公開日:2025.01.14

探索型リサーチとは?成功ポイントなど、目的~調査方法、流れまで解説

  • マーケティングリサーチHowto

現代のビジネスでは、企業は常に変化する顧客のニーズをとらえ、新しい価値を提供し続けることが求められています。そのためには、従来の枠にとらわれず、新たな視点で市場や顧客を理解する必要があります。そこで登場するのが「探索型リサーチ」です。探索型リサーチとは、仮説を検証するのではなく、定量調査や定性調査によって顧客の声を聞き、そこから新たな発見や仮説を生み出すためのマーケティングリサーチの1種です。
 
この記事では、探索型リサーチの目的や定義、具体的な調査方法、成功させるためのポイントなどについて詳しく解説します。
 

 
 

探索型リサーチとは?

探索型リサーチとは、あらかじめ具体的な仮説を設定せずに、消費者の行動や意見を深く探ることで、新たな発見や仮説を生み出すためのマーケティングリサーチの1種です。
 
従来のマーケティングリサーチでは、「Aという商品はBという理由で購入されているのではないか?」といった仮説を立て、その仮説が正しいかを検証することが主な目的でした。しかし、探索型リサーチでは、このような仮説を事前に設定せず、消費者の行動や深層心理を理解することに重点を置きます。

例えば、ある商品に対する消費者の不満を調査する場合、従来の調査では「価格が高い」「使い方が難しい」といった仮説を立てて検証していました。しかし、探索型リサーチでは、消費者に自由な意見を述べてもらい、「実はデザインが気に入らない」「周りの人が使っていないから恥ずかしい」といった、想定外の意見や潜在的ニーズを収集することができます。

 
このように、探索型リサーチは、顧客自身も気づいていないニーズや新たな可能性を探り、イノベーションの種を見つけるための有効なマーケティングリサーチです。
 

探索型リサーチの目的

探索型リサーチの目的は「顧客の潜在ニーズを探索し、新たな発見を得ること」です。具体的には、下表の3つの目的が挙げられます。

表 探索型リサーチの目的3つ
目的 内容
顧客の潜在ニーズの発見 顧客自身も気づいていないような、隠れたニーズや欲求を明らかにする。
新たな市場機会・事業機会の発見 既存市場や既存事業、顧客の枠にとらわれない、新しい市場や新しい事業、顧客セグメントを発見する。
仮説の生成 得られた情報や洞察に基づいて、新たなビジネスアイデアや商品開発の仮説を立てる。

 
探索型リサーチによって得られた発見や仮説は、新商品開発やサービス改善、マーケティング戦略の立案などに活用されます。
 

探索型リサーチの活用シーン

探索型リサーチは、様々なビジネスシーンで未知の可能性を発見し、次のアクションにつなげるのに効果的です。
 
例えば、新商品やサービスの開発段階では、市場が求める具体的なニーズや消費者の潜在的な課題を把握し、アイデアの方向性を定めるために活用されます。特に、競争が激しい市場や未開拓の分野では、革新的なインサイトを獲得する上で重要な役割を果たします。
 
また、新たな顧客層の開拓にも探索型リサーチは有効です。既存の顧客層とは異なるニーズや行動パターンを持つ潜在顧客を分析して、新規顧客の獲得や市場シェアの拡大につなげることが可能です。
 
さらに、ブランドイメージの再構築にも活用できます。顧客がブランドをどのように認識し、どのような価値を感じているのかを深く理解することで、顧客との接点やメッセージングを最適化し、ブランド価値を高められます。
 

検証型リサーチとの違い

探索型リサーチと検証型リサーチは、目的やアプローチが大きく異なるマーケティングリサーチの1種です。
 
検証型リサーチは、探索型リサーチなどで得られた仮説やアイデアを検証するためのリサーチです。アンケートや実験などを用いて、数値データを取得し、統計的な分析を行います。これにより、仮説の真偽を検証したり、アイデアの有効性を評価したりします。

表 探索型リサーチと検証型リサーチの比較
探索型リサーチ 検証型リサーチ
目的 新たなインサイトや仮説の発見 仮説の検証
取得情報 顧客の潜在ニーズ、市場機会など 仮説の真偽、因果関係、効果測定など
特徴 柔軟性が高い、質的データが多い 計画性が高い、定量データが多い

 
探索型リサーチと検証型リサーチの大きな違いは、調査の段階と目的にあります。探索型リサーチが新しい視点を得る「発見」のプロセスであるのに対し、検証型リサーチは、その視点を「検証」するプロセスです。
 
このように、探索型リサーチと検証型リサーチは、それぞれ異なる目的や特徴を持つリサーチ方法です。どちらが良い悪いではなく、調査の目的や状況に応じて使い分けることが重要です。
 
