
2019.12.04
標本(サンプル)、標本調査とは
標本(サンプル)、標本調査とは・・・ 統計調査を行う際に、対象のすべてを調べるのではなく、一部だけを取り出して調査するものを標本調査といい、取り出され……
公開日:2025.05.26
マーケティング活動の一環として、自社ブランドのポジショニングを把握するために使われるコレスポンデンス分析ですが、上手に活用するためには、使用方法や注意点などをしっかり理解する必要があります。
本記事では、コレスポンデンス分析の活用事例をはじめ、分析方法やメリット・デメリット、活用する上で気をつけたいポイントまで、詳しく解説します。
コレスポンデンス分析(略称「コレポン」)は、自社と競合ブランドを比較して、イメージのポジショニングを把握する際に便利な分析手法です。この分析手法は、多変量解析という分析手法の一つで、日本では対応分析とも呼ばれることがあります。アンケートなどで収集したデータをクロス集計表に落とし込み、さらにそのデータを二次元マップ(散布図)に変換することで、視覚的に情報の関係を把握することが可能です。
コレスポンデンス分析は、数量化Ⅲ類と数理的に似ています。特に、2値(0 or 1)のデータを扱う場合には、特異値分解(SVD)を用いてカテゴリー間の関係性を可視化するという点で類似しています。
例えば、以下の「図 クロス集計【ブランドや商品 × イメージ】(n表)」のようなデータがあったとします。

このクロス集計表では、各ブランドが「親近感がある」「信頼感がある」「個性的な」「独自性がある」「かわいい」といったイメージに対して、それぞれどの程度の回答数を得ているかが示されています。
このデータをコレスポンデンス分析にかけることで、下図のように、ブランドとイメージが二次元マップ上にプロットされます。

この散布図から、評価項目との距離が近いほど関連性が強く、遠いほど関連性が弱いと解釈できます。
また2つ読み取れることを挙げると、ブランドAは「個性的な」や「独自性がある」といったイメージの近くにプロットされており、これらのイメージが強いブランドであることを視覚的に認識することが可能です。ブランドBは「かわいい」や「品質が優れている」というイメージと近く、他のブランドに比べてその特徴が際立っていることを読み取れます。
コレスポンデンス分析は、この散布図を作成する過程で、下図のように、各項目(行と列)の順序を並び替えます。

項目間の相関が最大になるようなイメージで並び替えます※。
※ 実際には、行や列を並び替えるのではなく、数値化されたスコアを軸として空間的に解釈するため、「距離最少化・配置最適化」がより近い表現になります。ご留意ください。
各要素との位置関係を参考に、そのブランドがどんなイメージを持たれているかを把握することで、大量のデータを直感的に理解し、マーケティング戦略に役立てることが可能です。
ではコレスポンデンス分析は具体的にどのように進めていくのでしょうか。5つのステップに分けて、順を追って解説します。
マーケティングの分野では、主に自社ブランドや製品のポジショニングマップを作成するために活用されます。そのため、「自社製品と他社製品を比較して、消費者にどのようなイメージで捉えられているのかを把握するために実施する」など目的を明確にしておきましょう。分析のためのアンケートを実施する際には、事前にある程度仮説を立てた状態でアンケート項目を設定すると、より目的にあったデータが収集されやすくなります。
集めたアンケートデータからクロス表を作成します。この際、%表の数値でなくn表の数値を使用しましょう。コレスポンデンス分析は単回答、もしくは複数回答の質問で得られたデータに対して分析を行います。例えば縦軸には自社と競合を、横軸にはそれぞれのイメージを配置すると、このようなクロス集計表が完成します。

分析には統計ソフトを使います。エクセルに統計ソフトをインストールして分析を行いましょう。無料のソフトであれば「R」、有料ソフトであれば「JMP」「SPSS」「SAS」「エクセル統計」などがありますので、試してみてください。
統計ソフトで分析した結果を散布図として表示します。統計ソフトの機能に散布図がなかった場合でも、Excelの機能として散布図作成があるため安心してください。散布図はこのようなイメージで表示されます。

