
2024.08.27
CM効果測定、本当に見るべき指標とは?
テレビCM効果測定の現状と課題 テレビCMは、依然として大きな影響力を持つ広告手法です。しかし、多額の費用をかけて制作・放映するからこそ、その効果を正確に測定……
公開日:2025.06.09
近年、顧客の「生の声」を的確にとらえる手法として注目されているのが、「グループインタビュー」です。グループインタビューは、特定のテーマに対して複数の参加者から意見を集め、商品開発やサービス改善、市場調査など、様々なビジネスシーンで活用されています。
しかし、グループインタビューで重要なのは、そこで得られた貴重な情報を適切に整理・分析し、「報告書」としてまとめることです。この報告書は、得られた客観的な事実や示唆を関係者と共有することで、次のアクションにつなげるための重要なツールとなります。
この記事では、グループインタビューの報告書を作成する際の基本的な進め方から、発言内容の整理・分析のコツ、さらには具体的な報告書の構成イメージについて、解説します。
グループインタビュー(FGI:Focus Group Interview)とは、特定のテーマについて5~8人程度の少人数で構成されたグループに対し、モデレーター(≒司会進行役/ファシリテーター)が対話をうながしながら意見を引き出していく、定性調査の手法です。アンケートのような定量調査ではとらえにくい、参加者の潜在ニーズや感情、価値観といった「本音」に深く迫ることを目的としています。
この手法の大きな特長は、参加者同士の活発な対話を通じて、一人では気づけなかった視点や新たな意見が引き出される「グループダイナミクス」にあります。これにより、単なる個々の意見の集積にとどまらず、より多角的で深みのある洞察を得ることが可能です。
グループインタビューは座談会形式で行われることも多く、マーケティングリサーチの重要は手法として様々なビジネスシーンで活用されています。特に、新商品のコンセプト評価、既存製品の課題抽出、ターゲット顧客のペルソナ理解などにおいて高い効果を発揮します。
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グループインタビューの報告書とは、参加者の発言内容や意見の傾向を整理・分析し、調査結果としてまとめた資料のことです。
Webアンケートレポートのように数値を扱う定量的なものとは異なり、主なデータは「言葉」である点が特徴です。そのため、参加者の発言をテーマごとに分類し、共通点や対立している点を見つけ出すことで、意味のある傾向や洞察を導き出していきます。
報告書のアウトプットには、テキストによる要約に加え、ブランドポジショニングマップやコレスポンデンス分析などの図解を組み合わせることで、調査結果の全体像を視覚的に分かりやすく表現します。
このようにビジュアルを効果的に活用することで、参加者の発言傾向や調査結果のポイントを、より直感的かつ説得力をもって伝えられる報告書を作成できます。
グループインタビューの報告書を作成する方法には、大きく分けて「自社で作成する」方法と「調査会社に依頼する」方法の2つがあります。どちらにもメリット・デメリットがあるため、自社のリソースや目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
1. 自社で作成する場合
メリット | デメリット |
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2. 調査会社に依頼する場合
メリット | デメリット |
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グループインタビューの価値を最大限に引き出すには、得られた情報を適切に整理・分析し、分かりやすい報告書にまとめることが重要です。
この章では、グループインタビューで得られた情報を、具体的なアウトプットへと結びつけるための手順について解説します。
グループインタビューを実施した後、報告書作成の第一ステップとなるのが「発言録」の作成です。発言録とは、インタビュー中の会話を文字に起こしたもので、参加者全員の発言内容を正確に記録することを目的としています。これは、後の分析作業の基盤となる、とても重要な工程です。
発言録作成の重要性
発言録は、単なる記録ではなく、分析や報告書作成における出発点となる重要な資料となり、この重要性をまとめたポイントを以下紹介します
発言録作成のポイント
発言録の質は、後の分析やアウトプットの精度を大きく左右させます。ここでは、精度の高い発言録を作成するために押さえておくべきポイントについて紹介します。
