
2025.08.22
海外調査と国内調査の違いとは?海外市場動向から事例、フローまで解説
近年のグローバル化に伴い、多くの日本企業にとって海外市場の重要性はますます高まっています。しかし、現地の生活者のニーズを的確に捉え、事業を成功させるためには、勘……
公開日:2025.07.07
消費者理解を深める手段として、インタビュー調査は多くの企業で活用されています。その中でも、調査の成果を左右する重要な要素の一つが「インタビューフロー」の設計です。インタビューフローとは、調査目的に基づき、どのような質問を、どのような順序で、どのような聞き方で行うかを体系的に整理したものです。
本記事では、インタビューフローの基礎から、作成する前に意識すること/作成する際に意識すること、グループインタビューとデプスインタビューの注意点に至るまで、実践に役立つ視点を具体例とともに紹介していきます。
この章では、「インタビューフロー」について、『調査』という全体像から紹介していきます。
まず、「調査を行う」とき、その行動の背景には「何かの意思決定をしたり、物事を進めたりする上で、消費者のことを知らないといけないので、調査が必要になる」といった流れがあるのが通常です。
こういった背景や目的から実際の調査のアウトプットまでプロセスを図にすると、下図のようになります。

この図をご覧いただくと、左側と右側に項目がまとまっており、左側は調査設計のプロセス、右側は報告書作成のプロセスとなります。
左側では、「意思決定をしたい」「プロジェクトを進めたい」といった調査背景を出発点とし、そこから「何を明らかにしたいのか」「どのように活用したいのか」といった調査目的を整理していきます。調査目的が定まったら、それに対する仮説を複数立て、それらの仮説を検証するために必要な情報=調査課題を設定します。さらに、その課題に基づいて、インタビューで何を聞くべきかを調査項目として具体化していきます。
続いて、右側は調査で得られた回答の解釈を「詳細編」として整理し、仮説に対する答えを「トップライン」として示します。調査全体を通じて何が明らかになったのかは「調査結果サマリ」にまとめ、そこから導かれる次の一手や戦略的な示唆が「考察・提言」となります。
インタビューフローは、この中の調査項目の部分にあたり、インタビュー全体の流れを書いたものを指します。前述でも「調査項目」について紹介しましたが、別の表現で解説をすると、調査課題をクリアにするために聞かなくてはいけない質問を整理し、調査の質を向上させる役割を担っているのが「調査項目」です。
そのため、このインタビューフローは、どのようなことを明らかにするために何を聞くのかを調査発注側と調査会社側で目線を揃え、調査目的を達成するために欠かせません。
ここで、インタビューフローについて理解を深めていくために、「構成的/半構成的」について紹介します。
そもそも、インタビュー調査は、さらに上位概念の定量調査と定性調査のうち、定性調査に含まれる調査手法になります。この定性調査は、半構成的な調査です。一方で、定量調査のイチ手法としてアンケート調査があり、これは構成的な調査です。
構成的な調査では、あらかじめ決まった質問項目と順番に沿って、すべての対象者に同じ質問を同じ順序で聞いていきます。対して、半構成的な調査では、基本的な質問の軸は決まっているものの、状況に合わせて質問の順番を変更することが可能です。

たとえば、上図の左は、構成的な調査の質問項目例です。アンケート調査でQ1~Q5について、すべての対象者に、この順序で伺う形が、想像しやすいでしょう。
一方で、半構成的な調査では、右のように赤字の「使用のきっかけ」や「不満点」などが調査実施中(≒インタビュー中)の状況に応じて追加されております。また、Q4とQ5の順番が入れ替わっています。
このように半構成的な調査は、会話の流れに応じて、
といったように、質問の順序を柔軟に変えながら、目的を達成できるよう、回答内容に即した深掘りを行っていきます。
あらかじめ用意された“質問項目”を基にしつつも、対話の流れに合わせて自由度を持たせることが特徴的です。
インタビューフローを設計する際には、インタビュー全体の“流れ”を具体的に思い描けるようにしておくことが大切です。そのためには、「どのようなことを、どのような聞き方で、どのタイミング/順番で、どのくらいの時間をかけて聞くのか」を事前に整理しておく必要があります。
