公開日:2025.09.30

事例で学ぶ、家電業界向けの調査内容とは? ~実践的な調査事例10選~

  • マーケティングリサーチHowto

現在の家電業界では、消費者の関心が「スマート化」や「省エネ性能」、さらには「環境への配慮」へとシフトしているように感じます。そのためか、従来型の製品に加えて、よりスマートでエコに配慮した製品やサービスが注目を集めています。

こうした変化に対応するには、これまでの経験則や販売データに頼るだけでは不十分です。多様化する顧客ニーズを的確に捉えるためには、消費者のインサイトに基づいた企画・開発が求められます。また、競争が激化する市場では、ブランドロイヤルティの向上や、製品購入後の顧客体験を最適化する取り組みも欠かせません。

これらの課題を乗り越えるうえで重要となるのが、顧客の声を深く理解し、潜在的なニーズを引き出すためのマーケティングリサーチです。リサーチを通じて得られる知見が、製品やサービスの価値を高め、企業の競争力強化につながります。

本コラムでは、家電業界の調査事例を定性・定量調査の視点から厳選してご紹介します。これらの事例の「対象者の定義や手法、テーマ、調査内容など」を参考に、今後の家電業界向けの調査企画のヒントが得られるでしょう。

 
 

定性調査

スマート家電新商品に関する購買意向調査


調査の結果得られたこと スマート冷蔵庫は、省エネ性能とデザインの観点で好評を得た。
一方で、アプリ連携やタッチパネル操作の直感性に課題が見られた。特に、複雑な操作に戸惑い、シンプルさを求める傾向が明確だった。
クライアント 家電メーカー
調査目的 新商品の購買意向を把握し、発売前に改善点を特定する
調査手法 FGI(グループインタビュー)
人数・対象者条件 24ss
都市部在住の20~40代男女/家電の買い替えを検討している層
調査内容 ・商品プロトタイプの使用感評価
・購入意向への影響要因(デザイン、省エネ性能、価格など)
・使用シナリオの想定と改善希望
対応範囲 対象者リクルート、モデレーター手配、当日運営、データ分析、レポート作成
特記事項 調査結果は、購入意向に最も影響する省エネ性能をより訴求する広告施策に活用され、アプリ連携機能の操作性向上を具体的に反映したプロトタイプの改良に繋がった。
また、タッチパネルデザインの再設計を進めるとともに、次回展示会でのデモンストレーション戦略を策定する指針として貢献した。

 

調理家電の使いやすさに関する評価調査


調査の結果得られたこと 多機能調理器の直感的な使いやすさや、付属レシピの実用性が高評価を得た。
一方で、清掃に手間がかかる点や説明書がわかりにくいとの声が多かった。特に清掃時のパーツ取り外しが難しいという具体的な指摘が目立った。
クライアント 調理家電メーカー
調査目的 使用感や利便性を定性評価し、購入者満足度を向上させる改善案を策定する
調査手法 訪問調査(インタビュー)
人数・対象者条件 12ss
首都圏在住30~50代女性/週2回以上調理を行う層
調査内容 ・家庭内での使用感の観察とインタビュー
・使用頻度や習慣の確認
・改善希望点や追加機能への期待
対応範囲 対象者リクルート、調査実施、データ収集、分析、レポート作成
特記事項 調査で得られた意見を基に、清掃性を改善するためのパーツ設計変更が検討され、説明書のリニューアル案が提案された。
また、付属レシピの多言語対応や、初心者向けの動画チュートリアルを開発する新施策にも活用され、販売促進策の策定に寄与した。

 

家電リペアサービス利用者インタビュー


調査の結果得られたこと リペアサービスにおいて、修理完了後の満足度が高い一方で、申し込み手順が複雑であると感じる顧客が多かった。具体的には、オンライン予約ページの操作性に関する改善要求が多く挙げられた。
クライアント 家電リペアサービス企業
調査目的 利用者満足度を深掘りし、サービス改善案を提示する
調査手法 オンラインインタビュー
人数・対象者条件 15ss
全国20~50代男女/過去1年以内にリペアサービスを利用した人
調査内容 ・サービス利用時の印象
・修理手続きの感想
・改善点や期待するサービス
対応範囲 対象者リクルート、調査実施、データ収集・分析、レポート作成
特記事項 調査結果を基に、オンライン予約ページのUI/UXを改善し、操作手順をシンプルにする施策が実行された。
さらに、申し込み後の進捗状況を簡単に確認できる追跡システムが導入され、顧客の利便性向上に大きく寄与した。これらの改善は、新規顧客の利用促進にも繋がった。