発言録が完成したら、次のステップは「発言内容の集計・分析」です。ここでは、記録された参加者の発言をテーマや意見の傾向ごとに整理し、意味のある形に構造化していきます。この工程では、収集したデータから共通する価値観やニーズ、対立意見、潜在的な気づきなどを浮かび上がらせることが、重要な目的です。
キーワード抽出とカテゴリ化(コード化)
まずは発言の中から、頻出ワードや印象的なキーワードを抽出し、それらを手がかりにカテゴリ分け(いわゆるコード化)を行います。例えば、ある商品について「安心できる」「体に良さそう」「健康的」といった言葉が繰り返されていた場合、これらを「情緒的価値:健康・安心感」といった形で一つのカテゴリとして整理できます。
このように発言をグルーピングすることで、参加者の意識や価値観の傾向、潜在的なニーズがより明確になっていきます。
意見の分布と温度感の把握
参加者ごとの意見の違いや、その「温度感」(意見の強さやニュアンス)にも注目することが重要です。肯定的・否定的な意見の比率や、複数の参加者から共感を得た発言などを整理しておけば、グループ全体の意見の傾向や分布をより立体的に把握できます。
データの可視化による洞察の深化
必要に応じてマッピングやコレスポンデンス分析などの可視化手法を取り入れれば、ブランド間のポジショニングや、ニーズのホワイトスペース(未充足領域)を視覚的に把握することも可能です。これにより、分析結果を報告書の中でより直感的かつ説得力を持って提示できます。
発言内容の集計・分析が完了したら、いよいよその成果を「報告書」としてまとめる段階に入ります。
報告書は、グループインタビューから得られた洞察を関係者に共有し、次のアクションへとつなげるための最終的なアウトプットです。調査の価値を最大化するには、この報告書が「分かりやすく、説得力があり、行動につながる」内容になっていることが大切です。
報告書に盛り込むべき主要要素
報告書作成のポイント
グループインタビューで得られる発言は、「言葉」で構成された定性データです。そのため、膨大な発言内容を意味のある情報へと変換するためには、適切な整理・分析手法の活用が必要です。
ここでは、グループインタビュー分析の代表的な3つの手法について、それぞれの特徴と活用のポイントを解説します。
アフターコーディング
アフターコーディングとは、言語によって表現された定性データを、意味の類似性に基づいて分類・コード化する分析手法です。このプロセスによって、もともとは定性的な情報を、傾向やパターンとして定量的に把握できます。
【手順】
大分類:ポジティブな理由 / ネガティブな理由
中分類(ポジティブな理由に対して):使いやすそう / 洗剤購入・詰め替えの手間が減る / 簡単・便利・楽
小分類(使いやすそうに対して):容器が使いやすそう / ひねるだけで使いやすそう
【注意点】
とても便利なアフターコーディングですが、「分類には多大な作業を伴うこと」「分類者の主観が反映されやすいこと」などの問題点もありますので、注意しましょう。
テキストマイニング
テキストマイニングは、大量のテキストデータから単語や文節を自動で抽出し、その出現頻度や単語間の関連性(共起関係)を統計的に分析する手法です。アフターコーディングでは見つけにくい、言葉の裏にある潜在的な意味や、単語同士の意外なつながりを可視化することに優れています。
【手順】
上記の図では、仕事を頑張ったご褒美として、「美味しいものを食べる」「お酒を飲む」「好きなもの・欲しいものを買う」「旅行に行く」「マッサージ・エステに行く」などの行動をして、「気持ちの高揚」や「癒し」を得ることが自分への理想的なご褒美だと答えていることがわかります。
また、バブルの色は品詞(動詞・名詞・形容詞など)により分けられており、出現頻度が多い単語ほどバブルが大きく、共起の程度が強いほど線が太くなっています。男女別、年代別、役職別などでグラフは変わります。そのため、傾向を比較してみても良いでしょう。
【注意点】
テキストマイニングは、専用ツールの使用が一般的です。ツールを使わずに手作業で行うには、高度な統計知識と膨大な工数が必要となります。
KJ法(親和図法)
KJ法は、散在する情報やアイデアをグループ化し、それらの関係性を図解することで、問題の本質や新たな概念を発見する質的分析手法です。グループインタビューで得られた個々の発言から、共通するテーマや構造を導き出すのに、とても効果的です。
【手順】
【注意点】
KJ法を実施するにあたり、「無理やりグループ化をしない」という姿勢が求められます。グループ化を進めていくと、「独立」した存在が合わられる場合があります。こういったときには、無理にグループに含めるようなことはせず、そのまま残しておきましょう。また、グループ化して終わりではありません。「文章で説明を加える」をおろそかにせず、「文章化」までしっかりと行いましょう。
グループインタビューの報告書を作成する際には、いくつか重要な注意点があります。これらを押さえることで、報告書の質を高め、実用性を高められます。
