公開日:2025.05.20

ホームユーステストと会場調査の適切な選び方とは?特徴や優位性など解説

  • マーケティングリサーチHowto

新商品の使用感や実際の効果を把握したいとき、選択を誤ると調査自体がムダになってしまうこともあります。特に「生活の中でのリアルな声を聞きたい」「使ってもらって初めて価値が分かる」といった製品は、ホームユーステスト(HUT:Home Use Test)の活用が重要になります。
 
本記事では、調査目的に合致したホームユーステストまたは会場調査の選び方や評価精度の上げ方、さらに深掘りをする方法について解説します。
 

  • <無料視聴> 失敗しない「ホームユーステスト」
    HUTとCLTの実施方法の違いから、それぞれの優位性や特徴、向き不向き等をセミナーにて紹介いたします。
    ※無料会員登録でご視聴可能です。
  •  
     

    調査目的に合致した手法を選ぼう

    調査対象者に商品を見たり触ったり、あるいは試飲・試食をしてもらって、調査結果を質ではなく、量的に把握したい場合は、ホームユーステスト(HUT)と会場調査(CLT:Central Location Test)と呼ばれる手法が適しています。ただ、調査の設計を行う際に、どちらの調査手法を選ぶべきか迷ってしまう方も多いと感じています。
     
    まず、ホームユーステストは対象者のご自宅に商品をお送りし、自宅で商品を試用・試飲・試食していただく調査手法のことです。一方で、会場調査は指定の会場で実際に調査対象の方にお越しいただいて調査を行う手法のことです。
     
    それぞれの調査手法の特徴から、向いているポイントと不向きなポイントがあるため、それらを理解した上で、使い分けが重要です。次の章でそれぞれの調査手法の優位性についてご紹介します。
     

    ホームユーステストの優位性

    ホームユーステストの主な優位性は以下の7つあります。

     

    予算が少ない
    会場調査では、対象者を特定の場所に集める必要があるため、会場の確保、製品の輸送、シェルフの設置などのコストが発生します。一方、ホームユーステストはそういった会場関連について用意する必要がないため、全体的な費用を抑えることが可能です。
     

    普段の生活の中で試用してもらいたい
    また、生活に密着した製品のテストにおいては、実際の使用環境で得られる反応が非常に重要です。調味料や化粧品など、日常の中で試用されることで、その人らしいリアルな声を引き出すことができます。生活の中に製品を取り入れてもらうことで、より深いインサイトの獲得につながります。
     

    試用状況の厳密管理は必要ない
    既に販売されている製品について調査をしたい場合、既に販売されているので、厳密な管理が不要なケースがあります。こういったケースでは、ホームユーステストを活用することが可能です。逆を言えば、新製品や新サービスにおける調査で厳密な管理が必要な場合は、会場調査の方がより厳重に管理ができるため、ホームユーステストよりも会場調査の方がおすすめとなります。
     

    連続試用させ、効果を測りたい
    継続的な試用によって効果が実感できる商品に適しています。たとえば、シャンプーのように一度の試用では分かりづらい製品の場合、一定期間使ってもらうことで実際の使用感や満足度を把握することが可能になります。日々の試用を通じて得られるデータは、一時的な体験よりも信頼性の高い情報として活用できます。
     

    サンプルサイズを大きくしたい
    ホームユーステストは、テストをしたい製品を配送することで調査が可能となるため、全国規模でサンプルを集めたい場合や、そもそものサンプルサイズを大きくしたい場合、会場調査より有効です。
     

    割付を詳細に設定したい
    対象者条件を細かく設定する必要がある場合にも柔軟に対応できるのも優位性のひとつです。広範囲から対象者を募れるため、特定のライフスタイルや購買傾向を持つ人へのアプローチも可能になります。
     

    会場調査に参加ができない対象者に実施できる
    高齢者や介護を受けている方、障がいのある方など、移動が困難な対象者にもアプローチできるのがホームユーステストのメリットです。たとえば介護用のおむつなどは、実際の利用環境での評価が重要となるため、ホームユーステストが適しています。
     

     

    会場調査の優位性

    続いて、会場調査の優位性について、主な3つを紹介します。

     

