公開日:2025.09.16

調査における仮説の立て方とは?例題や仮説思考、検証の流れなど解説

  • マーケティングリサーチHowto

ビジネスの現場では、常に「なぜ売上が落ちたのか」「なぜこの商品は選ばれなかったのか」といった問いが生まれます。その問いに対して最短距離で答えを導くために欠かせないのが、「仮説を立てる」という行為です。
「仮説」という言葉を聞くと、難解な分析や専門的な知識が必要な印象を持つかもしれませんが、実は日常生活の中でも私たちは自然と仮説を立てています。たとえば、コンビニでスーツ姿の人が傘を買っているのを見て、「今日は午後から雨が降るのかもしれない」と予測するのも仮説の一つです。
では、マーケティングリサーチにおいての「仮説」はどうでしょうか。単なる予測ではなく、「調査すべき問い(=論点)」に対して、どのような仮説を立てるか、そしてそれをどう検証するかが重要になってきます。仮説は調査の質を左右する基盤であり、正しく設計された仮説があってこそ、調査結果は実践的な意思決定に結びつきます。

本記事では、調査における仮説の立て方や論点との関係、検証の流れ、例題を絡めた仮説の立て方について解説していきます。

 
 

仮説とは

仮説とは、一般的に「ある現状を合理的に説明するために、仮で立てる説」のことを言います。日常生活でも仮説が思い浮かぶことがあるでしょう。

例えば、道を歩いていて、走っている人を見かけたら「健康のために走っているのかな?」「ダイエットのために走っているのかな?」と、恰好や走っている姿などから想像することができるかと思います。これが「仮説」です。そして、実際に走っている人に声をかけて、「なぜ走っているのですか?」と聞き、「健康のため」と回答をもらえた場合、前者の仮説が合っていて、後者の「ダイエットのため」という仮説が間違っていたということがわかります。

 

調査における仮説とは

それでは、「調査における仮説とは」という部分に切り込んでいきます。
まず、調査を行うということは、「知りたいこと」が背景にあります。たとえば、「売上の低迷の理由が知りたい」などです。そういった「知りたいこと」、つまり目的があり、今把握できている事実と自身の知識をもとに、先を読んで「きっとこうだろう」という仮の説(答え)を用意します。
言い換えますと、調査における仮説とは「先を見通した自分なりの『仮の説(答え)』」のことで、後述する仮説思考でも似たような解説をします。

そして、仮説を立てて終わりではありません。「知りたいこと」を明らかにするために、その仮説を検証し、結論を出します。
 
 

調査における論点とは

ここで、調査における仮説を語る上で重要となる「論点」についても解説します。
論点とは、議論をしている中で中心となる問題点のことを一般的に言いますが、調査における論点とは「マーケティング課題(調査で知りたいこと)における問い」のことを指します。

例えば、マーケティング課題、つまり知りたいことが前述した「売上の低迷」である場合、論点で挙げられるのは以下になります。
・外食頻度の増加によって既存顧客が離れてしまったのではないか?
・商品満足度が低くリピート購入につながらないのではないか?
etc.

 
そして、仮説と論点の関係性は、「先を見通した自分なりの『仮の説(答え)』」です。つまり、「外食頻度の増加によって既存顧客が離れてしまったのではないか?」という論点がある場合、考え得る仮説として「外食がコロナ禍より増えたので既存顧客が自社商品を購入しなくなった」といったものが挙げられます。
こういった、仮説と論点の関係があることから、「仮説とは論点があって初めて作ることができる」といえます。

ここまでの仮説と論点について、別の例をイメージ化した下図をご覧いただきます。

図 仮説と論点のイメージ例
図 仮説と論点のイメージ例

 
例えば、論点として「既存顧客の購入状況に変化はあるのか?」や「新規顧客の獲得における課題は何か?」というのが挙げられたとします。この論点、つまり問いに対して仮説を考えます。前者の方であれば、「競合他社から新商品が投入されたことによってメインターゲットである20代女性客が離れてしまった」や「競合商品の方がコスパがよく、自社製品よりも魅力的で競争力が高くなってしまった」などを挙げることができます。
そして、「競合他社から新商品が投入されたことによってメインターゲットである20代女性客が離れてしまった」ということを調査し、その結果、「そうでもなかった」のか、「やっぱりそうだった」ということを答え合わせしていきます。
 
 

