公開日:2025.06.09

グループインタビューの報告書とは?作り方や例(イメージ)を紹介

  • マーケティングリサーチHowto

近年、顧客の「生の声」を的確にとらえる手法として注目されているのが、「グループインタビュー」です。グループインタビューは、特定のテーマに対して複数の参加者から意見を集め、商品開発やサービス改善、市場調査など、様々なビジネスシーンで活用されています。
しかし、グループインタビューで重要なのは、そこで得られた貴重な情報を適切に整理・分析し、「報告書」としてまとめることです。この報告書は、得られた客観的な事実や示唆を関係者と共有することで、次のアクションにつなげるための重要なツールとなります。

この記事では、グループインタビューの報告書を作成する際の基本的な進め方から、発言内容の整理・分析のコツ、さらには具体的な報告書の構成イメージについて、解説します。

 
 

グループインタビューとは?

グループインタビュー(FGI:Focus Group Interview)とは、特定のテーマについて5~8人程度の少人数で構成されたグループに対し、モデレーター(≒司会進行役/ファシリテーター)が対話をうながしながら意見を引き出していく、定性調査の手法です。アンケートのような定量調査ではとらえにくい、参加者の潜在ニーズや感情、価値観といった「本音」に深く迫ることを目的としています。
この手法の大きな特長は、参加者同士の活発な対話を通じて、一人では気づけなかった視点や新たな意見が引き出される「グループダイナミクス」にあります。これにより、単なる個々の意見の集積にとどまらず、より多角的で深みのある洞察を得ることが可能です。
グループインタビューは座談会形式で行われることも多く、マーケティングリサーチの重要は手法として様々なビジネスシーンで活用されています。特に、新商品のコンセプト評価、既存製品の課題抽出、ターゲット顧客のペルソナ理解などにおいて高い効果を発揮します。

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グループインタビューの報告書とは?

グループインタビューの報告書とは、参加者の発言内容や意見の傾向を整理・分析し、調査結果としてまとめた資料のことです。
Webアンケートレポートのように数値を扱う定量的なものとは異なり、主なデータは「言葉」である点が特徴です。そのため、参加者の発言をテーマごとに分類し、共通点や対立している点を見つけ出すことで、意味のある傾向や洞察を導き出していきます。

報告書のアウトプットには、テキストによる要約に加え、ブランドポジショニングマップやコレスポンデンス分析などの図解を組み合わせることで、調査結果の全体像を視覚的に分かりやすく表現します。

例えば、下図のようにヨーグルトの「機能」や「用途」といった軸をもとに各ブランドをマッピングし、ホワイトスペース(未開拓領域)を可視化することで、今後の戦略立案に役立つ示唆を得ることが可能です。

図 グループインタビューの報告書内のイメージ
図 グループインタビューの報告書内のイメージ

 
このようにビジュアルを効果的に活用することで、参加者の発言傾向や調査結果のポイントを、より直感的かつ説得力をもって伝えられる報告書を作成できます。
 
 

報告書を作る手段

グループインタビューの報告書を作成する方法には、大きく分けて「自社で作成する」方法と「調査会社に依頼する」方法の2つがあります。どちらにもメリット・デメリットがあるため、自社のリソースや目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。

1. 自社で作成する場合

メリット デメリット
  • コストを抑えられる
    外部委託に比べて費用を抑えられるため、限られた予算内での実施が可能です。
  • ノウハウが蓄積される
    報告書作成のプロセスを自社で担うことで、調査の分析スキルや洞察力が社内に蓄積され、今後の業務に活かせられます。
  • 柔軟な対応が可能
    自社の目的や視点に応じて、内容や構成を自由に調整できるため、現場のニーズに即したアウトプットを作成しやすくなります。
  • 専門知識が求められる
    発言を正確かつ客観的に分析するには、定性調査に関する知識や経験が必要です。特にバイアスを避け、多面的な視点で解釈する力が問われます。
  • 時間と労力がかかる
    発言内容の整理から分析、レポート作成に至るまで、多くの時間と工数を要します。通常業務と並行して行う場合、担当者の負担が大きくなる可能性があります。
  • 客観性の担保が難しい
    自社でまとめることで、自社の仮説や期待に引きずられたバイアスが無意識に入り込むリスクがあります。