    発売前商品など、高い機密性に対応
    会場調査の特徴のひとつに、情報管理のしやすさがあります。まだ市場に出ていない新商品や新パッケージなど、外部への持ち出しを避けたい機密性の高い製品も、調査員の目の届く範囲で取り扱えるため、情報漏洩のリスクを抑えることが可能です。
     

    全ての対象者に同一条件で試飲・試食・試用が可能
    また、調査環境を統一できる点も大きなメリットです。ホームユーステストでは、使用する機器や室温などの生活環境が人によって異なり、それが回答のばらつきにつながることもあります。たとえばチルド食品の試食調査を行う際、パッケージには「500Wで2分加熱してください」といった調理指示が記載されているとします。しかし、対象者が実際にそれを自宅で再現するとなると、必ずしも同一条件にはなりません。電子レンジの性能差、室温、本人の調理時間の誤差により、食品の食感や味の評価に影響を及ぼす可能性があります。
    一方で、会場調査は調理時間や加熱温度、提供量などをコントロールすることができます。そのため、得られるデータもホームユーステストと比べ、精度を高めることが可能です。
     

    テスト品の破損や紛失も考慮した、厳重管理が可能
    製品の取扱いや管理が徹底できる点も会場調査ならではの強みです。ホームユーステストの場合、対象者の自宅へ製品を個別に配送する必要があることから予期せぬトラブルが発生するケースも少なくありません。たとえば、配送時の破損や誤配送といった人によるミスが考えられます。こういったミスは、事前に丁寧な案内をしても完全には防ぎきれません。ミスが100%生じないとは言い切れないため、会場調査で調査員の方が製品の配布から、試用、回収までを一貫して行い、気を付けて見ていくことで。ミスを防ぐ可能性が上げることができるという点で会場調査は、非常に有効になります。
     

     

    ホームユーステストの3つの特徴

    それぞれの調査の優位性を紹介しましたが、ホームユーステストの特徴にフォーカスを置いて以下3つについて説明します。

    図 ホームユーステストの特徴
    図 ホームユーステストの特徴

     
    普段の使用状態に即した実態調査が可能
    ホームユーステストの最大の強みは、日常の使用環境で実態に即した評価ができることです。調査の目的や課題によって、ホームユーステストと会場調査のどちらが適しているかは異なります。もし選定を誤ると、対象者の使用環境によるバイアスがかかり、正確な評価結果を得られなくなる可能性があります。たとえば、「普段の生活シーンにおける使用感」や「実際の使用頻度」などを知りたい場合は、ホームユーステストが適しています。一方で、「すべての対象者に同一条件で評価してもらいたい」といった場合は、会場調査の方が効果的です。調査目的に応じて、どんなシーンで評価してほしいのかを事前に明確にしておくことが重要です。
     
    ここで、一つ「調理を含む調味料の評価」というところで事例を挙げます。この調査をホームユーステストで行う場合、対象者が自宅のキッチンで、自身の調理スタイルや食習慣に沿って自由に調味料を試用することができます。その結果、「どのような料理に合わせやすいか」「使用量の目安はどのくらいか」といった、より生活に根差したフィードバックが得られます。続いて、会場調査では、あらかじめ定められたレシピや調理工程のもとで評価が行われるため、同じ環境で対象者が評価できます。
     
    つまり、調査目的が「実際の使用環境におけるリアルな使い勝手を知りたい」のか、「全対象者を同一条件で比較評価したい」のかによって、最適な手法は異なります。目的や調査課題と手法が一致していなければ、収集されたデータに調査対象者のバイアスや再現性の乏しさが入り込み、本来得たかった正しい評価にはつながりません。
     
     
    経過観察が必要な商品も調査が可能
    続いて、経過観察が必要な商品に対応可能な点です。ホームユーステストでは、長期間にわたる経過観察が可能です。対象者に自宅で継続的に商品を試用してもらうことで、初回使用時の印象だけでなく、試用を続ける中での評価の変化や使用前と使用後の印象の違いといった変化も把握できます。特に、化粧品やシャンプーなどの日用品や消耗品は、継続的に試用してこそ実感できる効果や満足度があります。そのため、こうした商品にはホームユーステストが適しています。
    一方で、袋の開けやすさなど、その場での使い勝手(ユーザビリティ)やパッケージデザインの印象評価などは、継続的な試用の必要がないため、即時の反応が得られる会場調査が向いています。
     