インタビューでは、会話の流れに応じて質問の順番が多少前後することはありますが、「何を先に把握し、その上で何を深掘るのか」といった大きな流れは維持する必要があります。この基本的な流れを崩さないことが、インタビューの質を保つためのポイントです。
インタビューフローは以下の要素で構成されます。
下図はインタビューフローの具体例です(カッコ内の数字はトータルの累計時間を表しています)。
| 時間 | 聴取項目 | 分析視点 |
|---|---|---|
| 5分 (5分) |
1. 導入:趣旨説明と背景理解 ・自己紹介(名前、年齢、居住エリア、家族構成、仕事、趣味) |
ラポール形成※1 |
| 15分 (20分) |
2. 普段のゲーム行動について ・よく遊ぶゲーム機とゲームジャンルとシーン ・プレイするゲーム機 ・プレイシーン、プレイ場所 ・ゲーム機ごとでプレイするゲームジャンルやタイトル ・ゲームのプレイ頻度、ガチャの有無 ・ゲームタイトルの情報取集方法 |
ゲームシーンの把握 ゲームの嗜好性の把握 |
| 20分 (40分) |
3. コンセプト評価 ・コンセプトを呈示しての評価 ・第一印象 ・プレイ意向を100点満点で評価し、その理由 ・相対評価 |
コンセプト評価※2 |
※1 ラポール形成とは、相手との間に信頼関係や親密な関係を構築し、心理的な「架け橋」を築くことを指します。
※2 ここでの「コンセプト評価」は、新商品やサービス、広告などのコンセプトが、ターゲット層にどのように受け止められるかを検証する、という意味合いで使用しています。
この表では、聴取項目に「こんなことを聞く」といった箇条書きでいくつか用意していますが、「質問文」のレベルにまで落とし込むモデレーター(≒司会者)もいます。
この例でいうと、「今お持ちのゲーム機を教えてください」「どのようなゲームジャンルをどのタイミングでプレイしますか?」といった質問文で用意しておくと、曖昧なテーマを具体的な質問へと言語化することができ、迷わずに進行することができます。
また、分析視点も事細かに考えておくことで、「知りたいこと」からのズレを防ぎ、的確な情報収集が可能になります。
こうした準備を行うことで、インタビューフローの完成度を高め、調査の質を向上させることができます。
この章では、インタビューフローをどのように設計していくのか、その基本的な考え方と進め方について解説していきます。
インタビューの成果は、実施そのもの以上に、事前の設計に大きく左右されます。「レシピ」が明確であればあるほど、モデレーションはぶれにくく、分析もスムーズに行えます。
インタビューフローを作成する前に、意識しておくべきポイントが3つあります。これらを整理しておくことで、インタビューフローの設計が、目的から大きく逸れることなく、調査の質を保つことができるようになります。
これら3つのポイントの話において、「知りたいこと」と「聞きたいこと」という話が出てきます。
そもそも「知りたいこと」というのは、調査目的や背景、仮説に基づく“解明すべき本質”のことです。
一方で「聞きたいこと」は、その本質を解明するために対象者に実際に投げかける“具体的な質問”を指します。この違いをより明確にするため、以下に具体例を挙げて説明します。
具体例:動画サービスの利用実態を把握したい
「動画サービスの利用実態を把握したい」と考えている方がいたとします。このとき、「知りたいこと」と「聞きたいこと」を明確にできていないと、「利用頻度」や「利用金額」といった項目だけを質問してしまうケースが見られます。こういった聞きたいことを伺うだけでは、表面的な情報取得に留まってしまいますし、ビジネスに活かそうと思っても難しいことがあるため、結果的に「調査が失敗に終わる」ことも少なくありません。
そういった失敗をしないためにも、「知りたいこと」を考え、「聞きたいこと」を考えるステップは欠かせません。もし、知りたいことが「ターゲット顧客に今回のコンセプトが魅力的と受け止めてもらうには、どの要素が必要であるか」である場合、「ターゲットの普段のカテゴリ商品の購入重視点で、コンセプトで訴求する要素が変わるのではないか?」と仮定を立て、それに応じた「聞きたいこと」、たとえば以下のような内容を伺う必要があります。