 
 

2. 調査会社に依頼する場合

メリット デメリット
  • 高い専門性と客観性
    豊富な経験を持つ調査会社は定性調査の分析に精通しており、専門的なフレームワークを用いて信頼性の高い報告書を提供してくれます。
  • 時間と労力の削減
    分析やレポート作成を一任できるため、自社のリソースを他の業務に集中させられます。
  • 多角的な視点からの分析
    幅広い業界知識を持つ調査会社であれば、自社では見落としがちな視点からの新たな示唆が得られる場合もあります。
  • コストが発生する
    調査の規模や内容によって費用は変動しますが、一定の予算を確保する必要があります。
  • コミュニケーションコストがかかる
    良質な報告書を作成してもらうには、自社の目的や背景を的確に伝える必要があり、調査会社との綿密なやりとりが求められます。
  • ノウハウが自社に蓄積されにくい
    外部に業務を委託するため、調査や分析のスキルが社内に残りにくくなります。

 
 

グループインタビューの報告書にまとめる手順

グループインタビューの価値を最大限に引き出すには、得られた情報を適切に整理・分析し、分かりやすい報告書にまとめることが重要です。
この章では、グループインタビューで得られた情報を、具体的なアウトプットへと結びつけるための手順について解説します。

図 グループインタビューの報告書にまとめる手順
図 グループインタビューの報告書にまとめる手順

 

①発言録の作成

グループインタビューを実施した後、報告書作成の第一ステップとなるのが「発言録」の作成です。発言録とは、インタビュー中の会話を文字に起こしたもので、参加者全員の発言内容を正確に記録することを目的としています。これは、後の分析作業の基盤となる、とても重要な工程です。

発言録作成の重要性


発言録は、単なる記録ではなく、分析や報告書作成における出発点となる重要な資料となり、この重要性をまとめたポイントを以下紹介します

  • 情報の正確な記録
    インタビュー中の会話は、時間の経過とともに記憶があいまいになるものです。発言録を作成しておくことで、「誰が」「何を」「どのようなニュアンスで」発言したのかを正確に記録でき、後から何度でも振り返ることが可能です。
  • 新たな示唆の発見
    一度聞いただけでは見過ごしがちなニュアンスや、複数の発言に共通するテーマなどが、発言録を読み返すことで浮かび上がってくることがあります。このように、発言録は思わぬ気づきや洞察が得られる貴重な資料となります。

 

発言録作成のポイント


発言録の質は、のちの分析やアウトプットの精度を大きく左右させます。ここでは、精度の高い発言録を作成するために押さえておくべきポイントについて紹介します。

  • できるだけ早く作成する
    インタビュー終了後は、記憶が新しいうちに作成を開始するのが理想的です。そうすることで、会話の背景や雰囲気、非言語的な要素(声のトーンや間など)を補足しやすく、より精度の高い発言録に仕上がります。
  • 一言一句、正確に文字起こしする
    参加者の発言は、「えー」「あのー」などの言い淀みいいよどみ相槌あいづちも含めて忠実に書き起こすことが望まれます。こうした細かな表現が、発言者の感情や考え方を読み解く手がかりになります。
  • 発言者と時間軸を明記する
    発言の前には必ず話者名や識別記号(例:Aさん、Bさんなど)を記載します。また、インタビュー中のタイムスタンプを適宜記録しておくと、後から特定の会話箇所を探す際に便利です。
  • 非言語情報を補足する
    表情や身振り、声の強弱、沈黙の長さなど、発言の背景となる非言語的な要素も、可能な範囲で補足します。例えば、「(笑いながら)」「(少し考えてから)」「(戸惑いの表情で)」といった情報が、発言の真意を把握する助けになります。
  • 重複や関連発言に印をつける
    同じような発言が複数回繰り返されたり、関連する意見があちこちで出ていたりする場合は、あらかじめ目印やタグをつけておくと、後の分析がスムーズになります。
  • ツールを活用する
    音声認識ソフトや文字起こしツールを使えば、作業効率を大幅に向上できます。ただし、専門用語や固有名詞、話者の訛りなまりなどに対する誤認識が生じやすいため、人の手による確認と修正が必要です。これらのツールは、複雑な会話や音声環境によっては限界があること、理解しておきましょう。

