手法をとりました。
対象者は30代を中心に構成し、以下の2組に分けました。
花組: クライアントの既存商品を愛用している層
月組: 新興ブランド(競合)を愛用している層
一般的にはAグループ・BグループやPチーム・Qチームのように分けることが多いと思いますが、できるだけ「調査っぽさを排除するため、「花組」「月組」という名前を採用しました。「宝塚みたい「保育園みたい」など対象者から笑いが起こりましたが、そのくらい調査っぽくなく親しみやすい名前のほうが意見を言うハードルが下がるのでおすすめです。
また、30代を中心にしたのは、その商品のメインターゲット層であるとともに、感性価値を探るうえで、例えば「かわいい」「おしゃれ」の言葉の意味を同義語で語る層にするべきで、今回は年代縛りのほうが適切と判断したためです。
なお、より深いディスカッションを実施するため、次項で示す自由回答において同じような価値観を持つ人を対象者とし、人数も各グループ7名程度としました。
対象者のスクリーニングでは、ファンデーションを機能価値だけでなく、情緒価値(感性価値)にも惹かれて購入した人に絞りました。ただ「情緒価値に惹かれて買いましたか?」という設問は愚問で、そのあたりは選択肢を細分化し、「実際にどんなところにどう惹かれて買ったのか」を自由回答で聴取します。さらに購入した商品のデザインを自分の言葉で具体的に語れるか、さらに比較検討した商品とのデザイン面の違いや好みを説明できるか、そしてファンデーションのデザインについてどのような考えを持っているかを確認し、対象者を選定しました。
また、募集の際は「○○の調査」という言い方は使わず、「私たちが本当に欲しいファンデーションのコンパクトのデザインを考える会・参加者募集」として案内しました。また設問には「考える会でやってみたいこと・ファンデーションのデザインについてこう考える」という意見を書いてください、という項目を設けています。これにより、受動的なモニターではなく、開発に参画する当事者意識を持った熱量の高いメンバーを集めることに成功しました。
調査期間は4週間。モデレーターが対象者一人ひとりの生活背景に深く入り込み、対話を重ねる形式で進行しました。
本調査におけるモデレーター(=ファシリテーター)はクライアント視点に立ちゴールを明確に意識しつつ、花組・月組の一員となり、高い共感性とできるだけフランクに意見が話せるようなコミュニケーション能力が必要となります。
フェーズ0:キックオフ *本調査における特別設計
コミュニティ調査(MROC)において、参加者同士は顔を合わせることなく実施されることが一般的です。
また特に海外において、MROCは主流の調査となっていますが、FGIやDIを組み合わせない限り、同じように参加者同士が会うことはありません。「匿名・顔出しなし」が意見を言うハードルが下がる、と言われていますが、実際には初めて参加するコミュニティでどんな人がいるのかわからないから発言に困る、という意見をよく耳にします。
おそらく日本人特性であり、さらに言うと、若年層においてデジタルへの警戒心が強い傾向にあるので無視できないと考えます。
このあたりを解消し、安心して参加してもらえるように、本調査ではキックオフと称したカジュアルな顔合わせを実施しています。もちろん「4週間、みんなで頑張ろう!」という参加者意識を高めたり、クライアントにとってはどんな人が参加しているのかがわかるため有益です。対象者・クライアント共に、ご好評をいただいています。
こうした調査目的に合わせた柔軟な設計や運営が、コミュニティ調査の成果を左右する鍵となります。具体的なプロセスについては、ぜひお問合せ下さい。
フェーズ1:価値観の深掘り
まずはファンデーションの評価から入るのではなく、「化粧品のパッケージデザインの好み」や「メイクアップが日常生活の中でどのようなシーンに位置づくのか」を聴取し、カテゴリーの定義(あるべき姿)について解明していきました。
なぜ話を拡げるのか、という質問がありましたが、カテゴリーのあるべき姿を捉えておくことで、マスト要件を把握するとともに付加価値の方向性を複数持っておくことで、取るべき戦略を取捨選択することができるからです。(例えばマスト要件に加え、B方向はブルーオーシャンなのであえて取り入れる必要はなくA方向は当該商品と相性が良いので検討すべき、などジャッジできます)
