2021.11.02
コンセプト調査
4コマ漫画でわかるマーケティングリサーチ
コンセプト調査は、担当者によってアプローチが異なることから、社内における、同じ基準を用いたデータ比較・分析が難しいという現状があります。 こういった状況に対し……
公開日:2023.12.28
新しい商品やサービスを市場に投入することには、とても高いリスクが伴います。売れ行きが想定を大きく下回れば過剰な在庫を抱えるだけでなく、ブランドイメージを損なうことにもなりかねません。
このような新しい商品やサービスの市場投入リスクを回避するマーケティング手法が、テストマーケティングです。この記事では、テストマーケティングの概要とともに、実践的手法や具体事例について解説します。
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テストマーケティングとは、新商品やサービスの導入前に、市場の反応や需要を試す調査手法です。この手法は、市場経済の発展に伴い、商品が大量生産される時代になってから盛んに取り入れられるようになりました。
大量生産は価格面での優位性や販売機会ロスの回避など、大きなメリットを生み出します。その一方で、市場に投入した商品が売れないと、巨額の損失を生み出す危険性も拡大しました。
このハイリスクハイリターンな状況を改善するために、導入されたのがテストマーケティングです。現在、多くの企業はテストマーケティングを活用し、事前に市場の反応や需要を確認することで、ビジネスの成功確率を高めています。
テストマーケティングとは、新商品やサービスを市場に導入する前に、一部の限定的な市場で商品やサービスをテスト販売し、市場の反応や需要を評価する手法です。テストマーケティングを行うことで、企業は商品やサービスの市場導入リスクを最小限に抑えるとともに、本格的な市場投入前に、商品やサービスの改善点を特定できます。
テストマーケティングの主な目的は、以下の3点です。
①市場反応の予測
限定的な市場での新しい商品やサービスの販売状況を把握します。その販売状況から、市場に正式投入した際の販売状況やユーザーの反応を予測します。
②ターゲット層の確認
新しい商品やサービスが、想定通りのターゲットに購入されているかを確認します。もし、想定外のターゲットが購入している場合は、プロモーション計画の見直しなどを行います。
③問題点の把握
商品を自らの意思で購入した顧客の意見から、信頼度の高い意見や評価を把握します。その評価に基づき、商品やサービスの潜在的な問題点を把握して修正や改善を行います。
テストマーケティングは新しい商品やサービスを市場反応や需要を試すことで、様々なメリットを得られます。その一方で、テスト販売することによるデメリットもあります。
ここでは、テストマーケティングのメリットとデメリットについて解説します。
テストマーケティングは小さな市場規模で、正式な市場投入時と近い市場や顧客の反応を得られます。これにより、市場への正式投入よりも小さいリスクで、商品やサービスの市場需要や問題点を把握できます。
その結果、市場投入前にある程度の販売予測が可能となり、過剰在庫や販売機会のロスというリスクを軽減できます。また、事前に問題点や顧客からの要望を商品やサービスに反映できるため、いきなりの市場投入よりも成功確率を高めることが可能です。
テストマーケティングには正式投入よりは小規模であるものの、相応のコストと時間が発生します。そのため、テストマーケティングを導入した場合、正式投入までの初期コストアップを想定することが必要です。
また、販売スケジュールについては、テストマーケティングに要する時間だけ長期化します。もし、テストマーケティングに想定以上の時間を要してしまうと、市場への正式投入が遅れてしまい、販売機会をロスする可能性もあります。
さらに、新商品情報が競合に露呈する危険性も、想定することが大切です。新商品の情報露呈によって、類似商品や対抗商品が早期に販売される可能性が高まり、市場での先行利益を脅かすリスクが発生します。
テストマーケティングの手法には、大きく分けるとオフライン手法とオンライン手法の2種類があります。ここでは、それぞれの実践的手法について解説します。
オフライン手法とは、インターネットを介さず、現実の店舗やモニターの自宅、特定会場でのテストマーケティングを実施する手法です。
オフライン手法は、リアルな環境でテストマーケティングが実施されるため、信頼性の高い情報を得ることが可能です。また、顧客の実際の反応や行動を直接観察することで、数値化しづらい潜在ニーズなども把握できます。