論点と仮説、検証結果を考えるために便利な思考法

論点と仮説、検証結果を考えるために便利な思考法をそれぞれ紹介します。

論点を考えるための思考法:フレームワーク思考
論点を考えるための思考法として「フレームワーク思考」がおすすめです。
フレームワークは、英語で「枠組み」という意味で、ビジネスにおいては「ビジネスで物事を考える上での便利な思考の枠組み」というニュアンスがライトです。そして、「フレームワーク思考」というのは、そういった思考の枠組みを利用して、複雑な問題を整理して、効率的に案を考え出すための思考法です。
有名なフレームワークは下表です。

表 有名なフレームワーク
フレームワーク名 説明
STP分析 STP分析とは、「Segmentation(セグメンテーション)」、「Targeting(ターゲティング)」、「Positioning(ポジショニング)」の3つのワードの頭文字からきており、マーケティングにおける代表的なフレームワークのひとつです。「自社が誰に対してどのような価値を提供するのか」という問いに対して活用されるもので、マーケットの全貌を把握し(S:セグメンテーション)、どの市場を狙うのかを定め(T:ターゲティング)、競合に対してどの立ち位置で戦うのかを決める(P:ポジショニング)、といった流れで進めていきます。
4P分析 4P分析とは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの要素から市場分析するフレームワークです。これらの要素を最適化することで、顧客に高い価値を提供でき、市場での競争優位性を確立できます。
3C分析 3C分析は、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの要素を分析することで、市場における自社の立ち位置や競争優位性を明確にするフレームワークです。それぞれの要素を深く掘り下げることで、市場の全体像を把握し、効果的な戦略立案につながります。

 
こういったフレームワークを活用して、事象に対する全体像をしっかり捉え、ギャップを見ていき、課題に対する問い(論点)を用意しやすくなります。

 

仮説を考えるための思考法:仮説思考
仮説思考は、問い(論点)に対して、自分なりの仮の答えを設定し、データを収集、検証をしていく思考法です。そのため、「仮の答え(仮説)」を先に設定した上で、「逆算」をして「答え」に必要な根拠を探しにいくため、逆算思考と考えていただくと、わかりやすいかもしれません。
例えば、「昼の時間帯のテレビドラマの視聴率はなぜ低いのか?」という問いに対して、「コンテンツが面白くないから」や「その時間は忙しい人が多いから」など考え、これらを仮説として、データを収集し、「合っているか/合っていないか」の検証をしていきます。

検証結果を考えるための思考法:抽象化思考
抽象化思考とは、「複雑なもの」や「大きなまとまり」に対してざっくりと考える思考法です。
この思考法が活躍するのは、調査データから仮説が「合っているか/合っていないか」の最終的な結論を考えるときです。
たとえば、データの結果として、下表が得られたとき、一個ずつ解釈をするのではなく、ざっくり「ヘビーユーザーが商品について飽きてしまった」と考えるのが抽象化思考です。

ユーザー区分 購入回数 満足度
ライトユーザー あまり変わらない 変わっていない
ミドルユーザー 変わらない 変わっていない
ヘビーユーザー 減った 下がった

 
そのため、最終的な結論を考えるときに、抽象化思考を活用すると、理解しやすい説明ができるようになります。一方で、「具体化」というのも「抽象化」と同じくらい重要で、バランスを意識する必要があるので、注意が必要です。
 
 

仮説を立てるまでの流れ

ここまで説明してきたように、仮説は結論を想定して考えるアプローチであるため、どのような流れで「問い(=論点)」を立てるかが重要です。
そのため、以下の流れで「問い(=論点)」を立てるようにしましょう。

図 仮説を立てるまでの流れ
図 仮説を立てるまでの流れ
  1. フレームワークや経営数字から全体図を整理
    まず前述で説明したようなSTP分析や4P分析、3C分析といったフレームワークを活用したり、売上や利益、ユーザー数などといった経営数字を把握/理解したりして、全体図を整理していきます。
    こうすることで、現状を把握します。
  2.  

  3. 現状と理想のギャップ
    全体図を整理できたら、次は現状と理想とのギャップを見つけましょう。この理想というのは、目標と言い換えることもできます。
    例えば、現状ある商品の認知率が30%のとき、目標の認知率が50%だとします。すると、その差である20%が現状と理想とのギャップになります。これが、現状ある商品の売上が2千万円/月で、目標が2.3千万円/月のとき、ギャップは300万円になります。
    こういった、ギャップを把握する必要があります。
  4.  