「グループインタビューの報告書とは?」の例として、少しご紹介したヨーグルトの例について、より詳しく、この章では紹介していきます。
この例では、生活者がヨーグルトに対して抱く価値観や使用シーンを深く掘り下げることを目的に、グループインタビューを実施しました。収集した発言内容を整理・分析し、その結果を以下のようなレポートとしてまとめています。
まず、調査対象者にとっての生活信条、ヨーグルトへの情緒的価値や機能的価値を整理し、ブランドの区分けを行いました。
さらに、整理された情報から根幹となりうる要素を抽出し、結論を整理。
機能と用途を軸に再度ポジショニングを行ない、ホワイトスペースを確認。
このマップからは、「オールマイティ型」「機能特化型」「高付加価値型(高級タイプ)」といったブランドごとの特徴や傾向が明確に浮かび上がっています。また、未充足の市場領域(ホワイトスペース)として、「料理用ヨーグルト」「美容専用ヨーグルト」などの新商品開発の可能性が示唆されています。
これらの情報から、ヨーグルトの新価値の方向性について、以下を考えることがでます。
ヨーグルトに対するベネフィット
以下への期待が見られました。
情緒面:安心・癒し・健康
機能面:おいしさ・健康・料理・美容
ヨーグルトのブランド比較(ポジショニング)
ブランドへのポジショニングは、消費者意識や特徴から、喫食面で『オールマイティ』『機能性タイプ』『高級タイプ』などへの区分がなされました。しかし、ヨーグルトそのものに対する喫食利用を主としており、『料理』や『美容(パックなど)』に対するホワイトスペースが見られます。
ヨーグルトの特性(乳酸菌、ビタミンやカルシウムが豊富)を活かした『料理』『食べる以外に美容』への新用途ニーズが示唆されます。
このように、報告書では発言内容の要約に加え、横棒グラフ、コレスポンデンス分析図、利用シーン別の整理表などを用いることで、定性データを視覚的に分かりやすく伝えられます。また、調査結果をもとに導き出された開発コンセプト案も記載すれば、今後の商品開発やマーケティング戦略に活用することが可能です。
この記事では、グループインタビューの報告書について、その基本的な概要から作成の手順、さらには作成時に留意すべきポイントについて解説しました。
グループインタビューから得られた情報は、ていねいに整理・分析し、実用的かつ説得力のある報告書としてまとめ上げることで、ビジネスにおける意思決定や戦略立案に活用できる「価値あるインサイト」となります。
ぜひ、この記事で紹介した手順やポイントを参考に、具体策に反映できるグループインタビューの報告書を作成し、ビジネスに活用していきましょう。
失敗しない、定性調査の「インタビューフロー設計」
本資料では、インタビューフロー設計の基本原則~整理すべきポイントや、具体的な聴取項目の作成方法、更にはグループインタビューとデプスインタビュー間におけるフロー設計の違いなどを解説いたします。
ご活用頂き、インタビュー調査の更なる精度の向上へお役立ていただけましたら幸いです。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● インタビューフローの作成で悩んだことがある
● インタビュー調査を失敗したことがある
● これからインタビュー調査を設計する予定がある
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商品開発におけるグループインタビューの事例
ヨーグルトの製造・販売メーカーを例に、商品開発における調査の企画・設計の実施事例をご紹介。
webアンケートからでは探れない対象者の行動や発言・情報についてを探るため、日記調査やグループインタビューを行なっていき、最後に、調査全体を通じて明らかになったことから、ヨーグルトにおける新たな価値を見出し、新商品の方向性についての考察もグラフィカルなスライドを用いながら解説しています。
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グループインタビューのコツとは?成功させる戦略について解説
近年、市場調査において、消費者の深層心理を理解するために定性調査の重要性が高まっています。中でも、グループインタビューは、消費者の本音を引き出し、多様な意見や深い洞察を引き出すための手法として注目されています。
しかし、グループインタビューから有益な調査結果を得るには、グループインタビューの特性や重要なポイントを理解して、事前準備や調査実施、分析作業を行うことが大切です。
この記事では、グループインタビューを成功させるためのコツについて解説します。
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