具体的には、化粧品周りに関連する美容系アイテムの商品画像(ネイルオイルやフレグランス、美容家電など)を提示し、「この中で気分の上がるデザインはどれか」「持っていて○○な気持ちになれるデザインとはどういうことなのか」を問いかけ、その流れで化粧品というカテゴリーにどんな要素を必要としているのかを考えていきました。
その結果、花組と月組の間で、好むデザイン観が異なる兆候が見えました。
花組は「洗練・ミニマル・上質」を好み、月組は「多幸感・特別感・華やかさ」を好む傾向が浮き彫りになりました。
フェーズ2:非言語アプローチ ~言葉の意味を画にして理解する
ここからはファンデーションについて考えていきます。
まず対象者が好きと思うファンデーションのパッケージについて挙げてもらい、どんなところがどう好きなのかをみんなで考えていきました。そして求めるファンデーションのパッケージデザインはどう在るべきなのかをディスカッションします。
このディスカッションがある程度深まった段階で、アサインしたデザイナーが登場します。皆さんが欲しいと言っているファンデーションのパッケージのデザインはこんな感じでしょうか?と作成したラフスケッチを提示し、具体的な形状や質感について議論しました。
実際のラフスケッチを載せることはできませんが、イメージとしてGeminiで下図を生成してみました。

※ 本記事の理解を助けるために、生成AIで画像を作成しています。生成AIによる画像は必ずしも正確ではなく、誤った表現が含まれる場合があります。画像内容の真偽や正確性は保証できませんので、あらかじめご了承ください。
形状の検証
「丸みがあるほうがいい」という意見に対しては、コンパクトの角の丸みの度合いや厚みを変えた複数のスケッチを提示しました。すると、「ここまで丸いと子どもっぽい」「このコロンとした感じがベスト」といった反応が得られ、例えば「丸くてかわいい(=だから欲しいと思う)」とは具体的にどんな気持ちの変化を生み、具体的に「丸い」や「コロン」と好意的に感じる境界線を確認することができました。
質感の検証
また質感も大事な要素となっていて、これはなかなかスケッチでは表現できないので、どんな質感だったら「買いたくなる」につながるのか、対象者自身で画像を探してきて投稿してもらいました。
「ツヤ」と一言で言っても、プラスチック的な光沢なのか、陶器のような光沢なのか、パールのような輝きなのかで印象は変わります。このあたりは言葉での表現は難しいので、画像を挙げて語ってもらうのです。実際にはスタバのボトルであったり、アクセサリーであったり、テーブルの天板であったり、様々な画像を挙げてもらうことで「ツヤ」の具体的方向性が見えてきました。深く確認したり、ディスカッションしたりするため、モデレーター自身も同様に画像を投稿しながら、双方向で認識をすり合わせ、質感について明確にしていきました。
フェーズ3:相互評価による「境界線」の発見
最も重要な工程として、最終アイデアについて各組双方にそれぞれ提示し、評価を求めました。
こういった相互評価を取る場合、お互いに長期間ディスカッションして、深く考えた結果の最終アイデアなので、日本人的な「たくさん考えたのに否定しちゃ良くない」という意識が働き、意見が出づらいことがあります。オンライン調査ですが、モデレーターはそのあたりの空気感を察知する能力が必要で、本音を言いやすい雰囲気づくりが大切です。それでも出ない場合は、個別のトークルームを設定しているので、そちらで「みんなには言えないけれど本当はこう思っている」という意見を聞き出し、調整したりします。
その結果、花組は月組の最終デザインについて、「正直、派手すぎて落ち着かない」「自分の部屋に置くと、そこだけ浮いてしまいそう」「おもちゃっぽく、チープに見える」という意見が出ました。
一方で、月組は花組の最終デザインについて「地味」「ワクワクしない」「持っていて気分が上がらない」という反応が返ってきました。
こうした「相互不干渉な領域(交わらない好み)」を可視化できたことも、本調査における収穫でした。
フェーズ4:ブランドとの紐づけ
ここまではメーカーやブランドを考えずにディスカッションしてきましたが、最後にデザイン戦略に生かすためにブランドとの紐づけを実施しました。
本調査の対象ブランドを含む主要ブランドをいくつか提示し、最終デザインはマッチするのかをディスカッションしました。