     
    複数の家族にもテストできる
    最後に、対象者が同居する家族の方にもテストしていただけるという特徴がホームユーステストにあります。
    たとえば、「ベビー用品の評価」をする調査の場合、生後間もないお子様や複数のお子様を連れて会場に来ることが困難です。そのため、会場調査でどうしても行いたい場合、当日キャンセルなどのリスクが伴います。一方で、ホームユーステストでは、自宅で調査を実施できるため、生後間もないお子様への調査も複数のお子様への調査も可能です。その他にも介護用品やペット用品などもホームユーステストとの親和性が高いです。
     
     

    評価精度の質を上げるためには

    評価精度を上げるには、評価手法と調査設問という段階それぞれで、おさえたいポイントがあります。
    ここでは、その2つの段階でのポイントについて説明していきます。
     

    評価手法について

    まず評価手法についてです。製品を評価するといっても、「1つの製品の評価なのか、複数の製品の評価なのか」、複数の商品であれば「製品のテスト順をどうするのか、製品の銘柄やパッケージは提示した状態で実施するのか」など、製品の特徴や調査コンテンツによって評価手法は分かれてきます。もし評価手法を間違えてしまうと取得できるデータにバイアスが生じてしまうので注意しなくてはなりません。
    次に評価手法を6つ紹介します。

    表 評価の手法
    評価手法 説明
    ピュア・モナディック法 対象者に1人1製品を評価してもらう手法
    ビールのように1杯目の評価が高く出る傾向にある製品の場合に用いられます。
    製品比較評価法 対象者に2製品をテスト試用してもらい、両者の比較評価をする手法
    製品間での差が出やすいですが、過敏に出すぎる場合もあるので、製品により使い分けが必要です。
    ※「一対比較評価法」とも呼ぶ
    プロト・モナディック法 対象者に2製品をテストしてもらい、1製品目を絶対評価した後に2製品の比較評価を行う手法
    2製品目の絶対評価は行いません。
    シークエンシャル・
    モナディック法
    対象者が1製品目を絶対評価した後に2製品目の絶対評価を行い、さらに2製品の比較評価を行う方法
    2製品目の絶対評価には比較評価の要素が強く表れやすいので、製品により使い分けが必要です。
    ※「シークエンシャル」とは「連続する」という意味で、モナディック評価が続くという意味です。
    ブラインドテスト 銘柄名を隠して行うテスト
    製品パッケージには無印の白箱やテスト用のラベルなどが用いられます。消費者が特定銘柄に対して持っている評価やイメージ、先入観などを取り除き、製品の単体評価を得ることができます。
    ブランデッドテスト ブラインドテストとは逆に、どの銘柄であるかを明らかにした上で実施するテスト
    市販される予定の製品のパッケージを試用して行います。消費者が特定銘柄に対して持っている評価やイメージ、先入観などが評価結果に反映される傾向があります。

     

    調査設問について

    続いて、調査設問についてです。
    製品テストの調査設問では、「全体評価」「属性別評価」「購入意向」を聴取することが多いのですが、目的に応じて注意しなければならないポイントが異なります。また、製品テストの調査設問は、「新製品」「既存製品」「競合製品」によって製品テストの目的と押さえたいポイントが異なり、それをまとめた表が下表となります。

    表 製品種別ごとの目的と押さえたいポイント
    製品種別 項目 内容
    新製品 目的 製品テストの製品が新製品の場合の目的は、「品質や機能の評価、市場の受容性」になります。
    ポイント ・どのような点がターゲットに受け入れられるポイントか?
    ・商品の特長やコンセプトはきちんと伝わっているか?
    ・改良すべきポイントはどこか?
    ・訴求ポイントはどこなのか?
    既存製品 目的 既存製品の目的は、「改良点の探索、改良最適案の選択」になります。
    ポイント ・リニューアル前後の違いがどのように評価されるか?
    ・商品の特長やコンセプトがきちんと伝わっているか?
    ・改良すべきポイントはどこか?
    競合製品 目的 競合製品の目的は、「競合商品の実力チェック、製品ごとのポジショニングの把握」になります。
    ポイント ・競合商品を選ぶ理由は何か?
    ・商品の特長やコンセプトがきちんと伝わっているか?
    ・改良すべきポイントはどこか?
    ・絶対評価→相対評価の流れ?
    ・どの要素がどういった評価を受けているか把握できているか?

