2022.06.16
経験サンプリング法とは?
経験サンプリング法とは 経験サンプリング法は、Experience Sampling Methodの略でESMと呼ばれることもあります。主に学……
公開日:2022.12.02
例えば、みなさんはショッピングモールにはよく訪れますか?ショッピングモールにはたくさんのショップがありますが、実際に買い物や飲食するショップはおおよそ決まっているではないでしょうか。いつも必ず訪れるショップ、たまに立ち寄るショップ、ほとんど入ったことがないショップが人それぞれにあると思います。
このように、人によって立ち寄るショップが異なるのは、一人一人がショッピングモールに求めている動機が異なるからです。私たちのほとんどの購買行動は、動機という「心が求めていること」を満たすのを目的としています。この動機は私たちを買い物へと強く突き動かす特性がありますが、抽象的な存在のため実態を把握するのが難しいという側面があります。
ところが、このつかみどころがない動機を、統計的に把握する方法があります。その方法が「因子分析」です。この因子分析を利用すると、確認できる行動や結果から対象者がどのような考え方を持っているかを分析できるようになります。この記事では、「因子分析」とはどのような考え方の分析手法かについて、解説します。
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それでは、先ほどのショッピングモールで考えてみましょう。お客様がショッピングモールを訪れる際は、必ず何かしらの動機を持っています。お客様はその動機に基づいて、ショッピングモール内のお目当てのショップに入店し、購入します。この関係は動機が「原因」となり、購入したショップが「結果」という関係です。
この原因と結果の関係が成り立っているのであれば、同じような動機を持っている人は同じようなショップで購入するという関連性が発生します。例えば、日常的に買い物をするという動機であれば「食品スーパー」「大型衣料品店」「100円ショップ」での買い物頻度が高く、友達と休日を楽しみたいという動機であれば「ファッションブランド」「アクセサリー」「スイーツ店」「100円ショップ」での購入頻度が高くなるでしょう。
このような顧客が何となく抱いている動機のように、結果を生み出す「原因」を統計的に求める手法が因子分析です。
因子分析には、マーケティングに活用できる様々なメリットがあります。ここでは、そのメリットについて解説します。
あるショッピングモールで、以下のような購入客数データがあったとします。
このデータからは、どのショップがどれだけの客数を集めているかを把握することができます。
ですが、この情報だけでは、お客様がどのショップで同時購入されているかを知ることはできません。
そこで、購入データなどから因子分析すると、以下のような関係性が分かるようになります。
上図のようなデータが得られた場合、「食品スーパー」「大型衣料店」「100円ショップ」はある動機(共通因子A)で同時購入される関係性があり、「アクセサリー」「スイーツ」「100円ショップ」は別の動機(共通因子B)で同時購入されるという関係性を把握できます。
また、矢印の横に記載された数値は、それぞれの来店動機と購入するショップとが、どの程度の関連性があるかを示しています。例えば、来店動機Aと食品スーパーの間には「0.8」、来店動機Bとアクセサリーショップの間には「0.9」の関連性があると分析されています。
このように因子分析を用いると、来店動機などの「原因」と購入ショップなどの「結果」との関係を数値で把握できるようになるため、より具体的な分析が可能となります。
因子分析を用いると、先ほどの図にあった「共通因子」によってデータがとても分析しやすくなります。例えば、ひとりのお客様が購入したデータを見てみましょう。
この情報だけでお客様の来店動機を推測するのは少し難易度が高いように思われます。
ですが、データが因子分析によって以下のようにまとめられていたらどうでしょうか?