このディスカッションによって、それぞれのブランドがどのように捉えられているのかが具体的にわかるほか、例えば「かわいい」はそれぞれのブランドで方向性が違うということや、あるブランドには「かわいい」は強調しなくてもいい、など対象者自身の言葉で明確になっただけではなく、各ブランドにおける「かわいい」「おしゃれ」という感性価値表現において、どこまでが許容されどこからがレッドラインなのかを浮き彫りにさせることができました。
4週間にわたる濃密な対話と、500件を超える発言(投稿)とデザインに関する議論から導き出された結論は、単なる「好みの違い」ではなく、「生活における幸せの基準」が異なっていたことが、より本質的な示唆として浮かび上がりました。
たとえば「このパッケージを好む人はこういうファッションが好きな人だよね」だとか「このブランドが好きな人はこういう趣味を持っている人だよね」という結果に留まると、コミュニケーションやデザイン戦略上のペルソナごとに表現が何パターンもできてしまい、ブレが生じてきます。
本調査における最終的な分析結果は、いわゆる「好み」という表層的なものではなく、生活において、もっと言うと、生き方についてどう考えているのかという点に起因しているという深い部分が明確になったので、ブレることのないデザイン戦略に落とし込むことができ、現状のアップデートだけでなく、将来のブランド戦略にも生かすことができました。
またデザインチームからすると、たくさんの画像によって具体的に表現の方向性が明確になったので、社内の認識合わせにも非常に役立つ調査になりました。
本案件は、徹底的な深掘りと言語化できない微妙なニュアンスを、イラストなどを提示して深く議論していったことで、良質で戦略的な示唆を導き出せた事例です。
特に、機能的な差別化が難しくなった成熟市場において、このように「感性価値」を定義するアプローチは、ブランドのアイデンティティを守りながら進化させるうえで、極めて有効な手段となると考えられます。
本コラムで述べた『オンラインコミュニティ調査(MROC)』をはじめ、貴社のマーケティング領域における課題について、専門のリサーチャー(モデレーター)が直接ご相談を承ります。
また、購買データの活用や消費者の動機理解について、さらに深く知りたい方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
「いい感じ」の正体を構造で捉える。感性価値を「言葉遊び」で終わらせないためのリサーチアプローチ
「いい感じのお店だから行ってみない?」「あのクルマ、かっこよくて気になっているんだー」
私たちが日常会話で何気なく使っているこうした言葉は、実は顧客の心を掴み、購買行動を力強く後押しする「感性価値」を表現しています。しかし、この「感性価値」ほど、マーケティングの現場において捉えどころがなく、解明が難しいテーマはないのではないでしょうか。この曖昧な感覚をいかに「共有可能な価値」として読み解くかは、マーケティングや商品開発に携わる皆さまが、自信を持ってターゲットに届く施策を打ち出すための、大きな挑戦であると言えます。
本コラムでは、言葉の背景にある構造を分解し、感性価値を解明するためのポイントをお話しします。
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『感性価値』の共通認識を読み解く調査アプローチ~「かっこいい」「おしゃれ」を構成する要素とは?~
「いい感じ」「わくわくする」「感動!」といった“感性価値”は、生活者の心を動かし、高い共感を生み出すことで、購買行動に大きく影響を与えています。
しかし、「カワイイ」や「おしゃれ」「かっこいい」といった言葉が、企画会議やコンセプト開発の場でよく使われる一方で、それが本当にターゲットが発している言葉の意味や感じ方と一致しているのか、自信を持って説明できるケースは少ないのではないでしょうか。
本セミナーでは、こうした曖昧な感性を“共有可能な価値”として捉えるためのポイントをお届けいたします。 言葉の背景にある構造を分解・整理することで、感性価値を解明するための方法を解説します。
下記に当てはまる方にお薦めの動画です。
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