 
 

②発言内容を集計・分析

発言録が完成したら、次のステップは「発言内容の集計・分析」です。ここでは、記録された参加者の発言をテーマや意見の傾向ごとに整理し、意味のある形に構造化していきます。この工程では、収集したデータから共通する価値観やニーズ、対立意見、潜在的な気づきなどを浮かび上がらせることが、重要な目的です。

キーワード抽出とカテゴリ化(コード化)
まずは発言の中から、頻出ワードや印象的なキーワードを抽出し、それらを手がかりにカテゴリ分け(いわゆるコード化)を行います。例えば、ある商品について「安心できる」「体に良さそう」「健康的」といった言葉が繰り返されていた場合、これらを「情緒的価値:健康・安心感」といった形で一つのカテゴリとして整理できます。
このように発言をグルーピングすることで、参加者の意識や価値観の傾向、潜在的なニーズがより明確になっていきます。

意見の分布と温度感の把握
参加者ごとの意見の違いや、その「温度感」(意見の強さやニュアンス)にも注目することが重要です。肯定的・否定的な意見の比率や、複数の参加者から共感を得た発言などを整理しておけば、グループ全体の意見の傾向や分布をより立体的に把握できます。

データの可視化による洞察の深化
必要に応じてマッピングやコレスポンデンス分析などの可視化手法を取り入れれば、ブランド間のポジショニングや、ニーズのホワイトスペース(未充足領域)を視覚的に把握することも可能です。これにより、分析結果を報告書の中でより直感的かつ説得力を持って提示できます。
 
 

③報告書作成

発言内容の集計・分析が完了したら、いよいよその成果を「報告書」としてまとめる段階に入ります。
報告書は、グループインタビューから得られた洞察を関係者に共有し、次のアクションへとつなげるための最終的なアウトプットです。調査の価値を最大化するには、この報告書が「分かりやすく、説得力があり、行動につながる」内容になっていることが大切です。

報告書に盛り込むべき主要要素

図 報告書に盛り込むべき主要要素
図 報告書に盛り込むべき主要要素

 

  1. 要約(サマリー)
    報告書の冒頭には、調査の目的、主要な発見(インサイト)、そして最も重要な結論と提言を簡潔にまとめたサマリーを掲載します。時間のない関係者でも、ここを読むだけで全体像が把握できるように、200〜300字程度で明瞭に記述することがポイントです。
  2. 調査概要
    どのようなグループインタビューが実施されたのか、調査の背景と設計を明確に伝えます。記載内容には、調査目的、対象者の属性(年齢・性別・利用状況など)、実施日・場所、参加人数、モデレーター名などが含まれます。これにより、分析結果の信頼性と解釈の前提が共有されます。
  3. 主要な発見と分析結果
    分析フェーズで得られた主要な示唆や傾向を、具体的な発言(引用)とともにテーマ別に整理して提示します。発言のカテゴリや分類ごとに、参加者の感情やニーズ、課題などを掘り下げて解説します。あわせて、ポジショニングマップやグラフなどの図表を活用し、視覚的に理解しやすい構成にすることが大切です。
  4. 結論と提言
    得られた示唆に基づいて導き出された結論を明確に述べ、それがビジネスにおいてどのような意味を持つのか解説します。その上で、新商品のコンセプト修正、ターゲットの見直し、プロモーション施策の方向性など、具体的なアクション提言を提示します。
  5. 補足資料
    必要に応じて、発言録の抜粋、使用した質問項目(インタビューガイド)、スクリーニングシート、参加者プロフィールなどを付録として添付します。報告書本文には収まりきらない詳細情報を確認したい関係者のニーズに応える役割を果たします。