     
     

    ホームユーステストの成否のカギを握る3つの要素

    ホームユーステストの成否のカギを握る要素が下図のとおり、「案内書と指示書」、「梱包と配送」、「リスクマネジメント」の3つがあります。

    図 ホームユーステストの成否のカギを握る3つの要素
    図 ホームユーステストの成否のカギを握る3つの要素

     

    案内書と指示書

    案内書と指示書は、データに直結することから調査の成否に大きく関わってきます。たとえば、製品が無事にご自宅に届いたが、対象者が誤った試用の仕方をしてしまった場合、正しいデータを取れなくなってしまう現象が生じます。さらにこのような対象者の方が複数出てしまうような場合になると本来必要としていたサンプルサイズのデータが取れなくなってしまう恐れがあります。そのため、製品と一緒に同梱する案内書と指示書によってこのようなケースを避ける必要があります。
     

    案内書


    さて、この案内書ですが、テスト品や封入物の個数や全体のスケジュール、調査概要をお知らせする文章になります。工夫のポイントが以下2つあります。

    • 封入物に不足がないか確認してもらう
    • 全体のスケジュールや調査概要の認識について確認しもらう

     
    まず、輸送物が届いた際に、対象者に真っ先に実施していただきたいことは、中身の確認です。調査期間の途中でテスト品などの不足が発覚してしまった場合、後からリカバリーができなくなる可能性があるため、必要なものが不足することなく、全て届いているのかをチェックしてもらわなければなりません。そのために案内書の冒頭に大きく目立つような形で、「最初にこちらをお読みください」といったような文言を記載し、封入物が足りているかのチェックを促すようにしましょう。
    また、「全体スケジュールや調査概要に認識の違いがないかどうか」も事前に確認してもらうのを忘れないようにしましょう。

     

    指示書


    続いて、指示書は、テスト品の使用方法や管理方法、注意点をまとめた文章です。もし指示書の内容に間違いがあったり、誤解を与えるような内容があったりすると、製品の使用方法や管理方法が誤ってしまい、その誤った状況でそのまま調査結果のデータに反映されてしまいます。そこで、ここでは対象者に誤解を与えないための工夫の仕方を以下に紹介します。

    • 指示書の視認性を意識
    • 客観的な視点で見直す
    • 専門用語、地域性のある用語を使用しない
    • 使用方法、管理方法は簡単なルールに
    • 対象者への配慮=データの質の向上

     
    まず、指示書自体の見栄えが見やすい構成になっているかが、重要です。対象者がパッと見てゴチャゴチャした印象を与えてしまっては、大事な部分を見逃してしまう可能性があります。そのためには、客観的な視点を持って指示書を見直さなければなりません。
    たとえば、特定保健用食品の略語である「トクホ」という言葉があります。この言葉は、多くの方に認知されている言葉にはなりますが、対象者全員の認識ははたして同じと言えるでしょうか? こういった疑念が生じる場合、対象者全員に同じ理解をしてもらうため、専門用語やその疑いのある語句は極力使用しないことがおすすめとなります。もし使用する場合は、必ず簡単な説明文も入れるようにしましょう。
    これと類似する内容として、「地域による認識の違いがある言葉」もあるので、そういった言葉を使用する場合も注意が必要です。
    たとえば、「ものもらい」という言葉は、関西では「めばちこ」として知られており、「ものもらい」を知らない人もいます。
    専門用語も同様に、認識に相違が出ないように注意しましょう。
     
    また、製品の使用方法や管理方法が複雑になってしまうのも、対象者のミスを誘発させる原因になってしまうため、極力簡単なルールになるように工夫をしましょう。どうしても複雑なルールが必要になる場合は、その場で対象者の反応を見ながら説明できる会場調査に手法を切り替えることも検討する必要があります。

     