こういったことを伺うことで、行動の背景にある動機や価値観といった、本当に知りたい情報へ辿り着ける可能性を高めることができるため、「知りたいこと」と「聞きたいこと」をしっかりと考えることが重要なのです。
インタビューフローを作成する際に、意識しておくべきポイントが3つあります。以下の3つのポイントを意識しながら作成をすることで対象者がスムーズに話せる流れを構築し、有益な情報を得やすいインタビューを実現できます。

対象者が話しやすいように構成された質問順は、会話の質を大きく左右します。特に意識したいのは、
■大きなカテゴリ(項目) → 小さなカテゴリ(項目)
調査を始める際は、広い枠組みから入って、徐々に具体的な話題に絞っていくことが基本です。いきなり細かい内容を聞こうとすると、対象者は質問の意図がつかみにくくなり、話が出づらくなってしまいます。
たとえば、動画サービスの利用について聞く際、「YouTubeではどんな動画を見ますか?」といきなり尋ねた後で「動画は何を見ますか?」と逆戻りするような質問をすると、「YouTubeは動画ではないのか?」と混乱を招く恐れがあります。
まずは、「動画は何を見ますか?」といった大きなカテゴリについて質問をし、対象者には広く全体像を語ってもらいます。そして、そこからYouTubeを見る対象者に対して「YouTubeではどんな動画を見ますか?」といった小さなカテゴリについて質問をすることで、対象者の興味のあるサービスにフォーカスされ、「話しやすさ」が促進されます。
つまり、対象者にとって話しやすい環境が整い、思わぬ視点や関係性も引き出しやすくなります。
■時系列
たとえば住宅購入に関する調査では、「購入を考えた時期」→「検討のプロセス」→「どのように決定したか」という順に聞くことで、対象者も自分の経験を時系列で振り返りながら話すことができ、頭の中が自然と整理されます。
ここで重要なのは、「過去から現在へ」という順序に固執することではありません。一方向に時制を進めることが大切です。そのため、調査の目的によっては、現在を起点にして、「その前はどうだったか」「どんな変化があったか」と伺うことで、対象者にとって話しやすいケースもあります。
■行動 → 意識
たとえば化粧品の調査で、「どういう化粧水が欲しいですか?」と最初に聞くと、対象者は自分の理想を言語化するのに苦労して言葉が詰まってしまうことがあります。一方で、「今使っている化粧水は何ですか?」→「なぜそれを購入しましたか?」という順であれば、ご自身の行動に基づいて発言することができ、スムーズな会話が期待できます。
この順番の工夫は、こういった商品に関する調査に限らず、「環境保全に関する意識調査」といったようなテーマでも効果的です。具体的には、「環境保全についてどう思いますか?」と聞くより、「ご自身で環境保全について取り組んでいることはありますか?」→「それを始めたきっかけは何ですか?」という順で聞いた方が、対象者も自分の行動を軸に考えながら話せます。こうすることで、具体的かつ実感のある内容が引き出すことができます。
インタビューにおいて、商品やコンセプトの「評価」は非常に重要な要素です。
しかし、それを聞くための内容自体やタイミングは慎重に設計する必要があります。
■評価をする際は、点数化や評価指標を定義すると便利
定量調査でよく用いられる5段階評価(例:「とても満足」「やや満足」「どちらともいえない」「あまり満足していない」「まったく満足していない」)を、定性調査でもそのまま使おうとするケースがありますが、注意が必要です。
インタビューでは、こうした選択肢に対して対象者が「どこからが『やや満足』なのか」がわからず、回答に困ってしまうことがあり、結果として曖昧な回答になることがあります。そして、さらに「なぜそう思ったのか」と質問をしてみても、言語化が難しいことがあります。
そこで有効なのが、数値での点数化や評価指標の定義が重要になります。
たとえば、「この商品の満足度は100点満点で何点ですか?」と尋ねれば、「70点」と答えた人に「なぜ70点なのか」「残りの30点は何が不足しているのか」といった深掘りがしやすくなります。
さらに、評価内容を記号で分類したい場合には、事前に評価指標を定義しておくことが重要です。たとえば、以下のような形です。
