公開日:2025.06.27

アンケートモニターの登録歴で回答傾向に違いがみられるか?実データから考察を紹介

  • マーケティングリサーチHowto

「ポイ活」という言葉も普及し、アンケートモニターに登録する方や企業が実施するアンケートでポイントをもらうという方も多いのではないでしょうか。

ネットリサーチを提供する会社も、調査会社に限らず大手企業やクラウドソーシングサイトなど、黎明期に比べると爆発的に増えました。また、黎明期にはパソコンでの回答が主だったものが、スマホの普及とともにスキマ時間の活用で回答ができるなど身近になったのではないかと考えられます。

2000年代に登場したネットリサーチのアンケートモニターですが、今や10年以上登録して日々回答しているベテランの方も多いのではないでしょうか。

私たち調査会社も回答精度の向上に日々取り組んでいますが、アンケート慣れした回答者にとっては、「このアンケートはこんな形ね」などと見抜かれて、ポイント獲得を目的とした、いわゆる『ポインター』の方は、テクニックで回答されてしまっているのではないかという危惧がありました。

実態をみるべく、先日弊社で実施した自主調査の結果の一端を切り口として、回答者(※今回はアスマークに登録しているモニター)に回答傾向の違いがみられるのかを探ってみていきます。

 
 

アンケートモニターの各属性について

性別構成
性別構成

 
性別でみると、最近登録されたモニター登録歴1ヶ月未満の方は男性が多いものの、全体的にみればほぼ半数ずつです。
 
 

年齢構成
年齢構成

 
年齢別でみると、予想通りにはなりますが若年層ほどモニター登録歴が短い傾向でした。
そしてモニター登録歴が10年以上の方は、40代・50代の方が中心になります。
モニター登録歴が6ヶ月~5年未満だと、多少の差はみられるものの年代の構成比は大きく変わらないようです。
 
 

デバイス構成
デバイス構成

 
回答しているデバイスをみると、モニター登録歴が短いほど「スマートフォン」、長いほど「パソコン」で回答している様子がみられます。モニター登録歴が10年以上では、6割半ばと半数以上がパソコンで回答されています。
モニター登録歴が10年以上では40代・50代の方が中心でしたが、その年齢層の方が主にパソコンで回答しているのではないかと推察されます。
 
 

アンケートモニター登録歴によって回答傾向に違いは見られるのか?

登録しているアンケートサイトやアプリの回答登録数は違うのか?
登録しているアンケートサイトやアプリの回答登録数は違うのか?

 
登録しているアンケートサイトやアプリの数をみると、モニター登録歴が1ヶ月以上では、期間に関わらず1社で登録されている方が一定数(2割程度)みられました。
5社以上の登録は、モニター登録歴が長くなるほど増えていきますが、登録歴が3年以上になると3割半ば~4割弱まで増えています。
 
 

インターネット調査のアンケート回答数は違うのか?
インターネット調査のアンケート回答数は違うのか?

 
全体でみると、最近1ヶ月のインターネット調査のアンケート回答回数は「10回~60回未満」がボリュームゾーンになっており、いずれのモニター登録歴でも同様の様子です。
モニター登録歴が1ヶ月を超えると「60回以上」のゾーンも増えてきますが、モニター登録歴が長いほど回答数が多いということではないことが見受けられます。

 
 

トラップ設問の回答傾向は違うのか?
トラップ設問の回答傾向は違うのか?

 
トラップ設問(存在しない通信事業者の認知)に対して、モニター登録歴が1ヶ月未満の新規モニターは3割弱が認知(知っている+名前は聞いたことがある)で回答しました。
一方でモニター登録が10年以上ではほとんどの方が「知らない」と回答し、登録歴が長いほど「知らない」と回答する割合は高い傾向にあり、正確に回答している様子がみられます。 
※既存の通信事業者と勘違いした可能性もあるため議論の余地はあります
 
 

アンケート調査への負担は違うのか?
アンケート調査への負担は違うのか?

 
今回の自主調査では、全30問近くの設問に回答していただきました。
アンケート調査の負担をみると、モニター登録歴が6ヶ月未満の方は8割弱の方が「負担を感じなかった」と回答しています。一方で、モニター登録歴が6ヶ月以上になると、「負担を感じた」の回答が増えている様子です。
モニター登録して、半年くらい経って慣れたことにより負担の増加を感じているのではないかということも推察されます。

 
 

不備の有無に違いは出るのか?
不備の有無に違いは出るのか?

 
アンケート回収後、弊社データチェック基準に照らし合わせて回答に何らかの不備がないかどうかをチェックしました。
モニター登録歴による大きな傾向の違いはみられず、7割程が不備なしで正確に回答しています。
※通常の調査では不備ありの回答は除外しており、自主調査では検証のためそのままにしております。

 
 

【まとめ】アンケートモニター登録歴で回答傾向に違いがみられるのか?

今回は、弊社の自主調査の結果の一端を切り口としてみていきましたが、登録歴が長い方ほどダミー設問に対して正確に回答する傾向がみられ、アンケート調査の負担感という点でみると登録して間もない方は、登録歴が長い方と比べると負担を感じていない様子がみられました。

また、回答の不備という点でみると、モニター登録歴はほとんどの関係ない様子がみられました。
そして、登録しているアンケートサイトの数、インターネット調査のアンケート回答数など実態をみることができました。

データの根本を支えていただいているのは日々調査にご協力いたただいているアンケートモニターの皆様ですが、ネットリサーチはモニター登録が手軽に行えるようになった分、回答の精度、データの信頼性という点では私たち調査会社が日々向き合っていかなければならない課題です。

長くモニターとしてご活躍していただくために、そして精度の高い情報をお客様にご提供できるように、引き続きモニターの皆様とコミュニケーションを大切にしていきたいと思います。

最後になりますが、今回は自主調査の結果の一端を切り口としているものになりますので、この切り口をきっかけとしてさらに深く分析を行えるように引き続き調査していきたいと思います。
 

※アスマーク自主調査
 調査期間:4月25日(金)~4月30日(水)
 対象者:アスマーク保有モニター、男女20歳~59歳
 回収数:1,862サンプル
 割付:性年代で均等になるように割付

 
 
調査についてのご相談はこちら>
 

執筆者
株式会社アスマーク リサーチソリューショングループ 吉田 圭祐
大学卒業後、新卒でメディア調査サービス会社に入社し、広告統計に関する業務に関わる。業務では、グループ会社実施の全国規模の大型調査の調査票作成や、 各種アンケート調査や広告統計の集計、レポート作成などに従事。 その後、地元の広告代理店勤務などを経て、2022年にアスマークに入社。 現職では、リサーチャーとして幅広い業界の調査企画から設計・分析・レポート 作成までの業務を担当。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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