 

探索型リサーチの調査方法

探索型リサーチでは、顧客の深層心理や行動を理解するために、様々な調査方法が用いられます。ここでは、探索型リサーチでよく用いられる定量調査と定性調査について、具体的な手法や特徴、メリット・デメリットなどを解説します。
 

定量調査

探索型リサーチにおける定量調査では、アンケート調査が広く活用されています。アンケート調査とは、事前に設定した質問項目に対して、多数の回答者から回答を得ることで、数値データを集める手法です。
 
アンケート調査を用いれば、顧客全体の傾向や特徴を把握でき、新たな発見につなげることが可能になります。アンケート調査のメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 多数の回答者からデータを集められるため、統計的な分析によって、客観的な結果を得られます。
  • 同じ質問項目に対して回答を得るため、回答結果を比較分析しやすく、客観的な分析が可能です。
  • オンラインツールなどを利用すれば、短期間で効率的にデータを収集できます。

 
一方、アンケート調査のデメリットとして、自由回答が少ない点が挙げられます。事前に設定した質問項目への回答となるため、自由な意見や発想を得にくい場合があります。また、質問内容の設計によって、得られる結果が変わってしまうことにも注意が必要です。
 
このような問題への対策としては、自由回答欄を設けたり、質問項目の工夫をしたりすることによって、回答者の本音を引き出すことが重要です。

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定性調査

探索型リサーチにおける定性調査では、グループインタビュー(FGI)、デプスインタビュー(IDI)、エスノグラフィ調査など、様々な手法が用いられます。これらの手法は、いずれも顧客一人ひとりの意見や行動を深く掘り下げ、質的なデータを集めることで、顧客の行動の背景にある心理や潜在的ニーズの理解に役立ちます。
 
 
グループインタビュー(FGI:Focus Group Interview)は、複数の参加者を同時に集め、モデレーターと呼ばれる司会者の進行のもと、特定のテーマについて話し合ってもらう手法です。参加者同士の相互作用を通して、多様な意見やアイデアを引き出すことができます。

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デプスインタビュー(IDI:In Depth Interview)は、インタビュアーが1対1で対象者にインタビューを行い、深く掘り下げて話を聞く手法です。グループインタビューに比べて、より個人的な意見や深層心理を引き出せます。

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エスノグラフィ調査は、対象者の生活空間に入り込み、行動や文化を詳細に観察する手法です。長期間にわたる観察を通して、対象者の行動の背景にある心理や、潜在的ニーズを深く理解することができます。

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それぞれの調査方法には、メリットとデメリットがあります。グループインタビューは、多様な意見を収集できる一方、発言力の強い参加者に意見が偏ってしまう可能性があります。デプスインタビューは、深層心理を引き出しやすい一方、インタビューに時間がかかる点がデメリットです。エスノグラフィ調査は、対象者の行動をありのままに観察できる一方、調査に費用や時間がかかる点が課題となります。
 

検証型リサーチの調査方法

検証型リサーチでは、探索型リサーチで得られた仮説やアイデアを検証するために、定量調査や定性調査を用います。
 

定量調査の調査手法

定量調査では、アンケート調査、会場調査(CLT)、ホームユーステスト(HUT)などの手法が用いられます。

表 定量調査の調査手法
調査手法 内容 紹介ページ
アンケート調査 多くの対象者に対して質問紙を配布し、回答を収集することで、仮説を統計的に検証します。 WEBアンケートについて>
会場調査(CLT) 特定の会場に調査対象者を招き、新商品やサービスを実際に試用後、その場でアンケートに回答してもらうことで、より詳細なデータを収集します。また、CLTはCentral Location Testの略称となります。 会場調査(CLT)について>
ホームユーステスト(HUT) 調査対象者に自宅で商品を一定期間使用してもらい、その使用感や満足度を評価することで、実際の使用状況における評価を検証します。また、HUTはHome Use Testの略称となります。 ホームユーステスト(HUT)について>

 
これらの手法によって収集した数値データを分析して、仮説検証を行います。
 

定性調査の調査手法

定性調査では、下表のユーザビリティテストやMROCなどの手法が用いられます。

表 定性調査の調査手法
調査手法 内容 紹介ページ
ユーザビリティテスト ユーザーに商品やサービスを実際に使ってもらい、使いやすさや分かりやすさ、問題点などを評価することで、改善点を見つけ出します。 ユーザビリティテストについて>
MROC オンライン上でコミュニティを形成し、商品やサービスに対する意見やアイデアを収集することで、継続的な改善に役立てます。また、MROC(エムロック)はMarketing Research Online Communityの略称です。 MROCについて>

 
 