このような評価軸を最初に対象者へ共有することで、対象者は「どの基準に当てはまるか」を考えながら答えることができ、「○だけど◎にはならない理由」といった質問をさらにすることで、対象者の判断の背景にある微妙なニュアンスも引き出すことができます。
評価内容を具体的に理解するためには、このような数値での点数化や評価指標の定義が不可欠です。
■評価パートは最後の方へ
先に実態や利用状況などのベースとなる情報を丁寧に把握し、そのうえで評価を聞くことで、「こういう人がこう評価した」という背景と評価の関係が見えやすくなります。
もし、最初に評価項目を提示してしまうと、その後の質問に対して、対象者が評価内容と整合性を取ろうとしたり、意識的・無意識的に発言を調整したりしてしまうことがあります。これにより、実態の話が表面的(うわべだけの話)になってしまうリスクがあります。
また、インタビューを拝聴している調査依頼側にとっても、「この評価をした人は、どんな使い方をしているのか?」という点を後から探ることになり、理解や分析がしづらくなってしまいます。
そのため、評価パートは最後の方にし、先に実態や利用状況などのベースとなる情報をしていくことが推奨されます。こうすることで、対象者がどういう風な使い方をしていて、どういう風な意識をしている人なのか把握した上で、評価パートに入るので、「きっとこの評価は、こういう風に答えるだろうな」とある程度予測を調査依頼者の方で立てることが可能となります。一方で、その予測が違った場合、「なんでだろう?」と思ったことをヒアリングすることで、その理由を深掘りすることも可能です。
最後のポイントは、インタビュー形式ごとの「一人あたりの回答時間」です。
たとえば、60分のデプスインタビューでは、1人にじっくり時間をかけて聞くことができます。一方、6人構成のグループインタビューを120分で実施する場合、1人あたりの持ち時間は約20分となり、デプスインタビューと比べ3倍の差があります。
この違いを踏まえず、デプスインタビュー向けに設計されたフローをそのままグループインタビューに適用すると、情報量が多すぎて時間内に収まらず、十分に深掘りできないままグループインタビューが終わってしまう危険があります。
そのため、インタビュー形式に応じて、インタビューフローを設計する必要があります。

インタビューフローを構成するうえで、聴取項目は単に「何を聞くか」だけでなく、対象者が「なぜそう答えたのか?」がわかるように設計する必要があります。つまり、対象者の発言を「表面的な情報」として受け止めるのではなく、その背景にある行動の理由と期待、結果までを読み解けるような設計が求められます。
以下に、そのために意識すべき3つのポイントを紹介します。
インタビューの序盤に行う自己紹介や導入的なやりとりは、対象者が話しやすい雰囲気をつくるだけでなく、その人の発言の背景を読み取るための大切な情報源にもなります。たとえば、年齢や家族構成、職業、居住エリア、趣味などの外的環境を把握しておくことで、「なぜそのような選択や評価をしたのか?」を理解しやすくなります。
たとえば、「ハイクラスの化粧品を使いたいけれど買えない」といった発言があった場合、事前に「中学生の子供と高校生の子供がいる」という情報を自己紹介時に把握していれば、「教育資金がかかっているため化粧品に回す余裕がない」という背景を想像することが可能です。
また、最近のライフイベント(結婚や出産、転職、引っ越しなど)も、意識や価値観に影響を与え得る要素のため、生活変化に関する質問を聴取項目に入れることをおすすめします。そうした変化を事前に把握しておくことで、インタビューの中で語られる判断や評価が「いつ、何をきっかけに変化したのか?」ということを読み解く手がかりになります。
対象者が「こうしました」「ああしました」ということを、延々と聞いていくのはインタビューではありません。「その行動に至った理由や背景、何を期待していたのか、そしてその結果どう感じたのか」まで、聞いていくことがインタビューです。
たとえば、「ある商品を購入した」という発言があった場合、「なぜそれを選んだのか?」「どのような効果を期待していたのか?」、さらに「実際にその期待は満たされたのか?」といった点までを順を追って確認することで、その選択の背後にある意識や価値観を読み解くことができます。
行動 → 理由(なぜか?)→ 期待(何を得たかったか?)→ 結果(どうだったか?)