    梱包と配送

    そして、梱包配送についてです。
    通常の荷物の配送と同様に、製品のサイズに見合った入れ物を用意して、必要に応じて緩衝材や液漏れ、温度管理の対策をしながら、対象者へ発送します。
    ここでは、これらとは別にホームユーステストならではの梱包と配送時に気になるポイントと、その対策についてご紹介します。
     

    梱包


    まず、梱包についてです。
    梱包時に気になるのは、「製品がどのような状態で梱包されているか」です。
    丁寧に詰められているのか、どういう順番で詰められているのか、不足しているものはないか、入れ物の大きさは適切なのかなど、チェックをする必要があります。
    万が一、破損などの不具合が起こった場合を考え、封を閉じる前の写真を撮影することもおすすめです。

     

    配送


    次に、配送についてです。
    配送時に気になるのは、「郵送物がきちんと対象者に届いたかどうか」です。
    調査期間中に製品が届いていなければ、そもそも調査自体に参加できないことになるので、無理のないスケジューリングでテスト期間まで期日にゆとりを持たせておくことが望ましいです。その際、対象者へは事前に「○月○日までに郵送物が届かなかった場合は、必ずご連絡ください」などの案内を出しておき、配送ミスへの対策もしておきましょう。
    また、しっかり対象者に受け取ってもらうために、ポスト投函は避けることが望ましいです。もし、やむを得ずポスト投函にする場合は、追跡ができる方法で配送をするようにしましょう。
    上市前の製品など、機密性の高いものは、小さいものでも直接の受け渡しが必要な方法を選択した方が良いです。

     

    リスクマネジメント

    最後の要素「リスクマネジメント」です。
    ホームユーステストは、製品を対象者の自宅に送付し、試用してもらうという特性上、製品管理を対象者に一存せざるを得ないため、常に機密性に関する情報漏洩のリスクが付きまといます。
    上市前の製品の情報が漏れてしまうことをどうしても避けたいという場合には、会場内で情報管理や製品管理が可能な会場調査を検討する必要があります。
     
    ここでは、情報漏洩に関するリスクと、リスクを最小限におさえるための対策をご紹介します。
     

    機密性に関する情報漏洩のリスク


    まず、機密性に関する情報漏洩のリスクについて以下3つの例を紹介します。

    • 対象者以外を含めたSNS上などでの口外
    • 第三者への譲渡
    • 調査主体元の情報漏洩

     
    「対象者または、対象者の同居家族が、上市前のテスト製品の画像や情報をSNSで公開してしまう」「試用後のテスト品の余りや空き容器を、回収および破棄せずに第三者へ譲ってしまう」「調査主体側の情報や調査概要の詳細が流出してしまう」といった、リスクがあります。
     
    調査実施前の対象者を募集する段階で、調査内容に関する守秘義務について、通知をしているはずなので、情報漏洩の可能性としては低い状態ではあります。
    ですが、ホームユーステストという特性上、「もし情報漏洩したら・・・」といったリスクはなくならないので、リスクを軽減するために、対象者に対してWeb上や紙媒体で、改めて守秘義務に関する同意を求めることもあります。もし紙媒体の場合、同意書を送付することになります。送付して、郵送にて返信がなければ調査に参加できないというような措置をとることができます。この場合、対象者が確定するまでの期日を余分に必要とするため、スケジューリングには注意が必要です。

     

    製品の状態管理の遵守


    また、製品管理という意味では、前述もしましたが、温度管理などの製品の状態管理の遵守についても、対象者に一存せざるを得ないので、正しい管理方法が取られないままテストをされる恐れがあります。
    調査結果データに影響するのも当然恐ろしいですが、対象者のいい加減な管理により、安全性が損なわれた製品をテストすることになった場合、身体に影響を及ぼしかねないため、特に複雑な製品管理ルールを求める際には、製品の状態管理の遵守についても対策が必要です。たとえば、製品の管理状態を写真に撮ってもらい、チェックする等の措置が必要となります。

     
     
    以上のように、ホームユーステストは、調査の特性上、リスクマネジメントが会場調査より求められます。製品特性と調査コンセプトに応じて、最適な対策を行いましょう。

     
     

