公開日:2020.07.14

モノを持たない消費

  • リサーチャーコラム

はじめに

「サブスクリプション」「シェアリングサービス」「フリーマーケットアプリ」。数年前より、急速に世の中に浸透しているこれらのサービスの利用経験がある方も多いのではないでしょうか。
「所有から利用へ」という言葉もよく耳にするようになったり、これらのサービスが世の中に浸透し、「モノを持たない消費」が徐々に増えてきていると感じています。
先日のコラムでも「コト消費(ミレニアル世代のコト+ヒト消費)」について触れましたが、今回は「モノを持たない」ということに焦点を当ててみていきます。
 

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「モノを持たない」消費とは

『モノを所有する』ことを買っている

以前、テレビで以下のように話す男性のインタビューを拝見しました。

いらなくなったらフリマアプリで売る、もしまた同じようなモノを欲しくなったらフリマアプリで買う。お金を使うこともあまりなく、自分の好きなタイミングで好きなモノを手にするし、手放す。

「モノを買う」=所有する、というイメージが強かったのですが、このインタビューを見て、「この男性は『モノを所有する』ことを買っているんだ」という新しい考え方にハッとした記憶があります。

使いたいときに購入して使う。不要になったら手放す。また必要になったら選び、買う。

流れを文字に起こすと、至極当たり前の「購入・利用」の流れのように見えます。
が、この「手放して、また新しいモノを購入する」という行為の壁を感じている方も多いのではないでしょうか。値段が高いモノなら尚更、「故障したから」「1年以上使っていないから」など、何か理由がないと「手放す」という行為に至らないというケースが多いように思います。

この壁を壊したのが、冒頭に述べた「サブスクリプション」「シェアリングサービス」「フリーマーケットアプリ」のサービスです。サブスクであれば、定額で好きなときに好きなモノを交換できる。フリーマーケットアプリであれば、今までよりも簡易的に自身のモノを売買できる。金銭的なダメージも少なく、かつ容易に先ほどの流れが実行できます。

思い返してみると、以前から身近にあるリサイクルショップや古着・古本屋などもこのような流れを形成していたように感じます。
ただ、冒頭に述べたようなサービスの台頭・インターネット環境の進化により、「『モノを所有する』ことを買う」ことが、より身近になってきているのではないでしょうか。

「コト消費」を重視している

先日のコラムでも触れたように、「体験できる内容」への重視も、この「モノを持たない」に繋がっています。「いろいろなモノを利用する」「モノを所有することを買う」という”体験”が、特に若い世代に受け入れられているように感じます。
 

「モノを持たない」メリットとは

触れられる「モノ」が多くなる

今回のテーマとまるで逆の言葉となりますが、好きなタイミングで手放すことができる分、同じジャンルの様々なモノを手にすることができます。
ひとつのモノに固執をすることなく、同ジャンルのいろいろなモノに触れることにより、新しい発見・好みなどに気付くことができます。また、「興味はあったけれど手が出せなかった…」というジャンルにも、「好きなタイミングで手にして、好きなタイミングで手放せる」ことから、今までよりも気軽に触れられることも可能です。

スペースや生活に余裕ができる

洋服のサブスクリプションを利用したり、長く使っていないものをフリマアプリで売ったりすれば、家の中に自然にスペース・ゆとりが生まれます。また新しい目的のために、スペースを有効的に使うことができます。
また、余裕ができる分「本当に必要なものがわかる」という話も聞いたことがあります。
本当に必要なモノが、不必要なモノに埋もれてしまっている。だから、欲しいタイミングで必要なモノが出てこない。「モノを持たない」生活では、本当に必要なモノだけを所持したり、「今足りないモノ」をすぐに把握したりし、生活自体にも余裕が生まれます。
 

「モノを持たない消費者」が求めること

消費者の求める価値も「モノの質」だけではなく、「サービスの質」へと変化します。
満足度の矛先も、「モノ」を内包した「サービス」になります。そのサービスを通じて「生活がどう変化するのか・どう便利になるのか」「通常の「モノ」の購入と比較して、どんな利点があるのか」が重要になってきます。
上記の点を上手く広められれば、今までそのジャンルの「モノ」に興味がなかった顧客にも「こういった利用方法があるんだ」「こういう暮らしができそう」などと感じてもらい、新たな取り込みも可能なのではないでしょうか。
 

さいごに

冒頭のようなサービスも、店頭などの実店舗ではなく、インターネットで提供されていることが大半です。コラムでも以前触れた5GVR/ARの普及により、今後更に「モノを所有」するのではなく、「利用」するような様々なサービスが展開されるのではないでしょうか。一方で、「モノ」の価値が軽視されていることもなく、むしろこのようなサービスの台頭による、「所有する価値」についても見直される機会が多くなるのでは、と推測します。

また、時代の移り変化・新規サービスの誕生、既存サービスの進化とともに、消費者の行動や考え方も大きく変化します。世の中の変化を察知しつつ、消費者の深層心理を正しく読み解くことが、今後も変わらない市場調査会社の役割です。

現在、家のサブスクもある(!)時代です。消費者目線で考えると、本当に驚きのサービスがたくさん世の中に浸透しています。今後もどのようなサービスが展開されるのか楽しみですね。

消費者は「在庫」を抱えない暮らしにシフトし、モノが売れない時代ではなく、買わない時代になります。買うモノ・借りるモノ・シェアするモノ、、、それらがどのようなカテゴリ、どのようなジャンルに広がっていくのか、注視していきましょう。
 

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執筆者
笠原 悠里
株式会社アスマーク リサーチソリューショングループ
商品企画士(JMLA)
他社にてSNS運用・求人広告のディレクション業務などを経験後、2019年より現職。リサーチャーとして主に定量調査の調査票作成~報告書作成を担当し、自社開発のオンラインインタビューシステム「i-PORT voice」のローンチ時にも主力として貢献。マーケティングリサーチの好きなところは、消費者や世の中を特別な角度から見られること。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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