マーケティングリサーチQA

Q
学術研究における調査で、倫理審査の審査項目はどのようなものがありますか?
A
倫理審査での審査項目は研究機関によって異なりますが、主に以下の項目をポイントとして審査が行われています。
  1. インフォームド・コンセントの確保
    インフォームド・コンセントとは、研究対象者が「自分がどのような調査に参加するのか」を十分に理解し、自発的に同意をするプロセスを指します。この考え方は、医療や心理学など人に関わるすべての研究で基本的な倫理原則とされています。
    調査においては、対象者に対して、調査の目的・方法・参加の意義・想定される影響・個人情報の取り扱い・データの保存期間・結果の公開有無などについて、分かりやすく説明する必要があります。また、参加は任意であり、いつでも自由に中断・辞退できることも明記しなければなりません。
    さらに、説明文書や同意書は、対象者の年齢やリテラシーに応じて書き方を工夫する必要があります。例えば未成年者を対象にする場合は、保護者からの同意取得も必要となることもあります。
  2. 個人情報保護と匿名性
    調査において個人を特定しうる情報を収集する場合、研究者には厳密な情報管理の責任が課せられます。氏名や住所といった直接的な情報だけでなく、性別・年齢・所属・職業・居住地域などの「間接的に個人が特定できる情報」も、適切に取り扱う必要があります。
    倫理審査では、情報の匿名化・仮名化の方法や、特定の人物にデータが結びつかないようにする手順が重要視されます。また、収集したデータへのアクセス権を誰が持ち、どのように制限されているかといった運用面も確認される場合もあります。
    加えて、調査結果を公表する際にも、個人の特定に繋がる情報が含まれないよう配慮する必要があります。たとえば、少数属性(女性管理職など)に関するデータの場合、地域名や企業規模を一緒に出すことで特定の個人が想起されてしまう可能性があります。
  3. 調査設計の透明性と公平性
    調査における設計が偏りなく、客観的であることは、研究の信頼性を保つために重要です。倫理審査では、「特定の回答に誘導するような質問になっていないか」「回答の選択肢に差別的な表現が含まれていないか」などが審査対象となります。
    また、対象者の選定基準に差別的な排除やバイアスがないかも確認されます。たとえば、「一定の年齢層を除外する理由」や「特定の属性に限定する理由」が根拠に基づいているかが問われます。
    研究者自身の立場や所属機関の利益が、調査の目的や結果に影響を与える場合は、その利害関係(利益相反)を開示することが求められます。
  4. リスクと負担の最小化
    どのような調査であっても、参加者にとって精神的または身体的な負担が生じる可能性があります。倫理審査では、そのリスクを予測し、あらかじめ対策を講じているかどうかが重要なポイントとなります。
    心理的リスクには、「センシティブな内容を質問されることによる不快感」や「自分の意見を答えることによるストレス」などがあります。身体的リスクには、「長時間の拘束」や「移動の負担」などが考えられます。
    調査設計の段階で、こうしたリスクを最小化する努力が必要です。たとえば、質問の途中にスキップ機能を設けたり、調査時間を短縮したりする工夫が有効です。また、対象者が不安を感じたときに連絡できる窓口を用意することも、リスク対策の一つです。
  5. データ管理と保存
    収集したデータは、研究目的の範囲内でのみ使用されるべきであり、厳格な管理体制のもとに保管されなければなりません。データが外部に流出したり、無断で他の目的に使われたりすることがないように、研究者には高い倫理意識と運用体制が求められます。
    倫理審査では、データの保存場所(クラウド、サーバー、紙媒体など)、保存期間、バックアップ体制、アクセス制限、廃棄方法などが問われます。また、共同研究者や外部委託先とデータを共有する際には、誰がどのデータにアクセスできるかを明確にし、契約上の守秘義務を含めた対策を講じることが必要です。
  6. 倫理審査の承認履歴
    研究計画がいつ、どの倫理審査委員会で承認を受けたかを記録し、管理することは、研究の信頼性を担保するために重要です。倫理審査の記録は、学会発表や論文投稿時に提出が求められることもあります。
    また、研究実施中に調査の方法や対象者の条件を変更した場合は、再度倫理審査を申請する必要がある場合もあります。こうした履歴を残しておくことで、研究全体の透明性が保たれ、第三者からの監査にも対応できる体制が整います。
  7. 継続的なモニタリング
    倫理審査は研究開始前に一度受ければ終わり、というものではありません。調査の進行状況や、実施中に発生した問題に対して、継続的に確認・報告を行う「モニタリング」が求められます。
    たとえば、予定していたサンプル数が集まらずに対象者の条件を変更した場合や、回答者から苦情や質問が寄せられた場合は、その都度研究計画を見直し、必要であれば再審査を受ける必要があります。
    また、研究成果の公開に際しては、当初の説明通りにデータが使われているかを確認し、倫理的な問題が生じていないかを慎重にチェックする必要があります。

 

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学術研究を目的とした調査において、倫理審査の審査項目として求められる「インフォームド・コンセントの確保」について、アスマークではどのような対応を行っていますか?

学術研究を目的とした調査において、倫理審査の審査項目として求められる「インフォームド・コンセントの確保」について、アスマークではどのような対応を行っていますか?

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学術研究を目的とした調査において、倫理審査の審査項目として求められる『個人情報保護と匿名性』の為に、アスマークではどのような対応をしていますか?

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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