それぞれの項目で近くに配置されているもの同士の、関係性が強いと判断できます。
散布図は、自社のイメージを把握することで新商品の開発に役立てられる他、既存商品の課題点を見つけることにも活用できます。
例えば、下記それぞれアンケートをとり、コレスポンデンス分析を行ったとしましょう。
すると、2種類の散布図が出来上がります。
その2種類の散布図を比較し、「購入している人が持つ自社商品のイメージ」と「購入経験がない人の自社イメージ」にギャップが生まれるのであれば、そのギャップを埋める戦略をとることで、利用者を拡大できる可能性が出てきます。
なお、分析を行う際に重要となるのが、分析結果の信頼性を把握するための「固有値」と「寄与率」の確認です。
コレスポンデンス分析では、軸ごとに「固有値」と呼ばれる数値が算出されます。これは、各軸が全体のデータ構造の中でどれだけの情報(分散)を説明できているかを示すものです。
そして、この固有値を元に算出されるのが「寄与率」です。寄与率とは、その軸が全体情報のうち何%をカバーしているかを示す指標で、この数値が高いほどデータの全体像をよく表しているといえます。これは見方を変えると、第1軸と第2軸の寄与率合計が50%未満のように低い場合は、散布図に表れていない情報が多いため、より慎重な解釈が必要なことを意味します。もし、固有値が1以上で、寄与率の合計が80%以上の場合、元データの反映率は高いと言えるでしょう。
分析を行う際には、散布図などから読み取れる内容だけでなく、固有値や寄与率などを確認して解釈を深めることが、より正確な分析結果につながります。
このように、コレスポンデンス分析は多くの情報を視覚的にわかりやすく整理できるため、課題を見抜くための分析ツールとしても利用されています。
ここでは、コレスポンデンス分析の具体的な活用事例をご紹介します。
よく使われる2つの事例をご紹介しますので、自社ではどのような活用方法があるのか、イメージしながら確認してみてください。
プロフィールデータ × ブランドや商品イメージ
まずは、カスタマーの特性ごとに、自社へのイメージの違いがあるのか?という視点で分析する方法です。この方法は上記「コレスポンデンス分析の手順」で示してきたクロス集計表や散布図がそれに該当するため、改めて流用していきながら解説をしていきます。
表側項目(縦軸)を「性別」「年代」「居住地」「職業」などのプロフィールデータにし、表頭項目(横軸)を自社ブランドへのイメージ項目に設定します。下図がクロス集計表のイメージです。

この状態でコレスポンデンス分析を行うことで、プロフィールデータごとのイメージ(例えば20代女性からは◯◯なイメージ、首都圏在住の男性からは◯◯なイメージなど)を下図のように可視化することができます。

この分析を行うことで、メインターゲットの趣向性把握、また獲得したいターゲットからのイメージギャップが知れるため、今後の商品開発やプロモーション戦略に活かすことができます。
ブランドや商品 × イメージ
次に、自社と他社のブランドや商品イメージ比較、もしくは自社商品の中でのイメージ比較をしたい場合の分析方法です。
表側項目(縦軸)をブランドや商品名にし、表頭項目(横軸)を例えば「おしゃれな」「かわいい」「親近感がある」などのイメージ項目に設定します。下図がクロス集計表のイメージです。

これにより、競合ブランドとのイメージ比較や、自社商品内でイメージの差別化ができているのか、などを下図のように可視化することができます。

「どんな競合よりも◯◯なイメージでありたい」という目的があるのであれば、上記の分析方法で自社の現状把握や競合の認知が可能です。
コレスポンデンス分析のメリットは大きく2つです。
クロス集計表もカテゴリーごとの要素を比較するものですが、カテゴリー数が増えれば増えるほど、数表から結果を読み解くことが難しくなります。
一方コレスポンデンス分析では、二次元マップで直感的に傾向を確認できるため、視覚的に結果を分析することが可能です。
また、コレスポンデンス分析は集計前のローデータが手元になくても、クロス表があれば分析が可能なため、インターネット上に公開されているデータを利用することもできます。
コレスポンデンス分析のデメリットは大きく以下の2つです。
コレスポンデンス分析では、情報間の割合で散布図が作成されますが、マッピングされたそれぞれの点からn数を確認することができません。
例えば、散布図上でAというブランドと「話題性がある」という要素が近くに配置されていたとします。
しかし、クロス表ではBというブランドの方が「話題性がある」のn数が多いというケースがあるのです。クロス表の回答数や割合の大きさが点の位置関係と一致するとは限らないため、データ解釈を誤る可能性がある点はデメリットと言えるでしょう。
また、選択された項目はブランドや商品のイメージですが、それが顧客によって「良いことか」までは判断できません。自社ブランドの現在のポジショニングは把握できますが、「もっとファンを増やすためにはどうすべきか」は、また別の思考ポイントとなる点は覚えておきましょう。
コレスポンデンス分析を活用するには、以下のポイントに注意する必要があります。
コレスポンデンス分析は、視覚的にデータの特徴をつかみやすい反面、読み解くためには分析者の考察力が求められます。散布図と数値データの両面からていねいに確認して意味づけを行うことが、正確性を高め、有益な分析結果を得る可能性を広げられます。
コレスポンデンス分析とは?という説明から、分析手順や活用事例、メリット・デメリットまで解説しました。
マーケティングにおいて、自社のポジショニングを見極めることは非常に重要です。そして、コレスポンデンス分析を使うことで視覚的にポジショニングを確認することができ、ブランディングの見直しや、商品開発に活かすことができます。
コレスポンデンス分析で分析できる対象はさまざまです。「何のために実施するのか」によって、収集すべきデータや分析方法、考察の方向性も変わりますので、ぜひ目的を明確にした上で、効果的にコレスポンデンス分析を活用してください。
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下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
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