
2020.06.10
Tableau vs Excel
~Tableauの優位性はどこにあるのか?~
Tableauを使えていない方から「Excelで十分」「Excelの方が使い慣れているから早い」という言葉を耳にします。もちろんExcelにはExcelのよさが……
公開日:2025.09.08
近年、AI技術はリサーチの世界を大きく揺さぶっています。これまで人間の手に委ねられてきた情報収集や分析、さらにはレポート作成までも、いまやAIが瞬時に支援し、そのスピードと効率性は従来の常識を覆すほどです。
しかし、ここで浮かぶのは本質的な問いです。AIはリサーチの「質」を高める相棒となるのか、それとも単なる効率化のためのツールにすぎないのか。本コラムでは、AIを良きパートナーとして活用するためのヒントを探りながら、この問いに対する私なりの見解をお伝えしたいと思います。
AI導入のインパクトとしてまず挙げられるのは、生産性の向上です。従来ゼロから立ち上げていた調査企画書や設計案も、AIに「叩き台」を生成させることで、スタート地点が一段高いところに設定できるようになりました。
たとえば、調査対象者条件や質問項目のアイデアを提示させると、思いがけない観点が含まれていることがあります。もちろんそのまま使えるものばかりではありませんが、「検討の土台」があるのとないのとではスピードも発想の幅も大きく違います。
また、分析段階でもAIは強力です。複雑な統計手法を「小学生にもわかるように説明して」と指示すれば、驚くほど平易な解説を返してくれます。実際に統計解析用のコードを生成させ、ブラウザ上で有意差検定を試したところ、過去の分析結果と整合したこともありました。こうした支援によって、リサーチャーはこれまで以上に多くの案件を効率的に回しつつ、学習のスピードも高められるようになっています。
便利さの裏で忘れてはならないのが、AIが返す答えはあくまで既存情報の集約にすぎないという点です。そこには「誤差」が必ず含まれます。
誤差には大きく2種類あります。ひとつは「体系的な誤差」、つまり情報源が偏っているがゆえに生じる歪みです。もうひとつは「偶然誤差」、一見正しいが古い情報や参照元が不明瞭なものが混入するケースです。実際に、提示された情報源を確認したら2006年のランキングが引用されていた、という経験もあります。
調査データを扱う上で「代表性=一般化可能性」を常に意識するのと同じように、AIの出力をそのまま「事実」として受け取ることはできません。むしろ、AIが提示するものは「調査現場に立つための縮図」にすぎないと捉えるべきです。その縮図をどのように精査し、自分たちの調査文脈に適用できるかを判断することこそ、リサーチャーの役割だと考えています。
セルフ型調査サービスにAIが組み込まれ、誰でも手軽にアンケートを設計・配信できる時代になりました。確かに「調査を実施する」だけであれば、人間が介在しなくてもある程度は可能になりつつあります。一方で、AIには苦手な領域があり、代表的なのが「人間の感覚」や「回答の揺らぎ」を組み取る部分です。
たとえば、設問のボリューム感や選択肢形式の調整は、回答者の心理的負担を想像しながら設計しなければなりません。自由回答で尋ねるのか、選択肢を提示するのか、さらに上位3つを選ばせるのか。この判断は単なるロジックではなく、回答者の気持ちや行動特性を想像する力に支えられています。
同様に、定性調査のインタビューもAIでは代替が難しい領域です。対象者の表情や声のトーン、間の取り方から洞察を導くのは、人間にしかできない作業です。AIが生成する「平均的な回答」は存在しても、実際の人間が持つ矛盾や葛藤や「Aだが同時にBでもある」という二重性までは再現できません。そこにこそインサイトの源泉があります。
AIに依存しすぎると、調査担当者や依頼者自身の思考力が低下するリスクがあります。AIが出力した設計案をそのまま採用しても、調査会社が持つノウハウや経験知は反映されません。結果として得られるデータは、表面的で実務に活かしづらいものになりかねません。
重要なのは「AIリテラシー」を持つことです。つまり、AIを「答えを出す存在」ではなく「問いを広げる相棒」として扱えるかどうかです。ファクトチェックを怠らず、情報の背景を読み解く習慣を持つことで、AIはリサーチャーの力を増幅させる存在となります。逆にそれができなければ、AIが返す「誰にでも当てはまるが誰のものでもない答え」に振り回されることになるでしょう。
最終的に調査が目指すのは「データの収集」ではなく、むしろ「ビジネスに資するインサイトの提供」です。確かにAIは調査工程を効率化し、仮説構築の幅を広げてくれます。しかし、その出力をインサイトへと最終的に昇華させるのは人間の役割です。
だからこそ、AI時代においてこそ、リサーチャーの存在意義は強まると私は考えています。というのも、AIが得意とする大量処理や情報整理はAIに任せる一方で、我々は「調査の目的を正しく定義すること」「回答者の声の奥に潜む動機を読み解くこと」「データの限界を理解したうえで、経営やマーケティングの意思決定に直結する示唆を導くこと」に一層注力すべきだからです。
結局のところ、AIに仕事を奪われるかどうかは、AIをどう位置づけるか次第です。ゆえに私は、AIを恐れるよりも「自分の専門性をどう拡張できるか」という視点で向き合うことが、調査に携わる人間にとっての将来への鍵になると考えています。
AIは調査を効率化し、時に知識の拡張を助けてくれる心強い存在です。しかしその答えはあくまで既存情報の集約であり、誤差を含むものであることを忘れてはいけません。だからこそ、リサーチャーが持つべきは「問いを立てる力」と「人間を理解する力」です。
近年では、アンケートの立案から実施・分析までを一気通貫で任せられるAIエージェントが登場し、さらに「仮想的な大規模ペルソナ」を生成して市場調査をシミュレーションするような取り組みも進んでいます。こうした技術は調査のスピードとスケールを飛躍的に高める一方で、「本当に人間を映し出しているのか」「回答者の感情や揺らぎを再現できているのか」といった根源的な問いを私たちに突きつけています。
つまり、AIの登場によって調査の価値が下がるのではなく、むしろリサーチャーの洞察力がこれまで以上に問われる時代になったのです。AIが提示する合理的なモデルを鵜呑みにするのではなく、その裏に潜む人間らしさや不可解さを見極める力こそが、これからの調査に不可欠となります。そして、その洞察こそがクライアントにとってのビジネス価値に直結するのです。