  5. 何を解決していくことが最も良いか?
    ギャップを把握したら、課題を考えていきます。
    考え方は、「このギャップを埋めるためには、何を解決すれば最も良いか?」です。
    例えば、先ほどお話した認知率のギャップ20%のとき、課題として「認知率が下がっている」や「認知率を上げる施策を行っていない」「認知率の上げる施策を行っているが、あまり上がっていない」など現状の把握をした内容からいくつか考えることができます。
  6.  

  7. 課題を論点で分割する
    用意した課題は、論点で分割をしてきます。
    「困難は分割せよ」という言葉があるように、課題に対して、いくつかの論点で分割していくことにより、具体的な解決の糸口を見つけ出しやすくします。

    図 課題を論点で分割するイメージ
    図 課題を論点で分割するイメージ

     
    そして、調査における「よい論点」とは、その問いに答えれば未来を変えていける質問のことです。よい論点を設定するには、以下ポイントを押さえましょう。

    • 解決できるものか?
    • 解決時の影響範囲は大きいか?
    • 本質的な内容であるのか?
  8.  

  9. 検証を見越した仮説を立てる
    論点を立てたら、いよいよ仮説を立てるフェーズです。
    仮説を立てるうえで、それをどのように検証していくかまで考えておく必要があります。そのため、以下3点について注意しましょう。

    • どのように検証をしていくのか?
    • その検証方法は技術的に可能か?
    • 他の仮説も検証可能か?

     
    仮説検証時に用意した仮説が否定されたときには、仮説が間違いだったのか、そもそも論点が間違いだったのかを考えることで、新たにアプローチするべきポイントを見つけ出していきます。

    例えば、以下のような課題と論点、仮説を立てたとします。
    課題:売上の低迷
    論点:自社商品の味があまり良くないのではないか?
    仮説:競合商品の味のほうが美味しく、競合商品へお客様が行ってしまっているのではないか?

    この仮説を検証するために、「自社商品と競合商品の味への満足度に関する調査」を行い、競合商品との比較も行ったところ、競合商品との満足度に大きな差が見られなかった場合、設定した仮説は否定され、「あれ味じゃないのか」で結論が終わってしまい、他はわかりません。
    これではいけませんよね。課題解決に至りません。この検証方法での失敗は、「他の仮説も検証可能か?」という視点が漏れていることにあります。売上減少への影響として、味ではなく、価格かもしれませんし、コスパかもしれません。こういった複数の仮説を検証できるように、例えば「総合満足度」「味」「価格」「コスパ」…といった項目それぞれ伺うアンケート調査を実施することで、どういったところに強みがあり、どういったところに弱みがあるのか、明らかにすることができ、それぞれの仮説を検証することができます。
    もし、「価格」のみ競合他社の方がすごくポジティブに働いていて、自社商品はネガティブに働いている場合、「価格は非常に変えがたいところではあるが、何かしら改善をしないといけないポイント」として把握することができます。

 

 

例題で考える仮説の立て方

さて、ここまで説明してきた仮説を立てるまでの流れをもとに、以下の例題についてどのように仮説をたてればよいのかを考えていきましょう。

例題内容


アスマーク食品という会社が新商品Aを上市してからおよそ3年が経過した。
コロナ禍で外食頻度が減ったことにより新商品Aは自宅で食べるものとして飛ぶように売れた。
しかし、上市直後と比べると売上が落ちてきている。
また、市場は伸びていることもあり、カテゴリの人気が落ちているわけではないことは明らかだ。
そこで、新商品Aの売上低迷の要因を突き止め、今後の改善策について検討したい。

 

  1. フレームワークや経営数字から全体図を整理
    まずは、フレームワークや経営数字から全体図を整理するのでしたね。
    様々数字を見ていく必要がありますが、例題では以下のポイントを押さえましょう。

    • 商品開発の経緯と現時点までの売上や利益などの基本数字の推移を把握
    • 商品カテゴリの市場の成長率やトレンド、競合商品の動向を把握
    • 過去調査などを確認し、自社商品の浸透状況などを把握