という一連の流れを意識して設計された聴取項目は、表面的な情報にとどまらず、対象者の判断軸や納得のプロセスにまで迫ることにつながります。
一見すると非合理に見えるような選択や行動にも、対象者本人にとっては、その人なりの合理性が必ず存在します。その背景には、その人の生活環境や過去の経験、価値観などが影響しており、その人の視点から見れば筋の通った判断であることがほとんどです。
大切なのは、調査者側のものさしで判断せず、対象者の視点に立って理解しようとする姿勢です。この姿勢を持ち、上記①や②も意識して、あらかじめ聴取項目を設計することで初めて、対象者の“合理性”を理解できる一歩を踏み出せます。
これら3つのポイントを踏まえて聴取項目を設計することで、対象者の発言の裏側にある「なぜそう答えたのか?」を的確に捉えることができるようになります。インタビューの質を高め、より深いインサイトを得るために、単なる質問の羅列ではなく、意図を持った構成にしましょう。
ここで、インタビューフローを作成する前と作成する際に意識すること、そして聴取項目について解説をしてきたことをまとめていきます。
「インタビューフローとは」で、「調査背景」~「考察や提言」までの流れを示した図を紹介しましたが、そこに「知りたいこと」と「聞くこと」をメモすると下図になります。

この流れの通り、調査の「目的→課題(知りたいこと)→項目(聞くこと)」で進めることによって、論理的に調査を実施することができ、目的を達成できる可能性が高くなります。
たとえば、商品開発における調査を考えてみましょう。
例:商品開発
ある企業は、商品開発の段階で「この開発している商品は、ターゲットにとって、魅力的に映るのだろうか?」「もし、魅力的に映るのであれば、どこに魅力を感じてくれているのだろうか」といった疑問を抱えていました。そこで「調査をしよう」ということで、以下目的を立てました。
調査目的:ターゲット顧客に今回のコンセプトが魅力的と受け止めてもらうにはどのような要素が必要であるかを把握すること
続いて考えることは、調査課題(知りたい)ことです。
企業内で関係メンバーと会議を開き、調査目的から考えられる調査課題をいくつか出し合いました。その中で決まったのが以下です。
調査課題:
調査課題は、「1つに限定しなくてはいけない」といった制約は存在しません。大事なのは、調査目的を達成できる調査課題を考えることであり、その課題が複数あることで、続く調査項目のヒントにもなります。一方で、注意も必要です。調査課題はいくつも考えることができる可能性がありますが、インタビューで聞ける時間には制限があります。そのため「優先順位」も同時に考える必要があります。
では、その調査項目についても考えていきましょう。
調査課題①の調査項目の内容から「購入重視点」が知りたいことは読み取れます。類似する部分であれば、「商品満足度」も知りたいとこです。また、「購入重視点」や「商品満足度」を知る前に、「購入商品・購入した理由」も知っていた方が、よりターゲットの理解が進みそうです。
次に、調査課題②の方はどうでしょうか。属性という部分から、「性別/年齢/住居エリア/職業/未既婚/子ども有無/世帯年収」が、まず知りたいところになります。そして、調査目的や商品・サービスによって、「スマホのOS」や「車種」なども知りたいことがありますので、臨機応変に用意しましょう。
この調査目的から調査項目までの流れを簡単にまとめると、下図になります。

この調査目的→課題→項目と考えることで、論理的かつ自然と「知りたいこと」が決まっていきます。
また、ここで強調しておきたいのは、調査項目から遡って調査課題や目的を導き出すことはできないという点です。
聴取項目から考えた場合、聞いた方が良いことというのは、山ほど出てきます。上の商品開発の例では、「購入価格帯」や「知っている商品だけど、知らない商品」、「購入をやめた(中断した)商品」、「やめた(中断した)理由」など、調査項目だけしか見なかったら、やはり山ほど出てきます。そして、規則性もない調査項目をたくさん並べて、眺めていても調査課題が浮かんでくることはありません。
調査を迷いなく効率的に進めるためにも、調査の「目的→課題(知りたいこと)→項目(聞くこと)」という順に論理的に整理、進めることが、ブレのないインタビューフローをつくる基本です。
これまでの章でも触れてきましたが、グループインタビューとデプスインタビューの違いは、対象者が複数いるかどうかという点に尽きます。この違いは、インタビューの設計や進行方法に大きく影響を与えるため、あらかじめ両者の特性を踏まえた設計が必要です。
