
2025.06.17
ペルソナとは?ペルソナ作成の調査の流れや誤解などについて解説
商品開発やマーケティング施策を進める中で、「ターゲット顧客はどんな人か」という認識がチーム内でずれてしまい、議論が噛み合わなくなった経験はないでしょうか。担当者……
公開日:2025.07.18
グループインタビューは、複数人のターゲットユーザーから本音や多様な意見を引き出すための効果的な調査手法です。しかし、限られた時間の中で実りある情報を得るには、進行役のスキルだけでなく、綿密な準備が大切です。
その準備の要となるのが「進行表」です。
進行表は、インタビュー全体の流れを明確に示し、質問項目や時間配分、使用する機材など、必要な情報を網羅した「設計図」のようなものです。これがあることで、進行に無駄が生まれず、スムーズかつ効率的に質の高い情報を収集することが可能になります。
この記事では、グループインタビューにおける進行表の重要性、具体的な作成手順、そして作成時に押さえておくべき注意点について解説します。
グループインタビューにおける「進行表」とは、調査対象者に対する質問の項目や内容、それらを提示する順番、各項目に割り当てる時間などを一つにまとめた下図のような資料です。これはインタビュー全体の設計図とも言える存在で、調査の質と効率を大きく左右します。

この進行表は通常、調査会社が作成しますが、クライアントと共同で作成されるケースも多く、そのためクライアント側も内容を把握していることが一般的です。モデレーター(司会者)は、この進行表を深く理解し、常に目的意識を持ってインタビューに臨むことで、より本質的で有意義な情報を引き出すことが可能です。
進行表を活用する上で特に重要なのは、「各質問に対して、自分自身で一度回答してみること」です。これにより、質問に対する評価や改善点が見えてきます。
例えば、「この商品の印象はいかがでしたか?」という質問に続けて、「その理由は何ですか?」と尋ねる場合、事前に自ら回答してみることで、多角的な視点から物事をとらえることができ、調査目的や調査課題に対する自分なりの仮説を深めるきっかけになります。
このような地道な作業の積み重ねが、精度の高い仮説につながりますので、必ず実施するようにしましょう。
また、それぞれの質問について「何を明らかにしたいのか」という課題を明確にすることも大切です。インタビューが進行表に沿って進んでいく中で、質問の目的を理解していなければ、得られるはずだった貴重なインサイトを見落としてしまう可能性があります。
進行表の意図を深く理解し、常に目的意識を持ってインタビューに臨むことで、より本質的で有意義な情報を引き出すことが可能です。
グループインタビューでは、参加者の本音や深層心理に迫れるよう、段階的に質問を進めていく構成が基本となります。そのため、進行表を作成する際には、インタビュー全体の一般的な流れを意識して設計することが大切です。

例:「どのようなきっかけでこの商品を使い始めましたか?」「使う頻度は?」「選ぶ際に重視する点は?」など。
こうした構成により、単なる表面的な情報にとどまらず、参加者の意識や潜在的な動機を掘り下げられ、議論をより効果的なものへと導くことが可能になります。
| 視点 | 説明 |
|---|---|
| 感情と意識の解明 | 経験に伴う感情の変化や意識の推移を引き出し、内面的な要因を探ります。 |
| 比較による価値の明確化 | いくつかの選択肢と比較する質問を通して、対象テーマの独自性や改善点を浮かび上がらせます。 |
| 課題と解決策の探索 | 現在抱えている不満や課題を明確にし、具体的な解決策やニーズの深掘りを行います。 |
| 未来への展望と期待 | 理想的な未来像や期待する変化について意見を引き出します。 |
この視点により、参加者間の相互作用を促進し、想定を超えるインサイトや気づきが得られるように、進行表を構成します。
グループインタビューを効果的に進めるうえで、「進行表」はとても大切なツールです。以下に、進行表を活用することで得られる主なメリットを解説します。
このように、進行表はグループインタビューを円滑かつ効果的に進めるための「設計図」として、重要な役割を果たします。進行表を準備段階から活用することで、より質の高いデータと洞察の獲得を期待できます。
グループインタビューから新しいヒントやアイデアを引き出すのに重要なのが、参加者間のグループダイナミクスです。グループダイナミクスとは、集団における個人の相互作用や影響力関係のことを指します。これが生まれることで、参加者の活発な議論が生まれ、思わぬ意見や新しいアイデアをインタビューから得られるようになります。
これは、グループインタビューの大きな特徴とも言えます
また、アンケート調査では得られない本音や具体的なエピソード、意見が形成される背景などを掘り下げられるため、新商品開発やサービス改善、ブランドイメージの把握など、マーケティング活動の多岐にわたる目的で活用されます。
より詳細は以下のコラムで解説をしております。
「フォーカスグループインタビュー(FGI)とは?流れやメリットを解説」はこちら>
モデレーターとは
モデレーターとは、グループインタビューにおいて、議論を円滑に進め、参加者から最大限の意見や情報を引き出す役割を担う専門家です。そのため、進行役やインタビュアーは似ている言葉として挙げられ、ケースバイケースでこれらの言葉を使うこともあるでしょう。
モデレーターは、質問を読み上げるだけでなく、参加者の発言をうながし、話題が脱線しないよう軌道修正し、時には新たな視点を提示するなど、その役割は多岐にわたります。
そのため、高度なコミュニケーション能力と、参加者の本音を見抜く洞察力が求められます。参加者全員が平等に発言できる機会を設け、特定の意見に偏らず、多様な視点を取り入れることで、質の高い情報を引き出すことがモデレーターの重要なスキルとなります。
グループインタビューを成功に導くためには、その「設計図」ともいえる「進行表」がとても大切です。これがしっかりしていないと、議論は散漫になり、本当に知りたい情報にたどり着くことが難しくなります。
この章では、質の高いグループインタビューを実現するための進行表の作り方について、解説します。