     
    このポイントの中でも特に、「過去調査などを確認し、自社商品の浸透状況などを把握」は注意していただきたいです。他のポイントも必須事項ですが、“さらに状況把握をするために”という部分で「過去調査」というのが重要になってきます。過去に認知度調査などをしていた場合、その調査結果をもとにして、認知度や自社商品の浸透状況を時系列で比較することができ、現状をより理解することができます。
    これらを把握し、2番目の「現状と理想のギャップ」を見つけ、課題から論点を設計していくことで、何を明らかにすれば良いのかが明確になっていきます。

  2. 課題を論点で分割する
    続いて、課題を考えていく必要があるのですが、すでに例題内容に「新商品Aの売上低迷の要因を突き止め、今後の改善策について検討したい」とあるため、課題は新商品Aの「売上の低迷」で良いでしょう。
    この課題に対して、論点で分割していきます。例えば、下図の「外的要因」「満足度・競合要因」「売り場要因」「浸透度要因」のように分割してみました。

    図 論点の分割のイメージ図
    図 論点の分割のイメージ図

     
    そして、この分割に対して具体的な論点の内容を考えていくのですが、論点は「問い」なので、疑問文で考えていきましょう。以下では、「外的要因」「満足度・競合要因」などそれぞれの論点に至るまでの思考プロセスを紹介します。

    外的要因


    左端の外的要因から見ていきましょう。例題内容で外的要因に当てはまるのは、「コロナ禍で外食頻度が減ったことにより」という部分です。自社要因ではなく、この場合は「コロナ」という外的要因で、「外食頻度が減った」と理解することができます。では、「現状は?」というと、課題の通りで、売上低迷中。これらのことから、以下の流れをイメージすることができ、「外食頻度の増加によって既存顧客が離れてしまったのではないか?」という論点が思いつきます。

    1. コロナ禍から時が経ち、状況が落ち着いた
    2. 外食頻度が増加した
    3. 一方、自宅で食事をする需要が低下した

     

    満足度・競合要因


    続いて、満足度・競合要因です。同じように例題内容からピックアップするとしたら、「市場は伸びていることもあり、カテゴリの人気が落ちているわけではないことは明らかだ」という情報でしょう。「自社のA商品は売り上げが落ちているが、他の企業は落ちていない」と読み取ることもでき、競合の情報と解釈することができます。もし、より具体的な情報がデスクリサーチや情報整理などにより手に入る場合は、より論点の精度を引き上げることができるため、積極的に取得及び整理をしましょう。そして、現状ではこれ以上具体的な満足度・競合の情報はないため、満足度→売上低迷、競合→売上低迷という簡単な組み合わせで論点を考えていきましょう。

    一つ目の「満足度→売上低迷」では、「満足度が売上低迷に影響している」という視点に立ってみると、「満足度が低くなった→売上低迷」と考えるのがしっくり来るのではないでしょうか。また、「売上低迷」部分も「満足度が低くなったから」という視点で考えると、「満足度が低くなった→購入していた人がリピートしなくなった→売上が落ちた」というのが、しっくり来ると考えます。そこから、「商品満足度が低くリピート購入につながらないのではないか?」という論点を導き出すことができます。

    続いて、「競合→売上低迷」も同じように考えてみると、「競合の方が魅力的→A商品購入から競合商品購入へ乗り換え→売上が落ちた」と考えることができます。そのため、「競合商品に流れてしまったのではないか?」という論点を導き出すことができます。


    注意:例題内容にヒントとなる部分が少ないため、自由度が高めとなっております。そのため、上記以外の論点もたくさん考えることができますが、「課題に影響を与える論点になっているかどうか」が重要となるため、注意が必要です。

     

    売り場要因


    売り場要因は、例題内容に具体的な記載がないため、「市場は伸びていることもあり、カテゴリの人気が落ちているわけではないことは明らかだ」という前提で、売り場→売上低迷という組み合わせを考えみましょう。売り場が売上低迷に繋がるということは、以下のような要因を想像することができます。

    • そもそも売り場にA商品がない
    • A商品の販売場所が悪い
    • A商品の販売場所が狭い
    • A商品を手に取ってもらえない
    • Etc.