    ホームユーステストの調査結果をさらに深掘りしたいあなたへ

    ホームユーステストは、日記調査やインタビュー調査など、他調査との相性が非常に良いため併用されるケースが多いです。
     

    日記調査
    日記調査は紙媒体や専用システムを通じて、対象者に一定期間内の行動や感想を日々記録してもらう調査手法です。これにより、製品の使用実態や、使用タイミング、接触状況などを具体的に把握できます。
     
    日記調査×ホームユーステスト
    通常、ホームユーステストはテスト期間終了後にWebアンケートを配信し、期間中の試用に関する意見などを聴取するのですが、調査期間が長くなればなるほど、過去の試用に関する記憶や反応は薄れてしまいがちです。メモなどで記録をさせる方法もありますが、メモの紛失やメモからアンケートへの写し間違いなどの可能性もあるため、システムで管理できる日記調査を併用した方が、1回1回の試用に関する意見を正確に反映できます
    また、アンケートの代わりとして使うのではなく、写真や動画の回収も可能ですし、日記状況の進捗をリアルタイムで確認できるため、調査期間中の早い段階で気づきを得ることができるのも、日記調査を併用するメリットです。

     

    インタビュー調査
    インタビュー調査は、その名のとおり調査対象者にインタビューをする調査手法です。インタビューにはグループインタビューとデプスインタビューといった手法が存在し、デプスインタビューの場合、商品やサービス等の選択・購買理由などをより深く掘り下げて探ることができ、さらなる顧客理解へ繋がる可能性を高めることができます。
     
    インタビュー調査×ホームユーステスト
    ホームユーステストでは、定量的に説得性のあるデータを比較的低コストで得られますが、さらにインタビュー調査をすることで、消費者のインサイトや潜在的なニーズなど、数値では可視化できない定性的な情報を得深掘りすることができます。
    たとえば、インタビュー調査で、テスト品に感じるポイントなどをモデレーター(≒インタビュアー)がヒアリングし、仮説を基にラダリングすることで、調査対象者の価値観を深掘りしていくことが可能なため、より繊細なユーザー理解に役立ちます。
    ※ ここでの「ラダリング」とは、「なぜ?」というのを重ねて質問をしていき、深掘りしていくことで、調査対象者の持つ価値観の構造を明らかにする手法を指します

     
     
    日記調査やインタビュー調査共に、ホームユーステストとの併用によって、より深い消費者理解が可能となります。そのため、併用することはとてもおすすめとなりますが、「どの調査を組み合わせるべきか」といった視点に注意する必要があります。調査の目的、たとえば「どんな示唆を得たいのか」「どこまで深掘りをしたいのか」などによって、組わせるべき調査手法が異なります。ぜひ目的に応じた最適な手法を選び、より実効性の高い調査手法を検討してみましょう。
     

    日記調査

    日記調査のサービスの詳細はこちら

    アスマークでは、日記調査のサービスを提供しております。この調査は、一定期間継続して、対象者にWEB上の日記システムを利用して、生活行動や利用シーンの写真、商品利用の感想などを記録してもらう調査手法です。一定期間継続するので、期間中の行動の変化、気持ちの変化を把握することができます。

    > 詳しく見る

     

    デプスインタビュー(IDI)

    デプスインタビュー(IDI)のサービスの詳細はこちら

    アスマークでは、デプスインタビュー(IDI)サービスを提供しております。対象者とインタビュアーによる1対1の面談式で実施する調査方法で、商品やサービス等の選択・購買理由などをより深く掘り下げて探ることができます。

    > 詳しく見る

     

     
     

    まとめ

    ホームユーステスト(HUT)は、製品を実際の生活環境で試用してもらうことで、生活者のリアルな声や使用実態を捉えることができる調査手法です。特に、継続的な試用による効果の実感や、生活導線における使い勝手、家族単位での評価が求められる製品においては、その効果が最大限に発揮されます。
     
    一方で、機密性の高い製品や使用条件を統一して比較が必要な評価に関しては、会場調査(CLT)の方が適しているケースがあります。目的に応じて調査手法を正しく選ぶことが、失敗のない調査設計の第一歩です。
    また、日記調査やインタビュー調査といった定性調査手法との併用によって、定量では拾いきれない感情などを深掘りできるため、調査設計時に併用についてよく検討する必要があります。
     