 

ロボット掃除機の使用実態調査


調査の結果得られたこと 日常的な使用頻度は高いものの、家具下や隅の掃除性能に課題があるという声が多かった。
また、アプリによるタイマー設定機能が便利だとの意見が広く見られた。
クライアント 家電メーカー
調査目的 日常使用の中での課題を特定し、改良点を探る
調査手法 日記調査
人数・対象者条件 20ss
首都圏30~50代男女/ロボット掃除機を使用中
調査内容 ・使用頻度と感想の記録
・機能への満足点と改善希望
・日常使用における課題
対応範囲 調査企画、日記フォーマット作成、データ収集、分析、レポート作成
特記事項 家具下や隅の清掃効率を向上させるブラシ形状の改善が検討され、新機種開発の参考データとして活用された。
さらに、アプリのタイマー設定機能の改良や、ユーザーが使用シナリオを簡単にカスタマイズできる新しい提案機能が追加され、製品訴求力が強化された。

 

空気清浄機の実際の使用感評価


調査の結果得られたこと 使用感において、静音性やフィルター交換の簡便さに高評価が集まった。
一方で、サイズが大きいという指摘や、風量設定が複雑でわかりづらいとの声が多かった。
クライアント 空気清浄機メーカー
調査目的 日常使用時の評価をもとに、製品改善案を具体化する
調査手法 ユーザビリティテスト
人数・対象者条件 10ss
都市部在住の20~50代男女/空気清浄機を使用中
調査内容 ・操作感や使用時の満足点
・改善希望のヒアリング
・他社製品との比較評価
対応範囲 対象者リクルート、テスト実施、データ収集、レポート作成
特記事項 調査を通じて、製品サイズのバリエーションを増やす検討が進められ、風量設定を直感的に操作可能なデザイン変更が提案された。これにより、利便性を重視した新モデル開発の基盤となった。
また、静音性を強調した広告戦略が策定され、競争力向上に寄与した。

 

 

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定量調査

家電量販店の接客満足度調査


調査の結果得られたこと 接客スキルや親切さは85%以上の高評価を受けたものの、待ち時間の長さに不満を示した回答が30%以上を占めた。特に繁忙時間帯の対応が顧客満足度に影響を与えていることが示唆された。
クライアント 家電量販店チェーン
調査目的 接客の満足度を把握し、サービス品質向上策を検討する
調査手法 顧客満足度調査(CS調査)
人数・対象者条件 500ss
全国20~60代男女/過去6か月以内に家電量販店を利用した層
調査内容 ・接客対応の評価(親切さ、知識量、提案力)
・店舗利用時の課題(待ち時間、混雑状況)
・再来店意向の確認
対応範囲 調査企画、調査票作成、データ収集、レポート作成
特記事項 調査結果に基づき、繁忙時間帯のスタッフ配置を最適化するシフト計画の見直しが行われた。
また、店頭予約システムの導入や、接客スピード向上に向けたトレーニングプログラムが開発され、短期的な顧客満足度向上を実現する施策として活用された。

 

家電ブランドの認知度調査


調査の結果得られたこと 特定ブランドに対しては価格競争力と信頼性の認識が高いものの、機能面での差別化については不十分との指摘が多かった。特に、ターゲット層別に競合ブランドとの差異がわかりやすい傾向が示された。
クライアント 家電メーカー
調査目的 自社ブランドの認知度と競合比較を行い、ポジショニング戦略を検討する
調査手法 ブランドイメージ調査
人数・対象者条件 1,000ss
全国20~60代男女/直近1年以内に家電購入経験がある層
調査内容 ・ブランド認知度の測定
・イメージの評価(価格、性能、デザインなど)
・競合ブランドとの比較
対応範囲 調査企画、調査票作成、データ収集、分析、レポート作成
特記事項 ターゲット層別の認知度データを基に、価格戦略や機能の独自性を強調したマーケティング施策が提案された。
また、ブランドメッセージの一貫性を見直す取り組みが進み、プロモーション計画の再構築に貢献した。