    こういった中から、「売場にA商品がない→手に取ってもらえない→売上が落ちた」ということをイメージし、「店頭で買いたくても棚落ちしてしまって買えなくなってしまったのではないか?」という論点を導き出すことができます。


    注意:例題内容にヒントとなる部分が少ないため、自由度が高めとなっております。そのため、上記以外の論点もたくさん考えることができますが、「課題に影響を与える論点になっているかどうか」が重要となるため、注意が必要です。

     

    浸透度要因


    最後、浸透度要因についてです。これも、売り場要因同様、「市場は伸びていることもあり、カテゴリの人気が落ちているわけではないことは明らかだ」という前提で、浸透度→売上低迷という組み合わせを考えてみましょう。

    まず、浸透度とは、「特定の商品やサービスが特定の市場にどれだけ普及している度合い」となります。そして、浸透度が売上低迷を招いているとしたら、「A商品が市場にあまり普及できておらず、売上を伸ばすことができていないのではないか?」とイメージすることが可能です。さらに、深くイメージをしていくと「A商品が市場にあまり普及されていない→消費者にA商品が広く認知できていない→初めてA商品の購入をする人が少ない→売り上げが伸びない」、こういったイメージから「新規顧客の獲得が十分ではないのではないか?」という論点を導き出すことができます。


    注意:例題内容にヒントとなる部分が少ないため、自由度が高めとなっております。そのため、上記以外の論点もたくさん考えることができますが、「課題に影響を与える論点になっているかどうか」が重要となるため、注意が必要です。

     

  3. 検証を見越した仮説を立てる
    用意した論点に対して、それぞれ仮説を立てていきます。このとき、下図のように検証の仕方も併せて考えていきましょう。

    図 仮説と検証を考えるイメージ図
    図 仮説と検証を考えるイメージ図

     
    仮説の立て方と検証方法の考え方について、論点「外食頻度の増加によって既存顧客が離れてしまったのではないか?」をピックアップします。
    この論点に対して、まず現状把握したデータを確認します。そして、“実際、既存顧客の購入頻度が落ちている”場合、この事実と論点を合わせて「外食がコロナ禍より増えたので、既存顧客が自社商品を購入しなくなった」という仮説を立てることができます。そして、これはあくまで1つの仮説であり、他にも仮説を立てることができます。
    続いて、この仮説を検証するためには、「外食頻度が増えている人と減っている人とで、自社商品購入者の購入状況を把握する」ことで分かりそうです。もし、これに関係する質問を用意し、下表のようなことがわかれば、「外食がコロナ禍より増えたので、既存顧客が自社商品を購入しなくなった」という仮説が正しい可能性が高くなります。

    A商品購入者の購入状況
    外食頻度が増えている人 外食頻度が増えている人の割合が増えている一方で、A商品の購入頻度と購入合計額が減っている
    外食頻度が減っている人 外食頻度が減っている人の割合は減っており、A商品の購入頻度および購入合計額は減っていない。

     
    ここで、仮説の検証について1つ注意が必要です。
    それは、「仮説の検証は、必ずしもアンケートやインタビューだけで検証できるとは限らない」ことです。
    例えば、上図の右から二列目の仮説「棚の回転率が悪く、棚落ちしてしまった」を検証するには、「配荷率と棚落ちした店舗の洗い出し」をする必要があります。これは消費者にアンケートやインタビューを実施ししてもわからない情報です。配荷先のデータを用意しなければなりません。
     
    こういった、調査をする必要があると思っていたら、「実は、自社でデータを用意しなくてはいけない」というケースもあるため、検証を見越しながら仮説を立てる必要があるのです。
    なお、当たり前にはなりますが、検証を見越しながら仮説を立てることによって、おのずと調査手法が明確になり、調査の見通しが立てやすくなります。

 

ネットリサーチ(WEBアンケート)

ネットリサーチ(WEBアンケート)のサービスの詳細はこちら

アスマークでは、ネットリサーチ(WEBアンケート)サービスを提供しております。質の高い市場調査専用モニター、スタッフの細やかなサポートと対応力で“早い、“安い”だけでない高品質なネットリサーチをご提供します。

> 詳しく見る

 

会場調査(CLT)

会場調査(CLT)のサービスの詳細はこちら

アスマークでは、会場調査(CLT)サービスを提供しております。試飲や飲食、CPテスト(コンセプト/パフォーマンステスト)、ユーザビリティテスト、CM評価など多様なニーズに対応、企画設計から報告書までのトータルサポートでご好評いただいております!