 
 
報告書作成のポイント

  • 論理的な構成
    報告書は「目的 → 背景 → 分析 → 結論 → 提言」の順に構成し、読み手がストレスなく内容を追えるように設計します。
  • 簡潔で明瞭な表現
    長文はできるだけ避け、要点は箇条書きや短いセンテンスでまとめます。専門用語の多用にも注意が必要です。
  • 視覚的な工夫
    図表やグラフ、マッピング、イラストなどを積極的に取り入れ、視覚的にメッセージを伝えることで、理解度を高められます。
  • 目的との一貫性
    報告書は「なぜこの調査を実施したのか」という目的に立ち返り、分析・提言のすべてがその目的に沿って構成されているかを確認します。

 

 
 

グループインタビューの発言内容を整理・分析する方法

グループインタビューで得られる発言は、「言葉」で構成された定性データです。そのため、膨大な発言内容を意味のある情報へと変換するためには、適切な整理・分析手法の活用が必要です。
ここでは、グループインタビュー分析の代表的な3つの手法について、それぞれの特徴と活用のポイントを解説します。

アフターコーディング


アフターコーディングとは、言語によって表現された定性データを、意味の類似性に基づいて分類・コード化する分析手法です。このプロセスによって、もともとは定性的な情報を、傾向やパターンとして定量的に把握できます。

【手順】

  1. 発言の抽出
    グループインタビューの発言録から、分析したい内容に関連する個々の発言やフレーズを抽出します。
  2. コードの付与
    抽出した発言に対し、内容を表すキーワードや概念をコードとして付与します。例えば、ヨーグルトに関する発言であれば、「健康志向」「手軽さ」「美容効果」などがコードになり得ます。
  3. カテゴリ分類
    付与したコードをさらに意味の近いもの同士でグループ化し、大分類、中分類、小分類といった階層的なカテゴリを構築します。例えば、購入理由についての回答であれば、以下のように分類できます。

    大分類:ポジティブな理由 / ネガティブな理由
    中分類(ポジティブな理由に対して):使いやすそう / 洗剤購入・詰め替えの手間が減る / 簡単・便利・楽
    小分類(使いやすそうに対して):容器が使いやすそう / ひねるだけで使いやすそう

    図 コーディングイメージ
    図 コーディングイメージ
  4. 集計と可視化
    各カテゴリに分類された発言の件数を集計することで、どの意見がどれくらいの割合を占めるのかを数値で把握できます。例えば、「ポジティブな理由が100件あり、全体の約7割を占める」といった形で定量化が可能です。
  5. クロス集計
    さらに、性別や年代、地域などの属性を軸にクロス集計を行うことで、特定の属性に偏った意見や傾向を発見できます。

    図 アフターコーディング×クロス集計
    図 アフターコーディング×クロス集計

 
注意点
とても便利なアフターコーディングですが、「分類には多大な作業を伴うこと」「分類者の主観が反映されやすいこと」などの問題点もありますので、注意しましょう。

 

テキストマイニング


テキストマイニングは、大量のテキストデータから単語や文節を自動で抽出し、その出現頻度や単語間の関連性(共起関係)を統計的に分析する手法です。アフターコーディングでは見つけにくい、言葉の裏にある潜在的な意味や、単語同士の意外なつながりを可視化することに優れています。

【手順】

  1. データ準備
    発言録などのテキストデータを専用ツールに入力します。
  2. 形態素解析
    ツールがテキストを単語や文節に分解し、品詞(名詞、動詞、形容詞など)ごとに分類します。
  3. 出現頻度・共起分析
    各単語の出現頻度を算出し、どの単語とどの単語が一緒に使われやすいか(共起関係)を分析します。重要度の高い単語には、TF-IDF法などの統計処理を用いて重みづけを行うこともあります。
  4. 可視化
    分析結果は、ワードクラウド(単語の出現頻度を文字の大きさで表す)や、共起ネットワーク図(単語同士のつながりを線で示す)として視覚的に表現されます。