    この記事をもとに、ホームユーステストの質向上に向け、活かしていきましょう。
     
     
    ホームユーステストについてのご相談はこちら>
     

    執筆者
    アスマーク編集局
    株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
    アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
    監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

    アスマークの編集ポリシー
     

    失敗しない「ホームユーステスト」

    失敗しない「ホームユーステスト」

    評価手段の一つが「ホームユーステスト(以下HUT)」です。HUTとは、対象者の自宅に商品を送り、自宅にて試用、試飲・試食してもらう調査を指します。実際に対象者に、商品を見たり触れたり、あるいは試飲・試食をしてもらい、更に調査結果を量的に把握するには、主にこれらHUTと会場調査(以下CLT)の2つの調査手法が代表的です。

    そこで今回は、HUTとCLTの実施方法の違いから、それぞれの優位性や特徴、向き不向き等をセミナーにて紹介いたします。

    下記に当てはまる方にお薦めの動画です。
    ● 試作・テスト品評価の予算が限られている
    ● テスト品を一定期間試用してもらいたい
    ● サンプルサイズを大きく調査したい

    ※無料会員登録でご視聴可能です。

    > 詳しく見る

     

    ホームユーステスト(HUT)とは?メリットとデメリット、注意点を解説

    ホームユーステスト(HUT)とは?メリットとデメリット、注意点を解説

    近年、商品開発の競争が激化する中で、消費者の本音を知り、本当に求められる商品を開発することがますます重要になっています。そこで注目されているのが、ホームユーステスト(HUT)です。ホームユーステストは消費者が普段の生活の中で自然な形で商品を使用することで、よりリアルな意見や行動を把握できる調査手法です。

    この記事では、ホームユーステストの概要からメリット・デメリットや注意点などについて、詳しく解説します。

    詳しく見る

     

    会場調査(CLT)とは|定義・調査の流れ・メリット・成功のポイントを紹介

    会場調査(CLT)とは|定義・調査の流れ・メリット・成功のポイントを紹介

    現代マーケティングにおいて商品や広告に対する高い評価を得るには、事前に消費者の反応を調査して、そのフィードバックを活かすことが効果的です。そのための有効な調査手法として用いられているのが、「会場調査(CLT)」です。

    この記事では、会場調査の定義や調査の流れ、メリット、成功のポイントについて解説します。

    > 詳しく見る

     

    失敗しないホームユーステスト6つのポイント

    失敗しないホームユーステスト6つのポイント

    これからホームユーステストを検討する方向けに、注意点や失敗しないためのポイントをレポートにまとめました。

    下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
    ・今後自社製品の試用テストを検討している
    ・試食・試飲テストを検討している
    ・ホームユーステストについて詳しく知りたい

    > 詳しく見る

     

    デプスインタビューの定義~分析:効果的な方法で本音とインサイトを引き出す

    デプスインタビューの定義~分析:効果的な方法で本音とインサイトを引き出す

    「顧客や利用者の本音」や「深層に潜むインサイト」を探るための強力な手法として注目されているのが、デプスインタビューです。この手法は、従来のアンケート調査やグループインタビューとは異なり、対象者の心理や行動の背後にある真の意図、価値観を見極めることを目的としています。

    この記事では、デプスインタビューの概要から、効果的に活用するための方法について解説します。

    > 詳しく見る

     

    定性編・分析の前提に立ち戻る~インタビュー、見る側の注意点~

    定性編・分析の前提に立ち戻る~インタビュー、見る側の注意点~

    「インタビューをどのように理解するか」という見方や聞き方のスキルについては属人傾向にあり、発言の受け取り方やメモの取り方によっては同じインタビューでも得られる気づきが大きく異なります。

    本資料では、定性調査のインタビューにおいて、必要となるスキルの中でも、特に見逃されやすい「インタビューの見方・聞き方」について解説します。

    下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
    ● インタビューに参加(見学)して失敗した経験がある
    ● インタビュー調査のまとめ方やレポートが知りたい
    ● これからインタビュー調査を設計する予定がある

    > 詳しく見る