一方、テストマーケティングの実施には、リアルな店舗や会場の確保や、モニターへのサンプル提供が必要なため、時間やコストが高額になりやすいという点に注意が必要です。
ここでは、代表的な3つのオフライン手法を紹介します。
リアル店舗でのテスト販売
リアル店舗でのテスト販売とは、商品やサービスを実際の店舗で一定期間販売し、市場の反応や顧客の需要を評価する手法です。この手法は、市場での反応や需要の確認、新商品のパフォーマンス評価などに活用されます。
リアル店舗でのテスト販売は、まず特定の店舗を選び、テストする新商品やサービスを導入します。その後、一定期間内で販売を行い、顧客からの反応や売上データを収集します。これにより、価格設定や商品陳列方法、プロモーション戦略などを評価し、改善点を特定します。
モニター調査(ホームユーステスト)
モニター調査(ホームユーステスト)とは、新商品やサービスの効果や使い勝手をモニターが自宅環境で評価する調査手法です。モニターは一定期間、商品やサービスを自宅で使用し、その効果や満足度を評価します。
モニター調査(ホームユーステスト)は、調査条件に合致するモニターを選定し、評価対象の商品やサービスを提供します。モニターは一定期間、その商品やサービスを自宅で使用し、その効果や使い勝手について評価します。
評価する項目は、満足度や使いやすさ、効果、問題点など、商品の販売や改善に影響する内容を設定します。これらの評価結果を収集・分析し、正式投入に向けてのマーケティング活動にフィードバックします。
会場調査
会場調査とは、特定の会場に調査対象者を集めて、調査対象者の意見や行動を調査する手法です。この手法は調査員立会いのもと行われるため、状況によっては調査対象者の意見を深掘りすることも可能です。
会場調査の実施方法は、以下のような手順で行われます。まず、特定の会場に調査対象者を集めて、商品やサービスを調査員の指示に従って試用してもらいます。その上で、調査対象者にアンケートやインタビューを行い、評価や感想、問題点などの情報を収集します。
オンライン手法とは、インターネットを活用したテストマーケティング調査手法です。近年、オンライン環境の普及やデジタル技術の進化により、インターネットを利用した調査手法は広く利用されています。
ここでは、代表的なオンライン手法であるインターネット上のアンケート調査について、解説します。
インターネット上のアンケート調査
インターネット上のアンケート調査とは、インターネットを介して、回答者にアンケートを実施する調査手法です。従来の紙や電話によるアンケートよりも、効率的かつ迅速にデータを収集できます。
インターネット上のアンケート調査は、まず、商品やサービスに関する情報を、テキストや画像、動画などを用いて回答者に配信します。その上で、商品やサービスに対する評価や感想を、オンライン上のアンケートフォームに回答してもらいます。回答は自動的にデータベースに蓄積され、後ほど集計や分析を行います。
テストマーケティングで高い効果を得るには、調査の目的に応じた計画と実施が大切です。ここでは、テストマーケティングを計画し、具体的に実施する際のポイントについて解説します。
テストマーケティングは、新商品やサービスの市場正式投入時のリスクを大きく回避できる調査手法です。しかし、その効果を高めるには、戦略的な実施計画を立案することが重要です。
テストマーケティングの戦略立案における重要ポイントは、以下の通りです。
①調査目的の明確化
まずは、テストマーケティングの目的を明確にします。需要予測、市場の反応、ユーザーニーズ、競合との比較など、得たい情報を考慮して、調査目的を設定します。
②活用するマーケティング活動の想定
テストマーケティングで得られた分析結果を、開発、販売、宣伝など、どのマーケティング活動に活用するかを想定します。また、各活動において、どのような情報が必要とされているかを把握しておくことも重要です。
③情報露呈の想定
テストマーケティングを実施すると、競合他社に情報を露呈する可能性があります。この危険性を考慮し、情報の適切な管理や保護策を想定します。
これらのポイントを踏まえて、テストマーケティングの戦略立案を行います。
テストマーケティングの戦略を立案できたら、次はターゲット層の特定と調査項目の選定を行います。新商品やサービスのメインターゲットがどのような層になるかを検討し、メインターゲットを明確にします。
ターゲット層が特定できたら、次はそれに応じた適切な調査方法を選定します。適切な調査方法は、ターゲット層の特徴によって変わります。インタビューやアンケート、ホームユーステストなど、ターゲットの属性や行動特性に合わせて適した方法を選びましょう。