    図 テキストマイニング
    図 テキストマイニング

     
    上記の図では、仕事を頑張ったご褒美として、「美味しいものを食べる」「お酒を飲む」「好きなもの・欲しいものを買う」「旅行に行く」「マッサージ・エステに行く」などの行動をして、「気持ちの高揚」や「癒し」を得ることが自分への理想的なご褒美だと答えていることがわかります。

    また、バブルの色は品詞(動詞・名詞・形容詞など)により分けられており、出現頻度が多い単語ほどバブルが大きく、共起の程度が強いほど線が太くなっています。男女別、年代別、役職別などでグラフは変わります。そのため、傾向を比較してみても良いでしょう。

 
注意点
テキストマイニングは、専用ツールの使用が一般的です。ツールを使わずに手作業で行うには、高度な統計知識と膨大な工数が必要となります。

 

KJ法(親和図法)


KJ法は、散在する情報やアイデアをグループ化し、それらの関係性を図解することで、問題の本質や新たな概念を発見する質的分析手法です。グループインタビューで得られた個々の発言から、共通するテーマや構造を導き出すのに、とても効果的です。

【手順】

  1. 情報カードの作成
    発言録の中から、重要と思われる個々の発言やキーワードを抜き出し、1枚のカードに1つずつ書き出します。
  2. グループ化
    書き出したカードを読み込み、内容が類似しているもの、関連性の高いもの同士を直感的に集めてグループを作ります。この際、「なぜ一緒にしたのか」という理由を意識することが重要です。
  3. 表札の作成
    各グループに、全体の内容を最も適切に表す「表札(タイトル)」を付けます。この表札は、グループの本質的な意味合いをとらえたものにします。
  4. 図解化
    作成したグループを表札とともに配置し、さらにグループ間の関連性や因果関係を線や矢印で結びつけ、文章で説明を加えることで、全体像を視覚的に表現します。これにより、複雑な情報の中から、根本的な構造や問題の本質が浮かび上がってきます。

 
注意点
KJ法を実施するにあたり、「無理やりグループ化をしない」という姿勢が求められます。グループ化を進めていくと、「独立」した存在が合わられる場合があります。こういったときには、無理にグループに含めるようなことはせず、そのまま残しておきましょう。また、グループ化して終わりではありません。「文章で説明を加える」をおろそかにせず、「文章化」までしっかりと行いましょう

 
 

報告書作成時の注意点

グループインタビューの報告書を作成する際には、いくつか重要な注意点があります。これらを押さえることで、報告書の質を高め、実用性を高められます。

図 報告書作成時の注意点
図 報告書作成時の注意点

 

  1. 「質的な気づき」を重視する
    グループインタビューは質的調査であり、賛成者の比率など割合のみに基づいた考察では、本質的な洞察を十分に引き出せません。大切なのは、心理学的なアプローチなどによって「なぜそのように感じたのか」、「その背景にどのような価値観があるのか」といった、発言の裏にあるより深いレベルでの洞察を得ることです。
    できるだけ具体的な発言を引用し、その発言から読み取れる感情や文脈、意味合いをていねいに解釈することで、納得感のあるインサイトを提示できるようになります。
  2. 分析の一貫性を意識する
    分析の過程では、思いがけない発見が得られることもありますが、それらが調査の目的および仮説から逸脱している場合には注意が必要です。本来の目的と異なる内容をメインの報告書に盛り込んでしまうと、全体の論理構成が崩れ、読み手にとって混乱を招く恐れがあります。
    調査目的と異なる示唆については、「補足資料」として別枠で整理するなど、報告書の構成に一貫性を持たせる工夫が重要です。この際、抽出された示唆が当初の仮説とどの程度一致し、あるいは異なるのかを検証することも、報告書の信頼性を高める上で役立ちます。
  3. 共有相手に応じて報告書の形式を使い分ける
    報告書は、その読み手によって求められる情報の内容や精度が異なります。経営層には、意思決定に必要なポイントだけを簡潔にまとめた「サマリーレポート」を提供するのが効果的です。
    一方で、現場の担当者や分析チームには、発言の詳細や分析プロセスを含む「フルレポート」を共有することで、現場での具体的なアクションに活用しやすくなります。
    このように、相手の立場やニーズに応じて報告書の内容や形式を調整することで、情報の伝達精度と活用度が大きく向上します。