| 深掘りステップ | テーマ(調査項目)例 | 説明 |
|---|---|---|
| 1. インタビューの導入 | 「簡単な自己紹介」などといったテーマ | インタビューの導入として、緊張を和らげるウォーミングアップ的なテーマを用意しましょう。「個人的な体験」や「簡単な自己紹介」など、誰でも答えやすいテーマから始めることで、参加者は安心して話す雰囲気に慣れていきます。 |
| 2. すぐに答えられるテーマ | 「現在の習慣や行動」に関するテーマ | すぐに答えられる「現在の習慣や行動」に関するテーマへと移行するのが良いでしょう。日常的な出来事や最近の経験など、直近の記憶にアクセスしやすい内容が適しています。 |
| 3. 記憶を辿ってもらう必要があるテーマ | 「過去の行動や体験」に関するテーマ | 記憶を辿ってもらう必要があるテーマ、たとえば、過去の行動や体験に関するテーマで質問を行っていき、具体的なエピソードや背景情報を引き出していきます。 |
| 4. 深層部分に踏み込むテーマ | 「なぜそう感じたのか」といった行動の動機や課題、ニーズを問うテーマ | インタビューの核心となる行動の動機や課題、ニーズといった深層部分に踏み込むテーマへ進め、「なぜそう感じたのか」「どんな不満や期待があるのか」など、本質的な問いかけを行うことで、より深い洞察を得られます。 |
こういった深掘りステップを意識し、段階を追って自然に思考を深められるテーマ構成を組むことで、参加者が無理なく、かつ本音に近い発言をしやすくなり、インタビューの質を大きく高められます。
| 注意点 | 例 |
|---|---|
| 深掘りのポイント | この質問では“なぜそう思うのか”をていねいに引き出すこと |
| 詰まりやすい質問のフォロー案 | 答えに迷ったら「最近の具体的なエピソードは?」と助け舟を出す |
| センシティブな話題への配慮 | 競合の話が出た場合は、中立的な対応を心がける |
このようなメモを質問内容と共に添えておくことで、モデレーターは進行中に気にすべきことが減り、咄嗟の判断や柔軟な対応をしやすくなります。会話のテンポを崩さず、参加者の発言を自然に引き出すことが可能になります。
グループインタビューの進行表は、単に質問を並べているだけでは、その真価を発揮できません。効果的な進行表を作成するには、いくつかの重要なポイントを考慮し、細部にまで気を配る必要があります。
この章では、進行表を作成する際に特に意識すべき点について解説します。
例えば、「参加者の世帯年収を聞きたい」という要望があったとします。しかし、本当に知りたいことが「そのカテゴリの商品にどれくらいお金を費やせるのか」といった情報であれば、直接的な世帯年収の質問から的確な情報を得ることはできません。
この場合、「月にご自身で自由に使えるお金はどのくらいですか?」や「その化粧品には月にどれくらいの費用をかけますか?」といった質問の方が、求めている「知りたい情報」をより的確に引き出せる可能性があります。
このように、「聞きたいこと(表面的な質問)」と「知りたいこと(その質問を通じて得たい本質的な情報)」を混同せず、調査目的を達成する質問にすることで、グループインタビュー中の議論の解像度が格段に上がり、より効果的で質の高いインタビューの実現が可能になります。
質問の順番
質問の順番を設計する際は、参加者が無理なく思考を深めていけるよう、自然な流れを意識することが大切です。グループインタビューの参加者は、多くの場合、自分の意見や価値観を明確に意識しているとは限らず、環境や他者の発言に影響されて揺れ動くこともあります。
そのため、まずは「過去の行動」や「選択時の背景」など、比較的答えやすい「事実ベース」の質問からスタートするのが効果的です。具体的な体験を振り返ることで、参加者は自身の行動に対する理解を深め、それに基づく考えや感情も整理しやすくなります。
こうしたステップを踏むことで、参加者は現在の心境や意見が的確になるとともに、未来に対する期待や不安、要望といったより抽象的・感情的な内容も、自然に引き出せるようになります。
優先順位
調査で得たい情報の重要度に応じて、各質問に「優先順位」を設定することも重要です。グループインタビューは、参加者の自由な発言によって思わぬ気づきや深いインサイトが得られる点が魅力である一方、議論が予定通りに進行しにくいケースもあります。
特に、インタビューの前半で議論が盛り上がりすぎてしまうと、後半に予定していたテーマや質問に十分な時間を割けなくなるというリスクがあります。こうした事態を避けるためにも、調査目的に照らして優先度の高い質問は、適切なタイミング(中盤など)で確実に扱えるように配置しておく必要があります。
進行表を設計する際には、質問の流れだけでなく、それぞれの質問が持つ重要性と位置づけもあわせて整理することで、限られた時間の中でも調査の目的を着実に達成できるようになります。
この記事では、グループインタビューにおける進行表の役割から、作成のステップ、実践時の注意点について解説しました。
進行表は、インタビューを成功へと導くための「設計図」であり、リサーチの目的を正確に達成し、質の高いインサイトを得るうえで欠かせない存在です。事前にしっかりと準備された進行表があれば、インタビューの進行は格段にスムーズになり、参加者から引き出される情報の深さや精度も大きく向上します。
ぜひ、本記事の内容を参考にしながら、進行表を効果的に活用し、ビジネスの発展に貢献できるグループインタビューを実施していきましょう。
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