このデータであれば、お客様1は来店動機A、お客様2は来店動機Bの傾向が高いと、来店動機をすぐに理解できると思います。このように因子分析は、データに隠された動機などの原因を的確に把握するために効果的な分析手法です。
ショッピングモールの売上効率を良くするには、1人の来店者ができるだけたくさんのショップで購入してもらえるのが理想的です。また、お客様にとっても「自分が立ち寄りたいショップ」がたくさんあると、他のショッピングモールよりも来店しようという気持ちが高まります。
つまり、同時に複数のショップで購入されるショッピングモールの方が、投資効率が良くお客様からも支持される可能性が高まるということになるのです。そこで因子分析を効果的に用いれば、お客様の来店動機を数値データとして把握でき、テナントの選定や効果的なイベント立案につなげられます。
この他にも、因子分析は以下のようなケースで用いられています。
そして、最もみなさんが身近に感じているケースは「おすすめ機能」ではないでしょうか。
ユーザーの購買動機など、目に見えない心理を分析できれば、ユーザーに「この商品もいかがですか?」とおすすめができます。このおすすめがどれほどマーケティングにおいて高い効果を示しているかは、ネット通販などで実感されていると思います。
このように因子分析によってユーザー心理を把握できれば、企業はユーザーにとって「気が利く存在」になり、競合よりも先んじたマーケティング活動が展開できます。
因子分析を行う際に重要なことは、分析可能なデータを入手することです。例えばショッピングモールのケースで、入手できるデータがショップごとの客数だけであれば、おそらく有効な因子分析はできません。
必要なデータをしっかりと入手するためにも、因子分析の手順を理解しておきましょう。
まずは調査の目的を明確にします。例えば、ショッピングモールのケースでは「来店動機」、ネット通販では「購入動機」を知ることが目的となります。その上で、目的を達成するためには、どのような項目や手法で調査すれば良いかを考えていきます。
これらの項目や手法を考える際に重要なのが、「仮説」を考えることです。ここでしっかりとした仮説があれば、的確な調査項目や手法が明らかになります。
因子分析はマーケティング分析の中でも、かなり高い専門性が求められます。その調査設計を専門家がいない状態で行うのは、無理があるといっても過言ではありません。調査設計の段階では必ず専門家の協力を仰いで、効果的な設計作業を進めた方が良いでしょう。
調査設計に基づいて、調査を進めます。調査方法は予算や期間によって以下のようなケースがあります。
集まったデータを元に、分析作業を行います。分析にはかなり複雑な計算が必要なため、分析用の専門ソフトを使用するか、専門業者に依頼するケースがほとんどです。
もし、長期間にわたって分析作業を行うのでなければ、調査設計も含めて外部の専門業者に相談するのが効果的でしょう。
ここでは、因子分析から得られるデータの見方について解説します。
ショップ | 因子負荷量 | 寄与率 | |
来店動機A (共通因子A) |
食品スーパー | 0.8 | 45% |
大型衣料点 | 0.7 | ||
100円ショップ | 0.3 | ||
来店動機B (共通因子B) |
アクセサリー | 0.9 | 32% |
スイーツ | 0.8 | ||
100円ショップ | 0.5 |
因子負荷量とは、それぞれの項目が因子とどのくらい関連性があるかを示しています。因子負荷量は+1~-1の範囲で示され、+1に近づくほど正の相関(片方が大きくなればもう片方も大きくなる)が高く、-1に近づくほど負の相関(片方が大きくなれば、もう片方が小さくなる)が高くなります。
寄与率とは分析された因子が、データ全体に対してどの程度の影響を及ぼしているかを示しています。例えば、来店動機Aが45%の場合、モール内購入の45%に来店動機Aが関係していると分析できます。
この寄与率が分かることで、来店動機別のお客様数が推測できるなどのメリットがあります。
上記のように、因子との関連性の高さを示したものが因子得点です。点数が高いほど、因子(この例では来店動機)との関連性が高いことを表しています。
ショップ | 来店動機A | 来店動機B | 共通性 |
食品スーパー | 0.8 | 0 | 0.8 |
大型衣料点 | 0.7 | 0 | 0.7 |
100円ショップ | 0.3 | 0.5 | 0.8 |
アクセサリー | 0 | 0.9 | 0.9 |
スイーツ | 0 | 0.8 | 0.8 |
上図のように、項目ごとの共通因子負荷量を合算したものを共通性と言います。共通性が高いほど共通因子との関連性が高く、低いものほど独自の因子による影響が大きいものと考えられます。
因子分析はとても有益な分析手法ですが、その一方で注意すべき点があります。ここでは、その注意点について解説します。
因子分析はあくまで項目ごとの関連性を数値データで求める分析手法です。データの関連性は数値データで把握できても、その動機を言葉に置き換えるのは、最終的に人がやらなければならないからです。
ショッピングモールのケースでは「日常的な買い物」「友達との休日を楽しむ」と定義しましたが、これは分析者の推測によって行わなければなりません。
そのため、因子分析で明らかになった関連性を読み取るには、経験豊富なプロフェッショナルにお願いするのが賢明です。プロフェッショナルと経験が浅い人の大きな違いは、プロは分析の途中段階でどのような結果になるかを想定し、分かりやすい結果が出るように作業を進めます。だからこそ、分析結果が明らかになったときには、素早く的確に推測できるのです。
これは経験の浅い人ではとても困難な作業ですので、ぜひ、信頼できるプロフェッショナルにお願いしましょう。
調査設計の段階でも解説しましたが、そもそも分析対象のデータが因子分析できる要件を満たしていなければ、どんなプロフェッショナルであっても有益な因子分析は行えません。
効果的なデータを入手するには、ある程度、因子分析することを前提に調査設計することがとても重要です。そのためにも、調査設計の段階では、必ず因子分析のスペシャリストを交えて進めていきましょう。
因子分析は調査設計段階から高度なスキルが要求される分析手法です。だからこそ、そこから得られるデータは競合に対する大きな優位性になりますし、活用方法によっては劇的なマーケティング効果を発揮します。
このようなマーケティング施策によって、大成功を収めている企業をみなさんもイメージできるのではないでしょうか?ユーザー心理を先取りすることは、とても大きなマーケティングの成功につながる可能性を秘めています。
何とかユーザー心理を把握したい、競合より一歩先んじるマーケティング施策を実施したいとお考えであれば、「因子分析」を含めた高度なマーケティング調査を検討してみることをおすすめします。
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