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【検証レポート】「アンケート画面の作り」による回答への影響検証とは?
アスマークのリサーチャーによる実験調査シリーズの第4弾として、
今回は「アンケート画面の作り」でどの程度調査結果が変わるのか?
本紙では、実データによる具体例を提示し、調査設計上考えるべき点について考察を行っています。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 「アンケート画面の作り」でアンケート結果がどの程度調査変わるのか知りたい
● バイアスを抑えるマトリクスやFA設問の作成方法を知りたい
● 画像の有無で認知率・購入経験率はどのくらい変わるのか知りたい
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【検証レポート】「聞き方の違い」「アンケート画面の作り」による回答への影響とは?
アスマークのリサーチャーによる実験調査シリーズの第3弾として、今回は様々な業種や商材をテーマに、NPS・NRS間における比較を初めとした「聞き方の違い」に焦点を当て、どの程度調査結果が変容するかを調査しています。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● モニターの回答バイアスを最小限に抑えたい
● NPS・NRSのどちらが自社のアンケートに適すか知りたい
● 自社カテゴリに合うアンケートの特性を知り、調査設計や実務へ活かしたい
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【検証レポート】アンケートの回答負荷、データに与える影響は?
「回答負荷によってどの程度調査結果が変わるのか?」について、実データによる具体例を提示し、以下項目などを検証し解説したレポートです。
● 設問文の長さ
● 意識してほしい文言の強調の有無
● 選択肢の多さ
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● アンケートの回答負荷でどの程度調査データに差が出るのか知りたい
● 設問設計による回答バイアスを最小限に抑えたい
● アンケート調査を設計しているため、事前に設計による回答の違いを把握しておきたい
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【検証レポート】設問文・選択肢の見せ方で回答データは変わるのか?
設問文・選択肢の見せ方で、回答データに差は生まれるのかを検証し解説したレポートです。
下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
● 設問文・選択肢の見せ方でどの程度回答データに差が出るのか知りたい
● 設問設計による回答バイアスを最小限に抑えたい
● アンケート調査を設計しているため、事前に設計による回答の違いを把握しておきたい
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アンケートモニターの登録歴で回答傾向に違いがみられるか?実データから考察を紹介
マーケティングリサーチにおいて、生活者のニーズや市場動向を迅速に把握する上で、ネットリサーチは非常に有効な手段です。そして、その調査の成否を左右するのが、アンケートに協力してくださるモニターの存在です。しかし、「ポイ活」という言葉が普及し、調査に慣れたモニターが増える一方で、ポイント獲得を主目的とする回答姿勢が「回答バイアス」を生み、取得データの精度に影響を及ぼすのではないかという懸念も高まっています。
本記事では、弊社の自主調査の結果を基に、こうした回答者の傾向に違いが見られるのかを分析し、より精度の高いネットリサーチを実現するための示唆を提供します。
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【リサーチ発注者の方向け】調査の成果を高める目線・思考法とは?
企業において、調査担当という役割を担うとき、多くの方がまず気になるのは、具体的にどんなスキルが必要なのかという点でしょう。
アンケートの設計方法や集計ソフトの使い方といったテクニカルな要素に目が行きがちですが、私が現場で強く感じているのは、それ以前に「調査の根幹」を押さえられるかどうかで成果が大きく変わる、ということです。
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「サンプルの代表性」はどこまで追求すべきか?
マーケティングリサーチの世界で「サンプルの代表性」という言葉を聞いたことがないリサーチャーはいないでしょう。調査結果が母集団(例:「全国20~60代男女」)の縮図となっているか、つまり母集団全体に一般化できるかを示す、調査の信頼性を支える重要な概念です。
確かに、代表性の確保は調査の基本であり、市場規模の推計などを行う際には不可欠です。しかし、代表性を追求することだけが、優れたリサーチの絶対条件なのでしょうか。
今回は理論的な理想と、限られたリソースの中で成果を出すための実務的な「落としどころ」を見つけるバランス感覚の重要性について触れたいと思います。
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2020.06.10
Tableauを使えていない方から「Excelで十分」「Excelの方が使い慣れているから早い」という言葉を耳にします。もちろんExcelにはExcelのよさが……

2025.08.19
調査をしていると、必ずといっていいほど出てくる言葉があります。それが「バイアス」です。 バイアスとは、調査結果に影響を与える偏りのこと。統計や心理学の分野では……

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2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者による「合理的配慮の提供」が義務化されました。この法改正を背景に、マーケティングリサーチの現場でも、障……

2020.11.30
はじめに 周知のとおり、TwitterやInstagramといったSNSのユーザー数は年々増加しています。 情報収集行動においても、若年層を中心に「ググる」……