 
これらの手法により、ユーザーの行動や意見を深く理解し、商品やサービスの改善につなげることが可能です。下表は、探索型リサーチと検証型リサーチごとに上記で紹介した調査手法をまとめた表です。

表 探索型リサーチと検証型リサーチごとの調査手法
調査手法 探索型リサーチ 検証型リサーチ
定量調査 ・アンケート調査 ・アンケート調査
・会場調査(CLT)
・ホームユーステスト(HUT)
定性調査 ・グループインタビュー(FGI)
・デプスインタビュー(IDI)
・エスノグラフィ調査
・ユーザビリティテスト
・MROC

 
 

探索型リサーチの調査の流れ

探索型リサーチは、明確な仮説設定がない状態からスタートします。そのため、調査を進める場合は、柔軟に対応することが大切です。その上で、一般的な流れとしては、以下のようになります。

探索型リサーチ調査の流れ
図 探索型リサーチ調査の流れ

 

  1. テーマ設定
    まず、探索型リサーチで何を明らかにしたいのか、調査のテーマを設定します。「〇〇について顧客はどう考えているのか」「〇〇という課題に対して、どのような解決策があるのか」など、できるだけ具体的なテーマを設定することが重要です。
  2. 調査方法の選定
    設定したテーマに基づき、適切な調査方法を選定します。顧客の深層心理を探りたい場合はインタビュー調査、行動を把握したい場合は観察調査など、目的に合った調査方法を選びましょう。
  3. 調査の設計と実施
    選択した調査方法に基づき、調査設計を行った上で調査を実施します。インタビューやアンケートを行う場合は、質問内容を慎重に設計し、的確な回答を得られるようにする必要があります。また、観察調査の場合は、客観的な視点で行動を記録することが重要です。
  4. 収集データの分析
    収集したデータの分析を行います。定量データの場合は統計的な分析手法、定性データの場合はデータを整理・分類することで、データの共通点や違いから隠れたニーズやインサイトを導き出します。
  5. 考察と仮説設定
    分析結果に基づいて考察を行い、新たな仮説を設定します。仮説は、具体的な行動や解決策につながるように設定することが重要です。
  6. 報告
    調査結果をレポートにまとめ、関係者に報告します。その上で新たな仮説に基づいて、検証型リサーチを進めます。

 

 
 

探索型リサーチを成功させるポイント

探索型リサーチは、未知の領域を探求していくリサーチ方法です。そのため、探索型リサーチを成功させるには、4つの重要なポイントを押さえておく必要があります。
 

探索型リサーチを成功させるポイント
図 探索型リサーチを成功させるポイント

 

  1. 目的を明確にする
    探索型リサーチを行う際は、「何のためのリサーチか」その目的を明確にしましょう。漠然とした目的ではなく、「顧客の潜在ニーズを発見する」「新たな市場機会を見出す」など、具体的な目的を設定することで、調査の方向性が定まり、より効果的なリサーチを行えます。
  2. 柔軟な対応を心がける
    探索型リサーチでは、「予期せぬ発見」や「当初の想定とは異なる結果」が得られることがあります。そのため、新たな情報やインサイトに対して、常に柔軟な対応を心がけましょう。
  3. 多様な視点を取り入れる
    探索型リサーチでは、多様な視点を取り入れることが重要です。特定の意見や考え方に固執せず、様々な角度から情報を収集・分析することで、より深い理解を得られます。
  4. 質の高いデータ収集
    探索型リサーチでは、質の高いデータ収集が必要です。インタビューや観察を行う際は、対象者の行動や発言を正確に記録し、バイアスがかからないように注意しましょう。また、収集したデータは適切な方法で分析・解釈する必要があります。

 
これらのポイントを踏まえ、探索型リサーチを効果的に活用すれば、顧客理解を深め、新たなビジネスチャンスを創出することができるでしょう。
 
 

まとめ

ここまで、探索型リサーチの目的や調査手法、成功させるためのポイントなどを解説しました。
 
現代社会は、技術革新やグローバル化などの様々な要因によって、市場トレンドや顧客の嗜好が急速に変化しています。このような状況下において、企業が競争力を維持し、新たな市場を創出していくためには、顧客自身も気づいていない潜在的なニーズをいち早く把握し、それに対応した商品やサービスを提供していくことが重要です。
 
探索型リサーチは、まさにそうした潜在ニーズの発掘に役立つ強力なリサーチ方法です。従来のマーケティングリサーチのように、あらかじめ仮説を立てて検証するのではなく、顧客の行動や意見を深く探ることで、新たな発見やイノベーションの種を見つけられます。
 
ぜひ、本記事で紹介した内容を参考に、探索型リサーチを活用してみてください。顧客理解を深め、未知の可能性を発見することで、大きなビジネスチャンスをつかんでいきましょう。
 
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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