> 詳しく見る

 

まとめ

ここまで解説させていただいた通りとなりますが、調査における仮説は「先を見通した自分なりの『仮の説(答え)』」であるため、仮説を立てるには「問い」である論点を適切に設定することが非常に重要です。
そのため、重要なことなので何度も申し上げますが、以下ステップを踏む必要があります。

  1. フレームワークや経営数字から全体図を整理
  2. 現状と理想のギャップ
  3. 何を解決していくことが最も良いか?
  4. 課題を論点で分割する
  5. 検証を見越した仮説を立てる

 
基本的な経営数字を把握したうえで現状を整理し、現状と理想とのギャップを見つけていきます。その中で、結局何を解決すればよいのかを考えていき、解決するべき課題をいくつかの論点で分割していきます。論点を設定するうえでは、「それが解決できるものか?」「解決時の影響範囲は大きいか?」「本質的な内容であるのか?」を考慮し、最終的な検証方法も含めて仮説を立てていきます。
以上の流れに沿って考えていくことで、「そもそも仮説ってなんだろう?」と難しく考えなくても、課題解決に向けた適切な仮説を自然に立てることができます。

企業が本来思い描いている理想を実現させるための適切な調査における仮説を立て、さらなる成長につなげていきましょう。

市場調査についてのご相談はこちら>
 

執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

アスマークの編集ポリシー
 

調査の”設計”に必要な仮説思考と検証方法

調査の”設計”に必要な仮説思考と検証方法

全てのプロダクトやサービスの開発には、開発者の「仮説」が必ず存在します。

市場の洞察から得る深い理解を、製品ベネフィットへ適切に生かせた製品は、いわば「ヒット製品」となります。

ここで避けて通れない、全てのマーケターにとって必要不可欠である工程がプロダクトの仮説を「”正しく”設定し検証していく」工程となります。そこで今回のセミナーではプロダクトの命運を握る「仮説の磨き上げ」に繋がる起点、「リサーチ仮説における立案と検証」に特化し、リサーチのプロがレクチャーいたします。

下記に当てはまる方にお薦めの動画です。
● 仮説の立て方を誤り、調査を失敗したことがある
● リサーチにおける「仮説思考」を身に付けたい
● 仮説の「検証」に関する調査を検討している

※無料会員登録でご視聴可能です。

> 詳しく見る

 

市場分析とは?主な分析フレームワークとメリット、実施方法を紹介

市場分析とは?主な分析フレームワークとメリット、実施方法を紹介

現代のビジネス環境は、様々な技術革新やニーズ多様化により、急速に変化しています。そのような環境下で、企業が競争力を維持するためには、市場動向を的確に把握することが大切です。市場分析は、企業が市場の現状や将来のトレンドを理解し、戦略的な意思決定を行うための重要な手段です。

この記事では、市場分析の基礎知識や主なフレームワーク、実施方法について解説します。

> 詳しく見る

 

STP分析とは?マーケティングで重要な理由ややり方について紹介

STP分析とは?マーケティングで重要な理由ややり方について紹介

新たな事業を展開する上で、自社の商品やサービスの立ち位置を明確にしておくことは非常に重要です。そして、その立ち位置を決めるために活用される手法がSTP分析です。マーケティング活動の中でなぜSTP分析が重要なのか、STP分析はどのように進めるべきなのか。

この記事では、STP分析の事例を交えながら具体的なやり方とその重要性を解説します。

> 詳しく見る

 

4Pとは

4Pとは

4Pとは、マーケティングの原典的なフレームワークの「STP」で市場を細分化し、勝負すべきターゲットセグメントを決定した後は、そのターゲットセグメントで勝負する製品を開発しなければなりません。この4Pはその製品開発から販売プロモーションまでのフレームワークです。

この記事では、4Pについて基本的なことから、5Pや4Cについても紹介していきます。

> 詳しく見る

 

定性調査の成功の鍵を握る『仮説』と質を高める『技法』の種類とは?

定性調査の成功の鍵を握る『仮説』と質を高める『技法』の種類とは?

定性調査は、消費者の「なぜ」を深く掘り下げ、その意識や行動の背景を理解するための重要な手法です。インタビューや観察など、定性調査にはさまざまな技法があり、調査の目的に応じて使い分けることが求められます。適切な手法を活用することで、調査の質を大きく向上させることが可能です。

この記事では、定性調査を成功させるために必要な、調査の背景や目標の整理、目的と課題の明確化、そして仮説の立案とその検証について解説します。

> 詳しく見る