以下に、それぞれの手法における主な注意点を紹介します。

対象者が複数人いるため、一人当たりの回答時間を考慮
グループインタビューでは、対象者が複数人いるため、一人当たりに割ける時間が限られます。
たとえ話として、③1人あたりの回答時間を意識で触れさせていただきましたので、ここでは割愛させていただきます。
他者の影響がある手法であることを認識し、一つの質問で盛り上がる可能性を考えて、質問項目を入れすぎない
グループインタビューは、参加者同士の相互作用によって、話題が広がったり、共感によって盛り上がったりするという特徴があります。
たとえば、ある商品についてのネガティブな体験談が一人から出た際、それをきっかけに他の人も「私もそうでした」と共感し、話が盛り上がることがあります。こうした流れを活かす必要がある一方で、盛り上がりすぎてしまうと、予定していた質問項目をすべて質問ができない可能性も考え、あらかじめ質問項目数を絞る、優先順位をつけるなどの工夫が求められます。
個別に深掘りするパートを多くしない
グループインタビューでは、同じような属性を持った人たちの共通項や傾向を把握する場です。個別に深掘りするパートを多くしてしまうと、デプスインタビューのような1対1のような形式になってしまい、他の対象者がただ聞くだけになってしまいます。
こうした状況は、せっかくご協力いただいている対象者に対して失礼となるだけでなく、グループインタビューならではの相互作用や意見の交差が失われ、グループインタビュー本来の価値が損なわれてしまうためやめましょう。

沈黙への許容や、ゆったりと回答できるようにバッファをもっておく
デプスインタビューでは、一人の対象者とじっくり向き合うことができる反面、対象者自身が日頃から意識していないテーマについて答えていただく場面も少なくありません。
たとえば、日常的な商品購入に関する質問では、「なぜその商品を選んだのか?」と聞かれても、すぐには回答できないことがあります。その場合には、対象者が考えている沈黙を自然に待っていたり、購入時の状況や一緒に購入した他の商品などを尋ねながら、対象者の思考を整理できるよう補助したりする必要があります。
こうしたやり取りの時間を想定し、沈黙があっても自然な流れとして受け止め、対象者が考える時間を確保できるよう、十分なバッファをもって設計しましょう。
モデレーターの技量が結果に影響を与えやすい
デプスインタビューは1対1の形式であるため、対象者の発言が他者の影響を受けにくい一方で、モデレーターの関わり方が調査結果に大きく影響する可能性があります。質問の投げかけ方、リアクションの取り方、掘り下げの深さなどによって、引き出せる情報の質と量が大きく変わるためです。
適切に意図した情報を引き出すためには、事前に想定される回答パターンや深掘りのポイントを明確にし、臨機応変に対応できるように準備しておくことが求められます。
グループインタビューとデプスインタビューは、それぞれ異なる特性を持つ調査手法です。どちらを選ぶかだけでなく、各手法の特性に応じた設計と進行を行うことが、調査目的に沿った有効なアウトプットを得るための鍵となります。
企画段階から両者の違いを正しく理解し、それに応じた準備を行うことが重要です。
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インタビューフローは、調査目的を達成するための「設計図」であり、調査の成功可否を大きく左右する要素です。重要なのは、「調査の目的 → 課題(知りたいこと) → 聴取項目(聞くこと)」という論理的な流れをもとに設計を行うことです。
質問順序の工夫や調査対象者の特性に合わせた構成など、細部に配慮することで、表面的な回答にとどまらず、行動の背景や意識、価値観といったたくさんのインサイトを引き出すことができます。また、グループインタビューとデプスインタビューでは求められる設計も異なるため、それぞれの特性を理解した上で適切な準備を行うことが重要です。
この記事を参考に、「なぜそう答えたのか?」までを見据えたインタビューフローの設計を通じて、調査の質を高め、ビジネスに貢献する有意義な示唆を導き出しましょう。
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グルイン・デプスで異なる、インタビューフローの作り方
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