 

家電レンタルサービスの利用満足度調査


調査の結果得られたこと 利用者の85%が手軽さや柔軟性に満足している一方で、配送時間の遅れや返却時の手続きに課題を感じているという意見が25%以上を占めた。特に、追加料金の説明が不十分との指摘が多く見られた。
クライアント 家電レンタルサービス企業
調査目的 サービス利用者の満足度を把握し、改善点を特定する
調査手法 顧客満足度調査(CS調査)
人数・対象者条件 800ss
全国20~50代男女/家電レンタルサービスを利用した経験がある層
調査内容 ・サービス全体の満足度評価
・配送・返却時の課題
・サービス改善に関する意見
対応範囲 調査企画、調査票作成、データ収集、レポート作成
特記事項 調査結果をもとに、配送のスピード向上と返却手続きのデジタル化を進める施策が導入された。
また、料金体系をより分かりやすく提示する取り組みや、顧客サポート体制の強化が計画され、サービス品質の向上に繋がった。

 

オーディオ製品の音質とデザイン評価


調査の結果得られたこと 音質に対する満足度は90%以上と非常に高い一方、デザインに関しては65%が改善の余地があると回答。特に、色の種類が少ない点や、持ち運びやすさに関する要望が多く挙げられた。
クライアント オーディオ機器メーカー
調査目的 音質やデザインの評価を把握し、新製品開発の参考とする
調査手法 コンセプト調査
人数・対象者条件 1,200ss
全国20~60代男女/月1回以上オーディオ製品を使用する層
調査内容 ・音質の満足度評価
・デザインや使いやすさの意見収集
・新たな要望のヒアリング
対応範囲 調査企画、調査票作成、データ収集、レポート作成
特記事項 調査結果に基づき、新たにカラーバリエーションを増やしたモデルの開発が進められ、ポータブル性を強調したデザイン改善案が策定された。
また、音質に関する優位性をさらに訴求するプロモーション企画が実行され、顧客満足度の向上に成功した。

 

新型洗濯機の機能満足度調査


調査の結果得られたこと 洗浄力や節水機能に高評価が集まる一方で、乾燥機能の効率に不満を示した回答が20%以上を占めた。
また、操作パネルのデザインが直感的でないとの意見も目立った。
クライアント 洗濯機メーカー
調査目的 新型モデルの機能評価を把握し、次世代製品の設計に役立てる
調査手法 ホームユーステスト(HUT)
人数・対象者条件 50ss
都市部30~60代男女/月に1回以上洗濯機を使用する層
調査内容 ・洗浄力、乾燥力の評価
・操作性や使い勝手の意見収集
・改善希望の確認
対応範囲 対象者選定、調査実施、データ収集・分析、レポート作成、改善希望の確認
特記事項 調査結果を反映し、乾燥機能を強化したモデルの開発が進められた。
また、操作パネルのデザイン改善を基に、誰でも簡単に使えるUI設計が採用され、次世代モデルの製品コンセプトの一部として反映された。さらに、節水機能を訴求する広告展開にも活用された。

 

 

ネットリサーチ(WEBアンケート)

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おわりに

ここまで、家電業界におけるマーケティングリサーチの具体的な調査事例を定性・定量の両側面から紹介しました。

家電業界は、スマート化や環境配慮といった価値観のもとで、これまで以上に多様なニーズに応えていくことが求められています。その実現には、表面的なデータだけでなく、生活者の声や行動の裏側にあるインサイトを丁寧に読み解く姿勢が欠かせません。
また、変化の激しい市場環境だからこそ、リサーチを通じて得られる知見を活かし、次世代の家電製品やサービスの価値創造につなげていくことが重要だと考えています。

このコラムが、皆様の家電業界向けのリサーチに対する理解を深め、より良い製品やサービスの開発につながる一助となれば幸いです。

当社では『家電業界向けの調査』についてのお困りごとについて、ご相談を随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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