調査方法が決まったら、次は調査項目の選定を行います。この際、重要なポイントは、売上や評価の結果よりも、その原因を把握することです。テストマーケティングはあくまで、正式投入時のリスクを回避することが重要なポイントです。そのためにも、マーケティング活動にフィードバックできる情報の取得に重きを置きましょう。
テストマーケティングで得られた情報は、分析を行いマーケティング活動の改善につなげることで、その価値が高まります。ここでは、収集データの分析方法とともに、どのように改善へとつなげていくかについて解説します。
収集したデータは統計的手法などを用いて分析し、分かりやすく要約や可視化することが重要です。その第一ステップとして、集計やグラフ化によって、データの特徴やパターンを把握しましょう。
次に、統計的手法を用いてデータの傾向や関係性を分析します。例えば、t検定などの統計手法により、異なるグループ間の差異を検証したり、回帰分析や因子分析などの手法で要因や変数の影響を評価することも効果的です。
統計的手法は、分析の目的やデータの特性に応じて選択することが大切です。また、信頼性を高めるため、標本数やサンプリング方法なども考慮しましょう。
テストマーケティングの最終目標は、ビジネスの成功に向けてフィードバックを活かすことです。そのためには、分析結果から具体的な改善策につながるヒントを見つける必要があります。
テストマーケティングは、他の調査手法に比べて信頼性の高い情報を得られる調査手法です。しかし、そこで得られる分析結果は、必ずしも絶対的なものではありません。そのため、具体的な改善策を考える際は、できるだけ多くの情報を参考にしましょう。
ここでは、実際に行われた国内外のテストマーケティングの具体的事例を紹介します。それらの事例から学ぶべきポイントについても解説しますので、テストマーケティングを検討する際の参考にしてください。
国内では、ある出版社が新しく出版する書籍のテストマーケティングを行いました。テスト作成した書籍をモニターに配布し、書籍の面白さや魅力、購入可能性などについて評価をしています。
そこで高い評価を得た書籍は在庫数を増やすとともに、評価の低い書籍については、再テストで高い評価を得られるよう、内容の見直しを行いました。その結果、従来よりも適切な在庫数を管理できるようになるとともに、売れ行きの悪い書籍の出版を大きく減らすことに成功しています。
また、海外においては、日本のあるアパレルショップが東南アジアの商業施設で、期間限定店でのテスト販売を行っています。そこで得られた情報をベースに、問題点や改善点を明らかにして、正式な海外出店の準備を進めました。
その結果、現地ニーズを踏まえた出店に成功し、現在、東南アジアへの出店を強化しています。
国内の事例から学べるのは、消費者主体の販売方法を取り入れないと、適正な利益を確保するのが難しくなっているということです。
現在、市場には商品があふれていて、市場の主導権は買う側の消費者が持っているケースがほとんどです。しかし、まだまだ大量生産、大量販売のやり方を続ける企業が多く、過剰在庫に悩んでいるケースは多々あります。
このような場合、テストマーケティングを通して買い手の評価やニーズを把握できれば、売れない商品の在庫を減らすことが可能です。また、事前に商品のクオリティも改善できるため、大きな問題を抱えたままの販売を避けられます。
また、海外市場は市場環境や顧客ニーズなど、国内とは異なる様々な要因が存在します。これらの要因を理解せずに海外進出を行うと、大きな問題が判明した際、軌道修正には大きなコストと労力が伴います。
しかし、テストマーケティングを事前に行えば、これらの国内と異なる要因を数多く見つけられます。その結果、市場環境や顧客ニーズを正しく把握し、現地対応のリスクを大きく軽減できます。
どちらの事例からも、テストマーケティングはリスク軽減に大きな役割を果たしています。テストマーケティングを通じて、ビジネスのリスクを軽減させることは、ビジネスの成果を最大化するための重要な施策となります。
ここまで、テストマーケティングの概要や具体事例について解説してきました。現在の市場では、消費者が主導権を握る時代です。だからこそ、テストマーケティングを通して得られる消費者の意見やニーズは、新商品やサービスの市場投入リスクを軽減するための重要な参考情報となります。
ぜひ、テストマーケティングを自社のマーケティング活動に積極的に取り入れ、ビジネスの成功につなげていきましょう。
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