 
 

グループインタビューの報告書の例(イメージ)

グループインタビューの報告書とは?」の例として、少しご紹介したヨーグルトの例について、より詳しく、この章では紹介していきます。

この例では、生活者がヨーグルトに対して抱く価値観や使用シーンを深く掘り下げることを目的に、グループインタビューを実施しました。収集した発言内容を整理・分析し、その結果を以下のようなレポートとしてまとめています。

まず、調査対象者にとっての生活信条、ヨーグルトへの情緒的価値や機能的価値を整理し、ブランドの区分けを行いました。

図 ヨーグルトへの情緒的価値や機能的価値を整理
図 ヨーグルトへの情緒的価値や機能的価値を整理

 
 
さらに、整理された情報から根幹となりうる要素を抽出し、結論を整理。

図 ヨーグルトの新しいValue
図 ヨーグルトの新しいValue

 
 
機能と用途を軸に再度ポジショニングを行ない、ホワイトスペースを確認。

図 既存のヨーグルトのポジショニングと新しい価値
図 既存のヨーグルトのポジショニングと新しい価値

 
 
このマップからは、「オールマイティ型」「機能特化型」「高付加価値型(高級タイプ)」といったブランドごとの特徴や傾向が明確に浮かび上がっています。また、未充足の市場領域(ホワイトスペース)として、「料理用ヨーグルト」「美容専用ヨーグルト」などの新商品開発の可能性が示唆されています。

これらの情報から、ヨーグルトの新価値の方向性について、以下を考えることがでます。

ヨーグルトの喫食・使用シーン
主体は『朝シーン』での喫食(朝食の一品、代替)ですが、【日記式調査】から『料理への使用』『美容品への使用』ニーズが見られました。

ヨーグルトに対するベネフィット
以下への期待が見られました。
情緒面:安心・癒し・健康
機能面:おいしさ・健康・料理・美容

ヨーグルトのブランド比較(ポジショニング)
ブランドへのポジショニングは、消費者意識や特徴から、喫食面で『オールマイティ』『機能性タイプ』『高級タイプ』などへの区分がなされました。しかし、ヨーグルトそのものに対する喫食利用を主としており、『料理』や『美容(パックなど)』に対するホワイトスペースが見られます。

 
ヨーグルトの特性(乳酸菌、ビタミンやカルシウムが豊富)を活かした『料理』『食べる以外に美容』への新用途ニーズが示唆されます。

このように、報告書では発言内容の要約に加え、横棒グラフ、コレスポンデンス分析図、利用シーン別の整理表などを用いることで、定性データを視覚的に分かりやすく伝えられます。また、調査結果をもとに導き出された開発コンセプト案も記載すれば、今後の商品開発やマーケティング戦略に活用することが可能です。

 
 

まとめ

この記事では、グループインタビューの報告書について、その基本的な概要から作成の手順、さらには作成時に留意すべきポイントについて解説しました。
グループインタビューから得られた情報は、ていねいに整理・分析し、実用的かつ説得力のある報告書としてまとめ上げることで、ビジネスにおける意思決定や戦略立案に活用できる「価値あるインサイト」となります。

ぜひ、この記事で紹介した手順やポイントを参考に、具体策に反映できるグループインタビューの報告書を作成し、ビジネスに活用していきましょう。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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